63 / 259
第二章 騎士祭までに噂なんて吹き飛ばしちゃえ!
アリア視点2
しおりを挟む
わたしはすぐに護衛騎士を連れて魔術棟へ向かう。
マリアはまだ体調が優れないと侍従を通して連絡が来たので、今日は研究所ではなく実験場へと向かった。
合成魔法の実験を行うにはこういった結界があるところでないと危険である。
わたしはブレスレットを身に付けた。
二つの風の魔法を発動させ威力を相殺することによって絶妙なコントロールをする実験だ。
これが上手くいけば、わざわざ騎獣に乗らなくても空を飛ぶことができる。
二つの魔法を組み合わせて発動させると、目の前に小さな竜巻ができている。
わたしの意思でその風は方向を決められるのでわたしのお尻の下に潜り込ませると、フワッと浮いた。
成功したと思ったその時ビュッと空高く舞い上げられた。
「アリアさま!」
護衛騎士が叫んでいるのはわかるが、わたしは今の状況を理解できてない。
地面が遠く、放物線を描きながら最高点に達してすぐに重力に従ってわたしは落ちていく。
護衛騎士が急いでも間に合わない。
「ひいいい」
わたしの目は落ち行く地面を映している。
この高さから落ちれば命を落とすやもしれないし、運が良くて体はズタボロになるだろう。
……マリア姉さま助けて!
わたしは心の中で助けを呼ぶと同時に誰かがわたしを抱き抱えてくれた感触に気付いた。
大きな腕の中に体が支えられており、それは男性の腕であるとすぐには分からなかった。
黄黒竜にまたがってわたしを助けたのは見たことのある顔だ。
「せっかく側近たちから逃げて昼寝をしていたのに何をしているんだお前?」
「ウィリアノスさま!」
わたしはやっと焦点の結んだ目でしっかり視認した。
マリアさまの婚約者であり、王族であるウィリアノスがわたしを助けてくれたのだ。
あまりにも急な展開に畏れ多くなってしまい、すぐにその腕から抜け出そうとしたがウィリアノスの力が強く抜け出せない。
「おい、暴れるな! 死にたくないなら大人しくしていろ!」
ウィリアノスの一喝にビクッと肩が震えた。
王族だからこうべを垂れないといけないと思い体が無意識に反応したが、今は空の上のため勝手な行動は迷惑をかけてしまう。
大人しくウィリアノスが地面に着くまで大人しくしていることにした。
黄黒竜が降りて、ウィリアノスはわたしを抱えたまま飛び降りた。
「きゃっ!」
軽い衝撃に声が漏れてしまった。
ウィリアノスがわたしをゆっくり降ろす。
外傷もなく無事だったためわたしはお礼を告げる。
「ウィリアノスさま、危ないところを助けてくださりありがとうございます」
「全くだ。一体何をしていたんだ?」
「実はーー」
わたしは魔法の実験で空飛ぶ魔法の開発をしていたことを話した。
呆れるかと思ったら、ウィリアノスは子供のように笑い始めた。
「空を飛ぼうとして吹き飛ばされた? くくく、はははは」
「そ、そんなに笑わないでください! 」
「いや、だってお前、普通自分で実験するか? ははは」
まだ笑いが止まらないようでお腹を抱えている。
最初はお礼の気持ちで一杯だったがここまで笑われるとたとえ王族でも苛立ってくる。
やっと満足したのかウィリアノスもやっと笑いが止まった。
「お前、魔法が好きなのか? 他にも面白いものはないのか?」
「ええ、ありますけど。たとえば水の性質を変えて甘くするものや土の硬さを変えるものとかでしたら」
「変わった物を作るんだな。お前、名前はなんというんだ?」
ウィリアノスと挨拶をしたことはあったが、ほとんど話す機会もなかったので忘れてもしょうがない。
わたしは再度名乗り直す。
「アリア・シュトラレーセと申します」
「シュトラレーセ? ああマリアと一緒に表彰を受けていた子か」
