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マルダリア王国の異変。

アルスタイン侯爵邸の一夜。②

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「だから・・。あの日レオに言った言葉がやっと証明されたんだよ!?
お母様が生きた時間、レオとリオルグ様との日々は幸せだったんだって・・。
レオをとても愛していたことをしっかり「見て」来たから、その事実をレオに伝えたかったの。」

私は、レムリア様がシリウスに見せた涙を思い出していた。

愛している人を忘れることが怖いと言った彼女の想いと、その覚悟を・・。

愛する息子に届くことなく、逝ってしまった彼女の想いをレオに伝えたかった。


「シア・・・。」

水色の瞳は珍しく真剣にレオを見上げて揺れていた。

ポスンと、枕をシーツの上に置いたレオが私を透明な蒼い瞳で見つめていた。


んっ??

何だか、今の・・。
愛の告白みたいじゃない!?(混乱気味)

励まそうとしたら、うっかりこの状況なのに!!(ベッドの上で2人っきり)
言葉選びを思い切り間違えたぁぁぁ・・!!

部屋には静寂が訪れていた。

レオは、黙ったまま整った顔で私を見下ろしていた。

だ、駄目だ・・・。

イカン、この沈黙!!

美形は罪だ・・。部屋の明かりより、眩しいってどうなってんの?

・・危機感しか感じないっ。

私はその間に耐えきれずに、真っ赤な顔で視線を反らした。

「えーと、まぁ・・。そんな感じで・・。」


何だか落ち着かない状況に、私はカーテンが閉じられた窓の方へと
レオに背を向けたまま、横向きになってシーツの上に転がった。

「・・報告は以上になります!!ハイ。では、おやすみなさーーーい!!」

ボスンと音を立ててシーツに埋もれた私の横に、ドスンと大きな物が倒れ込んで来た。

ぎくりと肩が震えた私は、恐る恐る背中に感じる気配にゆっくりと後ろを向いた。

「ひ、ひぃっ・・。」

案の定、真顔のレオが私をガン見していて変な声が出た。

背中に冷たい汗を感じて、驚いて身体を返した。

「近い!!近いからっ・・。距離感可笑しいわよ??」

「あのな・・。シア、そろそろ認めないか??
かなり俺の事好きだろう。それも相当好きだな・・。
そうか、俺のことが大好きなんだな??」


「はぁぁぁ??どっ、何処がよ。大丈夫??大きな勘違いよ??
あんたね、恥ずかしくない訳!??だ、だ大好きって・・。自分で言う?馬鹿じゃないの!?」

頬が熱くて何故だか涙目になった私の顔を、レオは見たこともない位に
嬉しそうに青い瞳を細めて笑っていた。

キラキラした子供のような純粋な瞳が私を見つめていた。


「ああ・・。駄目だな。
その口を開いて喋れば喋るほど、好きだって聞こえるが?
ちなみに、俺は大好きだけどな。
シアの為なら・・。俺は母上のように迷いもせず、今すぐ死ねるけどな。
・・・きっと、あの日からシアがもっと好きになったんだ。」

「・・あの日??
噴水の前で、レムリア様の大好きだったエターナルアプローズをくれた
時ではなくて、王立学院で再会した時のこと・・??」


「・・違う。シアが、共犯者に俺を指名した時だな。
許嫁を、運命に甘んじようとしていたシアが、反逆の意思を示した日から・・。
もう、好きで好きで・・。シア以外の女は無理なんだ。
本気でそう思ったんだぞ??知れば知る程、あの時以上にその気持ちに確信が深まるばかりだ。」

「・・ちょっと止めてよ!!その、物凄い気障な台詞!!無理っ。恥ずかしくないの??」

愛しそうに、長い指で私の顎を向けて近づくレオの顔にドキッとした。

大切な物に触れるように私の淡い光を放って輝くプラチナブロンドの髪を持ち上げて
挑むような蒼い瞳で口づけた。

・・・ああっ、まずいわ!!

