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第一章 魔法祭で負けてたまるものですか

パラストカーティのその後

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 魔法祭当日となり五大貴族の領主と各領土の領主が次々に集まってくる。
 そして大勢の貴族が来るということは、王都の方でもお祭のようになっていた。
 マンネルハイムは貴族の競技ではあるが、映像の魔法具で一般の平民たちにも公開している。
 迫力ある魔法の戦いは平民では絶対行えないものだからか、王都の熱狂は激しいそうだ。


 魔法祭は全三日で行われる。
 三日目は披露を労う祭のためにあるだけなので、競技や研究結果の結果発表がある二日目がピークなのだ。
 各当主や領主は国王がいる城でこれまでの領地ごとに起きたことの情報の共有化をしている。
 わたしは両親が来るまでの間に、訓練場の外で自領の研究所のために立てたテントの下で待機している。
 わたしとアリアの共同研究で作ったものだ。
 ほとんどアリアや側近たちの知恵であるが、お情けとしてわたしの魔力を込めたので
 わたしの研究結果でもある。
 わたしとレティア、アリアは仲良く長椅子の上で座って見物人を待っていた。
 レティアもアリアも初めての祭りでかなりそわそわしている。

「たくさんの貴族たちが来られますね」
「はい。少し緊張してきました。でもわたしなんかの作品で来てくれる人がいるのかが不安です」


 アリアは少しばかり緊張で不安が大きくなっているようだ。
 だが心配は無用だと思っている。
 なぜならわたしが出品しているのだから。
 まずは上位者の出品物を見に来るのが貴族としては当たり前。

「すぐに来ますわよ。まだマンネルハイムまで時間があるから人も少ないですし」
「こ、これで少ないのですか!」


 アリアは驚いているが、各領土の貴族たちが集まるのだ。
 まだまだ歩くスペースが大きく空いているので、お昼頃にはこれの比ではない人混みだ。
 この朝の時間でやってくる貴族はたいがいがこちらが懇意している貴族だろう。
 そう考えていると、すぐにやってくる一団がいた。
 アビ・パラストカーティ夫妻とメルオープが護衛を連れてやってきた。
 全員がどこか疲れた顔をしながら挨拶を交わした。


「よく来てくれました、アビ・パラストカーティ」
「マリアさまもその後デビルキングに襲われながらも、伝承の蒼い髪の力で退けたとお聞きしました。あの奇跡といい、我々はマリアさまの存在をこれでもかと感じさせられています」
「ふふ、わたくしの力だけではありません。それにしてもかなりお疲れのようですが大丈夫ですか?」
「これはお見苦しい姿をお見せしました。馬車の中で領地でどのような変化があったかの報告を聞いておりましたので、少しばかり寝不足が続いておりました。マリアさまにこの報告をするためと思えば頑張れました。かなり我が領土としても朗報といえることばかりのことが起きておりましたゆえ」


 わたしはなるほど、と納得した。
 あの踊りの影響で荒地から緑が生まれてきた。
 やはりあの場所の限りではなかったようだ。


「あの……わたしも聞いていいのでしょうか?」


 アリアが申し訳なさそうに聞いてくる。
 レティアにも詳細は伝えているが、アリアは他領のため何も情報が伝わっていない。
 わたしは一度リムミントの方を見て判断を仰ぐとこちらに耳打ちで問題ないと言うので同席を許可した。


「それでどのような変化がありましたか?」
「はい、荒地では緑が生まれ、人が営んでいる場所では育てている作物が一瞬で食べごろになったそうです。少しばかり大混乱が起きていますゆえ、文官たちにはすぐ連絡を入れるよう働き回っております。ですが滅びかけていた領地を見ているしかなかった時と比べて全員が嬉しそうに動き回っております。パラストカーティにも春の訪れを感じてやまないのもマリアさまのおかげです」
「そう言ってくださると嬉しいです。わたくしのわがままであの土地に変化をもたらしてしまったので。少しでも良い方向へと思わずにはいられません」


 パラストカーティの報告で少しはホッとした。
 環境変化は劇薬であるとクロートからも言われていた。
 そのため、パラストカーティの動向だけはしっかり見ておかないといけないと。
 この分ならしばらくは大丈夫だろう。
 次はメルオープがこちらに跪いた。

「マリアさま、我々パラストカーティはこれまで辛酸を舐めてきました。しかし、そんな我らに手を差し伸べてきた方はマリアさまただ一人。感謝してもしきれません。どうか次代の領主であるわたしめの剣をお受け取りください」


 メルオープはわたしへの絶対服従として自身の短剣を差し出してきた。
 忠誠の儀の簡易ではあるが、わたしもその期待に応えるため短剣を受け取った。

「確かに受け取りました。あなたに水の神の加護が賜らんことを。それでは最初の命令を与えます。マンネルハイムでわたくしに勝利を届けなさい」
「確かに拝命しました。わたしが先頭でこの力の限りを尽くしましょう」


 パラストカーティの一団との話が終わり、わたしもゆっくり椅子に座りなおした。
 そこでレティアとアリアが目をキラキラさせてこちらを見ていることに気付いた。
 わたしはこの無垢な目にたじろいでしまった。


 ……なにごと!?

「お姉さま、一緒に住んでいた時とは別人のようです。王国院に来てから家族なのに胸がドキドキします」
「わたしもあのパラストカーティの領主と一切物怖じせずに話をしているマリアさまはものすごくカッコいいです」


 わたしは照れくさくなってきたので扇子で顔を隠した。
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