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第8話 模擬戦2
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アリアさんとシャルロットさんが模擬戦を始める前に俺の渡した魔道具を見ると初めてみたらしくどう使うのか戸惑っていた。
「二人ともこの魔道具を使ったことがないみたいだね。この魔道具は腕に着けて魔力を流して結界の中に入ると起動するよ」
俺の言葉通りに二人は魔道具を着けて結界に入った。
「二人とも試合を始めていいか」
「いいわよ」「いいですよ」
スティーブンの呼び掛けに二人は返事をしたのでスティーブンの合図で試合が開始された。
「それでは模擬戦始め」
合図とともにアリアさんとシャルロットさんはてを前にかざしたが、先にアリアさんから攻撃を仕掛けた。
「ストーンバレット」
「ウインドサークル」
アリアさんの攻撃から少し遅れてシャルロットさんが風属性下級魔法『ウインドサークル』を使用した。
『ウインドサークル』は使用者を中心に風の障壁を造る魔法である。
ただし下級魔法なので防御力は低い。
「なかなかやるわね。ならサンドランス」
「ロ、ロックウォール」
続けて繰り出されたアリアさんのサンドランスに対してシャルロットさんは土属性中級魔法の『ロックウォール』を使用して岩の壁を造りだし、攻撃を防いだ。
「邪魔な壁ね。ならグラビティプレス」
「きゃあ」
シャルロットさんの『ロックウォール』によって残った岩の壁をアリアさんが重力属性中級魔法『グラビティプレス』によって岩の壁を押し潰して破壊するとその余波によってシャルロットさんはバランスを崩し少し吹き飛ばされた。
「まだまだいくわよ。ストーンマシンガン」
そこへ追い打ちをかけるように土属性中級魔法『ストーンマシンガン』を放った。
土属性中級魔法『ストーンマシンガン』は初級魔法である『ストーンバレット』の強化版である。
『ストーンバレット』が一般的に直径五センチの石のつぶてを放つのに対して、『ストーンマシンガン』は一般的に直径二十センチほどの石を『ストーンバレット』以上のスピードで打ち出す魔法である。
人の顔の大きさ程の石が襲いかかってくるのは弱冠恐怖を覚えるが、石のサイズやスピードは調節もできるので、今回アリアさんが使った『ストーンマシンガン』はやや小さめである。
だが、もちろん威力は十分なわけでバランスを崩しているシャルロットさんは避けきれるものではないのでシャルロットさんは防御魔法を使った。
「海獣の守り」
シャルロットさんを中心に展開された『海獣の守り』は『ストーンマシンガン』によって発生した石を次々に防いでいった。
「まだ止めるの!?ならグラビティプレス」
「その魔法はもう効きません。」
「え!?いない!?どこにいるの?」
防御魔法を押し潰したアリアさんはそこにいるはずのシャルロットさんがいなかったので驚きあたりを見渡した。
「メイク・アイスマン」
その声とともにアリアさんの後ろに現れたシャルロットさんは氷属性中級魔法『メイク・アイスマン』を使用した。
氷属性中級魔法『メイク・アイスマン』は避けきれるものではない氷の人形を造り出す魔法である。
氷の人形は基本的には人間の子供くらいのサイズであり、一般的にはこの魔法でできた人形に使用者が指示を出すことでアイスマンを操作することができる。
ただしこの魔法は無属性魔法である『ゾイ・コーキュラス』を同時に使用しなければただの人形の氷像でしかないのでこの魔法をはじめとする人形を生み出す魔法の使い手の多くは『ゾイ・コーキュラス』を使える使い手が多い。
だがこの『ゾイ・コーキュラス』という魔法は適正がないとほとんど使えない魔法なので実際は『ゾイ・コーキュラス』を使える者が『メイク・アイスマン』のような魔法を習得していくと言ったほうが正しかったりする。
まあ、『ゾイ・コーキュラス』の適正がなくても形を利用するために覚えているものもいるがな。
さて、シャルロットさんが出したアイスマンは平均よりも体が大きいタイプだった。
アイスマンは生み出されるとアリアさんのほうに向かっていった。
それと同時にシャルロットさんは次の魔法を唱えた。
「メイク・クレイマン」
そして土属性中級魔法『メイク・クレイマン』で生み出された土の人形がアイスマンに続いてアリアさんに襲いかかって行った。
「ちょっと、まだ出てくるの!?グラビティプレス」
襲いかかってくるアイスマンとクレイマンに向かってシャルロットさんは『グラビティプレス』を発動させ、押し潰していった。
「そんな…あっさり壊されるなんて…」
「まだまだいくわよ。ストーンバレット」
「それならアポロガシーウインド」
アリアさんが放った『ストーンバレット』に対して、シャルロットさんは風属性中級魔法の『アポロガシーウインド』を使い、ストーンバレットを跳ね返した。
風属性中級魔法『アポロガシーウインド』は相手の魔法を跳ね返す魔法である。
この魔法は使用者の正面に風を発生させ、相手の放った魔法を向かってきた方向と逆の方向に跳ね返す魔法である。
ただし、この魔法は攻撃力の低い中級魔法以下の魔法を跳ね返すことしかできない。
また、同じ級位の魔法のなかでも習得難易度が高く、時間がかかることから使い手は少ない。
「え!嘘でしょ!ロックウォール」
いきなり跳ね返った自分の魔法に驚きながらアリアさんはとっさに防御魔法を展開した。
しかし、跳ね返ってきた魔法はロックウォールにひびをいれたが、なんたか防ぐことができた。
「そんな魔法まで使えるなんて…こうなったら上級魔法しかないわね。カノニ・ヴァーチャス」
魔法を唱えると直径一メートル程の岩がアリアさんの手元から打ち出されていった。
『カノニ・ヴァーチャス』は土属性上級魔法である。
この魔法は直径一メートル程の岩を打ち出す魔法であり、特に打ち出された岩のスピードが特徴的である。
土属性の魔法は他の基本の六属性、特に雷属性や風属性に比べてスピードで劣っていて、攻撃力でも火属性や氷属性、雷属性に劣っているのが特徴的である。
ただし、土属性は『ロックウォール』のような防御魔法の防御力が高いのが特徴的であり、『ストーンバレット』などの魔法はあくまで妨害目的で使われることの多い魔法である。
そんな特徴のため、土属性は攻撃を重視する魔法の使い手にはあまり人気がない。
だが、そんな土属性の中でも『カノニ・ヴァーチャス』は攻撃力の高い魔法である。
この魔法は雷属性や風属性の魔法の平均にはやや劣るものの、他の六属性の魔法の平均よりもスピードが速く、攻撃力も高いのが特徴的である。
さらに、魔法で打ち出す岩の数を減らすことで上級魔法にしては魔力の消費が少ない魔法でもある。
アリアさんから打ち出された岩が至近距離にいたシャルロットさんに向かって放たれたが、ほぼ同時にシャルロットさんが使った風属性上級魔法『風龍の守り』によって展開されたシャルロットさんの周囲に吹き荒れる風の守りがアリアさんが放った『カノニ・ヴァーチャス』衝突した。
二つの魔法がお互いに相手の魔法を押し返そうとするなか、アリアさんの『カノニ・ヴァーチャス』がシャルロットさんの『風龍の守り』を突き破った。
しかし、そこで『カノニ・ヴァーチャス』も力を失い消滅していった。
アリアさんとシャルロットさんの表情に疲労の色が濃く見えるなか、
「試合終了だ」
スティーブンによって試合終了と伝えられたのだった。
スティーブンの合図が聞こえると二人は糸が切れたようにその場に座り込んでしまった。
「おい、二人とも大丈夫か」
俺とスティーブンは座り込んでしまった二人のもとに急いで駆け寄った。
「魔力切れで動けないの」
「私もてす」
二人は模擬戦で魔力を使い果たし、魔力切れをおこし、倒れていたようだった。
「二人とも少し横になっていて。今、回復魔法をかけるから。ライトセラフィー」
俺は二人に声をかけると、光属性中級魔法『ライトセラフィー』を使用した。
光属性中級魔法『ライトセラフィー』は魔法の対象者に使用者の魔力を分け与える魔法である。
分け与えられる魔力量は使用者の保有魔力量に比例しており、魔力量が多いほど回復量も多くなる。
ただしこの魔法で回復できるのは対象者の保有魔力限界量の二割~三割ほどなので多くはない。
俺の発動した『ライトセラフィー』は倒れているアリアさんとシャルロットさんを光の膜で包むと二人の魔力を回復させ始めた。
「スティーブンは二人の体力を回復させて」
「ああ、わかった。ホーリーヒール」
返事をしたスティーブンは二人に対して、聖属性中級魔法『ホーリーヒール』を使用した。
聖属性中級魔法『ホーリーヒール』は水属性中級魔法『アクアヒール』のように対象の疲労や体力を回復させる魔法である。
だが、『アクアヒール』と違い、聖属性の魔法なので、回復力は同じ級位の魔法の中でもかなり高い。
スティーブンが発動した『ホーリーヒール』は俺の『ライトセラフィー』のさらに上から二人を包み、二人を回復させ始めた。
俺たちが魔法をかけ終わると落ち着いたようで、俺たちは一旦四人で話をすることになった。
「アリアさん、シャルロットさん、二人とも模擬戦お疲れ様。もう大丈夫なの?」
「もう大丈夫です。ラフォス君、スティーブン君、ありがとうございました。私、珍しく魔力を使いきってしまって…」
「私も魔力を使いきっちゃったからどうなるかと思ったけど、二人のおかげで助かったわ」
「お前たちが気にすることはない。俺たちはすでに同じ班の仲間なのだからな。それに今回はラフォスの指示があったからすぐに対処できただけだ」
「いや、俺の指示だけじゃなく、スティーブンの回復魔法があったから更に速く回復できたんだよ。それにしてもスティーブンは聖属性の中級の回復魔法も覚えたんだね」
「便利だからな。お前こそ、魔力回復魔法を覚えていたじゃないか」
「スキアがよく魔力切れをおこすから気がついたら覚えてたんだよ」
「スキアも魔法を使えるようになったのか」
「話してなかったか。まだ中級までしか使えないがな」
「それでも十分すごいと思うぞ」
「ちょっ、二人だけで話を進めないでよ。ていうかスキアって誰よ」
アリアにつっこまれて思い出しましたが、いつの間にか俺とスティーブンだけで話をしていました。
「ごめんごめん。スキアの話は置いといて、え~と二人の模擬戦を見ての感想を言えばいいのかな」
「さっきまでの話しとは繋がってないけどそれでいいわよ」
アリアさんが肩をがっくり落としながら言った。
「そうですね。さっきまでの話しとは違う気がしますが、感想をお願いします」
シャルロットさんにもため息をつかれながら言われた。
これは俺たちが悪かったので諦めて話を進めることにした。
「俺とスティーブン、どっちから先に話す?」
「お前のほうがこういうのは得意だろうし、先に話をさせろ」
「じゃあ、スティーブンから先にお願い」
「そうだな~。まず、アリアは同じ属性ばかりだったな。同じ属性ばかりだと相手に読まれやすくなってしまうぞ。」
「そんなこと言われても…ついつい自分の得意な属性を使っちゃうのよ」
「あとはこれはシャルロットもだと思うが二人とも接近戦が苦手なんじゃないか」
「仕方がないじゃない。身体強化とかそっちの系統の魔法は覚えてないんだから」
「私もあまり接近戦は得意ではないので…」
「あと、シャルロットは攻撃魔法が使えないのか?」
「あ、それ私も思った。戦っていて攻撃してこないからどうしたんだろうって思っていたのよ」
二人の言葉に顔をうつむかせながらシャルロットさんは答えた。
「私、ほとんど攻撃魔法を覚えていなくて…」
「そうだったのか」
「そのすみません」
俺たち三人に頭を下げて謝り始めました。
「ちょっと、落ち着きなさいよ」
「そうだよ。シャルロットさん、落ち着いて」
「そうだ。二人の言う通り落ち着け」
三人でどうにかシャルロットさんを落ち着かせて話を続けた。
「まあ、スティーブンの言ってることは俺も気になるけど、先に俺の話を聞いてもらってから話を再開しようか。俺からはまず、アリアさんは防御魔法が苦手なんでしょ」
「な、なんでわかったの」
図星って表情をしているアリアさんが聞き返した。
「だってアポロガシーウインドでストーンバレットが跳ね返されたとき、ロックウォールで防いだけどロックウォールにひびが入っていたでしょ。アポロガシーウインドは確かに跳ね返した魔法の威力を上げて魔法に風属性が付与されるけど、中級の防御魔法にひびを入れるほどの威力にはならないよ。アリアさんは自分で土属性が得意って言っていたし、上級魔法のカノニ・ヴァーチャスも使えていたから苦手ってことはないだろうしね。だから防御魔法が苦手なのかな~って思っただけだよ」
「その通りよ。私はあんまり防御魔法が得意じゃないの。苦手なんだからしょうがないじゃない」
アリアさんがそっぽを向いてしまいました。
「じゃあ今度練習しないとね。でも攻撃魔法の威力はすごかったよ。特にカノニ・ヴァーチャスやグラビティプレスはすごかったよ」
「そうでしょ。私、攻撃魔法はすごいんだから」
アリアさんが得意気な顔になりました。
「攻撃魔法だけだけどな」
「じ、事実だけど強調して言わなくてもいいでしょ」
「そうだよ。スティーブンはいじわるしないでよ」
「すまんな。つい」
からかったスティーブンはアリアさんに素直に謝りました。
まあ、これはスティーブンが悪いからあたりまえだけど。
「あとは、スティーブンの言っていたように身体強化の魔法は使えるといいかな。次にシャルロットさんは支援系の魔法や防御魔法が得意なんだね。ミストとかも綺麗に決まっていたし」
「はい。私はあまり攻撃が好きじゃなくて…それで支援系の魔法や防御魔法ばかり覚えているんです」
「少しいいか。ラフォス」
「何、スティーブン」
「シャルロットとお前は入学する前からの知り合いか」
「いや、入学してから知り合ったよ。それがどうかしたの?」
「もしかして、今の模擬戦で水属性中級魔法ミストを使っていたのか?」
「そうだよ。気づかなかったの?」
「ああ、いつ使ったんだ」
「そうよ。戦っているときに気づけなかったなんていつ使ったの」
スティーブンとアリアさんは気づいていなかったらしく、かなり驚いている。
水属性中級魔法『ミスト』は霧を発生させる魔法である。
この魔法は広範囲に霧を発生させて、相手からの目隠しなどに使用される。
「シャルロットさんがアリアさんの後ろに現れたときだよ。そうでしょ、シャルロットさん」
「ラフォス君の言う通りです。あのとき私はミストを発生させアリアさんの後ろに近づきました」
「あのときに使っていたの!でも別に霧は発生してなかったわよ」
まだ納得していないアリアさんが続けて質問していく。
「そのまま使うとすぐにばれてしまうので、アリアさんの正面にウインドを使ってその周辺に霧が行かないように道をつくっていたんです」
実際にシャルロットさんは『ミスト』を使いながら風属性初級魔法『ウインド』を使って風をおこし、アリアさんの正面だけ霧がいかないようにしていた。
「そして、シャルロットさん自身は霧の濃い箇所を通って進んでいたというわけだ」
説明を聞いた二人は驚きの表情を隠せずにいた。
「そんなことをしていたなんて気づかなかった」
「私も実際に戦っていたのに…」
「まあこの話は置いといて、シャルロットさんは攻撃魔法は何を使えるんだ。入試の内容から12階聖にいるんだし、上級の攻撃魔法を使えるんじゃないのか」
俺の質問にシャルロットさんは弱々しく返事をしながら答えていった。
「はい。実はラフォス君の言う通り上級の攻撃魔法を使うことができます。でもそれは一つだけですし、他の攻撃魔法は初級魔法しか覚えていないんです」
「どんな魔法なんだ」
「えっと、その、『疾風千刃』です」
俺たちはその答えに驚きを隠せなかった。
風属性上級魔法『疾風千刃』は風の刃を大量に生み出しその刃で攻撃する魔法である。
この魔法は空中に生み出した風の刃を使うため、全方位の防御でしか防ぐことができず、さらに一つ一つの刃の攻撃力が高いのが特徴的である。
ただしかなりの魔力を一度に消費してしまうため、魔力切れを起こしやすい魔法である。
「そんな強力な魔法を持っているんだね」
「さっきの模擬戦では使わなかっていなかったが、使えば勝てたのではないか」
「本当にどうして使わなかったの。使われてたら私、負けてたわよ」
シャルロットさんにせめよるスティーブンとアリアさんから後ろに下がりつつシャルロットさんは理由を話した。
「その、使う前に魔力が少なくなってしまって…」
「なら仕方がないじゃないね。もう少しして魔力が回復したら見せてもらってもいいかな」
「はい。別に構いません」
「じゃああとは特に模擬戦について話すこともないし、シャルロットさんの上級魔法をみたら明日のことを話しませんか」
俺の言葉に三人が首をかしげたがすぐにスティーブンは気づいた表情をして話始めた。
「確かにそうだな。明日からの試合はかなりの数あるし、お互いの魔法を多少なりとも見れたのだから明日に向けて作戦を練るほうが勝率も上がるだろう」
「それもそうね。今のままだとやっぱり不安だし」
「私も不安なのでありがたいです」
どうやら皆、賛成みたいなので話合いをすることは決定した。
「じゃあ、一先ず休憩しようか」
「そうだな」
「そうね。まだ回復しきってないし」
なんだかんだでお互いの実力を確認した俺たちの班は一先ず休憩してから話合いをすることになった。
「二人ともこの魔道具を使ったことがないみたいだね。この魔道具は腕に着けて魔力を流して結界の中に入ると起動するよ」
俺の言葉通りに二人は魔道具を着けて結界に入った。
「二人とも試合を始めていいか」
「いいわよ」「いいですよ」
スティーブンの呼び掛けに二人は返事をしたのでスティーブンの合図で試合が開始された。
「それでは模擬戦始め」
合図とともにアリアさんとシャルロットさんはてを前にかざしたが、先にアリアさんから攻撃を仕掛けた。
「ストーンバレット」
「ウインドサークル」
アリアさんの攻撃から少し遅れてシャルロットさんが風属性下級魔法『ウインドサークル』を使用した。
『ウインドサークル』は使用者を中心に風の障壁を造る魔法である。
ただし下級魔法なので防御力は低い。
「なかなかやるわね。ならサンドランス」
「ロ、ロックウォール」
続けて繰り出されたアリアさんのサンドランスに対してシャルロットさんは土属性中級魔法の『ロックウォール』を使用して岩の壁を造りだし、攻撃を防いだ。
「邪魔な壁ね。ならグラビティプレス」
「きゃあ」
シャルロットさんの『ロックウォール』によって残った岩の壁をアリアさんが重力属性中級魔法『グラビティプレス』によって岩の壁を押し潰して破壊するとその余波によってシャルロットさんはバランスを崩し少し吹き飛ばされた。
「まだまだいくわよ。ストーンマシンガン」
そこへ追い打ちをかけるように土属性中級魔法『ストーンマシンガン』を放った。
土属性中級魔法『ストーンマシンガン』は初級魔法である『ストーンバレット』の強化版である。
『ストーンバレット』が一般的に直径五センチの石のつぶてを放つのに対して、『ストーンマシンガン』は一般的に直径二十センチほどの石を『ストーンバレット』以上のスピードで打ち出す魔法である。
人の顔の大きさ程の石が襲いかかってくるのは弱冠恐怖を覚えるが、石のサイズやスピードは調節もできるので、今回アリアさんが使った『ストーンマシンガン』はやや小さめである。
だが、もちろん威力は十分なわけでバランスを崩しているシャルロットさんは避けきれるものではないのでシャルロットさんは防御魔法を使った。
「海獣の守り」
シャルロットさんを中心に展開された『海獣の守り』は『ストーンマシンガン』によって発生した石を次々に防いでいった。
「まだ止めるの!?ならグラビティプレス」
「その魔法はもう効きません。」
「え!?いない!?どこにいるの?」
防御魔法を押し潰したアリアさんはそこにいるはずのシャルロットさんがいなかったので驚きあたりを見渡した。
「メイク・アイスマン」
その声とともにアリアさんの後ろに現れたシャルロットさんは氷属性中級魔法『メイク・アイスマン』を使用した。
氷属性中級魔法『メイク・アイスマン』は避けきれるものではない氷の人形を造り出す魔法である。
氷の人形は基本的には人間の子供くらいのサイズであり、一般的にはこの魔法でできた人形に使用者が指示を出すことでアイスマンを操作することができる。
ただしこの魔法は無属性魔法である『ゾイ・コーキュラス』を同時に使用しなければただの人形の氷像でしかないのでこの魔法をはじめとする人形を生み出す魔法の使い手の多くは『ゾイ・コーキュラス』を使える使い手が多い。
だがこの『ゾイ・コーキュラス』という魔法は適正がないとほとんど使えない魔法なので実際は『ゾイ・コーキュラス』を使える者が『メイク・アイスマン』のような魔法を習得していくと言ったほうが正しかったりする。
まあ、『ゾイ・コーキュラス』の適正がなくても形を利用するために覚えているものもいるがな。
さて、シャルロットさんが出したアイスマンは平均よりも体が大きいタイプだった。
アイスマンは生み出されるとアリアさんのほうに向かっていった。
それと同時にシャルロットさんは次の魔法を唱えた。
「メイク・クレイマン」
そして土属性中級魔法『メイク・クレイマン』で生み出された土の人形がアイスマンに続いてアリアさんに襲いかかって行った。
「ちょっと、まだ出てくるの!?グラビティプレス」
襲いかかってくるアイスマンとクレイマンに向かってシャルロットさんは『グラビティプレス』を発動させ、押し潰していった。
