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2章 魔法使いとストッカー

66 ロダンに言う? 言わない?

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 教会へ城へ帰る道すがら、スルーボードには乗らず私たちは話し合いをしている。

「ロッシーニ、どうしようか? ロダンに言う?」

「変に期待させてもアレですし… 手と足は構造も違うでしょうから、私は何とも…」

 あ~、そこか。恥ずかしい。ロダンの事情を忘れてたわけじゃ無いんだけど、ね。

「それもだけど、ローラとこれから共同開発? って感じになったじゃない? しかも勝手に決めちゃったし」

 ユーリは声を殺して笑っている。リットは陽気な感じで

「今更だろ? 怒られえちゃえよ。どうせ先を進めるならカイ様にも話を通さないといけないしさ」

「ぷぷぷ、お嬢様、ケイトもです」

 ユーリはまだ笑いながらつけ足す。

「はぁーーー。昨日、『発明は』って言われたばかりなんだよね」

「ふふふ」
「あはははは」

「しかし、ローラってあんな感じなんだね。毒気が抜けると普通の子だよね? しかもかわいいし」

「そうだな。領に来た当時は見張りをつけてたんだけど、結構人気があるみたいだぜ? 教会の前を若い男がうろちょろしてるらしい」

「え? 危なくない? あそこって年老いた神父さんと子供だけじゃん」

「大丈夫だって。工房の親方や職人がちょくちょく顔出して世話焼いてるってよ」

「よかった。まぁ、教会は役場からも見えるし大丈夫か」

「あぁ、警備兵の巡回もあるしな。うちの領は他領に比べて本当に平和だからな。犯罪が少ないんだぜ」

 和やかな笑い声が行き交う広場を通りぬけ、だんだん城へと近づいてきた。

「やばいよ。どうしよう。ねぇ、今日の事は内緒にしない? 試作品も一ヶ月先だし、ね? ロッシーニ」

 ロッシーニは一瞬嫌そうな顔をしてから考えている。

「今日か一ヶ月先かの違いでは? どの道怒られるんですよ?」

「わかってるわよ、そんなこと~、ぶ~」

 不貞腐れている私に呆れたのかロッシーニは助け舟を出してくれた。

「わかりました。詳細のレポートを書いていたと言うことにしましょう。なのでご主人様には報告が遅れたと言うことにします。しかし、伸ばせても十日ぐらいですからね」

「わ~い! やった! ロッシーニ大好き!」

 と、抱きつこうとしたら思いっきり片手で止められた。ん? なぜ?

「お嬢様、節度を守ってください。もう十七ですよ? それにお言葉遣いも。ほら、玄関前にケイトが見えます」

 え? っと振り返ると仁王立ちして腰に手を当てたケイトが立っていた。

「何で怒ってる風なの?」

 こそこそとリットに耳打ちする。

「アレじゃないか? アークがケイトに言付けたのかも」

「アーク?」

 ズズズっと足元から顔だけ出したアークが済まなそうに私を見てから目を逸らした。

「すみません。教会へ立ち寄ることを報告に行ったら、たまたまエントランスにケイトさんが居て…」

 …。無言でアークをにらむとズズズとまた影に戻っていった。

「お嬢様、ケイトさんは心配してるんですよ? 怒ってるんじゃ無いと思いますよ?」

 ユーリはニコニコとしているが、アレは絶対違うと思う。うん、絶対違う。長年の勘だけど。
 色々とあきらめた私はとぼとぼと玄関へ向かう。

「お嬢様、行き先が増えることは良しとしないのはお分かりですか?」

「… はい」

「今回は何事もなかったからいいものを。もっと自覚してください」

「… はい」

「ロッシーニも付いていながら何事ですか?」

「しかし… 制限ばかりではお嬢様は何もできなくなる。時間をとって事前にユーリに安全確認をさせたし、リット様とも連携はできていた。これはお嬢様付きの私が判断した最善の行動だ。ケイトは心配しすぎだ」

「しかしですね!」

 玄関前で『ファイッ』とゴングがなりそうだったので急いで止める。

「まぁまぁ、ケイトもロッシーニも。二人とも私のために思ってくれたんだよね? 私もできる限り注意はしてるのよ? だから、今日はこれで終わりにして。心配かけてごめんね、ケイト」

 ケイトの両手を握って必殺上目使いを久しぶりにやってみる。

「もうぉしょうがないですね。お嬢様には敵いません。さ、さ、お部屋に戻りましょう」

「はーい」

「で? ローラとは何のお話だったのですか?」

 外出していた全員が一瞬ビクッとなる。

「は? えっと、詳細はレポートに書くけど、お礼を言われたわ。この領で引き取ってくれて何とか…」

「そうですか。あの子もまだお若いですからね。やり直せているようならよかったですね」

「あはは、そうね」

 一瞬ドキッとなったよ。やっぱり隠し事は心臓に悪い。みんなごめんね。
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