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第三章 芸術祭といえば秋、なら実りと収穫でしょ!

宣教

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 お茶会を終えてから一度研究所へと向かった。
 今年のマンネルハイムは終わったのであと一年経たないと特にイベントもない。
 なのでわたしが定期的にモチベーションを上げてあげないといけない。
 シュティレンツの研究所へと足を運ぶ。

「はぁ、もう今日は疲れました。まさかアクィエルさんが来るなんて……」

 愚痴を零すとステラが笑った。

「ですが一気にやりたいことが終わってよかったではありませんか」
「確かにそうですが、どうせなら心の準備をしてから会いたかったです」

 再度ため息が出るのを抑えて、シュティレンツの研究所の前まで行くとわたしは驚き固まってしまった。
 シュティレンツの研究所に大量の人集りができていた。

「ええい、押すな! 魔鉱石を使った亜魔導アーマーの製造はまだ秘密だ! それに製造を知ったところで魔鉱石はまだほとんど流通していない。分かったら帰るんだ!」


 領主候補生であるカオディが大きな声で叫んでいる。
 どうやら騎士祭で圧倒的チカラをみせたことで、研究所に入りたい他領の学生が押し寄せてきたのだ。
 だがカオディの言う通り、まだ数が少ないので魔鉱石を他領には出していない。
 そのため、十分な量の魔鉱石が他領に行き渡るようになるには数十年単位掛かるだろう。
 ここはわたしが対処してあげなければならない。

「みなさん、研究熱心ですね」

 わたしの声が聞こえた者が振り返り、それがどんどん詰め掛けている者たちに広がっていった。
 わたしが通る道を作るように全員が整列した。

「ですが、まだシュティレンツではたくさんの学生を受け入れるゆとりがございませんので、どうか今日のところはお戻りくださいませ」


 わたしに逆らう者は誰もいないため、一人の例外なく帰っていった。
 カオディもホッとしたようでわたしに話しかけてくる。

「マリアさまのおかげで助かりました」
「いいえ、騎士祭であれほどの結果を出しのですからこちらももう少し警戒すべきでした。それとまだ貴方の労を労っていませんでしたね。素晴らしい成果です。わたくしは貴方たちを誇りに思います」
「それこそ、マリアさまのおかげです。我が領土のネツキがマリアさまに大変無礼を働いたにも関わらず、魔鉱石をわたしどもに分けてくださいました。研究者としてこれほど楽しい時間はありません。よろしければ、どうぞ中にお入りください。もうすでにアスカさまとラケシスさまも来られております」
「二人が?」

 ラケシスとアスカはシュティレンツを担当してくれていたが、騎士祭が終わったあとも来ているとは思わなかった。
 入るとすぐにラケシスが台の上に乗って演説のようなことをしていた。
 何人もの学生が熱心に耳を傾けている。

「そう! そしてそこでマリアさまが最強の騎士であるセルランさまですら勝てない魔物を一瞬で倒しました! わたくしもその姿を見たかったですが間に合わず。そしてその後にはアビ・シュティレンツに対して、王者として振る舞い、続くシルヴィの会議では重鎮たちを相手に交渉を成立させたその手腕、怨敵ヨハネさまと互角の戦いと次期当主としての片鱗をみせつつあります。いいですか、みなさん! 騎士祭が終わったからと言って気を抜くことがないように!」
「「はい!」」

 わたしは口を開けて呆けてしまった。
 一体ラケシスは何をしているのだ?
 だがわたしがやろうとしていた気合いを入れるという目的は達成されたのでいいとしよう。
 わたしは一人で納得して、再度ラケシスを見るとまた固まってしまった。

「ラケシスさま、こちらが研究内容でございます!」
「ラケシスさま、こちらがお飲み物になります!」
「ラケシスさま、こちらの室温に不快はないでしょうか!」
「ラケシスさま、こちらーー」

 複数の男子生徒に女子生徒も混ざり始めていた。
 どんどんファンクラブは大きくなっているようだ。
 彼女のカリスマ性はわたしより大きいのではないだろうか。

「あれマリアさま? ちょうどお呼びしようと思っていました!」

 元気よくぴょんぴょん跳ねるようにアスカが走ってきた。
 いつも元気なこの子に微笑ましい気持ちになる。

「どうかしました? ものすごく嬉しそうですが」
「ええ、マリアーマーにも魔鉱石を入れたり、シュティレンツに現れた魔物の素材を使ってさらなる強化をしたのです」
「それは凄そうですね。前より強くなったのかしら」
「全然違います。機動性も上がっておりますし、弱い魔法でも、触媒を大量に内臓しておりますので、かなり高威力になります。魔力を込めれば決まった魔法を発動できるようにしてますから、かなり使いやすいはずです」
「では早速試用運転をしてみましょうか」

 わたしがウキウキしながらマリアーマーのところに行く前にステラに止められた。
 目が訴えている。
 わたしがもうすぐ居なくなるのに、まだ心配事を増やすのかと。
 扇子を口にやってオホホホと誤魔化した。
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