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第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!
水の神の眷属クリスタライザー
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朝食を食べながらわたしは夢のことを思い出していた。
夢の中ではかなり頭がボーっとしていたが、今思い返すとあの鳴き声はパラストカーティで聞こえてきた鳴き声だった。
これは偶然なのか、それともわたしに何かを伝えようとしているのかもしれない。
「姫さま、お食事中に考え事とはあまり行儀が良いものではありませんよ」
手が止まって物思いにふけっていたためすかさずサラスから小言をいただいた。
物知りなサラスならもしかすれば何か知っているかもしれない。
「サラス、クラゲみたいな神さまっていましたかしら?」
「姫さま、まさか本気で言っているわけではありませんよね? 」
思った疑問を聞いたら思いがけない返答が返ってきた。
わたしはゴクリと息をのんで必死に考える。
そこで思い出した。
水の神の眷属には助言と忠告をしてくれるクラゲのような神がいると。
「思い出してくれまして本当にようございました。セルランたちを見送る前に講義をしないといけませんでしたから」
「うっ……」
このような大事な日に朝からサラスの授業なんてたまったものじゃない。
あまり迂闊なことを言うと自分の首を締めかねない。
黙って食事を続け、調査へ向かう騎士たちの出立時間まで夢について何度も思い出した。
「それでは総勢二十の騎士はわたしと共に降りるように」
まさかネツキ自らこの洞窟へ向かうとはおもわず、ただの口だけ男だと甘く見ていたようだ。
ネツキ自身元々は騎士として名を上げていたが、年齢も上がったことで持ち前の知識欲を生かして文官へと職を変えている。
まずはネツキ率いる騎士たちが先に降りていって、続いてセルランがジョセフィーヌ領から連れてきた騎士五人を連れて降りることになっている。
「ではマリアさま、行ってまいります。最初のフロアから道が分かれているようなので、ネツキとは別の方向から祭壇まで降りてみせます」
「セルラン、あなたなら何も問題ないと思いますがもし万が一でも危険だと判断したら引き返してください」
セルランなら問題ないとわかっているがそれでも一抹の不安はある。
どうにもネツキがたびたびこちらを見てにやけている。
言いようも知れない不安があるが、たとえネツキの妨害があろうともセルランをどうにかできるとは思えない。
「マリアさま、出発の前に騎士の誓いをさせていただきます」
セルランはわたしの前でひざまずいて、わたしの手を握っておでこに付ける。
わざわざすることもないのに、わたしの不安を少しでも取り除くためだろう。
「わたしはマリアさまに仕える剣と盾の称号を持つ騎士として、主人の命令をこの身を以て叶えて見せましょう。……ご心配には及びません。わたしの戻る場所は貴方さまの側です。マリアさまの剣として必ずや役目を遂行してみせます」
そう、セルランは最強の騎士だ。
もしセルランでダメならば誰が行こうとも生きては帰ってこられない。
それに今日はセルランも十分に体を休めているので、たとえデビルキングだろうとも倒してくれるだろう。
「ええ、信じています。最愛なるわたくしの騎士よ。貴方の誓いはしかと受け取りました。ではお行きなさい」
セルランは顔を引き締めて洞窟の地下へと降りていく。
わたしにできることは待つことだけだ。
セルランがいなくなってから、時を見計らっていたクロートがやってきた。
その顔はメガネ越しからわかるほど、不機嫌さが伝わってくる。
「怒っていますの?」
「姫さまにではありません、自分自身にです。まさかあのような男に出し抜かされて、姫さまに交渉をさせるなんて。小心者だと侮りすぎました。ただセルランなら知恵ある魔物の危険性くらいわかっているはずなので、心配はいらないでしょう」
クロートがここまで表情を露わにするとはおもわず、彼にも人間味はあるようだと実感する。
そこで先ほど見た夢について聞いてみようと考えた。
やはり夢のように祭壇なんてない。
あるのは壁だけだ。
「クロート少しあのテントでお話しをしませんか?」
