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2章 魔法使いとストッカー

09 レクリエーション3日目

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今日は講堂で立食パーティーだ。パーティーといっても制服なので、ただの歓談する会になっている。でも、昨日とは違い3学年がごちゃ混ぜになっているので、ちょっとした社交の場になっている。よし!気合い入れるか!

「テオ君。今日は班行動しないほうがいいかもしれないわ。この状況は、みんなを困らせそうだから」

「。。。そうですね。ジェシカ君がそれでいいのなら、先生には俺から言っておくよ」

「お願い。ではまたね」

私はテオ班から抜け出し、ロッシーニを探す。ミーナはニックを見つけて駆け寄って行った。

「ジェシカ嬢、お久しぶりです。お元気になられたようで安心しました。しかし。。。ちょっと変わられましたね。。。清楚と言うか何と言うか。。。」
今日は手にキスはない。。。やった~!地味効果が出て来ている。

でも今1人なのに。。。確かこの方はカミル・ミサ様。

「ええ。おかげさまで。お久しぶりです、カミル様。今年は最終学年ですね」
私は微笑みながら返事をする。早くロッシーニが来ないかな?

「あぁ。残念だよ。1年しか一緒にいられないなんて。。。ジェシカ嬢は魔法科へ進んだんだね。実は私も魔法科なんだ」

「ええ。昨日のお食事会でおっしゃられていましたね」

「あぁ。。。また何かあれば声をかけてくれ。では」
と、あっさりとカミル様は去って行った。

よしっ!!!

外見だけでこんなに相手の反応が変わるんだな。まっ、お年頃の子達はこんなもんよね~。

「ジェシー様、お待たせしました。大丈夫でしたか?」
ロッシーニは去って行ったカミル様を見ている。

「ええ。。。地味な感じに程よくがっかりしていたわ。思惑通りよ。ふふふ。これで、今後はカミル様に絡まれなくて済む」
私は上機嫌でロッシーニに報告する。

「それは。。。ご令嬢としてはどうなのでしょう。。。もっとおしゃれをすればいいのに」

「いいの。私は地味でも中身を見てくれる人と友達になりたいし、将来もそんな方を婿に迎えたいから。居なきゃ居ないでいいのよ」

「そうですか。。。わかりました」
ロッシーニは半ば呆れている。その後、ミーナとニックも合流した。

「今日はこんな感じでしょう?公爵令嬢としてこの場では過ごすわ。みんなよろしくね」
3人は頷くと、ロッシーニが上座にあるいくつかのテーブル席の隅の席へと誘導する。

「こちらにお座りください。食事を取ってまいります。ニック、ジェシー様の後ろに。ミーナは横に控えているように」
ロッシーニはそう指示すると料理の方へ消えて行った。

「ミーナ、料理が楽しみね。今日は特別に王族の料理かしら?それとも学校の食堂の料理かしら?」

「ふふふ。ジェシー様。お料理が好きなんですね。学校のであれば、サンドイッチがおすすめです。いろんな種類があるので毎日でも飽きませんよ。それより、殿下がいらっしゃるからって、いくら何でも王族の料理は出ないんじゃないですか?」

ミーナと料理の話をしていると、昨日会ったノア・プリストン公爵令息がテーブルへやって来た。

「ジェシカ嬢。少しいいかな?」
軽く手の甲へキスをすると私の反対側に座る。がっしりしたノア様は騎士科だそうで、お付きの人達も騎士科の人ばっかりだった。

「実は、私の側近の事なんだが、あなたと話したいと言う者がいる。紹介してもいいだろうか?」

ん?誰?側近ってこの人達よね?騎士科に知り合いはいないんだけど。。。

「ええ。誰かしら?」

側近の1人が前に出て来てノア様の横に立つ。
「初めましてジェシカ様。私はリーバイ・テュリガー子爵です。分家でも末席の末席ですが。。。以後お見知り置きを」

騎士礼をした男の子はテュリガー。。。。

「初めまして。ジェシカ・ロンテーヌです。私にお話があるのですか?」

「はい。ノア様、失礼します。ジェシカ様、叔父のリットがお世話になっていると伺いました。叔父は元気にやっているのでしょうか?一昨年の事件で一族から離脱し、音沙汰がないのです」

!!!!!