「ええ、マリア姉さまのおかげであの場に立てられましたので感謝してもしきれません」
わたしは素直な気持ちを話すとウィリアノスが怪訝な顔をした。
どうしてそのような顔をするのかわからない。
わたしはどうしたのかと聞いてみた。
「姉と呼ぶってことはシスターズか?また古い制度だな。一世代前に流行ったものらしいぞ?」
「そうなのですか? なぜ今では廃れたのですか?」
「元々は縁談を紹介してもらうための制度だったからだ。最初は姉が妹の結婚相手を紹介する代わりに紹介料をもらうものだったが、一部の姉と呼ばれる者が年を召した上級貴族に斡旋し始めて問題が起きたんだ。それからはシスターズ自体を敬遠するようになって今では名前だけ知っている者しかいないんだよ」
わたしはそのような背景があるとは知らず勉強になった。
マリアの場合はお金の心配はほとんどないためそのような心配はいらないだろう。
そう思っているとわたしの頭に大きな手が乗せられた。
「あまり無茶なことをしないようにな。それとこれは預かっておく」
ウィリアノスはいつのまにかわたしの腕からブレスレットを外していた。
わたしは返してもらおうと手を伸ばそうとしたが、護衛騎士によって止められる。
……そうだ、王族の言葉に逆らってはいけないんだった。
わたしは気持ちを落ち着かせて我慢する。
またマリアさまの件の二の舞になってはいけないのだ。
上位者に逆らうことはこの国では許されていない。
少しばかり残念な気持ちになったため、目線が下に下がる。
「明日またここに俺も来るからその時返す。危険なことなら俺がいた方が対処もできるだろう。ただしお前一人で行うことは許さん。マリアの研究所ならそれを許してもいいが、そこの護衛騎士では守りきれないだろう。だからマリアがいない時は俺といる時に実験しろ。これは王族からの命令だ。その代わりに俺もいろいろ知識を貸してやる。これでも魔道具の製作は得意なんだ」
どうして王族であるウィリアノスが協力してくれるのかわからないが、少しでも危険を減らせて魔力源が手に入るのは助かる。
……もしかしたらマリア姉さまがわたしのことを気にかけてウィリアノスさまにお願いしてくれたのかもしれない。
マリアの先読みの力に驚きつつ、何度も配慮してくれるその姿に感激する。
いろいろと自己完結したので笑顔でウィリアノスにお礼をいう。
「分かりました。では明日はよろしくお願いします」
「ああ、まどっ子」
ふえ、と声が漏れてしまった。
おそらく魔道具好きの子という意味で略したのだろうが、それはひどすぎではなかろうか。
だが流石に王族にそのようなことは言えない。
少しばかりわたしはウィリアノスの評価を下げるのだった。
マリアはまだ体調が優れないと侍従を通して連絡が来たので、今日は研究所ではなく実験場へと向かった。
合成魔法の実験を行うにはこういった結界があるところでないと危険である。
わたしはブレスレットを身に付けた。
二つの風の魔法を発動させ威力を相殺することによって絶妙なコントロールをする実験だ。
これが上手くいけば、わざわざ騎獣に乗らなくても空を飛ぶことができる。
二つの魔法を組み合わせて発動させると、目の前に小さな竜巻ができている。
わたしの意思でその風は方向を決められるのでわたしのお尻の下に潜り込ませると、フワッと浮いた。
成功したと思ったその時ビュッと空高く舞い上げられた。
「アリアさま!」
護衛騎士が叫んでいるのはわかるが、わたしは今の状況を理解できてない。
地面が遠く、放物線を描きながら最高点に達してすぐに重力に従ってわたしは落ちていく。
護衛騎士が急いでも間に合わない。
「ひいいい」
わたしの目は落ち行く地面を映している。
この高さから落ちれば命を落とすやもしれないし、運が良くて体はズタボロになるだろう。
……マリア姉さま助けて!
