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第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!
側近の失敗
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二日間の移動を経て、ジョセフィーヌ領の都市ボアルネへと辿り着いた。
大きな商店が立ち並び、パラストカーティやシュティレンツと比べても人の多さはさることながら、平民自体に気品を感じさせる。
整備された道路を馬車が通り街並みを見るが、前に帰ったときと比べて大きく変化はないようだ。
「シュティレンツとパラストカーティはやっぱり魔力不足なのね」
わたしがこぼした言葉にクロートが反応した。
「どうして今そう思ったのですか?」
「だって大店は少ないし、装飾品付けているのなんて貴族しかいないではありませんか。ここでは平民でもおしゃれとして装飾品を身に付けている者もいます。それに全く死にそうな人がいません」
魔力量が低いからその土地に集まる者も少なく、食料などが足りなくなってしまうからもっと大きな街へと移っていく。
だがクロートはそう思っていないが特に怒っているわけでもなく教えてくれる。
「それは正解ではありません。確かにパラストカーティはかなり魔力不足ですが、シュティレンツはそうではありません。中領地同士でしっかり縁談も行なっているので、魔力量は世代を重ねるごとに上がっていっております。シュティレンツは特に職人を多く輩出する領土でございますので、王都へも技術者として呼ばれております。ジョセフィーヌ領は元締めをする商人たちが多いので一部の平民が裕福なだけです。ボアルネは一見貧困とは無縁に見えますが、ただ貴族が赴く場所にいないだけです。裏ではパラストカーティとシュティレンツ以上に貧困で死にゆく命も多いのです」
「何故他の領土より多いのですか? 魔力量が多ければ土地が豊かになるのに」
「豊かなのは立場が上の者だけです。全員が紳士淑女の振る舞いをしているわけではありません。弱者から搾り取ってそれで私腹を肥やす者は大勢いますので、人身売買、詐欺、借金いくらでも弱者からお金は取れるのですよ」
わたしはふと考えた。
自分は本当に正しい生き方をしているのか。
わたし自身はカジノの件を除いて、特に何かお金を稼いでいたことがあるわけではない。
わたしこそが私腹を肥やす人間なのではないかと。
「姫さまの考えはわかります。しかし姫さまの場合はその立場にあった仕事をこなしております」
「わたくしが何かしました?」
「ええ、流行を広げる事や下の立場の者を戒める事などしっかりなさっています。姫さまの仕事は秩序を保つことです。今姫さまがなさるべきことは犯罪組織というこの領土を腐らせようとする疫病をなくすこと。それだけを忘れなければ大丈夫でしょう」
クロートとそんなやり取りをしていると城への入り口である大きな門に辿り着いた。
城にいる騎士たちが大勢で迎えてくれており、両脇に整列して道を作っていた
「姫さまの帰還だ。全員騎士の礼をとれ!」
全員が剣を抜いて斜め上に向けた。
そしてその整列の先にはセルランの父である騎士団長が待っていた。
馬車を止めて全員が降りた。
「おかえりなさいませ姫さま。魔法祭でお会いしたとはいえ、やはりこの地でお迎えできることが一番嬉しいことです」
「グレイルも常にこの領土を守ってくださってありがとうございます。貴方の精神はしっかりセルランにも受け継がれて、わたしを守ってくれております」
「我が息子共々これ以上嬉しいことはありません。長旅でお疲れでしょうから今日はゆっくりしてください」
グレイルの顔は疲労で疲れているような顔だ。
わたしは早くリムミントとアスカの顔を見たいため自室へ呼ぶよう伝えた。
側近たちも部屋に呼んで、情報の共有も行う予定だ。
「マリアさま、リムミントとアスカが入室の許可を求めております」
「入れてください」