距離感が縮められて、鼻と鼻が触れ合いそうな距離になっていた。

心臓の音が煩いくらいに耳に聞こえる・・。

サラッと柔らかいレオの髪が私の頬に触れて大きく目を見開いた。

「カイルに連れて行かれた時は、本気で目の前が真っ暗になった。
こんなに俺の心を乱せるのはシアぐらいだ。そろそろ自覚して、俺の側にいてくれないか??」

切なそうに見下ろす青い瞳と、薔薇色の頬が眼前にあってゴクリと息を飲んだ。

・・・なっ。
何なの??このレオの色気??

あああっ・・。もしや、噂の強めの全力マックスの魅了って奴!?

あわあわと涙目でレオから視線を反らすと、今度は左の指が触れて驚い私に
ふっと優しく笑うと、長い指を私の指に絡ませてきた。

「そ、そんな・・大げさよ??勘違いじゃないかしら??好きって、ほら・・。
・・ああ、そうよ!!つり橋効果とかじゃない!?
ハラハラするシチュエーションとか、同じ志を持つ物同士って目的志向で繋がる・・から??」

緊張気味に固まって、顔を赤らめている私の鼻の頭に柔らかい唇が落とされる。

「あのなぁ・・。そろそろ、認めろ。俺のことが好きだろう、シア??」

絡まった指と、レオが嬉しそうに微笑んで私を組み敷いた。

下敷きになった私は、不安と恐怖と高鳴る心臓の速さに口を開けたまま固まった。

「よく見ろよ。あれを見たら解るだろ??エリザベートは、素直なようだぞ???」

ふっと嬉しそうに笑ったレオは、窓際を顎で指した。

「・・・どういう意味よ?エリザベートがどうしたって言うの??」

両腕をレオに絡めとられて、シーツに縫い付けられた
体勢のままで私は首をカーテンの方へと向けた。

窓の近くの籠には、エリザベートと同じサイズに小さくなった
青銀色のリヴァイアサンの身体に真っ赤な身体で身を寄せて眠るエリザベートの姿があった。

私は、ポカンとした表情でその光景を見ていた。


月の光に照らされた2体の神聖獣は、
さっきの強面の巨体の破壊活動が想像もつかない・・。

幸せそうに、リヴァイアサンの隣で寝息を立てるエリザベートから
は、いつもの暴れん坊の破壊神とは見えない位の可愛い寝顔で・・。

すりすりと嬉しそうに抱き着いて眠っていたのだった。

そのデ・・。
ふくよかな、エリザベートの身体をがっしりとリヴァイアサンが抱き留め
たまま・・。幸せそうな深い眠りに着いていた。

私は、その様子を見て驚いて身を起こした。

その光景は壊し系ではなく、まるで癒し系だった。

「何あれ・・!?嘘でしょう??
・・・意外。エリザベスったら甘えん坊なの!?」

「違うだろ??エリザベートは、素直なだけだろ。
誰かさんと違って・・・。なぁ、俺のアレクシア。」


「はぁっ俺のって・・!?
違くないわよっ!!残念ね、エリザベートったら。
あんなにレオに甘えてきたのに、リヴァイアサンに夢中じゃない??
・・・そうだ!!レオは、ちょっとは悔しくないの??」

エリザベートの幸せそうな寝顔に、私の口から思ってもない言葉が出て来る。

すごく複雑な気持ちだった。

真っ赤に頬を染めたまま、優しい目で見下ろすレオを見上げていた。

「最初から、俺じゃなくて。俺を通して、リヴァイアサンを見てたのかもな。
エリザベートは、シアの神聖獣だろ??それなら、シアもエリザベートと同じだな・・。
それに・・。シアだけでいい。・・・ずっと俺には。君だけ、側にいて欲しい。」


クスクス笑うレオにかちんと来た私は怒りをぶつけて枕を投げようと身体を起こした瞬間・・。
レオに唇を奪われた。


レオのシルクのパジャマを握りしめたまま、私はその口づけを甘んじて受け止めていた。

すごく、胸の奥が熱くて・・。

抱きしめられた腕の中が何故か安心できた。

「今回の旅は、色々あったな・・。そろそろ、婚約者のままじゃ嫌なんだけど??
鈍いシアでも、この意味は解るのか??」


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