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2章 魔法使いとストッカー
01 ジミーな私
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さっきから私は、鏡の前で何度もクルクル回っては全身チェックをしている。
「お嬢様?本当にその格好で行かれるのですか?」
エリはまだ私の姿に納得できないみたいで、怒りと不安で変な感じにオロオロしている。
「ええ。私はこの格好で学校生活を送ると決めたの」
「はいはい、どんな格好でもお嬢様は可愛らしいですよ。エリ、お嬢様の事は諦めなさい。それよりも急いで下さい。朝食の時間です」
ケイトはも何度目かになるこのやり取りに呆れている。棒読みで褒めてくれた後は私を食堂へ追い出す。
「雑じゃない?ねぇ~、ユーリ?ケイト雑よね?」
「ん?そうですか?それより早く行きましょう。学校初日に遅刻はいただけません」
「そうね」
私は食堂へ急ぐ。エリはまだむっすりしている。
エリが怒っているのは、私が地味に徹しているからだろう。髪は左右におさげにし、前髪は眉下のぱっつん、リボンを髪に付けただけで、装飾品は一切していない。制服も改造せず、そのままで。まさに、サンプルのような格好をしている。
「おはよう。。。地味だな。。。ジェシー大丈夫か?」
「開口いきなりそれですか?お兄様。私はこれでいいのです」
「ふぉっふぉっふぉっ。お嬢様は殿方を探されるんじゃなかったのかの?」
クリスが白いお髭を触りながらニコニコと質問してくる。
「嫌だわ、クリスまで。私は外見に惑わされない優しい方を求めます。これは一石二鳥なのです」
「一石二鳥?どこがでしょう?せめて髪飾りだけでもいかがです?」
スーザンはハテナになっている。
「あのね、この格好なら地味でも中身を見てくれる人を探せるでしょ?後は、地味にすれば女子からの嫌がらせが減ると思うの。ただでさえ21領主って事で目立っちゃうし。。。なるべく面倒臭いことは初めから回避したいし」
「あ~。確かに、意地の悪いご令嬢は学年に必ずいますね。。。我が領は違う意味でも目立っておりますしね。。。いいご判断です。しかし、勿体無いですね。せっかくの愛らしいお嬢様の魅力が。。。半減ですわ」
「いいのよ。未来のお婿さんも大事だけれど。。。この格好の意味は、ほとんどがプライドの高いご令嬢避けだから」
私は急いで朝食を終えるとエントランスへ向かう。
玄関にはミーナがすでに到着していた。
「おはようございます、ジェシカ様。。。今日は一段と。。。スッキリされていますね?」
ミーナは気を使って『地味』ワードを避けてくれる。
「おはよう。朝からご苦労様。では、行きましょうか」
「はい」
私たちは馬車に乗り込み学校へ向かう。メンバーは私、ミーナ、ロッシーニ、ニック、ユーリである。ユーリは送り迎えの馬車だけ付き添う。
「お嬢様、一緒のクラスになれてとても嬉しいです。まさか、専門科テストにまで合格されるとは。。。優秀なご主人様で私も鼻が高いです」
ミーナはニコニコ上機嫌だ。
「ミーナも魔法科に進んでくれて嬉しいわ。ミーナこそ優秀なのね」
「そんな事は。。。恥ずかしいです。一緒に学校生活を楽しみたいですからね。ジェシカ様の為にがんばりました」
モジモジと恥ずかしがるミーナはかわいい。小リスみたい。うん。かわいいは正義だな。
「お嬢様、昼食は我々と共にして頂きます。中休みや放課後は3人の中の誰かが必ず一緒にいますので、お一人で行動されませんように」
最終学年のロッシーニが私に注意する。
「ええ。皆には不便をかけるわね。よろしくね。ニックも大丈夫?今日は入学式があるのよね?」
「はい、お嬢様。俺。。。私は、今日入学式が終われば帰宅予定ですが、お嬢様のクラス前の廊下で待機していますので。教室から出る際はお伴します」
