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第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!
セルラン視点3
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剣によって弾かれたため、自分の体が宙に浮かんで無防備になった。
相手の二刀流が水平に横薙ぎされ、何とかトライードで受け止めたが踏ん張る地面がないため遠く離れた壁まで吹き飛ばされた。
「かはっ……」
背中から思いっきりぶつけたためうめき声と共に吐血した。
壁からズルりと落ちて地面にドサっと倒れこむ。
あまりにも人間を超えた腕力から繰り出される攻撃を右腕で受けたため全く上がらない。
だがそれでも自分の主人にこの場所を知らせるため、気合いのみで立ち上がる。
「はぁはぁ……、ちょうしに……乗るなよ」
……マリアさまの騎士はわたしだ
牛は走り出して追撃をしてくる。
両手の剣を振り落としてくるので、すぐさま水竜を呼び出して間一髪で避けた。
「水の神オーツェガットは踊り手なり。大海に軌跡を作り給いて、大神に祈りを捧げるものなり。我は源を送ろう。我は感謝を捧げよう。汝の運命を紡がんために」
自身の持つ最上位の魔法の詠唱を終えて持てる限りの魔力を注ぎ込んで、水の濁流を牛へと放った。
牛は両手の剣で受け止めるが、その巨体でも踏ん張ることができずに壁へと吹き飛ばした。
背中をぶつけてうめき声を上げており、少なからずダメージは与えている。
その隙を逃さず、水竜で牛の近くまで接近する。
「お前ごときに負けるわたしではない!」
加速した状態でトライードを剣先を長くして突進した。
絶対に負けられないという気持ちをトライードに乗せて、勢いに任せて牛の左目を突き刺した。
「ギャアアアアアアアア!」
刺したあとはすぐに距離を取った。
牛は目の痛みに絶叫を上げている。
「人間風情ガ……」
やっと牛もこちらを強敵と認識したみたいで、さっきまでと雰囲気が変わる。
やはりさっきまではこっちを甘く見ていたのだろう。
「今更本気になっても遅い。剣と盾の称号を持つわたしは誰にも負けられない」
残った右目も潰すため再度攻撃を仕掛ける。
水竜で近づき撹乱する。
牛も剣を振り回しているがこちらには当たらない。
「所詮は魔物。お前のは凶器を振り回しているだけで剣術とはいえない。剣術とはこういうものだ」
身体強化の魔法を持続させたため、攻撃しては引いてを繰り返して、相手の剣を受け流しながら機会を待つ。
すぐにそれはやってきた。
力の入っていない剣が振り回されてきたのでタイミングを計ってその剣を吹き飛ばした。
残るのは右手の剣のみ。
「強キ者ヨ。我モ魔ノ神カラ頂イタ力ヲ使ウ」
……魔の神だと? こいつらも信仰があるのか。
牛は自身の周りに黒いオーラを展開させた。
何のオーラかはわからないが、ところどころスパークが起きており嫌な予感がする。
様子見のため一度下がった。
それは正解だったようで、オーラから雷が四方へと放たれた。
水竜を全速力で飛ばし、一箇所に留まらないように逃げる。
もし仮に雷と同じ威力だったら、ヴェルダンディのように意識が無くなってしまう。
「何だあの力は? まるで災厄ではないか。ガイアノスの魔法に似ているがそれよりも禍々しく威力も段違いだな」
雷は地面を抉ったり壁に穴を空けたりと猛威を振るう。
何とか避けることができるが、次第に追い詰められていく。
壁際に追い込まれていくが、トドメの雷撃をギリギリのところで避けて反撃をしようとした。
だが自分の逃げ道には牛がまだ持っていた剣が眼前に迫っていた。
……雷が囮だと!?
牛が全力で投擲したのか、トライードでは止めるにはあまりにも威力が高く水竜から吹き飛ばされた。
そのまま壁に激突して苦悶の声を上げた。
予想を上回る敵の戦術に優位が保てない。
地面から立ち上がりたいが血を流したことと魔力の消費で目眩で頭痛が襲う。
ゆっくりと牛は落ちている剣を拾い上げて、こちらへ向かってくる。
どうにか逃げないといけないがもう水竜を呼び出す魔力も残っていない。
身に付けている魔力の回復薬を飲みたいが、もうそれを取り出す体力すらない。
「オマエヲ倒シタ後二回復スルトシヨウ」
このままでは無駄死にとなる。
それだけはマリアさまの騎士としてやってはいけない。
その気持ちが残る力を振りしぼってくれた。
腰に付けている回復薬を飲み干して魔力を回復させる。
だがもうこれを放ったら体力が切れてしまうだろう。
しかし、不名誉なまま終わる気は無い。
最後の魔法を放つ。
「水の神オーツェガットは踊り手なり。大海に軌跡を作り給いてーー」
「セルラァぁぁぁん!」
……マリアさま!?
ステラの水竜に乗って大きく叫んでいるマリアさまに目が奪われた。
なぜ来たのか?
