100 / 259
第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!
未知の一歩は何がある
しおりを挟む
ホテルを出てから馬車に乗ってジョセフィーヌ領第三都市モルドレッドへと逃亡を始めた。
モルドレッドも都市の名を持っているので、ラングレスとほぼ同格の街だ。
海が近い街であり、水路があたり一帯張り巡らされているため水の都とも呼ばれている。
移動手段は主に小舟という変わった街だが、それゆえか造船や水産業に関しては他領の追随を許さず、この街がこの国の経済を握っていると言っても過言ではない。
「どうやら大ボスたちも緊急の集会を開くみたいです」
この街の高級ホテルで一泊している間に、ホークはここの組織のメンバーと会って情報を交換したようで、わたしの部屋に入って定時連絡を伝えてくれた。
「それはいつごろ?」
「明日の六の鐘が鳴る前だそうです」
どうやら夕方から夜にかけての間で集まるようだ。
このクラリスと同じように権力を持った組織のトップたちが集まるらしい。
まだ時間もあるので情報を集める時間はある。
その間にクラリスの手下たちが何人も訪れてわたしの無事を祈っていた。
やっと一段落してから、肩に乗っているクロート猫に尋ねた。
「クロート、今の段階でわかる情報を教えてください」
「こちらはリムミントと弟、そしてわたしの三班で動いており、潜入は成功しております。今日集会に集まるのは、麻薬、人身売買、暗殺、密造密輸、金貸しの五大組織だそうです。姫さまが擬態しているのは麻薬の組織です」
予想以上に犯罪組織は細かく領域を分けているようだ。
今回の集会でこの商人たちを抑えれば、完全に元を絶てるはずだ。
これ以上わたしの領土に膿はいらない。
「ヨハネはここに来る可能性はありますか?」
「……いいえ、おそらく来ないでしょう。それどころかもう完全に見限っている可能性もあります。そうなると彼女が証拠を残すようなへまをやらかさない限り、今回の件についての関係性については無関係と結論付けるしかありません」
「あの襲ってきた貴族たちは捕まえられませんでしたの?」
「誠に遺憾ながら」
セルランとクロート二人を相手に互角以上の戦いをした謎の貴族が何かしら妨害をしたのだろう。
だがセルランとやり合うことができる騎士なんて、王国の騎士団長しかいないという噂だ。
だが騎士団長はもっと身長が高く、一目で分かるほどの筋肉体質だ。
今回現れた敵はどちらかというと老齢さを感じさせる声であり、鍛えられているが普通の騎士と変わらない体だった。
「あのような敵なら仕方がありません。今回の集会で情報を集めましょう。時間もあるようなので、他の組織の視察でもしてきます」
「いえ、姫さまはここに残ってください」
せっかくわたしが今の状態を活かして役に立とうとしているのに止められるのは不満だ。
わたしは少し不機嫌気味に答えた。
「いいではありませんか。もし万が一があっても、魔法でどうにかします。クロートとアリアが教えてくれた魔法操作のおかげでーー」
「絶対にダメです!」
クロートが耳元で怒鳴るので耳がキーンとなった。
まさかこれほど怒られるとは思ってもおらず呆けてしまった。
「これ以上は姫さまの精神を著しく汚染するような内容です。まだ貴女が見ていいものではありません」
クロートの言葉に胸が締め付けられる。
これまでそうやって目を背けてきたからこのような事態になったのはないか。
どうやらわたしが見ているものはまだ一部分のようだ。
「クロート、貴方の言葉は分かります。ですが…それはできません」
わたしはクロート猫を手で拾い上げてベッドの足に格子の魔法で縛り上げた。
「な、何をしているのですか!」
クロートはわたしを止めるため声を上げて、必死に束縛から解放されようと暴れた。
しかしそんなことで解かれることはない。
「わたしはわたしのすべきことをやります。ごめんなさい」
クロートが何か言う前に部屋の外に出てホークに命令した。
この街にある犯罪組織の各店舗に突然の訪問を要求した。
馬車で進みながら、ホークは苦笑気味だ。
「ボス、視察で今日行くっていったら、どこの店も顔を青くして急いで準備するって言ってましたよ」
「やっぱり突然の訪問はまずかったかしら?」
「いやいや、ただいつものように勝手に好きなものを持っていくボスが来るから、重要な商品は隠すつもりなんでしょう。まあ、俺もちょうど良かったですけどね」
そう言って後ろに付いてくる馬車を見ながら答えた。
どうやらひと仕事を終えて、商品を持っていく用事があったようだ。
ホークはなんだかんだわがままなクラリスに付き従って補佐をするので、抜けているとこも多いがかなり有能だ。
「働き者ね。ホークって、この組織にいる割にはあまりすれていないよね」
「へへ、そうっすかね。そう言われるともっと頑張りたくなりますね」
無邪気なその笑顔はまるで小さな子供だ。
どことなくヴェルダンディと似ている気がしなくもない。
まずは麻薬と金貸しのお店に行った。
どちらも普通の平民の商店という感じで、外からは全く怪しさがない。
