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4. まだ習ってないでしょ?

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2018年4月12日(木)。

気温は午前9時の時点で24℃。また4月だというのに、なんとなく初夏の香りがする。
桜も少しずつ散り、葉桜が見られ始めた。

この日、1年生は国語・算数・理科・社会の4科目のテストがある。俗に言う「入学お祝いテスト」だ。今年度入学した生徒たちの学力を調査する目的で行われる。
ノリたちは小学校の頃から比較的成績は良く、勉強で困ったことはほとんどなかった。

「小学校の範囲でしょ、余裕じゃんね。そんな気合い入れなくても」

なーちゃんがボソッと呟いた。

優子も「全然勉強してないよ。難しいはずないし。」と余裕の表情。今回のテストも特に対策をしたわけでもなく、適当にこなしていれば85点くらい取れるだろうと、のんびりおしゃべりをする御一行。

(キーンコーンカーンコーン)

チャイムが鳴った。テストがもうすぐ始まる。
1限目はノリの大得意の国語が終わり、2限の算数のテストの時間がきた。
しばらく解いていると、大問3に次のような問題がある。

「お父さんの年齢は現在47歳です。お父さんの年齢は、5年後に子どものちょうど4倍になります。現在子どもは何歳ですか。」

ノリは中3の従兄弟がいて、去年少しだけ一次方程式を教えてもらったことがある。不意にそれを思い出し、方程式を使って問題を解いてみた。もちろん、小学校の授業では習っていない範囲だ。

(えーと、とりあえずわからない数をaか何かにするんだっけな、それで5年後だか5を足して…むむむ)

ノリが導き出した方程式は
4(a+5)= 52 
だった。

(よし、あとは計算だな、えーと、
4a+20=52で、4a=32   a=8!8歳だ!)

ノリは1人で誰にも見られないようにガッツポーズをした。
隣座っている名前も知らないそこそこ美人のクラスメートの女子に見られた気がしたが、そんなことは気にしない。





翌日、数学の時間に早速テストが返却された。

「石原くん」

名前を呼ばれ、テストが手渡される。ノリは算数のテストにはそこそこ自身があった。とりわけ方程式を使った問題は正解している確信があったのだが、テストには赤い文字でこう書かれていた。

「これ、何ですか?まだ習ってないですよね?小学校で習ったやり方で解いてください」

授業後、ノリは先生に抗議に行った。

「先生、あってるんだから正解にしてくださいよ。それとも、何か間違ってるんですか?」

「いやー、まだ習ってないですよね、方程式。習ってないことを使うのは危険です。間違って覚えちゃったら大変。教えてもらってないことをしてはいけませんよ」

腑に落ちないが、所詮はこの人は型通りのことしかできない人間、何を言っても無駄と無理やり自分を納得させた。

(はぁ、どうして公教育はこうも人から学ぶ機会を奪うのかな。勉強を教えてるのが学校だけだと思ってるのかな。他から学ぶことはたくさんあるのに)

午前11時。
昨日とはうってかわって、再び冬に戻ったかのように、冷たい風が樹々をざわつかせている。
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