「そんな…あっさり壊されるなんて…」
「まだまだいくわよ。ストーンバレット」
「それならアポロガシーウインド」
アリアさんが放った『ストーンバレット』に対して、シャルロットさんは風属性中級魔法の『アポロガシーウインド』を使い、ストーンバレットを跳ね返した。
風属性中級魔法『アポロガシーウインド』は相手の魔法を跳ね返す魔法である。
この魔法は使用者の正面に風を発生させ、相手の放った魔法を向かってきた方向と逆の方向に跳ね返す魔法である。
ただし、この魔法は攻撃力の低い中級魔法以下の魔法を跳ね返すことしかできない。
また、同じ級位の魔法のなかでも習得難易度が高く、時間がかかることから使い手は少ない。
「え!嘘でしょ!ロックウォール」
いきなり跳ね返った自分の魔法に驚きながらアリアさんはとっさに防御魔法を展開した。
しかし、跳ね返ってきた魔法はロックウォールにひびをいれたが、なんたか防ぐことができた。
「そんな魔法まで使えるなんて…こうなったら上級魔法しかないわね。カノニ・ヴァーチャス」
魔法を唱えると直径一メートル程の岩がアリアさんの手元から打ち出されていった。
『カノニ・ヴァーチャス』は土属性上級魔法である。
この魔法は直径一メートル程の岩を打ち出す魔法であり、特に打ち出された岩のスピードが特徴的である。
土属性の魔法は他の基本の六属性、特に雷属性や風属性に比べてスピードで劣っていて、攻撃力でも火属性や氷属性、雷属性に劣っているのが特徴的である。
ただし、土属性は『ロックウォール』のような防御魔法の防御力が高いのが特徴的であり、『ストーンバレット』などの魔法はあくまで妨害目的で使われることの多い魔法である。
そんな特徴のため、土属性は攻撃を重視する魔法の使い手にはあまり人気がない。
だが、そんな土属性の中でも『カノニ・ヴァーチャス』は攻撃力の高い魔法である。
この魔法は雷属性や風属性の魔法の平均にはやや劣るものの、他の六属性の魔法の平均よりもスピードが速く、攻撃力も高いのが特徴的である。
さらに、魔法で打ち出す岩の数を減らすことで上級魔法にしては魔力の消費が少ない魔法でもある。
アリアさんから打ち出された岩が至近距離にいたシャルロットさんに向かって放たれたが、ほぼ同時にシャルロットさんが使った風属性上級魔法『風龍の守り』によって展開されたシャルロットさんの周囲に吹き荒れる風の守りがアリアさんが放った『カノニ・ヴァーチャス』衝突した。
二つの魔法がお互いに相手の魔法を押し返そうとするなか、アリアさんの『カノニ・ヴァーチャス』がシャルロットさんの『風龍の守り』を突き破った。
しかし、そこで『カノニ・ヴァーチャス』も力を失い消滅していった。
アリアさんとシャルロットさんの表情に疲労の色が濃く見えるなか、
「試合終了だ」
スティーブンによって試合終了と伝えられたのだった。
スティーブンの合図が聞こえると二人は糸が切れたようにその場に座り込んでしまった。
「おい、二人とも大丈夫か」
俺とスティーブンは座り込んでしまった二人のもとに急いで駆け寄った。
「魔力切れで動けないの」
「私もてす」
二人は模擬戦で魔力を使い果たし、魔力切れをおこし、倒れていたようだった。
「二人とも少し横になっていて。今、回復魔法をかけるから。ライトセラフィー」
俺は二人に声をかけると、光属性中級魔法『ライトセラフィー』を使用した。
光属性中級魔法『ライトセラフィー』は魔法の対象者に使用者の魔力を分け与える魔法である。
分け与えられる魔力量は使用者の保有魔力量に比例しており、魔力量が多いほど回復量も多くなる。
ただしこの魔法で回復できるのは対象者の保有魔力限界量の二割~三割ほどなので多くはない。
俺の発動した『ライトセラフィー』は倒れているアリアさんとシャルロットさんを光の膜で包むと二人の魔力を回復させ始めた。
「スティーブンは二人の体力を回復させて」
「ああ、わかった。ホーリーヒール」
返事をしたスティーブンは二人に対して、聖属性中級魔法『ホーリーヒール』を使用した。
聖属性中級魔法『ホーリーヒール』は水属性中級魔法『アクアヒール』のように対象の疲労や体力を回復させる魔法である。
だが、『アクアヒール』と違い、聖属性の魔法なので、回復力は同じ級位の魔法の中でもかなり高い。
