上 下
124 / 187
騎士団との旅立ち。

遠征の旅路。②

しおりを挟む
美しいプラチナブロンドの髪に、薄いコバルトブルー色の瞳を持つ長身の男性が
私を見付けて、瞳を輝かせた。

「まさか!?
・・・ア、アルノルドお兄様なの?!!!」

私は、同じ色の瞳を大きく見開いて兄の元へと駆けた。

隣国のマルダリア王国の王太子付きの精鋭である兄にこんな所で会えるなんて・・!!

「シア・・。本物のアレクシアなんだね・・!!
うわぁ、会えて嬉しいよ!!」

兄は、久々の再会に興奮気味に私の手を取った。

「アレクシア様のお兄様なんですね・・。
よく似てらっしゃるわぁ。」

「アレクシア様の男性バージョンですわね。
なるほど・・。」

急な兄の登場に、侍女達も驚いた様子だった。

レオが感激して大騒ぎをしていた私達を見つけてやって来た。

「シア、どうしたんだ・・??
・・アルノルド様!!何故このような所に!??
事前に言って下されば・・、宮殿の方へお招きしましたのに。」

「王太子殿下のお供でやって来ただけなんです。
シア、レオノール様・・。
急な外交だったので連絡出来ずにすまないな。
でも、こうして会えるなんて思ってもみなかったよ!!2人とも、元気そうだね?」

「お兄様こそ!!お元気そうで何よりですわ。
お父様達からも、便せん15枚程度の熱いお手紙をほぼ毎日頂いておりますわ!!」

「相変わらず、過保護だな。あの父は・・。」

レオも、兄も苦笑気味に笑っていた。

「アルノルド・・。アルノルド!?何処にいる?」

凛々しい表情を浮かべたエヴァンが質素な服装で現れたのだった

「そこに居たのか。探したんだぞ。
貴方は、・・まさか、アレクシア嬢ではないか!?」

いつも、威厳と尊厳の塊みたいなエヴァン様しか見たことがなかったので
笑顔に驚いた私は目をパチクリしていた。

「・・レオノール殿もいらしたのか。こんな所でお会いするとは・・・・。」

私の隣のレオに視線を向けると人懐っこい表情で笑った。

こんな表情も出来るのね・・・。

色素の薄いミルクティのような髪。

爽やかな笑顔。

柔軟剤のような柔らかさ!!

まさに、洗濯王子の兄!!

よく見るとユヴェールとは異なる種類の美形だわね・・。

美形王子のロイヤルストレートフラッシュだわ!!

・・紫外線A波並みに眩しいわ。

「ご無沙汰しております、エヴァン様。
マルダリア王国での一件では大変お世話になりました。」

「とんでもない!!
我が国でのあのような失態・・。
レオノール殿や、リオルグ様にはご迷惑をおかけして申し訳なかった。
それに、アレクシア嬢にも沢山怖い想いをさせてしまって・・・。
心からお詫びしたいと思っておりました。」


「・・・そんな!!滅相もないです。
私はこの通り元気でピンピンしておりますので
どうかお気になさらず!!
それにしても、何故王太子殿下がこんな所へいらしたのですか??」


「私達は・・。
薬を手に入れる為にここに参りました。
この所、父であるマルダリア国王が体調を壊してしまいまして・・・。」


エヴァンは、よく見ると少し垂れ目碧色の瞳を細めてため息をついた。

「お薬ですか??
マルダリアも医療は発展している国ですよね・・。
アルトハルトまで買い付けにくるなんて余程ご容態が悪いのですか??」


不安に思いエヴァンに問うと、困惑した表情で深く頷いた。

「エヴァン殿・・。それは心配だな。
もし、薬が効かないようなら・・。
こちらから優秀なファーマシストを派遣するので遠慮なく言ってくれ。」


「本当ですか??アルトハルトの薬は、神力の力も絶大でどんな病でもほぼ完治するのだと
聞いております。もしもの時は、そのお言葉に甘えさせていただきます。」

エヴァンは顔色を明るくして頷いた。

アルノルドもパッと瞳が明るくなって嬉しそうに笑った。

「あの、ユヴェールはこのことは・・。」

私は小声で、エヴァンに耳打ちした。

「まだ知らせてはおりません・・。留学中のユヴェールに心配をかける訳にはいかないと
思い、私が自らこちらに出向いた所存です。」


「そうなんですか・・。
あの、お父様の具合が一日でも早く良くなりますようにお祈り申し上げます!!」

「温かいお言葉有難うございます。
アレクシア嬢は、ファーマシストとして大変優秀だと聞き及んでおります。
もし、父に何かあった際は是非マルダリアに貴方の力を貸して頂けたら嬉しいです。」

