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聖女ルルドの恋模様

聖女の婚約者は王子!?学園祭は新たな波乱の幕開けです!! ②

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廊下の外まで女子生徒のはしゃいだ声が聞こえてくる。

教室からいなくなった私の姿を探して歩いて来たクレトスストーカーの姿を確認した私は立ち上がると、両足を肩幅に開くと、スーッと息を吸い込んだ。

「あのね、クレトス。私はこの学園生活を平穏に過ごして生きて卒業式を迎えたいのよ。
だから、嫉妬を買うような目立つ行動は絶対NGなの!絶対に婚約なんてしないんだから!!!
私はデッドエンド回避して、平和な聖女ライフを送りたいの。邪魔はさせないわよッ!!」

「・・・アリア・・。そんなに・・??絶対、婚約しないなんて・・。
そっか、そうだよね・・。でも、カインとの婚約話の事だよね??」

「は??何でそうなる!?カインとだけじゃなくて、ク、クレトスとも婚約する気はな・・」

「大丈夫!!俺も協力する!誰にも邪魔はさせないよ。君と俺は、今度こそ死ぬまでずっと一緒だ!!」
クレトスはポカンとしたまま仁王立ちしていた私のすぐ目の前にいた。
一瞬で距離を縮めると、ガシッと私の両手を掴んだ。
「今度こその意味もわからん・・。
だ、だから違うってば。一緒は無理だし、婚約もしないから!!・・ちょっと私の話聞いてる?」

両手を握られたまま、藍色の瞳でうっとりと見下ろされていた私は幸せそうな犬にしか見えない
クレトスを睨みつけた。

「きゃぁーっ!!お熱いですわねっ!!」
「素敵ですわ・・。ずっと一緒だなんて・・。好きな殿方に言われたいです!!」

女子生徒達が甲高い歓声を上げて、私はふらりとよろける。

・・確かにゲーム場での好きな殿方に言われたんだろうけど。
聖ルルでの王太子クレトスとは変わり果てた今のストーカークレトスに言われても・・。
胸の高鳴りどころか恐怖しかないのは何故?話が通じない!!

「どうしたらそんな言動に捉えられるのかしら・・。頭に花が咲いているのかしら!?」

待って、私の言語能力が乏しいのか・・。

・・違うよね。
クレトスが異常でストーカーで言語が自動ポジティブ変換になっているだけだよね!?

「今の、アリア様の台詞は拒絶でしたよね・・。」
「言っても無駄なのかしらねぇ・・。
クレトス様にはそう聞こえないんでしょうね。聴力の問題か何かかしら?」

その場で冷静だったのは、ヒソヒソ声で私達のやり取りを解釈していたメアリーとイリスだけだった。
さらにこの展開で噂が助長されたことは言うまでもない。

後悔後に立たず・・。

その教訓に項垂れたのであった。




私は夏休み明けの秋の心地いい風を感じながら、窓から聞こえてくる木々の騒めきに耳を傾けていた。

学園の中では私達の婚約話の噂は更に広がり続けていた。
私がクレトスを略奪しただの、アドルファスは最初からイリスに想いを寄せていただの・・。
様々な憶測が飛び交う始末だった。

そんな中、学園の最大イベントである学園祭の準備が始められていた。
学園祭実行委員の決を決めようと、黒板には票が取りまとめられていた。

何だか数か月振りに、見覚えのある光景が教室の中で繰り広げられている。

「では、男子生徒の代表はクレトス=アーリシャスさん、カイン=オーガスタさんの2人と、女子生徒の代表はアリア=グランデリアさんとカリーナ=オーガスタさんに決まりました。」

「きゃぁぁあ!!頑張ってくださいね、カイン様!!」
「私はクレトス様推しです。その一択ですわ!!」

勝手に楽しんでいる生徒達に呆れた私は、机の上にぐったり伸びてしまった。
隣で「私がアリア様を守りますから大丈夫ですわ!!」と鼻息を荒くしているカリーナの言葉に
引き攣りながらも「有難う」と伝え、苦く笑った。

聖ルルでの学園祭ルートは何回死んだのかしら??