ちょうどロッシーニが戻って来て、料理を並べている。リーバイ様の話に少し動揺したのか手がブレた。

「えっ!離脱って?私は聞いていないのだけれど?」

「えっ!そうなんですか?。。。では、聞かなかった事にして下さい。申し訳ございません。叔父の近況を知りたいのですが。。。よろしいでしょうか?」

「ええ。。。私の分かる範囲でお答えするわ。リットは心身共に元気にやっています。今はロンテーヌ領の領騎士団長を務めているわ。私の護衛でもあるの。あとは。。。思いつかないわ。ごめんなさい」
ふふふと微笑むと、ぽか~んと口を開けたリーバイ様。

「私には礼は不要です。。。しかしそうですか。。。元気ならいいのです。実は小さな頃に稽古を付けて頂いていたので心配だったのです」

「そう。リットにもリーバイ様の事を伝えておくわね」

「はっ!ジェシカ様、私に敬称は不要です。しかし、ありがとうございます。よろしくお願いします」
リーバイはそう言うと、一歩後ろに下がり側近の位置に戻った。

「ジェシカ嬢、側近の為にありがとう。丁寧で真摯な対応に感謝する」
ノア様は軽く礼をしてくれた。真面目だな~。

「いえ、こんな事ならお安い御用です。それにしてもノア様の側近はお強そうですね」
私はニコッと社交辞令を一つ。

「あぁ、皆騎士科なんだ。ご令嬢には少しむさ苦しいかもしれないが。。。」

「いえ、頼もしくてよろしいですわ。私の側近で騎士科を目指している者がいますの。仲良くしていただければと思います」
私はニックを見て、ノア様の側近へ微笑む。

「あぁ、騎士科を希望か。何かあればこいつらを頼ればいい」
ノア様もニックに微笑んでくれる。

「ありがとうございます」

「では、名残惜しいがまたの機会に。。。では」
と、ノア様達の用事はそれだけだったようで、ノア様用のテーブル?に帰って行った。

。。。

私の側近達は『ふ~』と小さな深呼吸をしている。

「驚いたわ。突然で。ロッシーニはノア様を知ってる?どんな方?」

「はい。1学年でご一緒でした。さっぱりした方で、公平な方ですよ。確か弟君が家督を継がれる事が決まっております」

「弟さん?なぜ?長男ではないの?」
他家の事だけど、ちょっとびっくりだ。

「ええ。あの領はある意味独立されている公国な感じですね。プリストン領には代々『神の家』と言われる教会本部があり、プリストン領領主はそこの大司教も兼任しています。弟君がこの度の成人の儀で特化の『光』の文字が現れたそうです。大司教の資質なども家督相続に含まれるんでしょう。他家の事ですので、こう言う事はイーグル様が詳しいかと。。。ノア様は将来『神の家』の騎士になるのではないでしょうか?」

へ~。そうなんだ。

「では、本家に特化の者がいなかったら?」

「さぁ。。。わかりかねます。申し訳ございません」

そっか。。。『光』ってメジャーな特化だと言っていたけど、プリストン家には重要な事案みたいだな。

「ジェシカ様、お話ししてもよろしくて?」
考え事をしながら、もぐもぐと料理に舌鼓をしていた私に話しかけて来たのは、エルメダ様だった。

「ええ。失礼しました。。。ごくん。。。どうぞ」

「ふふふ。お食事中に私こそ失礼いたしました。ノア様とも交流を始められたのね?」

見てたのか。。。まぁ、こんなフリースペース、誰でも見ているか。

「ほほほ。交流と申しますか、ノア様の側近の方の知り合いが私の領の領騎士でして。。。そのお話です」

「そうですか。。。家の事でしたのね、これは要らぬ口を挟みました。それより、先日お茶にお誘いしたのを覚えていらっしゃいますか?」
エルメダ様はおっとり笑顔でコテンと首を傾ける。かわいい、癒し系だな~。

「ええ。楽しみにしておりますわ」

「それで、今度の休みなどいかがでしょう?急なのですが。。。ご予定は?」

「はい。日の日でよろしければ問題ございません」
土の日は宰相さんとお茶だしね。

「よかったわ。では、私の邸でいかがでしょう?そうですね、お茶の時間の少し前にお越しください。後ほど案内状をお送りいたします」
エルメダ様はにっこりと誘ってくれる。。。でも、何でだろう?めっちゃ謎。

「ありがとうございます。では、日の日に伺いますわ」

「ええ。では、お時間いただきありがとうございます」
エルメダ様はそう言うと、さっさと去って行った。

本当に何だろう?これは何か用事があるっぽいな。。。お茶の誘いなんて社交辞令かと思ってたよ。


私は、パーティーの様子を遠目で見る。みんな楽しそうだ。下位の貴族達はそれぞれ談笑しているので、友達作りかな?社交って感じではないな~。あっ!テオ班みっけ!あとは~上位。。。半分ぐらいは私のように側近とテーブルに座って、のんびりパーティーを見ているけど、後の半分は、殿下とピンクちゃんを取り囲むお花畑組と、残りはウロチョロと社交に勤しんでいるのがうかがえる。

ふ~ん。こんな感じなら、班行動でもよかったんじゃない?しくったな~。夜会って参加した事がないけど、こんな感じなのかな?どうなんだろう。今日は何か肩透かし感が半端ない。

とりあえず、帰ったら、イーグルね。あと、ロダンも。


その後は、殿下とピンクちゃんのイチャイチャとその取り巻きを見ながら、ぼ~と時間が過ぎて行った。今日は特に何にもなくそのままお開きとなった。


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