もしこの魔物が襲い掛かれば危険である、と頭の中が真っ白になる。
牛もマリアの存在に気付いていつでも倒せるわたしではなく、マリアさまの方へ走り出した。
「逃げろおおおお!」
自分が出せる最大の声を張り上げた。
騎士の訓練なんて受けたことがないマリアさまでは何も出来ずに殺されてしまう。
死なせるわけにはいかない。
しかしもう意識が朦朧としていて、牛に向かって魔法の標準を合わせることも難しい。
「ソノ髪ハ始末スル!」
「よくも……よくも、セルランを傷付けたわねえええ!」
マリアさまの普段聞いたことのない怒声に意識が覚醒する。
その顔には底知れない怒りがあり、自分のためにそこまで感情を露わにしてくれている。
だが今は惚けている場合ではない。
少しでも相手の勢いを削がねばならない。
拘束の魔法を牛の足に絡ませて全力で引いた。
肉体強化も限界までしているその腕力で右足を止めることで、バランスを崩して倒れた。
「水の神オーツェガットは踊り手なり。大海に軌跡を作り給いて、大神に祈りを捧げるものなり。我は源を送ろう。我は感謝を捧げよう。汝の運命を紡がんために」
「水の神オーツェガットは踊り手なり。大海に軌跡を作り給いて、大神に祈りを捧げるものなり。我らの敵に鉄槌あれ!」
マリアさまの魔法の水の濁流とクロートが発動した頭上から来る水のヤイバが牛を潰し切り裂いた。
二人の高魔力を耐える術もなく、最後はあっけなく死んでいった。
マリアさまは少し苦しそうな顔をしていたがどうにか暴走することなく魔力を鎮めている。
これまでの練習の成果であろう。
今日はクロートの同調がなくとも制御できている。
「セルラン大丈夫!」
意識が再度朦朧としている間にマリアさまがわたしの頭を膝の上に乗せていた。
「いけ……ません……血で汚れて……しまいます」
本当は感謝の言葉を伝えたかったが、どうしてかそのような言葉を言ってしまった。
だがマリアさまは涙を流して、何かを言ってくれている。
「気にしないでいいのよ。よかった……。間に合って……。貴方はわたくしの騎士よ、今日はもうお休みなさい」
「ふふ、では少しの間だけ……休息を取ることをお許しください」
騎士としてはひどい体たらくだが、充実感だけはあった。
まだまだ修行が足りない自分に先程まで怒りがあったが今はそれはない。
目をゆっくり瞑り、いつしか意識も薄れていった。
今日の眠りはさぞ心地よいものだろう。
相手の二刀流が水平に横薙ぎされ、何とかトライードで受け止めたが踏ん張る地面がないため遠く離れた壁まで吹き飛ばされた。
「かはっ……」
背中から思いっきりぶつけたためうめき声と共に吐血した。
壁からズルりと落ちて地面にドサっと倒れこむ。
あまりにも人間を超えた腕力から繰り出される攻撃を右腕で受けたため全く上がらない。
だがそれでも自分の主人にこの場所を知らせるため、気合いのみで立ち上がる。
「はぁはぁ……、ちょうしに……乗るなよ」
……マリアさまの騎士はわたしだ
牛は走り出して追撃をしてくる。
両手の剣を振り落としてくるので、すぐさま水竜を呼び出して間一髪で避けた。
「水の神オーツェガットは踊り手なり。大海に軌跡を作り給いて、大神に祈りを捧げるものなり。我は源を送ろう。我は感謝を捧げよう。汝の運命を紡がんために」
自身の持つ最上位の魔法の詠唱を終えて持てる限りの魔力を注ぎ込んで、水の濁流を牛へと放った。
牛は両手の剣で受け止めるが、その巨体でも踏ん張ることができずに壁へと吹き飛ばした。
背中をぶつけてうめき声を上げており、少なからずダメージは与えている。
その隙を逃さず、水竜で牛の近くまで接近する。
「お前ごときに負けるわたしではない!」
加速した状態でトライードを剣先を長くして突進した。
絶対に負けられないという気持ちをトライードに乗せて、勢いに任せて牛の左目を突き刺した。
「ギャアアアアアアアア!」
刺したあとはすぐに距離を取った。
牛は目の痛みに絶叫を上げている。
「人間風情ガ……」
やっと牛もこちらを強敵と認識したみたいで、さっきまでと雰囲気が変わる。
やはりさっきまではこっちを甘く見ていたのだろう。
「今更本気になっても遅い。剣と盾の称号を持つわたしは誰にも負けられない」
残った右目も潰すため再度攻撃を仕掛ける。
水竜で近づき撹乱する。
牛も剣を振り回しているがこちらには当たらない。
「所詮は魔物。お前のは凶器を振り回しているだけで剣術とはいえない。剣術とはこういうものだ」
身体強化の魔法を持続させたため、攻撃しては引いてを繰り返して、相手の剣を受け流しながら機会を待つ。
すぐにそれはやってきた。
力の入っていない剣が振り回されてきたのでタイミングを計ってその剣を吹き飛ばした。
残るのは右手の剣のみ。
「強キ者ヨ。我モ魔ノ神カラ頂イタ力ヲ使ウ」
……魔の神だと? こいつらも信仰があるのか。
牛は自身の周りに黒いオーラを展開させた。
何のオーラかはわからないが、ところどころスパークが起きており嫌な予感がする。
様子見のため一度下がった。
それは正解だったようで、オーラから雷が四方へと放たれた。
水竜を全速力で飛ばし、一箇所に留まらないように逃げる。
もし仮に雷と同じ威力だったら、ヴェルダンディのように意識が無くなってしまう。
「何だあの力は? まるで災厄ではないか。ガイアノスの魔法に似ているがそれよりも禍々しく威力も段違いだな」
雷は地面を抉ったり壁に穴を空けたりと猛威を振るう。
何とか避けることができるが、次第に追い詰められていく。
壁際に追い込まれていくが、トドメの雷撃をギリギリのところで避けて反撃をしようとした。
だが自分の逃げ道には牛がまだ持っていた剣が眼前に迫っていた。
……雷が囮だと!?
