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飛び出した檻。

もう1人の天才。⑤

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「どっちなんだよ?お前、俺と婚約してるのに・・こんなアメリカ帰りの軽い男と付き合ってるのか?」

久々に会った俺様の婚約者にも、二条慧のお陰で言い返せるようになった私はその言葉に反撃したのだった。

「・・・海君とも婚約した覚えはないけど。
親同士が決めた許嫁でしょう?海君だって散々嫌がっていたんだから、私なんかより素敵な女性と結婚して幸せになれば!?」

私の言葉に、ビックリした藤堂海は本屋の紙袋をドサッと落として私をまじまじと見つめる。

「とにかく、私は許嫁も解消したいし、二条先生とも付き合う気はありません。
勝手にライバルみたいにバチバチ火花散らさないでくれる?
ただでさえ熱いのにうざったいんです。」

目を眇めて、2人を見ると各々が思い思いの表情を浮かべていた。

何故か嬉しそうに笑っていた慧は、声を弾ませた。

「よく言った。許嫁はこの機会に解消してもらおう。スッキリしないと俺とも付き合えないからな。
美桜は真面目だから、・・中途半端は嫌だろうな。」

「はい?なんでそうなるの?だから、どちらもそんなんじゃないんですってば・・。」

・・そうではない。

ポジティブさに目を見張る。

「何で許嫁を解消するんだ?お前が生まれた頃から、俺の妻になることは決まっていたんだぞ。
今更何を寝ぼけた事を言ってるんだ!!お前の両親だって絶対に許さないだろう?」

藤堂 海のその言葉にビクリと体が震えた。

絶対的権力の両親と、藤堂海は私の苦手な支配的な部類の人間・・。

自分が誰よりも正しいと思っている人種だった。

体温が足元まで冷え固まって行くような感覚を感じていた時だった。

「・・親は関係ないだろ。美桜の人生は彼女のものだ。
それに今日は彼女の生まれて来た日なんだ、邪魔しないでくれ。」

二条慧は私の腰を手で掴み、体を引き寄せ抱き留める。

驚いた表情の私と、藤堂海を見てにやっと笑んだ。

「行くぞ、美桜!聞かなくていいんだ、時間がもったいない。走れ!」

私の手を掴んで、その場から走り去ったのだった。

焦った藤堂 海は、顔を見上げて大きな声で叫んだ。

「おい!!美桜、行くな・・。戻って来い!!」

私は、走りながら海を振り返った。

いつもは自信に満ち溢れている海が、何処か傷ついたような、悲しそうな表情を浮かべて立ち尽くしていた。

ズキンと胸が少し傷んだ。

私は、握られた手の熱さにハッとして目の前の背中を見上げた。

この人は、私を救い出してくれる・・。

どうして?

私の気持ちを理解しているような彼の背中を走りながらただ黙って見つめていた。
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