二人が入室したのでその顔を見るとかなり疲労困憊であり、アスカはまだ気丈に振舞っているが、リムミントに関しては思いつめた顔をしていた。
「マリアさま、側近であるわたくしが任された仕事をこなせず大変もうしわけーー」
「リムミント、姫さまへの挨拶が先です」
リムミントの言葉をサラスは一度止めると、リムミントとアスカはハッとしてわたしに挨拶をした。
見ていて気の毒になるほど責任を感じていた。
「二人とも、わたくしは特に怒っていませんのでゆっくり話してください。それに立ったままでは貴方達も疲れるでしょ? 一度座って紅茶でも飲みなさい」
わたしはレイナとラケシスに命令して二人に無理矢理席に座らせる。
紅茶を注いでもらい、一度飲んでもらってから話を続けてもらう。
「少しは落ち着きましたか?」
「はい、マリアさまの心遣いが心が染み渡ります」
アスカは笑って言ってくれているが、それが嘘だというくらいにはわかっている。
顔色はどちらもまだ青くなったままだ。
「話を続けさせてもらいます」
リムミントがわたしがいない間の話を始めた。
ジョセフィーヌ領に戻ってすぐに二人はお父さまに話をして、騎士を数人と国院にいる騎士も連れて犯罪組織が根城にしていた大店へと向かった。
だが敵はもうすでにこちらの動きに気付いており、店の奥に入った瞬間に部屋が爆発したり武装した集団に襲われたりして、魔法を使う暇もなく敗退を余儀なくされた。
だが一番の問題はお父さまの騎士を三人も死なせてしまったことであり、お父さまは遺族へかなりの見舞金を送ったが、ヨハネの派閥がここでリムミントたちを叩き出したのだ。
どうにか次回案を出したがこれ以上は学生の遊びでないと、爵位を持っている貴族たちからも反発が大きいらしい。
それに加えて、ゴーステフラートの件でも問題があるようで会議を頻繁に行なって対策を練っているようだ。
「おおむね予想通りですね。だからわたしは言ったのですよ」
クロートの無慈悲な言葉にリムミントは唇を噛んでいる。
前にクロートは下僕をリムミントの補佐に勧めて、下僕の予想したとおりにことが起きた。
それを分かっているのでリムミントは何も言えない。
「ええ、貴方の言う通りよクロート。今回の失敗は貴方の諫言をしっかり受け取らず、敵を甘く見た結果です」
わたしの言葉にリムミントは泣きそうなほど顔を青ざめている。
アスカも同じくいつもの明るい顔から想像できないほど、責任によって押しつぶされそうだ。
「今回の責任の発端はわたくしが敵を甘く見ていたこと。セルランの時と同じようにわたくしが上から命令するだけだったから起きたことです。だからリムミント、アスカ、貴方達の力を貸してください。わたくしと共に一緒に考えてください。もうわたくしは貴方達だけに責任を押し付けることはしません」
「ーーっ! 」
リムミントが堰を切ったかのように涙を流し始めた。
手で顔を覆い、人前にも関わらずその涙が止まらない。
アスカが必死に宥め、下僕とクロートは一度空気を読んで部屋の外へと出た。
少しずつ落ち着き始めたので、わたしも言葉を続ける。
「リムミント、アスカ、先程も言いましたがわたくしは今回の件は怒っておりません。確かに騎士を数名無くしておりますが、これはわたくしが命令した結果起きたことです。全ての責任はわたくしにあります。これからの会議ではわたくしが全ての糾弾を受け止めます。だから二人には会議を欠席してもらいます」
おそらくこれからの会議は騎士を無くしている以上、心無い言葉が何度も浴びせられるだろう。
任務失敗でこれほど傷心している二人にこれ以上無理はさせられない。
わたしが主人として全ての責任を負わなければならないのだ。
だがリムミントは涙を拭いて、先程とは打って変わって普段の凛とした顔に戻っていた。
「いいえマリアさま。これはわたくしがマリアさまのご期待に沿えなかったために起きたこと。どうかもう一度チャンスを……」
「わたくしからもお願いします! どうか汚名をそそぐ機会を……」
リムミントとアスカは頭を垂らしてお願いをした。
わたしとしてこの二人の協力はほしい。
それにやられたままでいるのは主人としても嫌である。
