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22. 大丈夫か優子!? 前編
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6月13日(水)8時14分。
朝練を終えたノリ、光二、優子、そして朝練のない吹奏楽部のなーちゃんがSHRが始まるまでいつものように談笑を始めた。
「今日って数学の小テストあるんだったよな?どうしよ、なんで分数に文字混ぜるんだよ、一生使わないだろそんなの。ふざけんなよ」
小学生の頃は算数が好きだった光二は、中学の数学には苦手意識があり、1人で騒いでいる。
「怒ったってしょうがないだろ、テストだろうと何だろうと来るものは来るんだから」
ノリは相変わらず落ち着いている。数学が苦手ではないからなのか、それとも元来の性格なのか。
「ノリは数学得意だからそう言えるんだ。俺にとっての数学は、お前にとってのドリアンだ。急にドリアンが迫ってきたら怒り心頭だろ?」
「いつにも増して意味わからんな光二は」
「もう、2人とも大人になりなよ」
なーちゃんが言う。一見いつもと変わらぬ日常だが、本来であればこんな時は優子が真っ先に突っ込むのが通例なのだ。優子は元気がなさそうに机に突っ伏している。一瞬上がったその顔は、疲労と悲壮感にあふれている。
「おい、どうしたんだよ優子。大丈夫?」
ノリが心配そうに聞く。
「うん、大丈夫よ。ちょっと疲れただけ。大丈夫大丈夫」
優子が元気でないことは珍しい。小学校時代も全く風邪すら引いたことがなく、熱があるのに無理矢理学校に行ったということもなく、本人曰く「ナチュラルに」皆勤賞をとったほどだ。
授業中もいつもの様子ではなかった。先生に積極的に質問したり、誰かに突っ込みを入れたり、とにかく明るいのが彼女の取り柄なのだが、今日はそれが全くない。ノリは光二にこっそり話した。
「おい光二、優子どうしたんだよ、何か知ってるか?あいつ顔死んでるぜ…」
「だよなあ、様子が変だ」
2人は心配そうに優子を眺める。もはや話しかけられるような雰囲気ではない。黒いオーラが見えそうだ。もしかすると失恋なのかもしれない。身内に不幸があった可能性もある。様々な憶測が光二とのノリ脳内に飛び交う。
(ガンッ バタッ)
ものすごい物音がした。なんと優子が椅子と共に倒れているではないか。クラスメートが優子のもとに集まる。
「おい!優子!大丈夫か!?優子!」
ノリが呼びかけるも反応がない。こんな時に頼りになるはずの倉橋先生はオタオタして何をしたらいいか分からない様子だ。なーちゃんはこいつに頼っても仕方ないと確信し、
「光二!職員室行って救急車呼んで!光二が電話して!先生なんかこんな時役に立たないから!」
光二に指示をした。光二は猛スピードで廊下を走る。
「こら、君、何をしてるんだ、止まりなさい、しかも授業中じゃないか!」
「うるせえ、どけえええ!」
光二は目の前にいる先生を突き飛ばし、職員室に向かった。
「すいませえええん!電話借ります!」
光二は大声で叫んで職員室に飛び込んだ。
「何ですか急に!クラスと名前と要件をちゃんと言いなさい!」
「うるせえそれどころじゃねえんだよ!友達が倒れてんだ!」
「それだったら教室にいるせんせ…」
光二は3年生の学年主任から電話を奪い、119番通報をした。
「もしもし、生徒が一人倒れてるんです、すぐ来てください!1階の教室です!」
「分かりました、すぐに行きます。電話番号から場所は特定できました。5分ほどお待ちください」
「ふう。なんとかなりそうかな」
すると、職員室にいたバスケ部顧問の中木先生が光二に向かってきた。
「おい大森、何があったんだよ」
「いや、教室で一人生徒が倒れたんですよ。担任もオタオタしてるし、俺が行くしかないと思って」
「言ってくれれば…」
