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2章 魔法使いとストッカー

03 班分け

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ガラガラガラ。ロッド先生のご登場です。

「これより自己紹介をしてもらう。名前と家魔法を廊下の席から順に言って行け」

指定された廊下の一番前の男の子から自己紹介が始まる。

「次は年間行事の予定を言う。一回しか言わないぞ。来週はレクリエーションがある。その次は授業だ。各学期末にはテストがあるぞ。2学期は、毎年恒例のクラス対抗戦がある。今回は21領主が2人もいるからな。魔法科は期待できるかもな。3学期は卒業式とパーティーだ。下位貴族はドレスを用意しておくように。以上。細かい事は、後ろの掲示板に貼っておくから各自見るように」

「では、今から席の近く同士で5人グループを作れ」

ガヤガヤと横の席と前の席の人達とグループになる。

「できたか?では、このグループは今後の行事や授業での仲間だ。班長を決めろ。団体の成績なんかはこのグループで決まる。助け合うように」

なっ?そんな大事な班をこんな簡単に。。。

「せ、先生。成績に関係するならランダムではなく希望の者と組みたいのですが?」
キリッとした男子が先生へ投げかける。

「そんな示し合わせたら強弱が分かれてしまう。。。これでいいんだよ。もしかしたら、結構ラッキーな組み合わせかもしれないぞ?」

「しかし!」

「却下。。。では、班長決めろ?机を動かしていいぞ」

ガタガタと机を動かし、大きな一枚の机にする。ぐるりと机を囲み話し合いを始める。

私の班は。。。誰も話し始めない。。。心なしか皆が私を見ている。

「えっ!私?かしら?話しても?」
多分、21領主だから遠慮しているのだろう。。。

「お願いします」
同じ班になったミーナがニコニコと同意してくれた。他の人も頷いてくれる。

「では、失礼して。まず、班長を決めましょう。自薦他薦ありませんか?」

するとみんなの顔がポカンとなった。

「えっ?何?誰もいないの?」

「は、はい」
そばかすの男子が恐る恐る手を挙げる。

「どうぞ、フィン様」

びっくり顔のフィンは続ける。
「はい。ジェシカ様。様付けは止めて下さい。フィンとお呼びください。あと、班長はジェシカ様がやるんじゃないのですか?」

「いえ。私はただ司会をしているだけです。フィンは立候補ではないのね?」

「はい。。。俺はテオ様がいいと思います。仲間思いの頼れる方です」

「そう。。。テオ様はいかがですか?」

「はい。。。しかし、ジェシカ様がやるべきでは?」

「いいえ。私は班長に興味はありません。推薦されたテオ様がいいと思います。他の方はどうですか?」
私はしゃしゃり出ない事を徹底するんだ。これでいい。

「「賛成です」」

「では、班長はテオ様で。あと、私から良いでしょうか?」

みんながピリッと固まった。

「あぁ、畏まらないで。これからこの班は色々な事を協力して乗り越えていく仲間なのでしょう?もっと気軽に話したいのだけれど?もちろん学校限定で。私の事はジェシカと呼んでほしいわ。そうね~、あとは敬称だけど、呼び捨てはできないでしょうから、男子も女子も共通で『君』呼びはいかがかしら?」

ぽっか~ん、だ。へ、変な顔。ぷぷ。

。。。

私は極力笑顔でみんなの返答を待つ。

「わかりました。ジェシー様。私もクラスではジェシカ君と呼びます」
真っ先にミーナが答えた。

「では、俺も」
テオ君も後に続いてくれた。

良かった~。めっちゃドン引かれて困る所だった。

「ジェシカ君。1年間よろしく。司会を引き継ぐよ。では、改めて皆の紹介をしよう。私の左はフィン君。私の右はマックス君だ。俺は子爵、2人は男爵だ。あと、そちらはミーナ君でいいのかな?」

私たちの班は、改めて顔を見合わせて笑顔になる。

「いや~、正直、ジェシカ君で良かったよ。公爵令嬢だからどうなるのか緊張してたんだよね。気さくな方で良かった」
マックス君は胸をなで下ろしている。

「マックス君、ジェシカ君呼びはクラスだけですよ。公式の場や外ではきちんとお願いしますね」
と、ミーナはプンプンと釘をさす。

「まぁまぁ、ミーナ君。仲良くしましょう。何があるかわからないけど、この班でいい成績が取れるようにがんばりましょう!」
私はミーナを『君』呼びした。何だかこそばゆいな。でも、友達みたいでうれしい。

「ふふふ。ジェシー様に『君』呼びされるなんて照れますね」
二人で顔を赤くする。ふふふ。

テオ君は自分が班長になった事を先生に伝えに行き、プリントをもらってきた。

「来週のレクリエーションの説明書きです。まず目を通しながら俺の話を聞いて下さい」

私はプリントに目を通す。

何々?初日は魔法塔への見学と説明会。翌日は学年毎に裏の森を散策。最終日は全学年で新入生歓迎会。

「初日は見学会なので制服で。2日目は乗馬服かローブで下は動きやすい服でお願いします。最終日は制服で、講堂で立食パーティーがあるそうだ。全ての行事は班行動となっている。ジェシカ君は参加できそうですか?」