ただし、店内では来ている客全てが後ろめたさを持った雰囲気を持っており、それを笑顔で見送る店員たちには嫌悪感があった。
しかしこれくらいなら特に問題なかった。
密造に関しても武器や違法酒くらいなので、特に精神がおかしくなることはなく、暗殺に関してはお店自体ない。
だが最期の人身売買だけはわたしの心を大きく揺れ動かすのだった。
「ここが最後ですね。ちょっと先に行ってもらってていいですかね? 案内人は付けてくれるみたいなので」
「ホークは行かないの?」
「行きますけど、まずは後ろの荷物を届けてきます」
「そうなのね。少し寂しいけど、あまり無茶をしないようにね」
数日間とはいえ一緒に旅をした仲のため、多少の信頼感があった。
もしこの組織を支配したら、この青年だけでも普通の生活に戻してあげたいくらいには情がある。
「クラリスさまにそう言ってもらえるとは嬉しいものだな、ホーク」
お店から出てきた、右目に傷のある中年の男がこちらをからかうように言う。
ホークいわく、この店の支配人のようだ。
「だけど最近は呼んでくれないんですよね。まあ毎日は流石にきつかったけど、ゼロになるのもこれはこれで」
「お前の汚い話はもういい。早く行ってこい」
支配人はまるで聞き飽きたかのように手を振ってホークを追い払った。
よく話の内容は分からなかったが、ホークはなかなか顔が広いようだ。
わたしは普通の服屋に入った。
しかし、奥に行くと隠し階段があり、石畳で出来た道が続いていた。
そこには檻に大量の人間が捕まっていた。
「こ、これは……?」
全員が薄い布一枚着ているだけで、わたしが知る田舎の平民ですらもっとしっかりした服を着ている。
もちろん、檻によって着ている服が違かったりするが、それはおそらく価値が高い人間だからだろう。
どの人も生気がなく、痛々しい傷があるものも多かった。
「おい、そこの檻のやつ大丈夫か?」
「いやダメだ、もう死んでる。病気が移る前に出すぞ」
離れたところでそんな声が聞こえ、わたしは見なければいいのに、どうしてか顔を向けてしまった。
モルドレッドも都市の名を持っているので、ラングレスとほぼ同格の街だ。
海が近い街であり、水路があたり一帯張り巡らされているため水の都とも呼ばれている。
移動手段は主に小舟という変わった街だが、それゆえか造船や水産業に関しては他領の追随を許さず、この街がこの国の経済を握っていると言っても過言ではない。
「どうやら大ボスたちも緊急の集会を開くみたいです」
この街の高級ホテルで一泊している間に、ホークはここの組織のメンバーと会って情報を交換したようで、わたしの部屋に入って定時連絡を伝えてくれた。
「それはいつごろ?」
「明日の六の鐘が鳴る前だそうです」
どうやら夕方から夜にかけての間で集まるようだ。
このクラリスと同じように権力を持った組織のトップたちが集まるらしい。
まだ時間もあるので情報を集める時間はある。
その間にクラリスの手下たちが何人も訪れてわたしの無事を祈っていた。
やっと一段落してから、肩に乗っているクロート猫に尋ねた。
「クロート、今の段階でわかる情報を教えてください」
「こちらはリムミントと弟、そしてわたしの三班で動いており、潜入は成功しております。今日集会に集まるのは、麻薬、人身売買、暗殺、密造密輸、金貸しの五大組織だそうです。姫さまが擬態しているのは麻薬の組織です」
予想以上に犯罪組織は細かく領域を分けているようだ。
今回の集会でこの商人たちを抑えれば、完全に元を絶てるはずだ。
これ以上わたしの領土に膿はいらない。
「ヨハネはここに来る可能性はありますか?」
「……いいえ、おそらく来ないでしょう。それどころかもう完全に見限っている可能性もあります。そうなると彼女が証拠を残すようなへまをやらかさない限り、今回の件についての関係性については無関係と結論付けるしかありません」
「あの襲ってきた貴族たちは捕まえられませんでしたの?」
「誠に遺憾ながら」
セルランとクロート二人を相手に互角以上の戦いをした謎の貴族が何かしら妨害をしたのだろう。
だがセルランとやり合うことができる騎士なんて、王国の騎士団長しかいないという噂だ。
だが騎士団長はもっと身長が高く、一目で分かるほどの筋肉体質だ。
今回現れた敵はどちらかというと老齢さを感じさせる声であり、鍛えられているが普通の騎士と変わらない体だった。
「あのような敵なら仕方がありません。今回の集会で情報を集めましょう。時間もあるようなので、他の組織の視察でもしてきます」
「いえ、姫さまはここに残ってください」
せっかくわたしが今の状態を活かして役に立とうとしているのに止められるのは不満だ。
わたしは少し不機嫌気味に答えた。
「いいではありませんか。もし万が一があっても、魔法でどうにかします。クロートとアリアが教えてくれた魔法操作のおかげでーー」
「絶対にダメです!」
クロートが耳元で怒鳴るので耳がキーンとなった。
まさかこれほど怒られるとは思ってもおらず呆けてしまった。
