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第一章 魔法祭で負けてたまるものですか

デビルキングと魔力暴走

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怒りで先ほどの怯えもなくなり、わたしはデビルキングを睨む。
わたしに害を為すのなら、誰であろうと許さない。
体から抑えられないほどの力を感じた。
このなんともいえない絶対的な力をあいつに放ちたい。


「マリアさま! 落ち着いてください。今のままでは魔力が暴走してしまいます!」


セルランがわたしを必死に止めようとしてくる。
それでわたしもハッとなったがもう止めることができない。
必死に魔力を抑え込もうとするが、魔法の制御を練習中のわたしではまだ扱いきれない。


「だめっ、もう抑えられない」


このままではこの魔力で自爆してしまう。
今ここにいる者で一番魔力の高い者はセルランだが、セルランでさえ今のわたしに同調で鎮めることができない。
それならもうやることは一つしかない。

「セルラン、あの魔物にわたくしの魔力をぶつけます」
「き、危険です! あの魔物の前にマリアさまを連れて行くなどーー」
「そうしなければわたくしの魔力でここにいる全員を巻き添えにしてしまうだけです」


わたしの言葉に全員が口をつぐむ。
この魔力をすべて使い切らないとこの魔力から助かるすべはない。

「ごめんなさい、セルラン。 あなたが頼りなの」
「……わかりました。しっかりお掴まりください」


ステラも覚悟を決めた。
先に今戦っている者たちの元へと向かい、注意を引きつけるのだ。
セルランはさらなる上空へと上り、デビルキングの真上に着いた。
わたしは当主候補生が習う自身が持つ一番強力な魔法を唱えた。


「水の神 オーツェガットは踊り手なり。大海に奇跡を作り給いて、大海に祈りを捧げるものなり。我は生命を与えよう。我は王なり。全てを導こう。己が運命を進むために」
「各位、マリアさまの魔法が向かう。退避しろ!」


セルランの呼びかけにより全員が急いで離れていった。
わたしはそれを確認して全身から溢れ出る魔力を解き放つ。
右手を上に上げて大規模な大水を出そうとしたが、それは予期しないものが出てきた。空に二対のつるぎと人間の何倍もある筋肉隆々な水でできた大男を召喚した。
水色の強大な剣を軽々しく持ち上げて、デビルキングへと向かっていく。


「あれはなんですか、マリアさま? あの詠唱でこのようなものが出るのですか?」
「わかりません。わたしもただ大水を出そうとしただけですから。でもこれならいける気がします」


大男はデビルキングに二本の大剣を振り落とした。
デビルキングはそれを止めようと両手を前に出したが、それを見事に切断した。

「ギャアアア!」


デビルキングは痛みで呻くが、切られた腕がすぐに元に戻った。
後ろに生えている尻尾で大男を叩く。
かなりの威力があり、大男も後ろに弾き飛ばされた。
その瞬間わたしの魔力が吸い込まれていく感触があった。
わたしがクラっとなるとセルランがそれに気付く。

「マリアさま、大丈夫ですか! 」
「うん、でも急に魔力を吸われて力が抜けていく」


わたしは急激な魔力の消費に体がついていってない。
だがここで弱音をはいている場合ではない。
魔力を一番消費していない自分が頑張らずにどうするのか。


わたしはさらに体に力を入れると、魔力が流れていく感触があった。
それに応えるように大男も再度大剣を振りまわす。
お互いに何回も攻撃を当てながら、互角の戦いを繰り広げた。
あまりにも強烈な戦いに誰もが戦いに参加できない。
デビルキングもこのままでは勝てないと思ったのか全身から黒いオーラを出して全身を染めた。


「あれは、強化の魔法です。あれを使うということはデビルキングも限界が近い証拠。畳み掛けるしかありません」

わたしも同じ考えである。
魔力をたくさん送り大男を巨大化させていく。
それに比例して二対の大剣も大きくなり、大上段で構えた。
デビルキングは巨体から想像もできない素早さで大男との距離を縮めた。
拳が大男を貫通する。
それと同時に大男はデビルキングを一刀両断とした。

「キシェ?」

デビルキングは真っ二つになった事実に気付き、絶命して大地へと落ちていく。
だがわたしはそれどころではなかった。

「姫さま! 大丈夫ですか!」


ステラの言葉でセルランはわたしの状態に気付いた。
わたしは胸を押さえて汗をかきながら必死に魔力を止めようとする。
だがどうにもならない。
さっきまでは高揚感があったが、今では苦しみしかない。
体が内側から攻撃されているような感じだ。
そのせいで気分もひどく悪い。


「魔力の暴走が始まった。マリアさま、気を確かに持ってください! 」


セルランの言葉が微かに聞こえる。
だが自分の魔力を飛び出さないようにするだけで精一杯だ。


……このままじゃ、全員を殺してしまう。


わたしは一度降ろして逃げるように伝えようとしたが痛みで声も出せない。
どうしようもないのにどうにもできない。
側近たち全員がどうしようもできずにただ空へと浮かんでおくしかできない。
このままわたしを死なせてしまったら、この子たちも後を追うしかなくなる。

……レティアごめんなさい。ヴェルダンディーー

わたしは可愛い妹と助けることができなくなった騎士を思い浮かべながら、せき止めていた魔力を放出してしまう。
その時、わたしの肩に温もりがきた。
すると抱き抱えられたのか浮遊感がある。

「間に合ったようですね」

体から魔力を放出してしまい、側近を巻き添えにして魔力を暴走させたかと思ったがそうはならなかった。
体が楽になり、やっと周りを見る余裕ができた。
そして抱きかかえていたのはクロートだった。
メガネ越しからもわかる安堵の表情を浮かべている。
どうやらギリギリのところでクロートが同調を間に合わせてくれたようだ。

「わたしたちが戦っていることに気付いたのですか?」
「弟に通信の魔道具を渡していたのですよ。それで間に合うことができました。本当にご無事でよかった」


下僕が事前に助けを呼んでいたとは思いもしなかった。
だがおかげで命拾いした。
わたしもホッとしたのか急に睡魔が襲ってきた。


「かなりの魔力を一度に使ったのです。さぞ体に負担があったでしょ。今はお休みください」
「ええ、ヴェルダンディのこともよろ……しく」
「ええ、わたしの愛……い………さま」


クロートの最後が聞き取れないまま、わたしはゆっくり睡魔に身をゆだねた。

……どうかヴェルダンディを
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