「ええ? 構いませんが」
わたしは人払いをしてクロートと二人でテントへ入った。
一応男女だけで入るのは外聞が悪いため、もう一人の証人としてレイナにも来てもらった。
「荒唐無稽な相談なのですが、今日夢でクラゲの姿をした生物が現れましたの」
「クリスタライザー!? バカな……いやあの儀式で……」
わたしはそこでやっと水の神の眷属がクリスタライザーという名前だったことを思い出す。
だがどうにもクロートは狼狽えすぎではないだろうか。
「さすがはマリアさまですね。わざわざ神の眷属が夢の中までお会いに来てくださるなんて」
「わたくしも初めてみたことけどすごく可愛らしくてーー」
「クリスタライザーは何を見せたのですか!」
危うくレイナと雑談しかけたがクロートが遮って、わたしの夢について詳しく話すように言ってくる。
わたしも本題はこの夢なので話題を戻す。
「あの洞窟前の右手の方向に祭壇がありましたの。でもそこには壁しかないからあれはただの夢なのか、それとも何かを伝えようとしてくれたのかを相談したかったのです」
「クリスタライザーが現れるということはマリアさまについて良くない知らせがある時です」
わたしはそこでセルランを送り出したことこそが良くないことだったのではないかと、体中から血の気が引いていく。
クロートも焦っている様子から冗談で言っているわけではない。
「ここにいても仕方がありません。急いでそこへ向かいましょう」
わたしはクロートたちとテントの外へ向かうと何やら騒ぎが起きている。
そこでラケシスと下僕が走ってこちらまで来て何が起きたかを伝えてくれる。
「姫さま、ここは危険です。一度シュティレンツの城までお逃げください!」
「一体どうしたのですか? 何をそんなに慌てているのです?」
「南方より大群の魔物が押し寄せてきているようです。シュティレンツの騎士たちが迎撃に出ていますが、この数は異常事態すぎてマリアさまの無事が確約できません」
まさかこのような時に魔物の群れがくると思ってもみなかった。
だがどうしても、夢でみた祭壇の場所へ再度行かねばならない。
眷属がわざわざわたしに知らせようとしてくるほどだから、ここで確かめないのは何か嫌な予感がする。
「姫さま、逃げますよ!」
サラスがわたしの手を引いて逃げようとするがそれを振り払った。
夢の中ではかなり頭がボーっとしていたが、今思い返すとあの鳴き声はパラストカーティで聞こえてきた鳴き声だった。
これは偶然なのか、それともわたしに何かを伝えようとしているのかもしれない。
「姫さま、お食事中に考え事とはあまり行儀が良いものではありませんよ」
手が止まって物思いにふけっていたためすかさずサラスから小言をいただいた。
物知りなサラスならもしかすれば何か知っているかもしれない。
「サラス、クラゲみたいな神さまっていましたかしら?」
「姫さま、まさか本気で言っているわけではありませんよね? 」
思った疑問を聞いたら思いがけない返答が返ってきた。
わたしはゴクリと息をのんで必死に考える。
そこで思い出した。
水の神の眷属には助言と忠告をしてくれるクラゲのような神がいると。
「思い出してくれまして本当にようございました。セルランたちを見送る前に講義をしないといけませんでしたから」
「うっ……」
このような大事な日に朝からサラスの授業なんてたまったものじゃない。
あまり迂闊なことを言うと自分の首を締めかねない。
黙って食事を続け、調査へ向かう騎士たちの出立時間まで夢について何度も思い出した。
「それでは総勢二十の騎士はわたしと共に降りるように」
まさかネツキ自らこの洞窟へ向かうとはおもわず、ただの口だけ男だと甘く見ていたようだ。
ネツキ自身元々は騎士として名を上げていたが、年齢も上がったことで持ち前の知識欲を生かして文官へと職を変えている。
まずはネツキ率いる騎士たちが先に降りていって、続いてセルランがジョセフィーヌ領から連れてきた騎士五人を連れて降りることになっている。
「ではマリアさま、行ってまいります。最初のフロアから道が分かれているようなので、ネツキとは別の方向から祭壇まで降りてみせます」
「セルラン、あなたなら何も問題ないと思いますがもし万が一でも危険だと判断したら引き返してください」
セルランなら問題ないとわかっているがそれでも一抹の不安はある。
