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伝統料理
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「お前なぁ、いい加減にしろよ!まともに資料が作れたこと1回もないじゃないか!」
ある会社の部長、松田憲彦(まつだ・のりひこ)が大声で叫んだ。
「す、すみません!本当にごめんなさい…」
糾弾されているのは入社3年目を迎える松笠淳(まつかさじゅん)である。
淳は人柄を買われてこの会社の面接をクリアしたが、蓋を開けてみればパソコンは苦手で注意は散漫、典型的な「仕事のできない人間」であった。
「本当に、お前を雇ったのは間違いだったよ」
憲彦のキツい言葉に、淳は何も言い返すことができない。
(キーンコーンカーンコーン)
「あ、もう昼休みか。松笠くん、昼イチで資料訂正するんだぞ」
淳は悔しさのあまり、憲彦の見えないところで突き返された資料を握りしめてクシャクシャにし、憲彦のデスクの下に放り投げてロッカーへ向かった。
「ったく、なんだよあのクソ部長。なめやがって…」
淳は先月から自分で弁当を作って会社に持参している。平日の唯一の楽しみである昼食を職員用冷蔵庫から取り出して蓋を開け、電子レンジに入れようとした。
「あーら、仕事は半人前なのに食べる量は一人前なんだなぁ」
(うるせえなぁ…)
淳は憲彦のイヤミを無視して、弁当を温めた。
「おら、なんとか言えよ。図星だから何も言い返せないんだろ」
◇
「今日は、岡山県倉敷市特集でーす!」
19時17分。帰宅した淳がテレビをつけると、地元密着テレビ局の「通葉テレビ」で旅行特集が放送されていた。
「そうか、もうすぐお盆休みだもんな…」
7月下旬の熱帯夜。世間は2週間後に迫った夏の休暇に浮き足立っているが、淳は夕食を作る気力もなくカップ焼きそばにお湯を注いだ。
「かつての岡山の町民は、贅沢を禁止されていたんです。しかしながら…」
「そうか、これだ」
淳は何かを思い付き、明日の昼ごはんを作り始めた。
◇
(キーンコーンカーンコーン)
翌日、昼休みのチャイムが鳴った。
「おー松笠くん、今日の弁当は白ご飯とたくあんだけか。えらく質素じゃないか。昨日の俺の言葉が効いたようだな」
憲彦は意地汚い笑みを浮かべながら、淳の弁当を左手の人差し指で突いた。淳は無言で憲彦を睨みつける。
「いただきまーす」
淳は敷き詰められた白米の一角を箸で持ち上げた。そこには実家から送られてきた特産品であり、そこそこの値段のするアジフライがびっしり入っていた。
「ざまーみろ、馬鹿野郎!」
淳は一人しかいない休憩室で、大声で叫んだ。
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「す、すみません!本当にごめんなさい…」
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「本当に、お前を雇ったのは間違いだったよ」
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(キーンコーンカーンコーン)
「あ、もう昼休みか。松笠くん、昼イチで資料訂正するんだぞ」
淳は悔しさのあまり、憲彦の見えないところで突き返された資料を握りしめてクシャクシャにし、憲彦のデスクの下に放り投げてロッカーへ向かった。
「ったく、なんだよあのクソ部長。なめやがって…」
淳は先月から自分で弁当を作って会社に持参している。平日の唯一の楽しみである昼食を職員用冷蔵庫から取り出して蓋を開け、電子レンジに入れようとした。
「あーら、仕事は半人前なのに食べる量は一人前なんだなぁ」
(うるせえなぁ…)
淳は憲彦のイヤミを無視して、弁当を温めた。
「おら、なんとか言えよ。図星だから何も言い返せないんだろ」
◇
「今日は、岡山県倉敷市特集でーす!」
19時17分。帰宅した淳がテレビをつけると、地元密着テレビ局の「通葉テレビ」で旅行特集が放送されていた。
「そうか、もうすぐお盆休みだもんな…」
7月下旬の熱帯夜。世間は2週間後に迫った夏の休暇に浮き足立っているが、淳は夕食を作る気力もなくカップ焼きそばにお湯を注いだ。
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「そうか、これだ」
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◇
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