「はい。幸い、側近のミーナ君が同じ班ですので。皆を困らせる事はないでしょう」

「では、今から皆の事を聞くが答えたくなければそれでいい。班の為に皆の情報を知りたい」
テオ君は自身の魔法について話し始めた。

「まず、俺はプリストン領の分家で家魔法は水だ。あと、土地魔法が使える。魔法陣研究に興味がある。みんなは?」

「じゃぁ、俺が。俺はニール男爵家で城官僚の息子です。家魔法は風。同じく魔法陣を学び、将来は魔法庁へ行きたいです」
と、そばかすのフィン君。

「俺は、マックス・ウェスト男爵。家魔法は火です。風も使えます。実家は商家です。将来は魔法使いになりたいです」
へ~、2つ持ってるんだ。下位にしては珍しい。

「私はミーナ・トロント子爵です。トロント伯爵家の分家で、ジェシカ君のお祖母様の親戚筋です。家魔法は火です」

「私の事はご存知ですね。家魔法は土で、魔法はこれのみです。魔力が多いと言われました」

「えっ!公爵家なのに1つだけ?」
思わずマックスが声を上げる。ミーナはキッとマックスを睨みつける。

「すみません。。。」
マックスはしょんぼりだ。

「いいのよ。私は魔力が多いのでその活かし方を学びたいの」
私はなんでもない風に答える。

「魔力はどれほどか聞いても?」
テオ君は興味津々だ。

「そうね。。。魔法庁の魔法使いの10本の指に入るぐらい?と言われたわ」
控えめに量を言ってみる。まさか、王様と一緒ぐらいとは言えない。

「そんなに!すごい!では、将来は魔法使いに?あっ!。。。これもすみません」
マックスは言った後で気づいたようだ。かなりのおっちょこちょいか???

「いいのよ。私は領主家のだから。。。でも、将来はお婿さんをもらう予定なの。私は身体が弱いから。領へ引っ込む予定よ」
しずしずとうつむき加減で、今更ながら病弱に見せてみる。

「そうなの?元気になったんじゃないの?見た所回復してそうだけど。って何の病気か知らないけど」
フィン君がおどろいて私をまじまじと見てくる。

「ええ。病気は。。。ほぼ完治したわ。でも、静養していたのは確かだから。。。」

「そっか。。。高位のお嬢様は大変だね。何かあったら何でも言ってね。力になれる事があったら手助けするよ」

「そうだよ。テオ班の仲間はみんなで助け合おう!」
テオ君もマックス君も頷いてくれる。

「ありがとう。私も、私ができる範囲でがんばるわ」

私はいい班に当たったな~とうれしくなる。ふと、他の班を見てみる。

メリッサ班はメリッサ様が班長のようだ。あれ?女子が1人だな。がんばれ~。メリッサ様らしい陽気な明るい感じが班から出ている。

あとは、男子ばかりの班2つと、男子が2名と女子が3名の班が出来ている。

みんな楽しそうで、私はこれからの事を考えるとワクワクしてきた。

「ジェシカ、余所見するな。てか、ジェシカがてっきり班長になると思っていたが?」
各班を見周っていたロッド先生が話しかけてきた。

「あら?それは公爵家だからでしょうか?それならば、私は面子などあまり気にしませんので。班長は皆に慕われる者がなるべきです。私は、編入生ですので、余計に皆には私の為人ヒトトナリがわからないでしょう?テオ君でよろしいかと」

「テオ?」
ロッド先生は片眉を上げる。

「あぁ。これは私が提案しました。これからは班で行動することが多いのでしょう?スムーズな意思疎通に敬語や敬称が邪魔になると思いまして。皆に、上も下も感じさせない『君』付けをお願いしました。ただし、クラス内だけですけどね。現に先生は爵位云々は放免なんですよね?別に問題はないかと思いますが?」
私はコテンと首を傾げてみる。。。あざといかな。笑

「へ~。。。いいんじゃないか?ジェシカがそれでいいのなら。確かに、本来の理にかなった選び方だ。しかし、その『君』付けいいな。よし」
ロッド先生は私の頭をひと撫でして教壇へ向かう。

パンパンパン。
「注目!これからこのクラスの全員は『君』付けをするように。爵位に関わらず名前は全て『君』だ。下の者にもだぞ!反対の者は?」

ガヤガヤしているが反対者は出なかった。

ナイス先生!クラスで認証したら私やメリッサ様が浮かなくなるよね。しかも『先生が言いました』って言い訳できるもんね。

先生の発案みたいになったけど、この事がきっかけで班以外の人達ともすぐに打ち解けられた。

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