4 / 31
4. まだ習ってないでしょ?
しおりを挟む
2018年4月12日(木)。
気温は午前9時の時点で24℃。また4月だというのに、なんとなく初夏の香りがする。
桜も少しずつ散り、葉桜が見られ始めた。
この日、1年生は国語・算数・理科・社会の4科目のテストがある。俗に言う「入学お祝いテスト」だ。今年度入学した生徒たちの学力を調査する目的で行われる。
ノリたちは小学校の頃から比較的成績は良く、勉強で困ったことはほとんどなかった。
「小学校の範囲でしょ、余裕じゃんね。そんな気合い入れなくても」
なーちゃんがボソッと呟いた。
優子も「全然勉強してないよ。難しいはずないし。」と余裕の表情。今回のテストも特に対策をしたわけでもなく、適当にこなしていれば85点くらい取れるだろうと、のんびりおしゃべりをする御一行。
(キーンコーンカーンコーン)
チャイムが鳴った。テストがもうすぐ始まる。
1限目はノリの大得意の国語が終わり、2限の算数のテストの時間がきた。
しばらく解いていると、大問3に次のような問題がある。
「お父さんの年齢は現在47歳です。お父さんの年齢は、5年後に子どものちょうど4倍になります。現在子どもは何歳ですか。」
ノリは中3の従兄弟がいて、去年少しだけ一次方程式を教えてもらったことがある。不意にそれを思い出し、方程式を使って問題を解いてみた。もちろん、小学校の授業では習っていない範囲だ。
(えーと、とりあえずわからない数をaか何かにするんだっけな、それで5年後だか5を足して…むむむ)
ノリが導き出した方程式は
4(a+5)= 52
だった。
(よし、あとは計算だな、えーと、
4a+20=52で、4a=32 a=8!8歳だ!)
ノリは1人で誰にも見られないようにガッツポーズをした。
隣座っている名前も知らないそこそこ美人のクラスメートの女子に見られた気がしたが、そんなことは気にしない。
◇
翌日、数学の時間に早速テストが返却された。
「石原くん」
名前を呼ばれ、テストが手渡される。ノリは算数のテストにはそこそこ自身があった。とりわけ方程式を使った問題は正解している確信があったのだが、テストには赤い文字でこう書かれていた。
「これ、何ですか?まだ習ってないですよね?小学校で習ったやり方で解いてください」
授業後、ノリは先生に抗議に行った。
「先生、あってるんだから正解にしてくださいよ。それとも、何か間違ってるんですか?」
「いやー、まだ習ってないですよね、方程式。習ってないことを使うのは危険です。間違って覚えちゃったら大変。教えてもらってないことをしてはいけませんよ」
腑に落ちないが、所詮はこの人は型通りのことしかできない人間、何を言っても無駄と無理やり自分を納得させた。
(はぁ、どうして公教育はこうも人から学ぶ機会を奪うのかな。勉強を教えてるのが学校だけだと思ってるのかな。他から学ぶことはたくさんあるのに)
午前11時。
昨日とはうってかわって、再び冬に戻ったかのように、冷たい風が樹々をざわつかせている。
気温は午前9時の時点で24℃。また4月だというのに、なんとなく初夏の香りがする。
桜も少しずつ散り、葉桜が見られ始めた。
この日、1年生は国語・算数・理科・社会の4科目のテストがある。俗に言う「入学お祝いテスト」だ。今年度入学した生徒たちの学力を調査する目的で行われる。
ノリたちは小学校の頃から比較的成績は良く、勉強で困ったことはほとんどなかった。
「小学校の範囲でしょ、余裕じゃんね。そんな気合い入れなくても」
なーちゃんがボソッと呟いた。
優子も「全然勉強してないよ。難しいはずないし。」と余裕の表情。今回のテストも特に対策をしたわけでもなく、適当にこなしていれば85点くらい取れるだろうと、のんびりおしゃべりをする御一行。
(キーンコーンカーンコーン)
チャイムが鳴った。テストがもうすぐ始まる。
1限目はノリの大得意の国語が終わり、2限の算数のテストの時間がきた。
しばらく解いていると、大問3に次のような問題がある。
「お父さんの年齢は現在47歳です。お父さんの年齢は、5年後に子どものちょうど4倍になります。現在子どもは何歳ですか。」
ノリは中3の従兄弟がいて、去年少しだけ一次方程式を教えてもらったことがある。不意にそれを思い出し、方程式を使って問題を解いてみた。もちろん、小学校の授業では習っていない範囲だ。
(えーと、とりあえずわからない数をaか何かにするんだっけな、それで5年後だか5を足して…むむむ)
ノリが導き出した方程式は
4(a+5)= 52
だった。
(よし、あとは計算だな、えーと、
4a+20=52で、4a=32 a=8!8歳だ!)