牛が全力で投擲したのか、トライードでは止めるにはあまりにも威力が高く水竜から吹き飛ばされた。
そのまま壁に激突して苦悶の声を上げた。
予想を上回る敵の戦術に優位が保てない。
地面から立ち上がりたいが血を流したことと魔力の消費で目眩で頭痛が襲う。
ゆっくりと牛は落ちている剣を拾い上げて、こちらへ向かってくる。
どうにか逃げないといけないがもう水竜を呼び出す魔力も残っていない。
身に付けている魔力の回復薬を飲みたいが、もうそれを取り出す体力すらない。
「オマエヲ倒シタ後二回復スルトシヨウ」
このままでは無駄死にとなる。
それだけはマリアさまの騎士としてやってはいけない。
その気持ちが残る力を振りしぼってくれた。
腰に付けている回復薬を飲み干して魔力を回復させる。
だがもうこれを放ったら体力が切れてしまうだろう。
しかし、不名誉なまま終わる気は無い。
最後の魔法を放つ。
「水の神オーツェガットは踊り手なり。大海に軌跡を作り給いてーー」
「セルラァぁぁぁん!」
……マリアさま!?
ステラの水竜に乗って大きく叫んでいるマリアさまに目が奪われた。
なぜ来たのか?
もしこの魔物が襲い掛かれば危険である、と頭の中が真っ白になる。
牛もマリアの存在に気付いていつでも倒せるわたしではなく、マリアさまの方へ走り出した。
「逃げろおおおお!」
自分が出せる最大の声を張り上げた。
騎士の訓練なんて受けたことがないマリアさまでは何も出来ずに殺されてしまう。
死なせるわけにはいかない。
しかしもう意識が朦朧としていて、牛に向かって魔法の標準を合わせることも難しい。
「ソノ髪ハ始末スル!」
「よくも……よくも、セルランを傷付けたわねえええ!」
マリアさまの普段聞いたことのない怒声に意識が覚醒する。
その顔には底知れない怒りがあり、自分のためにそこまで感情を露わにしてくれている。
だが今は惚けている場合ではない。
少しでも相手の勢いを削がねばならない。
拘束の魔法を牛の足に絡ませて全力で引いた。
肉体強化も限界までしているその腕力で右足を止めることで、バランスを崩して倒れた。
「水の神オーツェガットは踊り手なり。大海に軌跡を作り給いて、大神に祈りを捧げるものなり。我は源を送ろう。我は感謝を捧げよう。汝の運命を紡がんために」
「水の神オーツェガットは踊り手なり。大海に軌跡を作り給いて、大神に祈りを捧げるものなり。我らの敵に鉄槌あれ!」
マリアさまの魔法の水の濁流とクロートが発動した頭上から来る水のヤイバが牛を潰し切り裂いた。
二人の高魔力を耐える術もなく、最後はあっけなく死んでいった。
マリアさまは少し苦しそうな顔をしていたがどうにか暴走することなく魔力を鎮めている。
これまでの練習の成果であろう。
今日はクロートの同調がなくとも制御できている。
「セルラン大丈夫!」
意識が再度朦朧としている間にマリアさまがわたしの頭を膝の上に乗せていた。
「いけ……ません……血で汚れて……しまいます」
本当は感謝の言葉を伝えたかったが、どうしてかそのような言葉を言ってしまった。
だがマリアさまは涙を流して、何かを言ってくれている。
「気にしないでいいのよ。よかった……。間に合って……。貴方はわたくしの騎士よ、今日はもうお休みなさい」
「ふふ、では少しの間だけ……休息を取ることをお許しください」
騎士としてはひどい体たらくだが、充実感だけはあった。
まだまだ修行が足りない自分に先程まで怒りがあったが今はそれはない。
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