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第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!
カジノの基本は全額ベット
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階段を登り三階の部屋へと向かう。
どうやら一階は平民たち、二階は下級貴族用で、三階がVIPルームとなっているようだ。
「では是非ともお楽しみください。護衛の方々はここでお待ちいただけますか?」
「それは無理な相談です。レイチェルさまお一人で男性しかおられないような場所に連れて行くわけには参りません」
「かしこまりました。それではお二人とも付き添いを許します」
わたし一人だけで入れなんてこの支配人は馬鹿ではないだろうか?
完全にわたしをこの中の誰かに斡旋するつもりだったのだろう。
クロートがヴェルダンディを制しなければこの場で切り捨てられただろう。
おそらく平民と思われているので、中の貴族たちに始末してもらおうと考えているのだろう。
あまりにも浅はかである。
「レイチェルさまご入場」
大扉を開けるとそこでは中年の貴族たちがタバコをふかしながらこちらに注目する。
少し煙たいが、わたしの魔道具には空気清浄が自動的にされる魔道具をクロートから渡されているので匂いは特にない。
最初は数人しか見ていなかったがどんどんわたしの存在を伝え合って、遂には全員がこちらに目を向けた。
「わたくしはどの席へ向かえばいいですか?」
「こちらへ呼びたまえ」
中央の席で一際目立つ小太りの男がいた。
身なりも他の貴族と比べて良く、おそらくはここの経営をしている中級貴族だろう。
下卑た笑いはこちらの嫌悪感を強めるには十分であり、内心で最低の評価をつけるが今はカジノをすることが大事なため、わたしはにこやかな顔で近づいて行く。
「パラストカーティの新興貴族ハインツルンベーゲンの長女レイチェルと申します」
「ズクミゴだ、よろしくお嬢さん。ほうほう、近くでみると下級貴族とは思えないほどの美貌だ。王国院の学生かね? 」
「はい。ここならあまりお金がないわたしでもお金をいっぱい貰えると聞いたので、父に内緒で遊びに来ました」
「ほう……」
ズクミゴはわたしの胸から腰の方へとどんどん目線を下げていく。
鳥肌が立ちそうなのを必死で我慢するが、わたしよりヴェルダンディが堪えることができるかが心配だ。
わたしもこの気持ちの悪い視線を退けたいので、肝心のカジノの話題へと変える。
「そこのテーブルで遊ぶことができるのですか?」
「ああ、そうだ。わたし自ら教えてあげよう。おい、一人場所を空けろ」
五人掛けの席が満杯であり、おそらく一番立場が弱い男性が席をあける。
席をずっていき、わざわざこの男の隣を開けてくれた。
いい迷惑だ。
しかしわたしは表情を変えずに席に座ると、赤い色の飲み物が入ったグラスを置かれた。
どうみてもワインであり、わたしが学生であることを知ってそれを出すということは、邪な思惑を受け入れろということだろう。
ヴェルダンディもたまらず口を挟んだ。
「おいちょっとま……待ってください。レイチェルさまはまだ未成年ですので、お水にしてくれませんか?」
「ここでは水なんてものはない。これからも飲む機会が増えるだろうからいい練習だ。それと次に口を挟めばお前には消えてもらうぞ」
横柄な態度で自分より下を見下している。
変装のため平民に見えるだろうが、本来は上級貴族であるヴェルダンディにこのような口を利いたら、お家取り潰しに遭うだろう。
しかしわたしも擁護する気はないので後でいくらでも協力しよう。
数日間は楽しい人生を謳歌してください。
「さてうるさい小童も黙った。乾杯して飲もうではないか」
「あらあら、どうせならこのカジノで負けた場合にしてくれませんか? そちらの方が
お互いに楽しめるでしょ?」
「ほう、世慣れているな。そういう女は嫌いじゃない」
そう言って机の上にあるわたしの手を上からスリスリと触ってくる。
クラっとくるほどの気持ち悪さにもうわたしは決めてしまった。
彼の人生は明日の朝までにしてくれよう。