「分かりました。二人とも気持ちを強く持ってくださいね。これからわたくしたちは名誉挽回しなければなりませんので」
わたしは再度自分に気合を入れて、会議室へ向かうのだった。
大きな商店が立ち並び、パラストカーティやシュティレンツと比べても人の多さはさることながら、平民自体に気品を感じさせる。
整備された道路を馬車が通り街並みを見るが、前に帰ったときと比べて大きく変化はないようだ。
「シュティレンツとパラストカーティはやっぱり魔力不足なのね」
わたしがこぼした言葉にクロートが反応した。
「どうして今そう思ったのですか?」
「だって大店は少ないし、装飾品付けているのなんて貴族しかいないではありませんか。ここでは平民でもおしゃれとして装飾品を身に付けている者もいます。それに全く死にそうな人がいません」
魔力量が低いからその土地に集まる者も少なく、食料などが足りなくなってしまうからもっと大きな街へと移っていく。
だがクロートはそう思っていないが特に怒っているわけでもなく教えてくれる。
「それは正解ではありません。確かにパラストカーティはかなり魔力不足ですが、シュティレンツはそうではありません。中領地同士でしっかり縁談も行なっているので、魔力量は世代を重ねるごとに上がっていっております。シュティレンツは特に職人を多く輩出する領土でございますので、王都へも技術者として呼ばれております。ジョセフィーヌ領は元締めをする商人たちが多いので一部の平民が裕福なだけです。ボアルネは一見貧困とは無縁に見えますが、ただ貴族が赴く場所にいないだけです。裏ではパラストカーティとシュティレンツ以上に貧困で死にゆく命も多いのです」
「何故他の領土より多いのですか? 魔力量が多ければ土地が豊かになるのに」
「豊かなのは立場が上の者だけです。全員が紳士淑女の振る舞いをしているわけではありません。弱者から搾り取ってそれで私腹を肥やす者は大勢いますので、人身売買、詐欺、借金いくらでも弱者からお金は取れるのですよ」
わたしはふと考えた。
自分は本当に正しい生き方をしているのか。
わたし自身はカジノの件を除いて、特に何かお金を稼いでいたことがあるわけではない。
わたしこそが私腹を肥やす人間なのではないかと。
「姫さまの考えはわかります。しかし姫さまの場合はその立場にあった仕事をこなしております」
「わたくしが何かしました?」
「ええ、流行を広げる事や下の立場の者を戒める事などしっかりなさっています。姫さまの仕事は秩序を保つことです。今姫さまがなさるべきことは犯罪組織というこの領土を腐らせようとする疫病をなくすこと。それだけを忘れなければ大丈夫でしょう」
クロートとそんなやり取りをしていると城への入り口である大きな門に辿り着いた。
城にいる騎士たちが大勢で迎えてくれており、両脇に整列して道を作っていた
「姫さまの帰還だ。全員騎士の礼をとれ!」
全員が剣を抜いて斜め上に向けた。
そしてその整列の先にはセルランの父である騎士団長が待っていた。
馬車を止めて全員が降りた。
「おかえりなさいませ姫さま。魔法祭でお会いしたとはいえ、やはりこの地でお迎えできることが一番嬉しいことです」
「グレイルも常にこの領土を守ってくださってありがとうございます。貴方の精神はしっかりセルランにも受け継がれて、わたしを守ってくれております」
「我が息子共々これ以上嬉しいことはありません。長旅でお疲れでしょうから今日はゆっくりしてください」
グレイルの顔は疲労で疲れているような顔だ。
わたしは早くリムミントとアスカの顔を見たいため自室へ呼ぶよう伝えた。
側近たちも部屋に呼んで、情報の共有も行う予定だ。
「マリアさま、リムミントとアスカが入室の許可を求めております」
「入れてください」
二人が入室したのでその顔を見るとかなり疲労困憊であり、アスカはまだ気丈に振舞っているが、リムミントに関しては思いつめた顔をしていた。
「マリアさま、側近であるわたくしが任された仕事をこなせず大変もうしわけーー」
「リムミント、姫さまへの挨拶が先です」
