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第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!

魔鉱石のいたずら

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 クロートは咳払いをして発言を始めた。
 どうにも締まらないが。


「一応、ネツキの処遇はアビ・シュティレンツに任せました。今回のことはシルヴィに対して不敬でしたので、それ相応の罰が下るでしょう」
「アビ・シュティレンツが手心を加えなければいいですけど」

 どうもアビ・シュティレンツは優柔不断に見受けられる。
 信用していいものだろうか。


「姫さまのあの威圧を受けたので覚悟を決めるでしょう。もし仮に手心を加えたら自身が危ないとわかったはずです。もちろんわたしどもはエリーゼさまがいるのでそのようなことはしないとわかっておりますが」


 シスターズとして入っているエリーゼだろうとも連累になったら一緒に神へ捧げられる。
 しかしわたしも自分を慕ってくれている者を神へ捧げようなんて思っていない。
 そこで冷やっと背中に汗が流れる。
 もしアビ・シュティレンツが敵対していたら、エリーゼ諸共殺すと言っていたのだ。
 こういったところもあまり考えずに言ってはいけないところだ。
 アビが敵でないことに安堵する。


「一応尋問も試みましたが口を割ろうとはしませんね。あの魔物のことだけでも知りたかったですが」
「分かりました。クロートも今日はご苦労様です。全員、明日は早いので今日はゆっくり眠ってください」

 今日はゆっくり眠り、疲れているためか特に夢を見ることなく朝を迎えた。
 ホーキンスがやってきて今日という日をこれほどかと待っていたことを何度も強調して言うので、大人しくさせるために祭壇があるところまで降りていく。
 わたしもまだよく見てなかったため気になっていたが、パラストカーティと同じような作りになっていた。
 ホーキンスは石版を読んでみるが、パラストカーティにあった物と同じことが書かれているとのこと。
 近くに住んでいる平民たちを呼んできて、前と同じ踊りをすると平民たちから光が溢れて、何処かしらへ光が飛んでいった。

「ギャフ!」

 クリスタライザーのようにまた声が聞こえてきた。
 ホーキンス曰く、眷属たちが目覚め始めているのではないかとのこと。


「おお、すごい!」
「これが大貴族さまのお力か!」
「こう爽快感があるな!」


 平民たちも幻想的な光景に驚き騒々しくなる。
 この洞窟内では何が起きたのかが分からないため、しばらくシュティレンツにはこの地でどのようなことが起きたかの観察を命令した。
 ホーキンスはわたしに何度か手伝いを頼んできたので協力するが、特に変わったことは起きない。
 平民の踊りとレイナとラケシスがそれぞれ前で踊ったが、やはりわたしの時のような全員から光が出てくることはない。

「やっぱりこの髪は意味を持つのですね」
「そのようです。ただあのクロートという青年にも踊ってもらいましたが特に変化は起こりませんでした。マリアさまでないといけない理由が何かあるのかもしれないですが、まだまだ研究しないといけませんね。それと古代の魔法についての記述もありましたので、一度王国院に戻って解読してみます。もしかしたら騎士祭で使えるかもしれません」


 ホーキンスから嬉しい報告もあったので十分な収穫となった。
 すぐにでも魔鉱石を手に入れたかったが、採掘を再開させるためもうしばらく時間が掛かるとのことだ。
 わたしは少し残念な気持ちのまま地上に戻ろうとすると、上からパラパラと小石が降ってきた。
 何かと思って見上げると上から大きな岩石が降ってきた。

「きゃあああああ!」
「マリアさま!」


 セルランもすぐに気付いてくれたので、わたしは岩石に潰されることなく難を逃れた。

「何ですの、いきなり! ……変わった色の岩ですね」


 わたしの前に落ちてきた岩は緑色に輝く岩だった。
 普通の石とは違うことは一目瞭然であり、クロートが軽く観察すると素材自体、見たこともないものらしい。

「もしかしてこれが魔鉱石ですか?」
「そうかもしれません。眷属の方がお土産で置いていってくださったのかもしれませんね」


 ……渡し方ってものがあるでしょ!

 眷属のご厚意ということなので、口に出して非難するつもりはないが、わたしをびっくりさせようとしてイタズラしたのではないだろうか?
 一度この岩を城まで運んで調べてみるとのことだ。
 そのままわたしたちはやることもないため、一度シュティレンツの城まで戻るのだった。
 城に戻ってからの会食はネツキと関連が深い人物たちは呼ばず、アビが信用できるものだけがやってきた。


「では全員に通達しているが、ネツキ殿はマリアさまを陥れるためセルランさまを殺そうとした。わたしもこの目で見たので間違いない。しばらくネツキ殿と懇意にしている貴族に関しては重要な会合では出席を許可しないように。このようなことが二度起きればシュティレンツはシルヴィから見捨てられるだろう」


 アビの言葉に全員が重く頭を下げた。
 行き過ぎた野心によって己の破滅をしたい者はいない。


「だが収穫もあった。マリアさまのおかげで伝承を確かめられて魔鉱石と思われる岩も手に入った。シルヴィに納める比率はシルヴィに決めていただく。異論がある者は述べよ」


 全員が口を閉ざして了承する。
 ネツキのやったことは重罪である。
 当主一族に攻撃したようなものなので、本来ならシュティレンツへの罰はかなり大きい。
 それがわかっているからこそ、条件をこちらに譲っているのだ。


「ではこの件に関してはこれで決まりだ。各領地毎に何かしら変化もあるかもしれないので、常にわたしに報告をするように。これは国命と心得よ」


 普段の頼りない姿とは一変して領主の顔で命令する。
 これでシュティレンツも少しでも領地の魔力が満たされれば、上の領地へと上る足掛かりとなるだろう。
 食事を摂って今後の取り決めを行い今日は終わった。
 だが次の日になり、わたしにとって嬉しくない連絡がきた。
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