「勿論ですわ・・!!
その時は、祖国の王様のお命を救うために力を尽くさせてくださいね!!」

ヒールのブーツを穿いた私より、少しだけ背の高いエヴァンが明るく微笑んだ。

お父様がご病気で大変な中、公務も治療もとなると目の回るような忙しさだろう。

出発の用意が出来た連絡が入り、私は兄とエヴァンと向き合った。

「お兄様、名残惜しいですが。それではまた・・。」

「ああ、アレクシアも元気で・・!!
レオノール様、妹をくれぐれも・・。宜しくお願いしますね!?」

握った握手の圧が強いようで、レオは少しだけ顔を顰めた。

「また何かあれば、いつでもご連絡を。
アルノルド様、エヴァン殿下それでは失礼いたします。」


別れて馬車に向かい歩いていく道で、ハッと私は何か違和感に気づいた。


・・・何だろう。


「レオノール様ぁぁっ。
もうっ、一体どちらにいらしていたんですか??
私、貴方を必死でお探ししておりましたのに・・!!」

ドカッ・・。

・・痛っ!

レオの隣を歩いていた私が押しどかされた。

「・・まぁ。アレクシア様に何て無礼を・・。
あの女狐王女、許せませんわっ!!」

ミリアは表情を露わに吹き飛ばされた私の身体を起こしてくれた。


必死の形相のアイーネの登場で、一瞬反らされた注意にため息をついた。

「有難うミリア。わたしは大丈夫よ!!
ついでに女狐じゃなくてあれは女豹よ。
次は、殺られたら殺り返すわ!!
今度は私からヒップアタックしてやるわよ。」

「その意気ですわ。アレクシア様!!
私のお尻で宜しければいつでもお貸ししますわぁ!!」

「あの女、許せませんね・・・。
アレクシア様が手を下さずとも。わたくしが氷山に
鎮めるくらいは容易い事なのでいつでもご命じください!!」


「・・忘れてるようだけど、一応ザイードの王女殿下だから
この国の賓客よ?二人とも・・。」

2人の物騒な侍女達のお陰で少しだけ笑顔になった。


私は立ち上がると、少しだけ胸騒ぎがして
兄達の方を振り返るとその姿は見えなくなっていた・・。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。

白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

転生したら冷徹公爵様と子作りの真っ最中だった。

シェルビビ
恋愛
 明晰夢が趣味の普通の会社員だったのに目を覚ましたらセックスの真っ最中だった。好みのイケメンが目の前にいて、男は自分の事を妻だと言っている。夢だと思い男女の触れ合いを楽しんだ。  いつまで経っても現実に戻る事が出来ず、アルフレッド・ウィンリスタ公爵の妻の妻エルヴィラに転生していたのだ。  監視するための首輪が着けられ、まるでペットのような扱いをされるエルヴィラ。転生前はお金持ちの奥さんになって悠々自適なニートライフを過ごしてたいと思っていたので、理想の生活を手に入れる事に成功する。  元のエルヴィラも喋らない事から黙っていても問題がなく、セックスと贅沢三昧な日々を過ごす。  しかし、エルヴィラの両親と再会し正直に話したところアルフレッドは激高してしまう。 「お前なんか好きにならない」と言われたが、前世から不憫な男キャラが大好きだったため絶対に惚れさせることを決意する。

悪役令嬢なのに王子の慰み者になってしまい、断罪が行われません

青の雀
恋愛
公爵令嬢エリーゼは、王立学園の3年生、あるとき不注意からか階段から転落してしまい、前世やりこんでいた乙女ゲームの中に転生してしまったことに気づく でも、実際はヒロインから突き落とされてしまったのだ。その現場をたまたま見ていた婚約者の王子から溺愛されるようになり、ついにはカラダの関係にまで発展してしまう この乙女ゲームは、悪役令嬢はバッドエンドの道しかなく、最後は必ずギロチンで絶命するのだが、王子様の慰み者になってから、どんどんストーリーが変わっていくのは、いいことなはずなのに、エリーゼは、いつか処刑される運命だと諦めて……、その表情が王子の心を煽り、王子はますますエリーゼに執着して、溺愛していく そしてなぜかヒロインも姿を消していく ほとんどエッチシーンばかりになるかも?

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

処理中です...