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10. 輪に入らない美女
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部活が終わり、帰路に就くノリと光二。
「いやあ、あんな嫌な先輩って小説の中だけの話だと思ってたけど、実在するんだな」
光二が暗い顔で呟く。
「まああの人たちそんなに上手じゃないし、ライバルですらないから。そのうち黙るさ。それに…」
ノリが何か言いかけたところで、突然黙ってしまった。ノリは前方を見つめている。すっかり葉っぱだらけになってしまった桜の木の向こうに、1人で自転車を押す長身の女子がいた。
「あの子、同じクラスの林みなみちゃんじゃないか?めちゃくちゃ美人の子」
ノリが言う。
「おおおお、ほんとだ、あんなに美人なのに1人なんだな、誰か友達と一緒に帰りゃいいのに。あの子クラスでも大人しいよな。何か秘密がありそうだ」
自然とノリと光二の歩みは速くなる。学校一の美女と話ができるかも知れないのだ。少々シャイなノリとは対照的に積極的で底抜けに明るい光二は、みなみに話しかけた。
「あのー、同じクラスの林さんだよね?こんにちは!」
みなみはきょとんとした顔をした。
「あ、こんにちは。えーと、大森くんだったよね?あとそっちにいるのは委員長の石原くん?」
名前を覚えてもらっていたことに2人は内心大喜びだ。
「今部活の帰りで、俺たちバスケ部、今日が初練習だったんだ。林さんは?」
「私もバスケ部だよ。石原くんと大森くん、めっちゃ上手だった。見てたよ。経験者なんだね」
美人で少し派手な見た目とは違って、非常におっとりした話し方だ。こういうタイプの女子は大体ものすごくおしゃべりで、スクールカーストの上位に君臨するはずなのだが、みなみはどうもそんな感じがしない。
みなみはノリ達と同じクラス。先月まで小学生だったとは思えないほどの長身と美貌で、その美しさたるや入学式の日にクラスの男子がざわめくほどであった。しかし、これだけの美人であるにもかかわらず、この1ヶ月間誰かとワイワイ話している様子をノリ達は全く見ていない。
光二はなぜあまりクラスのみんなと話さないのかを疑問に思っていた。
「林さん、初めてお話しするけど、おっとりして落ち着いた話し方だね」
思ったことをすぐに口に出してしまう光二とは対照的に、ノリは人の気持ちを考えすぎてなかなか言葉が出て来ず、当たり障りのないようなことばかり言ってしまう。しかしそれが功を奏し、みなみが口を開いた。
「わ、私あまり人と話すのが得意じゃなくて。嫌いじゃないんだけどね。むしろ話すのは好きなんだけど、何を言えばいいか分かんなくて。クラスでもなかなか友達ができないの」
3人はしばらく、小学生の頃の話や勉強のこと、そしてバスケのことについて話しながら下校した。
「あ、私の家こっちなの。それじゃあまた」
「ありがとう、話せて楽しかった。バイバイ!」
みなみが去ったあと、ノリが小さな声で光二に囁いた。
「あの子、なんか心に闇を抱えてる感じがするなぁ。ほら、家族の話した時に表情曇ってただろ?」
「ほー、そうだっけ?気付かなかった。林さんの家族のこと質問しまくっちゃったよ。あまり聞かれたくなかったのかな?」
「うん、どうもそんな感じが。家族とうまくいってないのかな?」
ノリの推察は正解なのだろうか。
「いやあ、あんな嫌な先輩って小説の中だけの話だと思ってたけど、実在するんだな」
光二が暗い顔で呟く。
「まああの人たちそんなに上手じゃないし、ライバルですらないから。そのうち黙るさ。それに…」
ノリが何か言いかけたところで、突然黙ってしまった。ノリは前方を見つめている。すっかり葉っぱだらけになってしまった桜の木の向こうに、1人で自転車を押す長身の女子がいた。
「あの子、同じクラスの林みなみちゃんじゃないか?めちゃくちゃ美人の子」
ノリが言う。
「おおおお、ほんとだ、あんなに美人なのに1人なんだな、誰か友達と一緒に帰りゃいいのに。あの子クラスでも大人しいよな。何か秘密がありそうだ」
自然とノリと光二の歩みは速くなる。学校一の美女と話ができるかも知れないのだ。少々シャイなノリとは対照的に積極的で底抜けに明るい光二は、みなみに話しかけた。
「あのー、同じクラスの林さんだよね?こんにちは!」
みなみはきょとんとした顔をした。
「あ、こんにちは。えーと、大森くんだったよね?あとそっちにいるのは委員長の石原くん?」
名前を覚えてもらっていたことに2人は内心大喜びだ。
「今部活の帰りで、俺たちバスケ部、今日が初練習だったんだ。林さんは?」
「私もバスケ部だよ。石原くんと大森くん、めっちゃ上手だった。見てたよ。経験者なんだね」
美人で少し派手な見た目とは違って、非常におっとりした話し方だ。こういうタイプの女子は大体ものすごくおしゃべりで、スクールカーストの上位に君臨するはずなのだが、みなみはどうもそんな感じがしない。
みなみはノリ達と同じクラス。先月まで小学生だったとは思えないほどの長身と美貌で、その美しさたるや入学式の日にクラスの男子がざわめくほどであった。しかし、これだけの美人であるにもかかわらず、この1ヶ月間誰かとワイワイ話している様子をノリ達は全く見ていない。
光二はなぜあまりクラスのみんなと話さないのかを疑問に思っていた。
「林さん、初めてお話しするけど、おっとりして落ち着いた話し方だね」
思ったことをすぐに口に出してしまう光二とは対照的に、ノリは人の気持ちを考えすぎてなかなか言葉が出て来ず、当たり障りのないようなことばかり言ってしまう。しかしそれが功を奏し、みなみが口を開いた。
「わ、私あまり人と話すのが得意じゃなくて。嫌いじゃないんだけどね。むしろ話すのは好きなんだけど、何を言えばいいか分かんなくて。クラスでもなかなか友達ができないの」
3人はしばらく、小学生の頃の話や勉強のこと、そしてバスケのことについて話しながら下校した。
「あ、私の家こっちなの。それじゃあまた」
「ありがとう、話せて楽しかった。バイバイ!」
みなみが去ったあと、ノリが小さな声で光二に囁いた。
「あの子、なんか心に闇を抱えてる感じがするなぁ。ほら、家族の話した時に表情曇ってただろ?」
「ほー、そうだっけ?気付かなかった。林さんの家族のこと質問しまくっちゃったよ。あまり聞かれたくなかったのかな?」
「うん、どうもそんな感じが。家族とうまくいってないのかな?」
ノリの推察は正解なのだろうか。
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