ノリは1人で誰にも見られないようにガッツポーズをした。
隣座っている名前も知らないそこそこ美人のクラスメートの女子に見られた気がしたが、そんなことは気にしない。
◇
翌日、数学の時間に早速テストが返却された。
「石原くん」
名前を呼ばれ、テストが手渡される。ノリは算数のテストにはそこそこ自身があった。とりわけ方程式を使った問題は正解している確信があったのだが、テストには赤い文字でこう書かれていた。
「これ、何ですか?まだ習ってないですよね?小学校で習ったやり方で解いてください」
授業後、ノリは先生に抗議に行った。
「先生、あってるんだから正解にしてくださいよ。それとも、何か間違ってるんですか?」
「いやー、まだ習ってないですよね、方程式。習ってないことを使うのは危険です。間違って覚えちゃったら大変。教えてもらってないことをしてはいけませんよ」
腑に落ちないが、所詮はこの人は型通りのことしかできない人間、何を言っても無駄と無理やり自分を納得させた。
(はぁ、どうして公教育はこうも人から学ぶ機会を奪うのかな。勉強を教えてるのが学校だけだと思ってるのかな。他から学ぶことはたくさんあるのに)
午前11時。
昨日とはうってかわって、再び冬に戻ったかのように、冷たい風が樹々をざわつかせている。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
放課後、理科棟にて。
禄田さつ
青春
寂れた田舎の北町にある北中学校には、都市伝説が1つ存在する。それは、「夜の理科棟に行くと、幽霊たちと楽しく話すことができる。ずっと一緒にいると、いずれ飲み込まれてしまう」という噂。
斜に構えている中学2年生の有沢和葉は、友人関係や家族関係で鬱屈した感情を抱えていた。噂を耳にし、何となく理科棟へ行くと、そこには少年少女や単眼の乳児がいたのだった。
神代永遠とその周辺
7番目のイギー
青春
普通のJKとは色々とちょっとだけ違う、神代永遠(かみしろとわ)、17歳。それは趣味だったり洋服のセンスだったり、好みの男子だったり。だけどそれを気にすることもなく、なんとなく日常を面白おかしく過ごしている。友達や趣味の品、そして家族。大事なものを当たり前に大事にする彼女は、今日もマイペースにやりたいことを気負うことなく続けます。
パラメーターゲーム
篠崎流
青春
父子家庭で育った俺、風間悠斗。全国を親父に付いて転勤引越し生活してたが、高校の途中で再び転勤の話が出た「インドだと!?冗談じゃない」という事で俺は拒否した
東京で遠い親戚に預けられる事に成ったが、とてもいい家族だった。暫く平凡なバイト三昧の高校生活を楽しんだが、ある日、変なガキと絡んだ事から、俺の人生が大反転した。「何だこれ?!俺のスマホギャルゲがいきなり仕様変更!?」
だが、それは「相手のパラメーターが見れる」という正に神ゲーだった
青色の薔薇
キハ
青春
栄生は小学6年生。自分の将来の夢がない。
しかし、クラスメイトは夢がある。
将来の夢をテーマにした学園物語。
6年生の始業式から始まるので、小学生時代を思い出したい方にはオススメです。
恋愛や友情も入っています!
どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について
塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。
好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。
それはもうモテなかった。
何をどうやってもモテなかった。
呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。
そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて――
モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!?
最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。
これはラブコメじゃない!――と
<追記>
本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。
覗いていただけだったのに
にのみや朱乃
青春
(性的描写あり)
僕の趣味は覗きだ。校舎裏で恋人同士の営みを覗き見するのが趣味だ。
今日はなんとクラスメイトの田中さんがやってきた。僕はいつも通りに覗いていたのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる