上 下
88 / 135
2章 魔法使いとストッカー

24 購買部を作ろうよ!

しおりを挟む
「ロダン、明日か明後日ね。エルの婚約の話し合い。上手く行くかしら?」
私は週末最後の授業を終え、屋敷で夕食までの間ロダンとお茶をしている。

「そうですね~。アダム様に急には会えませんからね。お嬢様はお祈りして待つしかありませんね。エルメダ様のご希望が通ればいいでしょうが。。。こればかりは21領主の跡取りの話ですので」

一層の事、アダム様に一方的に手紙を出しちゃう?『今夜12時にアダム様の王城の書斎に転移します』って。ロダンに怒られそうだけど。。。

「そっか。。。エルには、最悪ウチの領においでって言っちゃったけどいいわよね?」

ロダンは頭に手を当てながら長~い溜息を吐く。
「は~。ロッシーニからの報告で知っています。本気なんですか?」

「ええ。だって追い出されたら行く所がないじゃない。いいわよ、どうせロンテーヌ領は国の端っこだし。目立たないわよ。エルは特進科よ?領官僚にいいんじゃない?それより、昨日言っていた参謀の件、どう?何かいい戦法はある?」

「お嬢様、私が考えてしまっては他のクラスにとってフェアではありません。あっさり勝っても面白くないでしょう?ご自身でクラスの皆さんと相談するべきです。そう意気込まなくても、気楽に楽しめばいいと思いますよ。クラスでの話し合い自体が楽しい思い出になりますよ」

「そうは言っても。。。役職とか苦手なのよ。プレッシャーに弱いの。胃が痛い。。。」

「胃?何でしょうか。。。しかし、そこまで気を使わなくてもいいんじゃないでしょうか?」

そっか、胃とか臓器は知らないのかな?いや、また違う名前かも。
「お腹が痛くなるって事!それより、また思いついちゃったの。今言ってもいいかしら?」

「はいはい。新商品ですか?」
ロダンは何でもない様に紅茶を飲む。最近思いついてもリアクションが薄いように感じるんだけど~。

「もう、何だかそっけないわね。1つは新商品よ。だからナダルと話したいのと、もう一つがね、購買部を作ってはどうかと思って」

「購買部?ですか?」

「ええ。学校に支店を出せないかと思ってね。生活雑貨店の学生専用版よ」

「なぜそう思ったのでしょう?寮生活者の為ですか?でも、外出は届け出を出せばいつでも王都の城下へ行けますが?」

そうなんだ。。。でもあったら便利だよね。

「そうなの?でもね、ちょっと紙が足りないとか、ちょっとアレだけ無いとかで外出するのって面倒臭く無い?本当にこだわっている物なんかは外に買いに行けばいいの」

「面倒臭いですか。。。ははは。お嬢様らしい」

「異なる世界の学校にも購買部があってね、勉強に使う筆記用具の予備や体操服、ボタンなんかを売っていたの。お昼にはパンを売ってたりもしたわ。本当に今欲しいって言う何気ない日用品ばかりよ」

「ほぉ~。学生向けの商品ですか」
ロダンは何やら考えている。ま~、今はサボンとかがウチの商品だしね。

「今後、『運動服』を作るじゃない?だったら、学校で注文できたら便利だなって。汚れたり破れたりした時に、すぐに必要になるかもしれないわ。ついでに、ちょっとした雑貨も売ればいいかなって。うちのサボンやへちまん、歯磨き棒とかのラインの商品は特に寮生活の人には売れると思うのよ。あとは、学生カード入れとか発明してもいいわね~。レターセットとかも欲しいな。あっ!」

あっ!!!いいこと思いついちゃったよ。。。どうしよう。これはロゼ領に売ればいいと思うけど。。。どうする?

「何ですか?また、思いついたんじゃないでしょうね?」
ロダンは呆れ顔で私を見る。

「ええ。。。香水のロゼ領に関係してくるから、来月のロゼ領領主様とのお茶会で提案するかどうか、お兄様も含めて話しましょう。これは、今思いついたからちょっとまとめておくので、今度でもいい?」

ずっと延び延びになっていたロゼ領領主とのお茶会が、ついに来月にある。ふ~。

「はぁ~。いいでしょう。来週の火の日の午後、ご主人様は時間が空きますので、その時までにお願いします」

「ええ。でね、さっきの話だけど、そんなに大きいお店でなくていいのよ。そうね。領城のエントランス横の小部屋ぐらいかな」

領の小部屋は大体8畳ぐらいの部屋だ。8畳あれば十分だ。

「そうですか。。。購買部は一旦保留でお願いします。まずは学校側へ申請しなければ。。。どう話を持って行くか。今は『運動服』の話を詰めていますからね。春の新学期からの販売予定に合わせてもいいですね。それなら話がしやすいか。。。わかりました、ご主人様と話してみます」

「よかったわ。私はどんな物があったらいいか、それとなくクラスメイトに聞いてみるわ」

ふふふ~ん。何がいるかな~。

筆記用具でしょ?学生カード入れは欲しいな、って私がだけど。あとはハンカチとかかな?刺繍糸とかもいるかな?他の科にも聞きに行きたいな、求める物が絶対違うよね、多分。

「次です。お嬢様。ナダルに相談事とは?」

『はっ』と、ニマニマ想像していた私は我に帰る。

「あぁ、髪飾りなんだけど。平民でもおしゃれができる物を思いついたのよ」

「髪飾りですか。。。金属は原価が高いですよ?平民向きは難しくないですか?」

「違うの。素材は布よ。だから大丈夫」

???ロダンはハテナマークだ。

「今、髪を結った時に縛るのって紐か太い糸じゃない?貴族は、ロダンがさっき言った様に、その上から金属の髪飾りで飾るじゃない?パーティーでは生花なんかも着けてるわよね?平民はせいぜいがんばってもリボンよ。そこで、前世で流行った物を思い出したの」

「異なる世界の物ですか。。。では平民向けですね?」

「そうね。。。素材を一級品にすれば貴族にもウケると思うわ。でも、普段使いがせいぜいよ。。。そっか!購買部ができれば、これも『日用品』か!普段使いの髪飾り!いい!」

ロダンは紅茶のおかわりをサーブしながら、やっぱり呆れ顔。。。解せん。
「それで肝心の物はどんなものなんでしょう?」

「あのね」
と、私は前世でよく使用していた『シュシュ』の絵を描いて見せた。

「本当は、この布がクシュクシュってなる様にゴムって言う製品が使われているんだけど、こっちには無さそうなの。だからゴムの代わりに細いリボンで結ぶ様にするの。そうしたらクシュクシュってなるでしょう?このヒラヒラが可愛いのよ。どう?」

ロダンは絵を持ち上げて考えている。
「そうですね。。。素材、布を高位貴族の夜会ドレスに使う様な物にすれば、下位の貴族は飛びつくかもしれません。使用する布が少ないので、ドレスに比べれば数段値段は安くなりますし、これぐらいならと買うでしょう。しかも普段使いなら、自慢にもなるでしょう。布が一級品ですから。お年頃の、それこそ学生には受けはいいかもしれませんね。。。エリにも意見を聞きましょう」

ロダン、やっぱりいいね~。1話すと10まで広げてくれるから助かる!

「ではエリにも意見を聞いて、ナダルと打ち合わせをしたいわ。まずは試作品よ!それからお兄様に話を持って行きましょう!」

「そうですね。お嬢様はこの絵とレポートを書いて下さね。そうですね。。。10日後に確認させて下さい」

「わかったわ。次から次にごめんなさいね」

「いいんです。こうして、すぐ相談してくれる様になって私も動きやすいですから」

うっ。。。過去の私。。。ごめんなさい。

「えへへ~」
と、笑ってごまかす。

「ロゼ領への話もレポートに書いて下さると助かります。よろしくお願いします。では、購買部の話は来週の火の日ですから、その日は寄り道しないで早く帰ってきて下さい」

はいはい。

てか、ロゼ領へは提案だから、ウチには旨味があんまりないんだけど。かと言って、ロンテーヌ領で作るのもコストがかかりそうなんだよね~。


ふふふ。これは秘密だよ。来週までお待ち下さい!

しおりを挟む
感想 404

あなたにおすすめの小説

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。