ニックは昨年領の魔法使いになったヨハンの弟で、イーグル、つまり私の分家の養子になった子だ。将来は騎士を目指しているらしい。リットに憧れているんだそう。
「別に初日ぐらいゆっくりしなさい。先に帰宅してもいいのよ。今日はロッシーニもミーナもいるし」
「お嬢様、側近にそのような態度はいただけません。甘やかさないで下さい」
ロッシーニはギロッとニックを見る。
「は~。堅いわね。。。ロッシーニ。学校でぐらい、学生っぽく仲良くしましょう」
「。。。お嬢様のお望みなら。。。しかし、あまりに砕けた関係は他領に示しがつきません。多少はご了承下さい」
「。。。わかったわ。では、私からのお願いその一よ。私をジェシーと呼んでね」
3人は顔を見合わせ、ロッシーニの一言を待っている。
「ゴホン。。。ではジェシー様とお呼びします」
う~ん。まだ堅いな。。。まぁ、初日だしこんなもんか。
「わかったわ」
そんな話をしていたら、15分ほどで学校玄関横の馬車の停車場についた。
「それでは確認ですが、毎朝こうして皆で登校し、教室までついて行きます。教室前でそれぞれのクラスに解散になります。帰りは教室でお待ち下さい。皆で帰ります。所用で付き添いができない場合は、事前にお知らせします。よろしいですか?」
「ええ。でも、教室までついてこなくても、ココで集合・解散でよくない?ロッシーニやニックは遠回りになるでしょ?」
「お嬢様、これが21領主の普通です。慣れて下さい」
ロッシーニは無表情で注意する。
「は~い」
クスクスとミーナは笑っている。ニックはロッシーニの顔色を伺いながら私の後ろに周る。
私達は、私とミーナが先を歩き後ろにニックとロッシーニがついて教室へ移動し始める。
エントランスを抜け教室の前に差し掛かった頃、横道から令嬢が飛び出してきた。
「きゃっ!」
クリクリお目目のピンク髪。ぶつかってきた可愛らしい令嬢はさっと立ち上がり、私を上から下まで見るとスッと何処かへ行ってしまった。立ち去る時にぼそっと呟いた声は聞こえたけどね。。。『なんだモブかよ』と。
「大丈夫ですか?ジェシー様。お怪我は?」
ミーナはペタペタと触りながら私の身体を確認する。
「しかし、廊下を走るなんて。。。あれは確か。。。しかも何も言わずに立ち去るなど。。。抗議が必要だな」
ロッシーニはパタパタと走り去った令嬢の後ろ姿を厳しい目でずっと見ている。
「ジェシー様、とっさの事とは言え、出遅れました。申し訳ございません」
ニックはちょっと涙目で私を見る。
「いいのよ。あれは予測不可能よ。それに抗議は必要ないわ。ああいうのは関わりたくないし。。。ちょっとぶつかっただけで怪我もないし」
いや~、しかし。ま、まさかじゃないよね。。。ピンク頭の令嬢で下位貴族。『モブ』って言葉。。。
あはは、まさね~。
「。。。そうですか?まぁ初日ですからね。まだ、ジェシー様を周知されていないのもあるのでしょうが。。。いや、やはり抗議を!」
「いいのよ、ロッシーニ。私は地味に徹して、領に要らぬ反感を抱かせたくないの。勉強にも集中したいし。。。だから、極力、怪我とかしない限り、放っておきましょう。これからもよ」
ロッシーニはまだ納得していないが、私が言うのだからと今後の方針に納得してくれた。
教室に着いた私とミーナはドアを開ける。するとクラスの皆が一斉にこちらを見た。
。。。居心地悪いな。。。なんだ?なんだ?
クラスのあちこちでコソコソと囁かれる。『誰?』『あんな地味なのいたか?』
ミーナは何でもないように私に一番後ろの真ん中の席を勧め、横に自分も座った。すると、クラスの皆はコソコソからザワザワに変わっていった。
『あの席って。。。21領主?』『あれって。。。まさか?』『どこのご令嬢かしら?』
そうだろう、そうだろう。デビューの時に会ってるはずなんだけどね。。。地味すぎてわかんないよね?
ガラガラガラ。先生が入ってくるとピタッと話し声が止んだ。
「おはよう。魔法科担任のロッド・メンデルだ。学校で教師だけは爵位関係なく扱われる。1年の時とは違うぞ。専門科になったのだからな。覚えておくように。皆の名前は、家名ではなく名前で呼ぶ。あとは、クラスメイトとは仲良くしろ。他のクラスは構わん。ケンカだけはするな。本日は編入者がいる。あいさつを」
先生はさっぱりしたあいさつの後、私を見て自己紹介するように促す。
「皆様、初めまして。ロンテーヌ公爵領から参りましたジェシカ・ロンテーヌです。持病の静養の為、皆様とは1年遅れての学校になります。不慣れな点が多いかもしれませんがよろしくお願いいたします」
ザワザワ。
「静かに。ジェシカは入学前テストで満点を出した。お前らがやった1年最終の専門科テストもほぼ満点だ。このクラスで1番頭はいい。だから、2年次に編入が許された。学校側は21領主だからと言って特別扱いはしていないぞ。実力だから誤解のないように。では、この後は入学式に参列する。20分で移動しろ」
ロッド先生はそれだけ言って教室を出て行った。
。。。あの先生、最後余計なことを。。。ちっ。
「ジェシー様。私たちも参りましょう」
ザワザワするクラスからミーナは早々に連れ出してくれた。
「は~。あの先生。。。ここの先生はみんなあんな感じなの?」
「ははは。そうですね。ちょっと驚きましたね。。。多分、ロッド先生だけだと思いますよ。どうでしょう?」
ミーナもぶっきらぼうな先生にちょっと驚いたそうだ。
「ジェシー様」
ロッシーニが生徒達をかき分けてこちらへ向かってくる。
「ロッシーニ。わざわざ来なくてもいいのに。講堂へ行くだけよ」
「関係ありません。動ける時はご一緒するのが普通です」
はいはい。でもロッシーニはちょっと目立つんだよ。。。後ろを歩くから侍らせているようでちょっと居たたまれないんだよね。
「ロッシーニ。専門科の先生って変わってる人が多いのかしら?」
ロッシーニは一瞬ハテナになったが、合点がいったようで話してくれる。
「そうですね。一般教養の1年の先生とは違いますね。専門の先生ですから。。。騎士科は元騎士の方もいらっしゃいますし、魔法科もその道のエキスパートかと。ですので、性格はちょっと変わってるかもしれません。あとは、専門科に上がれば、貴族の上下があまり考慮されませんので。。。戸惑いましたか?」
「いえ。ちょっとワイルド?違うわ。。。サバサバした感じの先生だったから」
廊下は移動の生徒でごった返している。私達の10m先が特に人だかりになっていた。
「何かあったのかしら?あそこ」
私は人だかりを指差す。
「さぁ。。。見てきましょうか?」
「いえ、いいの。それにしても早く進まないかしらね。時間に間に合うかしら?」
『そうですね~』とミーナも人だかりを見ながら、廊下の隅に移動して、その一団を避けるように進む。
私は横を通った時、聞いた事がある声を拾った。
「止めて下さい。。。私が悪いんです。。。怒らないで下さい」
。。。
私は立ち止まり、まさかと思いながら横目でチラッとその集団を見た。
ウルウル目のピンク頭ちゃんが赤毛の美男子に肩を抱かれ、ご令嬢達と対峙していた。
うわ~。マジか。
「お嬢様?本当にその格好で行かれるのですか?」
エリはまだ私の姿に納得できないみたいで、怒りと不安で変な感じにオロオロしている。
「ええ。私はこの格好で学校生活を送ると決めたの」
「はいはい、どんな格好でもお嬢様は可愛らしいですよ。エリ、お嬢様の事は諦めなさい。それよりも急いで下さい。朝食の時間です」
ケイトはも何度目かになるこのやり取りに呆れている。棒読みで褒めてくれた後は私を食堂へ追い出す。
「雑じゃない?ねぇ~、ユーリ?ケイト雑よね?」
「ん?そうですか?それより早く行きましょう。学校初日に遅刻はいただけません」
「そうね」
私は食堂へ急ぐ。エリはまだむっすりしている。
エリが怒っているのは、私が地味に徹しているからだろう。髪は左右におさげにし、前髪は眉下のぱっつん、リボンを髪に付けただけで、装飾品は一切していない。制服も改造せず、そのままで。まさに、サンプルのような格好をしている。
「おはよう。。。地味だな。。。ジェシー大丈夫か?」
「開口いきなりそれですか?お兄様。私はこれでいいのです」
「ふぉっふぉっふぉっ。お嬢様は殿方を探されるんじゃなかったのかの?」
クリスが白いお髭を触りながらニコニコと質問してくる。
「嫌だわ、クリスまで。私は外見に惑わされない優しい方を求めます。これは一石二鳥なのです」
「一石二鳥?どこがでしょう?せめて髪飾りだけでもいかがです?」
スーザンはハテナになっている。
「あのね、この格好なら地味でも中身を見てくれる人を探せるでしょ?後は、地味にすれば女子からの嫌がらせが減ると思うの。ただでさえ21領主って事で目立っちゃうし。。。なるべく面倒臭いことは初めから回避したいし」
「あ~。確かに、意地の悪いご令嬢は学年に必ずいますね。。。我が領は違う意味でも目立っておりますしね。。。いいご判断です。しかし、勿体無いですね。せっかくの愛らしいお嬢様の魅力が。。。半減ですわ」
