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聖女ルルドの恋模様
波乱の体育祭は窒息注意⑧
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「え。・・・何で?何を言っているの?アリアは人質じゃなくて、王妃になって僕たちの国の民を・・」
「我が国の民が、それを望むと思うか?女神の再来と呼ばれ、戦争を終結させた聖女であるアリア姫の功績は我が国の民も認めるだろう。だが、前の国王一家は処刑され、新たな王となったが・・。
戦争をしかけてきた国の姫でもあるのだぞ。」
「だけど、それはアリアがした事じゃない!!アリアは誰よりも平和を願っているし、人を大切にする優しい子なのに。人質なんて・・。そんなの僕は認めない!!」
ワァアッと馬車の中で大泣きした僕に父は黙り込んだ。
アドルファスは無言のまま黙って窓の外を眺めていた。
アリアが9歳の誕生日の日、永い眠りについた後僕は本当の笑顔を失った・・。
仮面を被り、王子の笑みを浮かべて品よく体裁を作ろう事に慣れていく度に想い出の中の
アリアとの日々が幻だったように感じた。
そうしている内に、僕の婚約者の選定が始まった。
アリアの名前を何度出しても、「目覚めぬ姫はお前の婚約者として認められない」と、何度も父に撥ねつけられた。
もし、目が覚めた今・・。父に彼女との結婚を望んだら・・。
人質にしてしまうならば、僕が王子の地位を捨ててグランデリアに行く。
毎年、眠り続ける君に願った・・。
もう1度目を開けて、僕を見て笑って。
そうしたら僕は、また笑えるようになる・・。
義務も、王子の責務も年を重ねるごとにその重要性は身に染みて感じている。
僕にとって、変わらない気持ちで思い続ける事が出来る奇跡的な存在は
アリア・・。君だけだ。
「アリア・・。目を覚まして!!ゴホッ・・。アリアッ」
長い睫毛が影を作り、唇は動きを止めている。
「また失う訳にはいかないんだ。愛しい彼女を助けたい!!」
急に縛られたままの背中の方から光が霧散する。何だろう右手が熱い・・。
急に力が湧いてくる感覚が芽生えて、全身の痺れが薄くなっていく。
右手に何か硬い物が浮き出てくる感覚に驚きを覚えた。
太く長い剣の柄の部分が現れて右手でそれを握りしめた。
・・ザクッ!!
傾きを付けると簡単に結ばれた縄が切れた。
長い剣先は自分の背中まで届く大きさなのに、重量は羽根のように軽かった。
水晶を模ったような透明な刃の美しさに息を飲んで見上げた。
アリアの腕の縄を切って抱き起す。
真っ青なまま、唇の色も青ざめてきていた。
「アリアッ!!起きて・・。しっかりしてくれ!!」
鉄の扉の前では、物騒な音がしていた。
「そこをどけ!!」「ひぃっ・・!!」
「お前ら殺すぞ、火炙りかその黒衣よく燃えるだろうな。
それとも・。水攻めがいいか?全身バラバラにしてやろうか?」
敵が不憫に感じる程・・。辛辣な責めが聞こえた。
兄が表に来ていることに気づいて安堵する。
一刻も早くアリアをこの場所から出さなければ。
彼女をしっかりと胸に抱きかかえながら、剣を構えた。
「アドルファス・・!!下がれっ!!」
力を籠めずに大きな剣先を十字に翳すと、剣の先から白い刃の突風が放たれた。
煙と砂塵が舞い上がり、一瞬視界が見えなくなる。
ガシャン・・。
パラ・・。パラ。
気が付くと鉄の扉を内側から待っ二つに叩き切っていた。
目の前に黒衣の男を羽交い絞めにしていたカインとケイドル、何故かマッチに火をつけようとしていたアドルファス
が驚いた様子でこちらを見た。
「・・良かった。クレトス、無事か!?」
アドルファスがこちらの姿を確認して気が抜けたように笑った。
胸に抱えたままのアリアをそっと抱きかかえる。
「ああ・・。アリアが、火を消してくれたお陰でね・・。何とか助かった。」
力なく肩を落とすと、持っていた水晶で出来た剣が握っていた手から消え去った。
右手の熱さも消え去った。
そっと膝を降ろしてアリアを横たえた。
蒼白になった頬を撫でる。
「ごめんな、アリア・・。苦しかったよな。」
ゆっくりと背中を起こしてアリアの頭を持ち上げて自分の顔に近づける。
そっと自分の身体も彼女の白磁の肌と薄紫色の唇を捉えて距離を縮めていく・・。
「今、人工呼吸と言う名の目覚めのキスを・・・」
<バコン・・!!!>
「やめろ、愚弟!!」「暴挙だぞ、クレトス!!」「お前、頭悪すぎるから。この変態!」
ドサッ・・。
俺は、アリアとの初チュウの寸前・・。
アドルファスに落ちていたコンクリートブロックで殴られて気絶してしまった。
数秒後に、目覚めた私はドアの残骸の前で伸びているクレトスに驚いて目を白黒させた。
「しまった。ぐっすり眠ってしまったわ・・。あれ??ここ、外・・よね・・。無事に出られたのね。
・・えっ!?クレトス!?ど、どうしたの??」
何があったのかをアドルファスとカイン、ケイドルに尋ねてみたけれど
みんな視線を反らして何も答えてくれなかった。
「我が国の民が、それを望むと思うか?女神の再来と呼ばれ、戦争を終結させた聖女であるアリア姫の功績は我が国の民も認めるだろう。だが、前の国王一家は処刑され、新たな王となったが・・。
戦争をしかけてきた国の姫でもあるのだぞ。」
「だけど、それはアリアがした事じゃない!!アリアは誰よりも平和を願っているし、人を大切にする優しい子なのに。人質なんて・・。そんなの僕は認めない!!」
ワァアッと馬車の中で大泣きした僕に父は黙り込んだ。
アドルファスは無言のまま黙って窓の外を眺めていた。
アリアが9歳の誕生日の日、永い眠りについた後僕は本当の笑顔を失った・・。
仮面を被り、王子の笑みを浮かべて品よく体裁を作ろう事に慣れていく度に想い出の中の
アリアとの日々が幻だったように感じた。
そうしている内に、僕の婚約者の選定が始まった。
アリアの名前を何度出しても、「目覚めぬ姫はお前の婚約者として認められない」と、何度も父に撥ねつけられた。
もし、目が覚めた今・・。父に彼女との結婚を望んだら・・。
人質にしてしまうならば、僕が王子の地位を捨ててグランデリアに行く。
毎年、眠り続ける君に願った・・。
もう1度目を開けて、僕を見て笑って。
そうしたら僕は、また笑えるようになる・・。
義務も、王子の責務も年を重ねるごとにその重要性は身に染みて感じている。
僕にとって、変わらない気持ちで思い続ける事が出来る奇跡的な存在は
アリア・・。君だけだ。
「アリア・・。目を覚まして!!ゴホッ・・。アリアッ」
長い睫毛が影を作り、唇は動きを止めている。
「また失う訳にはいかないんだ。愛しい彼女を助けたい!!」
急に縛られたままの背中の方から光が霧散する。何だろう右手が熱い・・。
急に力が湧いてくる感覚が芽生えて、全身の痺れが薄くなっていく。
右手に何か硬い物が浮き出てくる感覚に驚きを覚えた。
太く長い剣の柄の部分が現れて右手でそれを握りしめた。
・・ザクッ!!
傾きを付けると簡単に結ばれた縄が切れた。
長い剣先は自分の背中まで届く大きさなのに、重量は羽根のように軽かった。
水晶を模ったような透明な刃の美しさに息を飲んで見上げた。
アリアの腕の縄を切って抱き起す。
真っ青なまま、唇の色も青ざめてきていた。
「アリアッ!!起きて・・。しっかりしてくれ!!」
鉄の扉の前では、物騒な音がしていた。
「そこをどけ!!」「ひぃっ・・!!」
「お前ら殺すぞ、火炙りかその黒衣よく燃えるだろうな。
それとも・。水攻めがいいか?全身バラバラにしてやろうか?」
敵が不憫に感じる程・・。辛辣な責めが聞こえた。
兄が表に来ていることに気づいて安堵する。
一刻も早くアリアをこの場所から出さなければ。
彼女をしっかりと胸に抱きかかえながら、剣を構えた。
「アドルファス・・!!下がれっ!!」
力を籠めずに大きな剣先を十字に翳すと、剣の先から白い刃の突風が放たれた。
煙と砂塵が舞い上がり、一瞬視界が見えなくなる。
ガシャン・・。
パラ・・。パラ。
気が付くと鉄の扉を内側から待っ二つに叩き切っていた。
目の前に黒衣の男を羽交い絞めにしていたカインとケイドル、何故かマッチに火をつけようとしていたアドルファス
が驚いた様子でこちらを見た。
「・・良かった。クレトス、無事か!?」
アドルファスがこちらの姿を確認して気が抜けたように笑った。
胸に抱えたままのアリアをそっと抱きかかえる。
「ああ・・。アリアが、火を消してくれたお陰でね・・。何とか助かった。」
力なく肩を落とすと、持っていた水晶で出来た剣が握っていた手から消え去った。
右手の熱さも消え去った。
そっと膝を降ろしてアリアを横たえた。
蒼白になった頬を撫でる。
「ごめんな、アリア・・。苦しかったよな。」
ゆっくりと背中を起こしてアリアの頭を持ち上げて自分の顔に近づける。
そっと自分の身体も彼女の白磁の肌と薄紫色の唇を捉えて距離を縮めていく・・。
「今、人工呼吸と言う名の目覚めのキスを・・・」
<バコン・・!!!>
「やめろ、愚弟!!」「暴挙だぞ、クレトス!!」「お前、頭悪すぎるから。この変態!」
ドサッ・・。
俺は、アリアとの初チュウの寸前・・。
アドルファスに落ちていたコンクリートブロックで殴られて気絶してしまった。
数秒後に、目覚めた私はドアの残骸の前で伸びているクレトスに驚いて目を白黒させた。
「しまった。ぐっすり眠ってしまったわ・・。あれ??ここ、外・・よね・・。無事に出られたのね。
・・えっ!?クレトス!?ど、どうしたの??」
何があったのかをアドルファスとカイン、ケイドルに尋ねてみたけれど
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