「今回やるのはルーレットという遊びだ」
回転盤が回り、しばらくして店の人がボールを回転盤に投げて一から三十六の数字のどれかのくぼみに落ちるのでその番号を予測するゲームだ。
銀貨百枚から金貨百枚まで掛けられるので、運を天に任せて一攫千金を目指すか、少しずつ稼ぐかするらしい。
お金は金貨十枚をクロートが用意してくれている。
現金のやり取りは退店時に行うので、代わりに白と赤の棒が入った箱を渡される。
小白棒は銀貨百枚、大白棒は銀貨千枚を表す。
小、中、大赤棒は金貨一、十、百を表す。
最初は初心者ということで配慮されて小白棒一つを全員が掛け金として出した。
「では始めるとしよう、回せ」
回転盤が回り始めて、次にボールが投げられた。
わたしは七番に掛けており、ボールが止まるのを待った。
最初に止まったのは七番だった。
「やったぁ!」
「ほう、最初から来るとは運がいいな。しょうがないまずは俺たちが飲もう」
わたし以外に七に掛けているものはいなかったので、他の四人が一斉にグラスに入ったワインを飲み干した。
掛けた額によってレートが変わり、今回は単数掛けだったので三十六個の白棒が手に入った。
銀貨三千六百枚、つまり金貨三枚と銀貨六百枚だ。
一瞬でこんなに来てしまい、金貨十枚だったらすぐに目標達成できそうだ。
「さて、夜は長い。まだまだ増やしたいだろう?」
「ええもちろん」
こんな美味しい金策があるとはなんて素敵なんだろう。
わたしはウキウキしながら次のお金を掛ける。
中赤棒を十一枚を取り出してわたしはほぼ全資金を掛け金として出そうとした。
ズクミゴも驚きの表情で固まっている。
「ちょっとレイチェルさま、こちらへいらしてください!」
わたしが手に持っている棒をテーブルに置こうとしたところで、ヴェルダンディから止められて、一度こっちに来るように言われた。
「ちょっとごめんなさい。少しだけ席を外してもいいかしら?」
わたしが席を立つ許可を尋ねると、放心が解けたようだ。
「まあしょうがねえ。予想以上に肝っ玉があるが命がいくつあっても足りねえな。今回だけはそこの小童を許してやる」
許可をもらったのでわたしは一度ヴェルダンディとクロートと内緒の話をすることになった。
少しばかりヴェルダンディが怒っているのは気のせいだろうか。
「流石に初っ端から全額出すなんて何を考えているのですか! 負けたらすっからかんですよ」
「大丈夫ですよ。わたくし勝つ自信ありますもの。もし負けてもまたお金を取りに帰ればいいですし」
わたしは名案でしょ、と得意げに語ったが、ヴェルダンディは頭を抱えている。
どうやら理解の外へといってしまったようだ。
「やっぱり何もわかってない! あいつらがすぐに帰すわけないでしょ。すぐにお金は後で返せばいいとか言って、気前よく貸したと見せかけて逃がさないつもりですよ。クロートもなんとか言ってやってくれ!」
「ヴェルダンディ、少し落ち着くなさい。姫さまなら大丈夫ですよ。お忘れですか、メルンの実の大当たりについてを」
メルンの実とはジョセフィーヌ領で取れる高級果実であり、わたしの城でも栽培しているものだ。
特定の環境でないとすぐ枯れてしまったりする変わった果物だ。
数がもともと少ないのに、さらにその果実には当たりと外れがあるというなんとも迷惑な代物らしい。
昔はよく護衛の隙を突いて食べにいったものだ。
外れの実はものすごく苦いらしいがわたしは当たりの実しか食べたことがない。
「また懐かしいな。マリアさまが選ぶとなぜか当たりしかでないから一緒に食べさせてもらったが、それと何か関係があるのか?」
「姫さまは神から愛されているのか幸運体質なのですよ。運が絡むものでしたら望むままの結果が現れるはずです」
ほうほう、とわたしは興味深い話を聞く。
どうやら一階は平民たち、二階は下級貴族用で、三階がVIPルームとなっているようだ。
「では是非ともお楽しみください。護衛の方々はここでお待ちいただけますか?」
「それは無理な相談です。レイチェルさまお一人で男性しかおられないような場所に連れて行くわけには参りません」
「かしこまりました。それではお二人とも付き添いを許します」
わたし一人だけで入れなんてこの支配人は馬鹿ではないだろうか?