「いいのよ。未来のお婿さんも大事だけれど。。。この格好の意味は、ほとんどがプライドの高いご令嬢避けだから」
私は急いで朝食を終えるとエントランスへ向かう。
玄関にはミーナがすでに到着していた。
「おはようございます、ジェシカ様。。。今日は一段と。。。スッキリされていますね?」
ミーナは気を使って『地味』ワードを避けてくれる。
「おはよう。朝からご苦労様。では、行きましょうか」
「はい」
私たちは馬車に乗り込み学校へ向かう。メンバーは私、ミーナ、ロッシーニ、ニック、ユーリである。ユーリは送り迎えの馬車だけ付き添う。
「お嬢様、一緒のクラスになれてとても嬉しいです。まさか、専門科テストにまで合格されるとは。。。優秀なご主人様で私も鼻が高いです」
ミーナはニコニコ上機嫌だ。
「ミーナも魔法科に進んでくれて嬉しいわ。ミーナこそ優秀なのね」
「そんな事は。。。恥ずかしいです。一緒に学校生活を楽しみたいですからね。ジェシカ様の為にがんばりました」
モジモジと恥ずかしがるミーナはかわいい。小リスみたい。うん。かわいいは正義だな。
「お嬢様、昼食は我々と共にして頂きます。中休みや放課後は3人の中の誰かが必ず一緒にいますので、お一人で行動されませんように」
最終学年のロッシーニが私に注意する。
「ええ。皆には不便をかけるわね。よろしくね。ニックも大丈夫?今日は入学式があるのよね?」
「はい、お嬢様。俺。。。私は、今日入学式が終われば帰宅予定ですが、お嬢様のクラス前の廊下で待機していますので。教室から出る際はお伴します」
ニックは昨年領の魔法使いになったヨハンの弟で、イーグル、つまり私の分家の養子になった子だ。将来は騎士を目指しているらしい。リットに憧れているんだそう。
「別に初日ぐらいゆっくりしなさい。先に帰宅してもいいのよ。今日はロッシーニもミーナもいるし」
「お嬢様、側近にそのような態度はいただけません。甘やかさないで下さい」
ロッシーニはギロッとニックを見る。
「は~。堅いわね。。。ロッシーニ。学校でぐらい、学生っぽく仲良くしましょう」
「。。。お嬢様のお望みなら。。。しかし、あまりに砕けた関係は他領に示しがつきません。多少はご了承下さい」
「。。。わかったわ。では、私からのお願いその一よ。私をジェシーと呼んでね」
3人は顔を見合わせ、ロッシーニの一言を待っている。
「ゴホン。。。ではジェシー様とお呼びします」
う~ん。まだ堅いな。。。まぁ、初日だしこんなもんか。
「わかったわ」
そんな話をしていたら、15分ほどで学校玄関横の馬車の停車場についた。
「それでは確認ですが、毎朝こうして皆で登校し、教室までついて行きます。教室前でそれぞれのクラスに解散になります。帰りは教室でお待ち下さい。皆で帰ります。所用で付き添いができない場合は、事前にお知らせします。よろしいですか?」
「ええ。でも、教室までついてこなくても、ココで集合・解散でよくない?ロッシーニやニックは遠回りになるでしょ?」
「お嬢様、これが21領主の普通です。慣れて下さい」
ロッシーニは無表情で注意する。
「は~い」
クスクスとミーナは笑っている。ニックはロッシーニの顔色を伺いながら私の後ろに周る。
私達は、私とミーナが先を歩き後ろにニックとロッシーニがついて教室へ移動し始める。
エントランスを抜け教室の前に差し掛かった頃、横道から令嬢が飛び出してきた。
「きゃっ!」
クリクリお目目のピンク髪。ぶつかってきた可愛らしい令嬢はさっと立ち上がり、私を上から下まで見るとスッと何処かへ行ってしまった。立ち去る時にぼそっと呟いた声は聞こえたけどね。。。『なんだモブかよ』と。
「大丈夫ですか?ジェシー様。お怪我は?」
ミーナはペタペタと触りながら私の身体を確認する。
「しかし、廊下を走るなんて。。。あれは確か。。。しかも何も言わずに立ち去るなど。。。抗議が必要だな」
ロッシーニはパタパタと走り去った令嬢の後ろ姿を厳しい目でずっと見ている。
「ジェシー様、とっさの事とは言え、出遅れました。申し訳ございません」
ニックはちょっと涙目で私を見る。
「いいのよ。あれは予測不可能よ。それに抗議は必要ないわ。ああいうのは関わりたくないし。。。ちょっとぶつかっただけで怪我もないし」
いや~、しかし。ま、まさかじゃないよね。。。ピンク頭の令嬢で下位貴族。『モブ』って言葉。。。
あはは、まさね~。
「。。。そうですか?まぁ初日ですからね。まだ、ジェシー様を周知されていないのもあるのでしょうが。。。いや、やはり抗議を!」
「いいのよ、ロッシーニ。私は地味に徹して、領に要らぬ反感を抱かせたくないの。勉強にも集中したいし。。。だから、極力、怪我とかしない限り、放っておきましょう。これからもよ」
ロッシーニはまだ納得していないが、私が言うのだからと今後の方針に納得してくれた。
教室に着いた私とミーナはドアを開ける。するとクラスの皆が一斉にこちらを見た。
。。。居心地悪いな。。。なんだ?なんだ?