わたしは心の中で助けを呼ぶと同時に誰かがわたしを抱き抱えてくれた感触に気付いた。
大きな腕の中に体が支えられており、それは男性の腕であるとすぐには分からなかった。
黄黒竜にまたがってわたしを助けたのは見たことのある顔だ。
「せっかく側近たちから逃げて昼寝をしていたのに何をしているんだお前?」
「ウィリアノスさま!」
わたしはやっと焦点の結んだ目でしっかり視認した。
マリアさまの婚約者であり、王族であるウィリアノスがわたしを助けてくれたのだ。
あまりにも急な展開に畏れ多くなってしまい、すぐにその腕から抜け出そうとしたがウィリアノスの力が強く抜け出せない。
「おい、暴れるな! 死にたくないなら大人しくしていろ!」
ウィリアノスの一喝にビクッと肩が震えた。
王族だからこうべを垂れないといけないと思い体が無意識に反応したが、今は空の上のため勝手な行動は迷惑をかけてしまう。
大人しくウィリアノスが地面に着くまで大人しくしていることにした。
黄黒竜が降りて、ウィリアノスはわたしを抱えたまま飛び降りた。
「きゃっ!」
軽い衝撃に声が漏れてしまった。
ウィリアノスがわたしをゆっくり降ろす。
外傷もなく無事だったためわたしはお礼を告げる。
「ウィリアノスさま、危ないところを助けてくださりありがとうございます」
「全くだ。一体何をしていたんだ?」
「実はーー」
わたしは魔法の実験で空飛ぶ魔法の開発をしていたことを話した。
呆れるかと思ったら、ウィリアノスは子供のように笑い始めた。
「空を飛ぼうとして吹き飛ばされた? くくく、はははは」
「そ、そんなに笑わないでください! 」
「いや、だってお前、普通自分で実験するか? ははは」
まだ笑いが止まらないようでお腹を抱えている。
最初はお礼の気持ちで一杯だったがここまで笑われるとたとえ王族でも苛立ってくる。
やっと満足したのかウィリアノスもやっと笑いが止まった。
「お前、魔法が好きなのか? 他にも面白いものはないのか?」
「ええ、ありますけど。たとえば水の性質を変えて甘くするものや土の硬さを変えるものとかでしたら」
「変わった物を作るんだな。お前、名前はなんというんだ?」
ウィリアノスと挨拶をしたことはあったが、ほとんど話す機会もなかったので忘れてもしょうがない。
わたしは再度名乗り直す。
「アリア・シュトラレーセと申します」
「シュトラレーセ? ああマリアと一緒に表彰を受けていた子か」
「ええ、マリア姉さまのおかげであの場に立てられましたので感謝してもしきれません」
わたしは素直な気持ちを話すとウィリアノスが怪訝な顔をした。
どうしてそのような顔をするのかわからない。
わたしはどうしたのかと聞いてみた。
「姉と呼ぶってことはシスターズか?また古い制度だな。一世代前に流行ったものらしいぞ?」
「そうなのですか? なぜ今では廃れたのですか?」
「元々は縁談を紹介してもらうための制度だったからだ。最初は姉が妹の結婚相手を紹介する代わりに紹介料をもらうものだったが、一部の姉と呼ばれる者が年を召した上級貴族に斡旋し始めて問題が起きたんだ。それからはシスターズ自体を敬遠するようになって今では名前だけ知っている者しかいないんだよ」
わたしはそのような背景があるとは知らず勉強になった。
マリアの場合はお金の心配はほとんどないためそのような心配はいらないだろう。
そう思っているとわたしの頭に大きな手が乗せられた。
「あまり無茶なことをしないようにな。それとこれは預かっておく」
ウィリアノスはいつのまにかわたしの腕からブレスレットを外していた。
わたしは返してもらおうと手を伸ばそうとしたが、護衛騎士によって止められる。
……そうだ、王族の言葉に逆らってはいけないんだった。
わたしは気持ちを落ち着かせて我慢する。
またマリアさまの件の二の舞になってはいけないのだ。
上位者に逆らうことはこの国では許されていない。
少しばかり残念な気持ちになったため、目線が下に下がる。
「明日またここに俺も来るからその時返す。危険なことなら俺がいた方が対処もできるだろう。ただしお前一人で行うことは許さん。マリアの研究所ならそれを許してもいいが、そこの護衛騎士では守りきれないだろう。だからマリアがいない時は俺といる時に実験しろ。これは王族からの命令だ。その代わりに俺もいろいろ知識を貸してやる。これでも魔道具の製作は得意なんだ」
どうして王族であるウィリアノスが協力してくれるのかわからないが、少しでも危険を減らせて魔力源が手に入るのは助かる。
……もしかしたらマリア姉さまがわたしのことを気にかけてウィリアノスさまにお願いしてくれたのかもしれない。
マリアの先読みの力に驚きつつ、何度も配慮してくれるその姿に感激する。
いろいろと自己完結したので笑顔でウィリアノスにお礼をいう。
「分かりました。では明日はよろしくお願いします」
「ああ、まどっ子」
ふえ、と声が漏れてしまった。
おそらく魔道具好きの子という意味で略したのだろうが、それはひどすぎではなかろうか。
だが流石に王族にそのようなことは言えない。
少しばかりわたしはウィリアノスの評価を下げるのだった。
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
私の婚約者は6人目の攻略対象者でした
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。
すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。
そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。
確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。
って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?
ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。
そんなクラウディアが幸せになる話。
※本編完結済※番外編更新中
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる