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12. 野球部の坊主頭

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2018年5月7日(月)。

長かったゴールデンウイークも終わり、再び授業が始まる。ほとんどの生徒が、月曜日にも関わらず疲弊した顔をしている。原因は部活だ。
大半の生徒たちにとって、小学生だった頃は週末は休むためにあった。市内のジュニアスポーツチームの間では日曜日は休みにしようというアグリーメントがあり、スポーツをやっている子でも日曜日は心と体を休め家族とともに時間を過ごすことができたのだ。
しかし、中学校の部活ではその限りではなく、休日はバンバン練習を入れる。ほぼタダ働きなのに、教師もよくやるもんだ。
そんな中に突然飛び込んだのだから、疲れて当然である。ましてや中学校という新しい社会に飛び込み、1ヶ月で精神的に否定してる状態。ヘロヘロになるのも無理はない。

ノリはいつものようにショートホームルームが始まるよりも少し前に学校へ到着した。
額には少し汗がにじむ。もう初夏だ。朝でも日によっては暑いのだ。
ノリは、数人の髪型が変わっているのに気が付いた。男子5人が丸坊主になっている。
ノリと幼稚園からの幼馴染で、家も近所である牧原俊(まきはら・しゅん)も、突如丸刈りになっていたうちの1人だ。

「お、俊、どうしたんだよその髪型。この前はもっと長かったじゃないか」

ノリは不思議そうに俊に尋ねた。

「おお、ノリ。ゴールデンウイークの初日の部活でさ、練習前に1年生全員先生に丸刈りにさせられたんだよ。『野球部は全員丸刈りというルールがあります』ってさ」

ノリは驚きの表情を隠せなかった。
30年ほど前、昭和の時代に同じようなことがほとんど全ての高校の野球部で起きていたのは知っているが、まさか平成も終わろうとしているこのご時世にまだそんなことをしている学校があったとは。

「なんで野球部は丸刈りって決まってんだろな。誰か理由説明できるやついんのかよ」

突然横から現れた光二。

「俺丸坊主なんか絶対嫌だぜ。バスケやっててよかった」

確かに、野球部が全員坊主というのは見慣れた光景かもしれない。しかし、ノリは理由を考えてみても、しっくりくるものが思い浮かばなかった。

ノリは帰宅後、父親に話を聞いてみることにした。ノリの父は小3から高3まで野球部に所属しており、ずっと丸刈りだったそうだ。

「父さん、なんで野球部は全員丸刈りなの?」

「おー、そういえばみんなそうだよな。父さんの時もそうだった。一度先生に聞いてみたことがあったんだけども、『野球部は丸刈りがルールだから。気に入らないならチームを出て行け』って言われたなぁ。今も明確な理由は誰も教えてくれない。おそらく誰もわかってないんじゃないか?」

昔ながらの風習が現在も理由なく残り、肝心の中身がない、まったく意味のない儀式になっている。日本によくある現象だが、その人の容姿まで強制されるのは如何なものか。
ノリは人ごとにもかかわらず、ぶつけようのない憤りを感じていた。
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