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2章 魔法使いとストッカー

33 エド様の勘

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「よし。ジェシカ。一度行ってみるか」
エド様は考えがまとまったらしく、一息ついてから私に言って来た。

「えっ!何処にですか?」

「メンデル領だ。アダムもそう思うだろう?」

「あぁ。私は森が気になる。。。しかしそう簡単には。。。あぁ!そうか!」
アダム様は合点がいった様に私を見てニヤつく。

なっ、何?嫌な予感しかない。

「え~?何事~?」

私が顔をしかめていると、エド様とアダム様が勝手に話を進める。

「アダム、まだ時間は大丈夫だろう?お前とジェシカで見て来い。時間は1時間だ」

「私か?てっきりお前が行きたいと言うと思ったが?」

「ジェシカの『転移』は1人だけだ。私よりお前の方が適任だ」

。。。まさかとは思うけど、今からメンデル領へ転移するの?

「あ、あの。。。私は行った事がある所にしか行けませんよ?」

「そうなのか!しまったな。。。ジェシカ、ランドは居るか?」

「はい。。。でも、ランドのそれ・・は無理強いしないと誓約したのでは?」

「国の緊急事態だ。仕方がない。お願いだ、ジェシカから頼んでくれないか?今回限りだ。なぜか嫌な予感がする」
エド様は何か思う事があるのか、真剣に頼んで来た。

「はぁ~。本人が嫌がったら諦めて下さいね」

「あぁ」

私はちょっと失礼して部屋を出て、ドアの外の執事さんにランドを連れてくる様に伝える。

しばらくして、ランドがやって来た。

「ランド、メンデル領へは行った事があるか?」

「はい。魔法庁時代に遠征の演習で何度か。。。まさか、今から行くのですか?」

エド様とアダム様と私は苦笑いで頷く。

「ええ。私は行った事がないから。。。いい?」

「お嬢様が必要と言うのであれば。。。しかし、条件があります」

アダム様はランドの物言いに怒らず、分かっていたとばかりにランドの条件を聞く。

「では、私の能力は秘匿すると誓約して頂きましたので、まずは私がお嬢様だけをメンデル領へお連れします。その後に、どなたかがお嬢様と行かれてはいかがでしょうか?または、アダム様だけでよろしければ私がお連れしましょう。お嬢様が行く必要はないのではないでしょうか?しかし、いずれにしてロダン様に事前報告は必要です。お嬢様の転移で行かれるなら、尚更護衛が居ませんから」

「わかった。。。ロダン参謀を呼んで来てくれ」
ランドは承知したと、回れ右してロダンを呼びに行った。

「アダム様。いいんですか?」

「あぁ。『転移』が出来るだけでも今は十分だからな。それに見る・・だけだしな」

「ジェシカ。森が怪しい。今日どうしても見ておきたい。こんな機会はないからな」

「はい。しかし、森が怪しい?なぜでしょう?何か心当たりが?」

「あぁ。さっきランドが言っていた、今年の夏の魔法庁の訓練が断られたんだ。今までそんな事はなかったからな。。。そこでお前の先ほどの話と重なって。。。まぁ、勘だから何も無いかもしれないが。。。今、王族の問題はプリストン領だ。子飼いがいる領はそちらへ目を向けているはず。メンデル領に誰も目が行っていない」

ほうほう。

「そうなのですね。。。はぁ~。ロッド先生?メンデル領領主も?関係があるのかな?しかし、こんな大事になるとは。。。」

「ははははは。ジェシカ、珍しいな。面倒臭くなって来たか?しかし、国制とはこんなもんだ。毎年、毎月、大なり小なり領主との問題はある。税制とか災害とか。まっ、これは別問題だが」
アダム様はすっと立ち上がって部屋の隅へ行った。早速お出かけの支度をしている。

「王様、ロダンをお連れしました」
ランドとロダンが連れ立って部屋へ入って来る。

「あぁ、ロダン。すまない。ちょっとジェシカの手を借りたいんだ。今からメンデル領へ行こうかと思ってな。何、一瞬だ。アダムを付けるから安心していい」
エド様はロダンへめちゃくちゃ簡単に説明した。