クラスのあちこちでコソコソと囁かれる。『誰?』『あんな地味なのいたか?』
ミーナは何でもないように私に一番後ろの真ん中の席を勧め、横に自分も座った。すると、クラスの皆はコソコソからザワザワに変わっていった。
『あの席って。。。21領主?』『あれって。。。まさか?』『どこのご令嬢かしら?』
そうだろう、そうだろう。デビューの時に会ってるはずなんだけどね。。。地味すぎてわかんないよね?
ガラガラガラ。先生が入ってくるとピタッと話し声が止んだ。
「おはよう。魔法科担任のロッド・メンデルだ。学校で教師だけは爵位関係なく扱われる。1年の時とは違うぞ。専門科になったのだからな。覚えておくように。皆の名前は、家名ではなく名前で呼ぶ。あとは、クラスメイトとは仲良くしろ。他のクラスは構わん。ケンカだけはするな。本日は編入者がいる。あいさつを」
先生はさっぱりしたあいさつの後、私を見て自己紹介するように促す。
「皆様、初めまして。ロンテーヌ公爵領から参りましたジェシカ・ロンテーヌです。持病の静養の為、皆様とは1年遅れての学校になります。不慣れな点が多いかもしれませんがよろしくお願いいたします」
ザワザワ。
「静かに。ジェシカは入学前テストで満点を出した。お前らがやった1年最終の専門科テストもほぼ満点だ。このクラスで1番頭はいい。だから、2年次に編入が許された。学校側は21領主だからと言って特別扱いはしていないぞ。実力だから誤解のないように。では、この後は入学式に参列する。20分で移動しろ」
ロッド先生はそれだけ言って教室を出て行った。
。。。あの先生、最後余計なことを。。。ちっ。
「ジェシー様。私たちも参りましょう」
ザワザワするクラスからミーナは早々に連れ出してくれた。
「は~。あの先生。。。ここの先生はみんなあんな感じなの?」
「ははは。そうですね。ちょっと驚きましたね。。。多分、ロッド先生だけだと思いますよ。どうでしょう?」
ミーナもぶっきらぼうな先生にちょっと驚いたそうだ。
「ジェシー様」
ロッシーニが生徒達をかき分けてこちらへ向かってくる。
「ロッシーニ。わざわざ来なくてもいいのに。講堂へ行くだけよ」
「関係ありません。動ける時はご一緒するのが普通です」
はいはい。でもロッシーニはちょっと目立つんだよ。。。後ろを歩くから侍らせているようでちょっと居たたまれないんだよね。
「ロッシーニ。専門科の先生って変わってる人が多いのかしら?」
ロッシーニは一瞬ハテナになったが、合点がいったようで話してくれる。
「そうですね。一般教養の1年の先生とは違いますね。専門の先生ですから。。。騎士科は元騎士の方もいらっしゃいますし、魔法科もその道のエキスパートかと。ですので、性格はちょっと変わってるかもしれません。あとは、専門科に上がれば、貴族の上下があまり考慮されませんので。。。戸惑いましたか?」
「いえ。ちょっとワイルド?違うわ。。。サバサバした感じの先生だったから」
廊下は移動の生徒でごった返している。私達の10m先が特に人だかりになっていた。
「何かあったのかしら?あそこ」
私は人だかりを指差す。
「さぁ。。。見てきましょうか?」
「いえ、いいの。それにしても早く進まないかしらね。時間に間に合うかしら?」
『そうですね~』とミーナも人だかりを見ながら、廊下の隅に移動して、その一団を避けるように進む。
私は横を通った時、聞いた事がある声を拾った。
「止めて下さい。。。私が悪いんです。。。怒らないで下さい」
。。。
私は立ち止まり、まさかと思いながら横目でチラッとその集団を見た。
ウルウル目のピンク頭ちゃんが赤毛の美男子に肩を抱かれ、ご令嬢達と対峙していた。
うわ~。マジか。
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