スティーブンが発動した『ホーリーヒール』は俺の『ライトセラフィー』のさらに上から二人を包み、二人を回復させ始めた。
俺たちが魔法をかけ終わると落ち着いたようで、俺たちは一旦四人で話をすることになった。
「アリアさん、シャルロットさん、二人とも模擬戦お疲れ様。もう大丈夫なの?」
「もう大丈夫です。ラフォス君、スティーブン君、ありがとうございました。私、珍しく魔力を使いきってしまって…」
「私も魔力を使いきっちゃったからどうなるかと思ったけど、二人のおかげで助かったわ」
「お前たちが気にすることはない。俺たちはすでに同じ班の仲間なのだからな。それに今回はラフォスの指示があったからすぐに対処できただけだ」
「いや、俺の指示だけじゃなく、スティーブンの回復魔法があったから更に速く回復できたんだよ。それにしてもスティーブンは聖属性の中級の回復魔法も覚えたんだね」
「便利だからな。お前こそ、魔力回復魔法を覚えていたじゃないか」
「スキアがよく魔力切れをおこすから気がついたら覚えてたんだよ」
「スキアも魔法を使えるようになったのか」
「話してなかったか。まだ中級までしか使えないがな」
「それでも十分すごいと思うぞ」
「ちょっ、二人だけで話を進めないでよ。ていうかスキアって誰よ」
アリアにつっこまれて思い出しましたが、いつの間にか俺とスティーブンだけで話をしていました。
「ごめんごめん。スキアの話は置いといて、え~と二人の模擬戦を見ての感想を言えばいいのかな」
「さっきまでの話しとは繋がってないけどそれでいいわよ」
アリアさんが肩をがっくり落としながら言った。
「そうですね。さっきまでの話しとは違う気がしますが、感想をお願いします」
シャルロットさんにもため息をつかれながら言われた。
これは俺たちが悪かったので諦めて話を進めることにした。
「俺とスティーブン、どっちから先に話す?」
「お前のほうがこういうのは得意だろうし、先に話をさせろ」
「じゃあ、スティーブンから先にお願い」
「そうだな~。まず、アリアは同じ属性ばかりだったな。同じ属性ばかりだと相手に読まれやすくなってしまうぞ。」
「そんなこと言われても…ついつい自分の得意な属性を使っちゃうのよ」
「あとはこれはシャルロットもだと思うが二人とも接近戦が苦手なんじゃないか」
「仕方がないじゃない。身体強化とかそっちの系統の魔法は覚えてないんだから」
「私もあまり接近戦は得意ではないので…」
「あと、シャルロットは攻撃魔法が使えないのか?」
「あ、それ私も思った。戦っていて攻撃してこないからどうしたんだろうって思っていたのよ」
二人の言葉に顔をうつむかせながらシャルロットさんは答えた。
「私、ほとんど攻撃魔法を覚えていなくて…」
「そうだったのか」
「そのすみません」
俺たち三人に頭を下げて謝り始めました。
「ちょっと、落ち着きなさいよ」
「そうだよ。シャルロットさん、落ち着いて」
「そうだ。二人の言う通り落ち着け」
三人でどうにかシャルロットさんを落ち着かせて話を続けた。
「まあ、スティーブンの言ってることは俺も気になるけど、先に俺の話を聞いてもらってから話を再開しようか。俺からはまず、アリアさんは防御魔法が苦手なんでしょ」
「な、なんでわかったの」
図星って表情をしているアリアさんが聞き返した。
「だってアポロガシーウインドでストーンバレットが跳ね返されたとき、ロックウォールで防いだけどロックウォールにひびが入っていたでしょ。アポロガシーウインドは確かに跳ね返した魔法の威力を上げて魔法に風属性が付与されるけど、中級の防御魔法にひびを入れるほどの威力にはならないよ。アリアさんは自分で土属性が得意って言っていたし、上級魔法のカノニ・ヴァーチャスも使えていたから苦手ってことはないだろうしね。だから防御魔法が苦手なのかな~って思っただけだよ」
「その通りよ。私はあんまり防御魔法が得意じゃないの。苦手なんだからしょうがないじゃない」
アリアさんがそっぽを向いてしまいました。
「じゃあ今度練習しないとね。でも攻撃魔法の威力はすごかったよ。特にカノニ・ヴァーチャスやグラビティプレスはすごかったよ」
「そうでしょ。私、攻撃魔法はすごいんだから」
アリアさんが得意気な顔になりました。
「攻撃魔法だけだけどな」
「じ、事実だけど強調して言わなくてもいいでしょ」
「そうだよ。スティーブンはいじわるしないでよ」