リムミントの言葉をサラスは一度止めると、リムミントとアスカはハッとしてわたしに挨拶をした。
見ていて気の毒になるほど責任を感じていた。
「二人とも、わたくしは特に怒っていませんのでゆっくり話してください。それに立ったままでは貴方達も疲れるでしょ? 一度座って紅茶でも飲みなさい」
わたしはレイナとラケシスに命令して二人に無理矢理席に座らせる。
紅茶を注いでもらい、一度飲んでもらってから話を続けてもらう。
「少しは落ち着きましたか?」
「はい、マリアさまの心遣いが心が染み渡ります」
アスカは笑って言ってくれているが、それが嘘だというくらいにはわかっている。
顔色はどちらもまだ青くなったままだ。
「話を続けさせてもらいます」
リムミントがわたしがいない間の話を始めた。
ジョセフィーヌ領に戻ってすぐに二人はお父さまに話をして、騎士を数人と国院にいる騎士も連れて犯罪組織が根城にしていた大店へと向かった。
だが敵はもうすでにこちらの動きに気付いており、店の奥に入った瞬間に部屋が爆発したり武装した集団に襲われたりして、魔法を使う暇もなく敗退を余儀なくされた。
だが一番の問題はお父さまの騎士を三人も死なせてしまったことであり、お父さまは遺族へかなりの見舞金を送ったが、ヨハネの派閥がここでリムミントたちを叩き出したのだ。
どうにか次回案を出したがこれ以上は学生の遊びでないと、爵位を持っている貴族たちからも反発が大きいらしい。
それに加えて、ゴーステフラートの件でも問題があるようで会議を頻繁に行なって対策を練っているようだ。
「おおむね予想通りですね。だからわたしは言ったのですよ」
クロートの無慈悲な言葉にリムミントは唇を噛んでいる。
前にクロートは下僕をリムミントの補佐に勧めて、下僕の予想したとおりにことが起きた。
それを分かっているのでリムミントは何も言えない。
「ええ、貴方の言う通りよクロート。今回の失敗は貴方の諫言をしっかり受け取らず、敵を甘く見た結果です」
わたしの言葉にリムミントは泣きそうなほど顔を青ざめている。
アスカも同じくいつもの明るい顔から想像できないほど、責任によって押しつぶされそうだ。
「今回の責任の発端はわたくしが敵を甘く見ていたこと。セルランの時と同じようにわたくしが上から命令するだけだったから起きたことです。だからリムミント、アスカ、貴方達の力を貸してください。わたくしと共に一緒に考えてください。もうわたくしは貴方達だけに責任を押し付けることはしません」
「ーーっ! 」
リムミントが堰を切ったかのように涙を流し始めた。
手で顔を覆い、人前にも関わらずその涙が止まらない。
アスカが必死に宥め、下僕とクロートは一度空気を読んで部屋の外へと出た。
少しずつ落ち着き始めたので、わたしも言葉を続ける。
「リムミント、アスカ、先程も言いましたがわたくしは今回の件は怒っておりません。確かに騎士を数名無くしておりますが、これはわたくしが命令した結果起きたことです。全ての責任はわたくしにあります。これからの会議ではわたくしが全ての糾弾を受け止めます。だから二人には会議を欠席してもらいます」
おそらくこれからの会議は騎士を無くしている以上、心無い言葉が何度も浴びせられるだろう。
任務失敗でこれほど傷心している二人にこれ以上無理はさせられない。
わたしが主人として全ての責任を負わなければならないのだ。
だがリムミントは涙を拭いて、先程とは打って変わって普段の凛とした顔に戻っていた。
「いいえマリアさま。これはわたくしがマリアさまのご期待に沿えなかったために起きたこと。どうかもう一度チャンスを……」
「わたくしからもお願いします! どうか汚名をそそぐ機会を……」
リムミントとアスカは頭を垂らしてお願いをした。
わたしとしてこの二人の協力はほしい。
それにやられたままでいるのは主人としても嫌である。
「分かりました。二人とも気持ちを強く持ってくださいね。これからわたくしたちは名誉挽回しなければなりませんので」
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