セインがいない分、デッドエンドの回数は減るのかしら?
確か、一番死んだ回数が多かったのって・・・。

ケイドルと行動を共にしていた時に、図書館の本棚の下敷きエンドと、急に寄りかかった先の窓枠が外れて、宙に放られたままドサッと地面に落ちる寸前で悲鳴を上げたルルドの姿が思い浮かんだ。

「そうだ!!学園祭では、ケイドルのルートが爆死の連続だったわ!!」

ガタッと椅子から立ち上がって叫ぶと、私のすぐ横の椅子に座っていたアドルファスが噴き出した。

「・・元気だな。夢でも見た?少し眠れたようだが・・。」

新学期に入ってから危ない目には合っていなかったが、ルルドのゲーム通りに代表に選ばれた私は基本は幼馴染メンバーと誰かと一緒に行動することを原則として動くことを決めた。

担任の先生が午後から不在になった為に、終礼が無かった一年の特位クラスの4人は生徒会室に早めに着いた。

カインとクレトスは、生徒会の担当の先生から会議の雑用の手伝いを命じられた。

カリーナは、時間があるので美味しい茶葉を自分の寮の部屋から取ってくると言って出て行ったので
アドルファスと生徒会室で二人で過ごしていた。
手伝いを申し入れたら断れた私は、やる事がなくて机につっぷして寝ていただけだが・・。

印刷物を規則的にホチキス止めをしている音を聞きながら、窓からの心地いい風に眠気を覚えていたのだった。

生徒会室に全体に張ってくれている心地の良い結界のような物は、今日も大きな眼鏡をかけて黙々と規則的な動きを見せるアドルファスの力によるものだと思う。

「アリア・・。噂が広がっているようだが大丈夫か??」

アドルファスの言葉に寝起きの事もあり、ポカンと口を開けた状態で見返してしまった。

可笑しそうに少し口元を緩めたアドルファスが、私の頭を幼い頃のように軽くポンポンと撫でた。

「いや、他者からの嫉妬や、妬みで君に害がなければいいんだが。勝手に心配しているだけだ」

「私は大丈夫よ。有難う。
それよりも、アドルファスの方こそ、イリスとの噂は大丈夫なの??」

「彼女は聡いから、上手く立ち回ってくれているよ。私が相手なのが彼女にとって申し訳ないが・・。この瞳の魅了の効果が続く限りは、誰とも婚約を結ぶべきではないと思うからな。」

「なんだか、ごめんなさい・・。女神の8つの力の1つがアドルファスの弊害になっているのが
申し訳なく思ってしまうのだけど」

私が力を分散させる事を望んだ事で、アドルファスの婚姻にまで触りが出てしまった事に苦しくなった。

様々な弊害が生じて、きっと沢山傷ついてきた筈のアドルファスの隣に寄り添う者がいない事実を申し訳なく思っていた。

唇を噛んで下を向いた私の腕をアドルファスが咄嗟に掴んだ。

「君が謝ることではないからな。この力は弊害だけではなかった。婚約者を持たなくていい正当な理由付け使っている面もあるんだ。
・・・ある意味で、この力に感謝している。」

「意図的に婚約者を・・持ちたくないの?でも、アドルファスはアーリシャスの王太子殿下でしょう。」

「何度も恐ろしい目に合ってきて、女性には辟易している。婚約者を決めた場合、この魅了の力が何らかの形で作動すると、大変な騒動を巻き起こす事になるかもしれない。将来、誰かと一緒にいれるとしたら魅了の力がなくなった時か、後はこの力に左右されないような・・。誰かを見つけるしかないと思っていた。」

「ああ、でも・・。アドルファスの魅了に左右されない人って、私・・」

「・・えっ?」

眼鏡ごしにジッと視られる感覚に私はカッと頬を染めた。

触れられている腕が熱を持っている感覚に心臓が逸る。

私って阿保なの!?今、何を口走った!?
ポリポリと頭をかいたアドルファスから、心拍数が明らかに上昇中の私は真っ赤な顔で視線を反らした。

向き合う私達の間に不思議な空気が流れていた。
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