「発言をお許し下さい」

エド様は手を一振りして許可を出す。

「恐れながら、国政の視察ならばお嬢様でなくともよろしいかと?」

「出来れば色々と特化を持っているジェシカに行ってもらいたいのだ」

ロダンは『はぁ~』とあからさまなため息をして、王様を見る。
、行く必要が?」

「あぁ。何度も言うが、ロダン、でなければいけない。私の勘だ」

「。。。そうですか。では、条件を。時間は10分でお願いします。不敬を承知で申し上げます。はっきり申し上げて、お嬢様には王族の案件には関わっていただきたくないのです」

ロダンは礼を取りながらもプイッと顔はそっぽ向いて居る。

。。。私は冷や汗がつ~っと垂れる。ロダンも言う様になったなぁ。そうとう王族に対して溜まっているのかな?

「あ、あぁ。しかし、ジェシカの特化を悪用はしない。先の事件の折の制約でそう約束したではないか。その代わり、できる限り協力はしてもらいたい。それは承知しているだろう?今回は視察だけだ。。。10分か。。。では、こちらも誠意を見せよう。私が行こう」

グレン様がガタッと立ち上がる。
「それは!アダムで十分だ。王が護衛なしに。。。ダメだ!」
「そうだ!私が行けばいいんだ。たかが視察だぞ?」
アダム様もびっくりしたのか、エド様に詰め寄っている。

「いい。私は国で一番強い。ジェシカの護衛にもなるだろう。これでロンテーヌ側も納得してくれるか?」

「はい」
ここまで言われれば、ロダンも『はい』以外言えないよね。ロダン、めっさ睨んでる。。。エド様!

「ジェシカ。では、早速行って来てくれ」

『はい』と了承した私は、ランドと手を繋ぎその場でメンデル領へ『転移』した。


「ここがメンデル領の森?静かね。。。木が高いわ。結構暗い感じなのね」

「あぁ。。。お嬢様。静かすぎる。。。前はもっと鳥や小動物の気配があったと思う。。。」
ランドは手を離さず周りを見回している。

「ランド。エド様をお待たせしてはいけないわ」

『あぁ』と気の無い返事をしながら、ランドは今度は城へ『転移』した。


「おかえり。どうだった?行けそうか?」

「はい。訓練で行った位置へ転移して来ました。。。王様はその場所へ行った事がありますか?」

ん?ランド?

「ある。私も若い時に何度か。。。何かあったのか?」

「いえ。。。私も勘としか。。。少し様子が違っていました。雰囲気というか。。。説明するのが難しいのですが。。。」

「そうか。。。ジェシカは?もう一度行けそうか?」

「えぇ」
私がハテナになっていると、ロダンが会話に入る。

「王様、もう少しだけお待ち頂けますか?お嬢様の支度をさせて下さい」
ロダンはエド様が返事をする前に、部屋を出て行く。

お~い。ロダン!王族相手に何だかすごいな。大丈夫?不敬とかもういいのかな?

「お嬢様、これを」
と、ランドは自分が羽織っていたマントを私に被らせる。

「このマントの裏に魔法陣が刺繍されている。対魔法にしか効かないが、防御してくれる」

「ありがとう」

そうしていたら、ロダンは早足で戻って来て私の髪に髪飾りを着けた。

「マーサの髪飾りです」
と、ロダンは耳元で囁く。

「ん?支度は出来たか?では、ジェシカ、身に触れる事を許可してくれ」

ん?ん?

って、あの誓約?私の秘密の制約?って、王族も?

戸惑っている私にアダム様が『そうだ』と言ってくる。そうなんだ~。へ~。

「エドワード様が私に触れる事を許可します」

エド様が私の手を握ると、一瞬、握られた手が光った。

「おぉ~」
と、私が驚いているとエド様に呆れられた。

「はぁ~。ジェシカ、頼む」

「あっ、はい」
私は目を瞑って、エド様と先ほどの森へ転移した。

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