どうにもネツキがたびたびこちらを見てにやけている。
言いようも知れない不安があるが、たとえネツキの妨害があろうともセルランをどうにかできるとは思えない。
「マリアさま、出発の前に騎士の誓いをさせていただきます」
セルランはわたしの前でひざまずいて、わたしの手を握っておでこに付ける。
わざわざすることもないのに、わたしの不安を少しでも取り除くためだろう。
「わたしはマリアさまに仕える剣と盾の称号を持つ騎士として、主人の命令をこの身を以て叶えて見せましょう。……ご心配には及びません。わたしの戻る場所は貴方さまの側です。マリアさまの剣として必ずや役目を遂行してみせます」
そう、セルランは最強の騎士だ。
もしセルランでダメならば誰が行こうとも生きては帰ってこられない。
それに今日はセルランも十分に体を休めているので、たとえデビルキングだろうとも倒してくれるだろう。
「ええ、信じています。最愛なるわたくしの騎士よ。貴方の誓いはしかと受け取りました。ではお行きなさい」
セルランは顔を引き締めて洞窟の地下へと降りていく。
わたしにできることは待つことだけだ。
セルランがいなくなってから、時を見計らっていたクロートがやってきた。
その顔はメガネ越しからわかるほど、不機嫌さが伝わってくる。
「怒っていますの?」
「姫さまにではありません、自分自身にです。まさかあのような男に出し抜かされて、姫さまに交渉をさせるなんて。小心者だと侮りすぎました。ただセルランなら知恵ある魔物の危険性くらいわかっているはずなので、心配はいらないでしょう」
クロートがここまで表情を露わにするとはおもわず、彼にも人間味はあるようだと実感する。
そこで先ほど見た夢について聞いてみようと考えた。
やはり夢のように祭壇なんてない。
あるのは壁だけだ。
「クロート少しあのテントでお話しをしませんか?」
「ええ? 構いませんが」
わたしは人払いをしてクロートと二人でテントへ入った。
一応男女だけで入るのは外聞が悪いため、もう一人の証人としてレイナにも来てもらった。
「荒唐無稽な相談なのですが、今日夢でクラゲの姿をした生物が現れましたの」
「クリスタライザー!? バカな……いやあの儀式で……」
わたしはそこでやっと水の神の眷属がクリスタライザーという名前だったことを思い出す。
だがどうにもクロートは狼狽えすぎではないだろうか。
「さすがはマリアさまですね。わざわざ神の眷属が夢の中までお会いに来てくださるなんて」
「わたくしも初めてみたことけどすごく可愛らしくてーー」
「クリスタライザーは何を見せたのですか!」
危うくレイナと雑談しかけたがクロートが遮って、わたしの夢について詳しく話すように言ってくる。
わたしも本題はこの夢なので話題を戻す。
「あの洞窟前の右手の方向に祭壇がありましたの。でもそこには壁しかないからあれはただの夢なのか、それとも何かを伝えようとしてくれたのかを相談したかったのです」
「クリスタライザーが現れるということはマリアさまについて良くない知らせがある時です」
わたしはそこでセルランを送り出したことこそが良くないことだったのではないかと、体中から血の気が引いていく。
クロートも焦っている様子から冗談で言っているわけではない。
「ここにいても仕方がありません。急いでそこへ向かいましょう」
わたしはクロートたちとテントの外へ向かうと何やら騒ぎが起きている。
そこでラケシスと下僕が走ってこちらまで来て何が起きたかを伝えてくれる。
「姫さま、ここは危険です。一度シュティレンツの城までお逃げください!」
「一体どうしたのですか? 何をそんなに慌てているのです?」
「南方より大群の魔物が押し寄せてきているようです。シュティレンツの騎士たちが迎撃に出ていますが、この数は異常事態すぎてマリアさまの無事が確約できません」
まさかこのような時に魔物の群れがくると思ってもみなかった。
だがどうしても、夢でみた祭壇の場所へ再度行かねばならない。
眷属がわざわざわたしに知らせようとしてくるほどだから、ここで確かめないのは何か嫌な予感がする。
「姫さま、逃げますよ!」
サラスがわたしの手を引いて逃げようとするがそれを振り払った。
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