「お前らなんて頼りになんねえんだよ!生徒が倒れてんのに何もしねえで!」
光二の怒号が職員室に響いた。
(後編へ続く)
朝練を終えたノリ、光二、優子、そして朝練のない吹奏楽部のなーちゃんがSHRが始まるまでいつものように談笑を始めた。
「今日って数学の小テストあるんだったよな?どうしよ、なんで分数に文字混ぜるんだよ、一生使わないだろそんなの。ふざけんなよ」
小学生の頃は算数が好きだった光二は、中学の数学には苦手意識があり、1人で騒いでいる。
「怒ったってしょうがないだろ、テストだろうと何だろうと来るものは来るんだから」
ノリは相変わらず落ち着いている。数学が苦手ではないからなのか、それとも元来の性格なのか。
「ノリは数学得意だからそう言えるんだ。俺にとっての数学は、お前にとってのドリアンだ。急にドリアンが迫ってきたら怒り心頭だろ?」
「いつにも増して意味わからんな光二は」
「もう、2人とも大人になりなよ」
なーちゃんが言う。一見いつもと変わらぬ日常だが、本来であればこんな時は優子が真っ先に突っ込むのが通例なのだ。優子は元気がなさそうに机に突っ伏している。一瞬上がったその顔は、疲労と悲壮感にあふれている。
「おい、どうしたんだよ優子。大丈夫?」
ノリが心配そうに聞く。
「うん、大丈夫よ。ちょっと疲れただけ。大丈夫大丈夫」
優子が元気でないことは珍しい。小学校時代も全く風邪すら引いたことがなく、熱があるのに無理矢理学校に行ったということもなく、本人曰く「ナチュラルに」皆勤賞をとったほどだ。
授業中もいつもの様子ではなかった。先生に積極的に質問したり、誰かに突っ込みを入れたり、とにかく明るいのが彼女の取り柄なのだが、今日はそれが全くない。ノリは光二にこっそり話した。
「おい光二、優子どうしたんだよ、何か知ってるか?あいつ顔死んでるぜ…」
「だよなあ、様子が変だ」
2人は心配そうに優子を眺める。もはや話しかけられるような雰囲気ではない。黒いオーラが見えそうだ。もしかすると失恋なのかもしれない。身内に不幸があった可能性もある。様々な憶測が光二とのノリ脳内に飛び交う。
(ガンッ バタッ)
ものすごい物音がした。なんと優子が椅子と共に倒れているではないか。クラスメートが優子のもとに集まる。
「おい!優子!大丈夫か!?優子!」
ノリが呼びかけるも反応がない。こんな時に頼りになるはずの倉橋先生はオタオタして何をしたらいいか分からない様子だ。なーちゃんはこいつに頼っても仕方ないと確信し、
「光二!職員室行って救急車呼んで!光二が電話して!先生なんかこんな時役に立たないから!」
光二に指示をした。光二は猛スピードで廊下を走る。
「こら、君、何をしてるんだ、止まりなさい、しかも授業中じゃないか!」
「うるせえ、どけえええ!」
光二は目の前にいる先生を突き飛ばし、職員室に向かった。
「すいませえええん!電話借ります!」
光二は大声で叫んで職員室に飛び込んだ。
「何ですか急に!クラスと名前と要件をちゃんと言いなさい!」
「うるせえそれどころじゃねえんだよ!友達が倒れてんだ!」
「それだったら教室にいるせんせ…」
光二は3年生の学年主任から電話を奪い、119番通報をした。
「もしもし、生徒が一人倒れてるんです、すぐ来てください!1階の教室です!」
「分かりました、すぐに行きます。電話番号から場所は特定できました。5分ほどお待ちください」
「ふう。なんとかなりそうかな」
すると、職員室にいたバスケ部顧問の中木先生が光二に向かってきた。
「おい大森、何があったんだよ」
「いや、教室で一人生徒が倒れたんですよ。担任もオタオタしてるし、俺が行くしかないと思って」
「言ってくれれば…」
「お前らなんて頼りになんねえんだよ!生徒が倒れてんのに何もしねえで!」
光二の怒号が職員室に響いた。
(後編へ続く)
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