「これ以上は姫さまの精神を著しく汚染するような内容です。まだ貴女が見ていいものではありません」
クロートの言葉に胸が締め付けられる。
これまでそうやって目を背けてきたからこのような事態になったのはないか。
どうやらわたしが見ているものはまだ一部分のようだ。
「クロート、貴方の言葉は分かります。ですが…それはできません」
わたしはクロート猫を手で拾い上げてベッドの足に格子の魔法で縛り上げた。
「な、何をしているのですか!」
クロートはわたしを止めるため声を上げて、必死に束縛から解放されようと暴れた。
しかしそんなことで解かれることはない。
「わたしはわたしのすべきことをやります。ごめんなさい」
クロートが何か言う前に部屋の外に出てホークに命令した。
この街にある犯罪組織の各店舗に突然の訪問を要求した。
馬車で進みながら、ホークは苦笑気味だ。
「ボス、視察で今日行くっていったら、どこの店も顔を青くして急いで準備するって言ってましたよ」
「やっぱり突然の訪問はまずかったかしら?」
「いやいや、ただいつものように勝手に好きなものを持っていくボスが来るから、重要な商品は隠すつもりなんでしょう。まあ、俺もちょうど良かったですけどね」
そう言って後ろに付いてくる馬車を見ながら答えた。
どうやらひと仕事を終えて、商品を持っていく用事があったようだ。
ホークはなんだかんだわがままなクラリスに付き従って補佐をするので、抜けているとこも多いがかなり有能だ。
「働き者ね。ホークって、この組織にいる割にはあまりすれていないよね」
「へへ、そうっすかね。そう言われるともっと頑張りたくなりますね」
無邪気なその笑顔はまるで小さな子供だ。
どことなくヴェルダンディと似ている気がしなくもない。
まずは麻薬と金貸しのお店に行った。
どちらも普通の平民の商店という感じで、外からは全く怪しさがない。
ただし、店内では来ている客全てが後ろめたさを持った雰囲気を持っており、それを笑顔で見送る店員たちには嫌悪感があった。
しかしこれくらいなら特に問題なかった。
密造に関しても武器や違法酒くらいなので、特に精神がおかしくなることはなく、暗殺に関してはお店自体ない。
だが最期の人身売買だけはわたしの心を大きく揺れ動かすのだった。
「ここが最後ですね。ちょっと先に行ってもらってていいですかね? 案内人は付けてくれるみたいなので」
「ホークは行かないの?」
「行きますけど、まずは後ろの荷物を届けてきます」
「そうなのね。少し寂しいけど、あまり無茶をしないようにね」
数日間とはいえ一緒に旅をした仲のため、多少の信頼感があった。
もしこの組織を支配したら、この青年だけでも普通の生活に戻してあげたいくらいには情がある。
「クラリスさまにそう言ってもらえるとは嬉しいものだな、ホーク」
お店から出てきた、右目に傷のある中年の男がこちらをからかうように言う。
ホークいわく、この店の支配人のようだ。
「だけど最近は呼んでくれないんですよね。まあ毎日は流石にきつかったけど、ゼロになるのもこれはこれで」
「お前の汚い話はもういい。早く行ってこい」
支配人はまるで聞き飽きたかのように手を振ってホークを追い払った。
よく話の内容は分からなかったが、ホークはなかなか顔が広いようだ。
わたしは普通の服屋に入った。
しかし、奥に行くと隠し階段があり、石畳で出来た道が続いていた。
そこには檻に大量の人間が捕まっていた。
「こ、これは……?」
全員が薄い布一枚着ているだけで、わたしが知る田舎の平民ですらもっとしっかりした服を着ている。
もちろん、檻によって着ている服が違かったりするが、それはおそらく価値が高い人間だからだろう。
どの人も生気がなく、痛々しい傷があるものも多かった。
「おい、そこの檻のやつ大丈夫か?」
「いやダメだ、もう死んでる。病気が移る前に出すぞ」
離れたところでそんな声が聞こえ、わたしは見なければいいのに、どうしてか顔を向けてしまった。
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
私の婚約者は6人目の攻略対象者でした
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。
すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。
そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。
確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。
って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?
ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。
そんなクラウディアが幸せになる話。
※本編完結済※番外編更新中
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる