悪役令嬢への未来を阻止〜〜人は彼女を女神と呼ぶ〜〜

まさかの

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第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!

シュティレンツの伝承

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 ステラにお願いしてリムミントを医務室へ運んでもらった。
 だが一番頼りにしていた彼女がいなくなってしまい、わたしはさっきまでは平然を装っていたが堰を切ったように震え始める。

「ど、どうしましょう、セルラン! このままじゃお金が足りないことがバレてしまいます
 」
「お、落ち着いてください! お金なら魔物を狩ったりすればすぐにお金が入ります! わたしがすぐにでもーー」
「ちょっと二人とも落ち着いてください! 魔物を狩っても全く足りませんよ! 二人とも五大貴族の血族ですのでお金に疎いのはわかります。ここは文官である僕が適任となりますので、まずは勝手に動かないでください」


 ……あら、やだ。下僕がかっこよくみえる。

 セルランもあまりお金に関してはほとんど考えたこともないので、わたしと似たような価値観だろう。
 リムミントがいない以上は下僕に任せるしかないことはセルランも癪ではありそうだが認めている。

「マリアさま、先ほどホーキンス先生がお金に関していい方法があると言っておりました。どうやら伝承についてのようですが、ホーキンス先生がそう言うのだから間違いないでしょう」

 ホーキンス先生に藁にもすがる思いで研究所へ訪れた。
 ちょうどレイナも清掃で来ており、わたしのやらかしたことについて話をきいていたようだった。

「マリアさま、今後は側近の話を聞く前に行動してはなりませんよ」
「はい……」

 レイナから小言も頂いたので、わたしはホーキンス先生に伝承について話を聞いてみる。

「次はシュティレンツの伝承ですが、やはり蒼の髪についての記述がありました」

 前見せてもらった伝承がまとめてある本にはシュティレンツについてのも書いてあった。
 わたしはそのページの最後にまとめられている言葉が目に入る。

「祈りを神へと捧げろ。神と共に発展するのが銀の領地シュティレンツなり。この記述は……もしかしてシュティレンツって銀が大量に取れるのですか?」


 銀の鉱山はかなり利益を生むと聞いたことがある。
 希少価値の高い銀であれば、財政的にかなり助かる部分も大きい。
 だがその答えにホーキンスは首を横に振る。

「それは違います。過去のどの情報を見てもシュティレンツで銀が取れたという話は一切ありません」

 ホーキンスの話にわたしは疑問が生じた。
 それだと銀の領地とはどういうことだろうか?
 下僕はわたしが分かってないことを察してくれた。

「マリアさま、シュティレンツはたしかに銀が取れる場所ではありません。しかし彼らをずっと石クズから金を作ろうとする研究に精を出しているではありませんか」


 そのような研究していましたかしら、と考えるとシュティレンツの専門分野を思い出した。


「あっ、錬金術!」


 そういえばそのような本質的なことがあったことを忘れていた。
 完全にわたしの中では鎧屋さんになっていたのだ。


「でもシュティレンツは財政的にあまりゆとりはありませんよね? 実は銀を作っているけど隠しているのですか?」
「そういうことは無いと思います。ですが考えられるのは銀を使って何かを行なったか、それとも銀に模した何かを作ったかの二択だと思います」


 まだまだ調査不足でそこまでわかっていないようだ。
 だがすぐに財政を回復させるのに貴金属は手っ取り早い。
 そうと決まれば行動するのみ。
 わたしたちで手分けしてシュティレンツの歴史本を読むことにした。
 ホーキンスからも万が一シュティレンツに行く場合には付いていくので呼んでほしいと言われ契約もあるため了承した。

 本の収集は下僕が行うため、わたしはまずは今日の予定であるレティアとの約束の場所へと向かった。
 二人っきりでゆっくりしたいと可愛い妹がお願いされたのでウキウキしながらバラ園へと入る。
 もうすでに準備されているのでわたしは椅子に座った。


「お待たせしてごめんなさい」
「いいえ、今日は来てくださりありがとうございます。お姉さまと二人っきりでお話がしたくて無理言ってしまいました。お体は大丈夫でしょうか?」
「ええ、可愛い妹の頼みなら少しくらい無茶しますわよ」
「まあ……」


 レティアが頬を赤らめて微笑んでくれる。
 可愛い顔を十分に堪能しながら、王国院内でのことや、流行や魔法祭のことを話した。
 今回のわたしのやらかしたことについては姉の威厳のためにも黙っている。
 アリアは一度飲んでいる紅茶を置いて少し真面目な話に入った。

「結局ガイアノスさまについては国王からも何も言われませんでしたね」
「お父さまが謝罪を要求しているらしいですが、競技で危険になるのは当たり前だとずっと同じ問答を繰り返しているそうです」


 お父さまの文官であるクロートから話を聞いているが、どうもあちらはシラを切るつもりらしい。
 国王も五大貴族を敵に回したくないはずなので、なぜそこまでガイアノスを守るのかが分からない。
 王位継承権で言えばもっと上もいるので別にガイアノスに固執する必要がないはずなのに。


「お姉さま、騎士祭も出場なさるのなら気をつけてくださいませ。もしお姉さまに何かあるようならわたくし……」


 レティアが悲しそうに目を伏せている。
 マンネルハイムでわたしに何度もトライードで斬りつける姿を目にしたからだろう。
 わたしは少しでもレティアを安心させるために笑顔で答えた。

「心配しなくても大丈夫です。次の騎士祭ではもっと鎧を増やす予定ですからたとえガイアノスが攻めてきても返り討ちにしてみせます」
「まあ、お姉さまならどうにかしてくれそうです」

 レティアも少しは不安を解消されたので笑ってくれている。
 だがそこで思いもよらない乱入者が入った。


「マリアさま、火急で申し訳ございません! 急ぎ報告があります」


 レイナがいつも見せないような慌てた声でバラ園へとやってきた。
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