完全にわたしをこの中の誰かに斡旋するつもりだったのだろう。
クロートがヴェルダンディを制しなければこの場で切り捨てられただろう。
おそらく平民と思われているので、中の貴族たちに始末してもらおうと考えているのだろう。
あまりにも浅はかである。
「レイチェルさまご入場」
大扉を開けるとそこでは中年の貴族たちがタバコをふかしながらこちらに注目する。
少し煙たいが、わたしの魔道具には空気清浄が自動的にされる魔道具をクロートから渡されているので匂いは特にない。
最初は数人しか見ていなかったがどんどんわたしの存在を伝え合って、遂には全員がこちらに目を向けた。
「わたくしはどの席へ向かえばいいですか?」
「こちらへ呼びたまえ」
中央の席で一際目立つ小太りの男がいた。
身なりも他の貴族と比べて良く、おそらくはここの経営をしている中級貴族だろう。
下卑た笑いはこちらの嫌悪感を強めるには十分であり、内心で最低の評価をつけるが今はカジノをすることが大事なため、わたしはにこやかな顔で近づいて行く。
「パラストカーティの新興貴族ハインツルンベーゲンの長女レイチェルと申します」
「ズクミゴだ、よろしくお嬢さん。ほうほう、近くでみると下級貴族とは思えないほどの美貌だ。王国院の学生かね? 」
「はい。ここならあまりお金がないわたしでもお金をいっぱい貰えると聞いたので、父に内緒で遊びに来ました」
「ほう……」
ズクミゴはわたしの胸から腰の方へとどんどん目線を下げていく。
鳥肌が立ちそうなのを必死で我慢するが、わたしよりヴェルダンディが堪えることができるかが心配だ。
わたしもこの気持ちの悪い視線を退けたいので、肝心のカジノの話題へと変える。
「そこのテーブルで遊ぶことができるのですか?」
「ああ、そうだ。わたし自ら教えてあげよう。おい、一人場所を空けろ」
五人掛けの席が満杯であり、おそらく一番立場が弱い男性が席をあける。
席をずっていき、わざわざこの男の隣を開けてくれた。
いい迷惑だ。
しかしわたしは表情を変えずに席に座ると、赤い色の飲み物が入ったグラスを置かれた。
どうみてもワインであり、わたしが学生であることを知ってそれを出すということは、邪な思惑を受け入れろということだろう。
ヴェルダンディもたまらず口を挟んだ。
「おいちょっとま……待ってください。レイチェルさまはまだ未成年ですので、お水にしてくれませんか?」
「ここでは水なんてものはない。これからも飲む機会が増えるだろうからいい練習だ。それと次に口を挟めばお前には消えてもらうぞ」
横柄な態度で自分より下を見下している。
変装のため平民に見えるだろうが、本来は上級貴族であるヴェルダンディにこのような口を利いたら、お家取り潰しに遭うだろう。
しかしわたしも擁護する気はないので後でいくらでも協力しよう。
数日間は楽しい人生を謳歌してください。
「さてうるさい小童も黙った。乾杯して飲もうではないか」
「あらあら、どうせならこのカジノで負けた場合にしてくれませんか? そちらの方が
お互いに楽しめるでしょ?」
「ほう、世慣れているな。そういう女は嫌いじゃない」
そう言って机の上にあるわたしの手を上からスリスリと触ってくる。
クラっとくるほどの気持ち悪さにもうわたしは決めてしまった。
彼の人生は明日の朝までにしてくれよう。
「今回やるのはルーレットという遊びだ」
回転盤が回り、しばらくして店の人がボールを回転盤に投げて一から三十六の数字のどれかのくぼみに落ちるのでその番号を予測するゲームだ。
銀貨百枚から金貨百枚まで掛けられるので、運を天に任せて一攫千金を目指すか、少しずつ稼ぐかするらしい。
お金は金貨十枚をクロートが用意してくれている。
現金のやり取りは退店時に行うので、代わりに白と赤の棒が入った箱を渡される。
小白棒は銀貨百枚、大白棒は銀貨千枚を表す。
小、中、大赤棒は金貨一、十、百を表す。
最初は初心者ということで配慮されて小白棒一つを全員が掛け金として出した。
「では始めるとしよう、回せ」
回転盤が回り始めて、次にボールが投げられた。
わたしは七番に掛けており、ボールが止まるのを待った。
最初に止まったのは七番だった。
「やったぁ!」
「ほう、最初から来るとは運がいいな。しょうがないまずは俺たちが飲もう」
わたし以外に七に掛けているものはいなかったので、他の四人が一斉にグラスに入ったワインを飲み干した。
掛けた額によってレートが変わり、今回は単数掛けだったので三十六個の白棒が手に入った。
銀貨三千六百枚、つまり金貨三枚と銀貨六百枚だ。
一瞬でこんなに来てしまい、金貨十枚だったらすぐに目標達成できそうだ。
「さて、夜は長い。まだまだ増やしたいだろう?」
「ええもちろん」
こんな美味しい金策があるとはなんて素敵なんだろう。
わたしはウキウキしながら次のお金を掛ける。
中赤棒を十一枚を取り出してわたしはほぼ全資金を掛け金として出そうとした。
ズクミゴも驚きの表情で固まっている。
「ちょっとレイチェルさま、こちらへいらしてください!」
わたしが手に持っている棒をテーブルに置こうとしたところで、ヴェルダンディから止められて、一度こっちに来るように言われた。
「ちょっとごめんなさい。少しだけ席を外してもいいかしら?」
わたしが席を立つ許可を尋ねると、放心が解けたようだ。
「まあしょうがねえ。予想以上に肝っ玉があるが命がいくつあっても足りねえな。今回だけはそこの小童を許してやる」
許可をもらったのでわたしは一度ヴェルダンディとクロートと内緒の話をすることになった。
少しばかりヴェルダンディが怒っているのは気のせいだろうか。
「流石に初っ端から全額出すなんて何を考えているのですか! 負けたらすっからかんですよ」
「大丈夫ですよ。わたくし勝つ自信ありますもの。もし負けてもまたお金を取りに帰ればいいですし」
わたしは名案でしょ、と得意げに語ったが、ヴェルダンディは頭を抱えている。
どうやら理解の外へといってしまったようだ。
「やっぱり何もわかってない! あいつらがすぐに帰すわけないでしょ。すぐにお金は後で返せばいいとか言って、気前よく貸したと見せかけて逃がさないつもりですよ。クロートもなんとか言ってやってくれ!」
「ヴェルダンディ、少し落ち着くなさい。姫さまなら大丈夫ですよ。お忘れですか、メルンの実の大当たりについてを」
メルンの実とはジョセフィーヌ領で取れる高級果実であり、わたしの城でも栽培しているものだ。
特定の環境でないとすぐ枯れてしまったりする変わった果物だ。
数がもともと少ないのに、さらにその果実には当たりと外れがあるというなんとも迷惑な代物らしい。
昔はよく護衛の隙を突いて食べにいったものだ。
外れの実はものすごく苦いらしいがわたしは当たりの実しか食べたことがない。
「また懐かしいな。マリアさまが選ぶとなぜか当たりしかでないから一緒に食べさせてもらったが、それと何か関係があるのか?」
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