「すまんな。つい」
からかったスティーブンはアリアさんに素直に謝りました。
まあ、これはスティーブンが悪いからあたりまえだけど。
「あとは、スティーブンの言っていたように身体強化の魔法は使えるといいかな。次にシャルロットさんは支援系の魔法や防御魔法が得意なんだね。ミストとかも綺麗に決まっていたし」
「はい。私はあまり攻撃が好きじゃなくて…それで支援系の魔法や防御魔法ばかり覚えているんです」
「少しいいか。ラフォス」
「何、スティーブン」
「シャルロットとお前は入学する前からの知り合いか」
「いや、入学してから知り合ったよ。それがどうかしたの?」
「もしかして、今の模擬戦で水属性中級魔法ミストを使っていたのか?」
「そうだよ。気づかなかったの?」
「ああ、いつ使ったんだ」
「そうよ。戦っているときに気づけなかったなんていつ使ったの」
スティーブンとアリアさんは気づいていなかったらしく、かなり驚いている。
水属性中級魔法『ミスト』は霧を発生させる魔法である。
この魔法は広範囲に霧を発生させて、相手からの目隠しなどに使用される。
「シャルロットさんがアリアさんの後ろに現れたときだよ。そうでしょ、シャルロットさん」
「ラフォス君の言う通りです。あのとき私はミストを発生させアリアさんの後ろに近づきました」
「あのときに使っていたの!でも別に霧は発生してなかったわよ」
まだ納得していないアリアさんが続けて質問していく。
「そのまま使うとすぐにばれてしまうので、アリアさんの正面にウインドを使ってその周辺に霧が行かないように道をつくっていたんです」
実際にシャルロットさんは『ミスト』を使いながら風属性初級魔法『ウインド』を使って風をおこし、アリアさんの正面だけ霧がいかないようにしていた。
「そして、シャルロットさん自身は霧の濃い箇所を通って進んでいたというわけだ」
説明を聞いた二人は驚きの表情を隠せずにいた。
「そんなことをしていたなんて気づかなかった」
「私も実際に戦っていたのに…」
「まあこの話は置いといて、シャルロットさんは攻撃魔法は何を使えるんだ。入試の内容から12階聖にいるんだし、上級の攻撃魔法を使えるんじゃないのか」
俺の質問にシャルロットさんは弱々しく返事をしながら答えていった。
「はい。実はラフォス君の言う通り上級の攻撃魔法を使うことができます。でもそれは一つだけですし、他の攻撃魔法は初級魔法しか覚えていないんです」
「どんな魔法なんだ」
「えっと、その、『疾風千刃』です」
俺たちはその答えに驚きを隠せなかった。
風属性上級魔法『疾風千刃』は風の刃を大量に生み出しその刃で攻撃する魔法である。
この魔法は空中に生み出した風の刃を使うため、全方位の防御でしか防ぐことができず、さらに一つ一つの刃の攻撃力が高いのが特徴的である。
ただしかなりの魔力を一度に消費してしまうため、魔力切れを起こしやすい魔法である。
「そんな強力な魔法を持っているんだね」
「さっきの模擬戦では使わなかっていなかったが、使えば勝てたのではないか」
「本当にどうして使わなかったの。使われてたら私、負けてたわよ」
シャルロットさんにせめよるスティーブンとアリアさんから後ろに下がりつつシャルロットさんは理由を話した。
「その、使う前に魔力が少なくなってしまって…」
「なら仕方がないじゃないね。もう少しして魔力が回復したら見せてもらってもいいかな」
「はい。別に構いません」
「じゃああとは特に模擬戦について話すこともないし、シャルロットさんの上級魔法をみたら明日のことを話しませんか」
俺の言葉に三人が首をかしげたがすぐにスティーブンは気づいた表情をして話始めた。
「確かにそうだな。明日からの試合はかなりの数あるし、お互いの魔法を多少なりとも見れたのだから明日に向けて作戦を練るほうが勝率も上がるだろう」
「それもそうね。今のままだとやっぱり不安だし」
「私も不安なのでありがたいです」
どうやら皆、賛成みたいなので話合いをすることは決定した。
「じゃあ、一先ず休憩しようか」
「そうだな」
「そうね。まだ回復しきってないし」
なんだかんだでお互いの実力を確認した俺たちの班は一先ず休憩してから話合いをすることになった。
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