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裏切りの結婚式は薔薇色に染まる・・。

裏切りの結婚式は薔薇色に染まる・・。④

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母は、王子であるユヴェールを前にして、驚いて丁寧に敬意を込めた礼を取っていた。

「丁度良いところに来たな、ユヴェール・・。」

「ユヴェール!!貴方も一緒に来る??クロードの所に今からレオと会いにいくのよ!!」

証人は一人でも多い方がいいに決まってるわ・・!!

ナイスタイミングよっ!!

「そうなの??いいけど・・。
その前にちょっとだけいいかな、シア。」

改まったユヴェールを、驚いて見上げた。

翡翠色の瞳は優しく微笑んだ。

「シア、結婚おめでとう。
聖夜の前日のパーティのこと、本当に感謝しているんだ。
君に会えて・・。僕は、変わった部分が沢山ある。だから、君には絶対に幸せになって欲しいんだ!!」

そう言うと、翡翠の笑顔が細められると優しく
私の両手を握った。

ユヴェールの眩しい笑顔に、くらりと眩暈がおきそうになった。

なんだ、なんだこれは・・!?

最近、腹黒さをあまり感じなくなったユヴェールの澄み渡るような笑顔に眩しさを感じた。

心を洗濯してくれる笑顔・・。

柔軟剤のような優しい香り!!

そうだ、洗濯王子だわ・・!!


「有難う・・。ユヴェール。
私、何がなんでも幸せになるわ・・!!」

眩しそうに微笑むユヴェールの手を、強く握りしめた。

勿論、私は幸せになってやるわよ・・!!

だけど、花嫁としてじゃなくて、「ファーマシスト」としてね・・!!

そう心の中でほくそ笑みながら、ユヴェールに眩しい笑顔を返した。

肌寒い視線を送るレオとは極力、目を合わせないように笑っていたのだった。




マーブル色の大理石を白いハーヒールの靴はコツーンと音を反響させていた。

床を引きずるぐらいの丈のドレスの裾をそっと持ち上げてた私は、ゆっくりと聖堂の花婿控室へと向かって行く。

前を歩く長身のレオと、ユヴェールは昨夜の話を報告し合いながら歩いていた。


次の角を曲がると、絨毯敷きのフロアになり大きな両開きのドアがある。

私は、そっとポケットからハンカチにくるんだ点眼薬を取り出した。

そっと目にいれると瞼を閉じて、こっそりとパチパチ動かしていた。

角の手前で2人を抜き去り早足で、扉の前に立っていた看板の「立ち入り禁止」の札を裏の
「花婿控室」に変えた。


曲がり角を曲がったレオは、口角を上げて私を見た。


扉の前に立つと、中からいつも生徒会室で聞いていたような
喘ぎの声と、愛の囁きが聞こえた。

「ああんっ・・。もっと、もっとよ・・。クロード!!」

「ゴホッ・・。」

危うくむせ込みそうなくらいの声のボリュームに目を見開いた。

声がデカいわよ・・・。

一応、結婚式場なんだから・・。
ボリュームとか、考えなさいよね!!

モラルなしの、馬鹿女だわっ・・。


「ジュリー・・。ああ・・。そんなにいいのかい??ああっ・・。君だけだよっ・・!!」

おいっ!?

これ、花婿が言ってるのよね・・!?
阿呆通り越して、救い用のないど阿呆だわ!

こんな奴と愛を誓うなんて死んでも無理よ!!

孤児院での、破廉恥カーテン裏事件のことなどうっかり忘れていた私は心の中でジュリーに突っ込みを入れていた。

少しだけ緊張で手が震えていた・・。

この日をずっと、ずっと待っていたのよ・・。

扉の前で立ったままで真っ赤な唇を噛みしめる。


「シア?どうかしたのか・・??」

立ち止まったまま動かない私に、ユヴェールが声をかけた。

「おい、クロードが待ってるはずだ・・。
行くぞ、シア。」

そっとレオが肩に手を置いた。


落ち着いたレオの声に、少しだけ心が軽くなる。

そうだ・・。

私には、共犯者のレオが居てくれる。

背中を向けたまま頷いた私は、深く深呼吸をした。


ハッ、馬鹿女と阿呆男も運の尽きだわ・・。

やってやるわよ・・!!


「ジュリー・・。ああっ・・。いいよ、ジュリー・・!!」

クロードの高まった声がハッキリと耳に届いた瞬間に、私は顔を上げた。


一歩足を踏み出して、両開きの扉を力いっぱい開けたのだった。


  「「バン・・!!!」」


ノックもなしに、開かれた扉の先には想像通りの光景が広がっていた。

私とレオの計画通りの光景が・・、目に飛び込んでくる。

そこには・・。

乱れたピンク色の花嫁介添え人のドレスを着た、自称私の親友「ジュリー=オルタンス」
と、私の婚約者で花婿衣装を身にまとった「クロード=マイケル=アルスタイン」がソファの上で折り重なりながら、驚いた様子でこちらを見ていたのだった。

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