34 / 135
1章 ロンテーヌ兄妹
67 デビュタントの夜会3
しおりを挟む
メインホールではまだ長い列をなしてダンス待ちをしている令嬢達がいた。まだあんなにいるんだ。ちらほらと、リボンドレスの人がいる。本当に流行ってるんだなぁ。意図してデザインしなかったからかなぁ、うれしいんだけど何だか不思議な気持ちだ。
一方、王子様達はキラキラ笑顔でお相手をしている。すごいな~。ずっとあの笑顔で何人もダンスをするんだよね。体力もそうだけど、精神的にも強いんだろうな~。
「お嬢様。もう着きますよ。よそ見をしないで下さい」
はっ!そうだった。次はアダム様だ。
「あら、失礼」
と、女性とすれ違いざまに肩がぶつかってしまった。
「いえ。こちらこそ。前を見ておりませんでした」
顔を上げると、意地悪そうな熟女がこちらを睨んでいる。
ヤバイのに捕まった?
「あら、誰かと思えば、マーサじゃない」
扇子をこれでもかとパタパタと仰いでいる女性はマーサに話があるようだ。
「お嬢様。申し訳ございません。先にお願いします」
と、マーサは先を歩いていたロダンの方へ促す。
え?でもいいのかな?当たったのは私だけど。。。
「マーサ、失礼じゃなくて?」
にんまり笑顔の熟女は、取り巻きを2人連れてずいっと前に一歩出てきた。やけにマーサに好戦的だな。
「お嬢様。申し訳ございません。少しばかりお時間を頂きます。直ぐ終わりますので。お嬢様、名乗りは必要ございません。お話しせずニッコリしておいてく下さい」
小声でマーサから言われたので、ニッコリして半歩後ろに下がった。
「お久しぶりでございます。奥様。まずは、奥様が名乗るのが順当かと」
マーサは気合を入れて、熟女に負けず劣らずのにんまり顔をした。
「ま~ま~、私からですって?これだから卑しい身分の者は。ね~皆様。だいたい、このメインホールに子爵程度の者がウロチョロするものじゃないわ。いつまでも伯爵夫人気分でいられては、私が笑い者になってしまうわよ。お解かり?」
と、熟女は扇子でマーサをチョコっと突いた。取り巻き達もクスクス笑う。
はぁぁぁ~!なんだあれ?すんごい意地悪だな。これが社交界なの?てか、この人伯爵家って、まさか!マーサの元旦那の家?
「奥様。何か勘違いをされていませんか?私はこちらのお嬢様の付き人として出席しております。伯爵夫人など、名乗った覚えがございません。それに、私を追い出したのは奥様ですよね」
ニヤッとマーサも悪い顔をする。
ようやく熟女は隣にいた私を上から下まで見て目を見開いた。
「。。。まさか。ロンテーヌ公爵令嬢!?」
いきなり、熟女と取り巻き達はバッとカーテシーをする。
「大変失礼いたしました。この者が私にぶつかったのに謝りませんでしたので。。。」
え~っと。ぶつかったのは私だよ。どうするんだこの状況?私は話していいかな?
「え~。お顔をお上げになって下さい。ぶつかったのは私です。お怪我はございませんか?私の方こそ失礼致しました。では、急ぎますので。マーサ?」
「はい。お嬢様。では、ごきげんよう」
これ以上用はないと、マーサがその場を離れようとした時、
「はん。どうせまた、その顔で上位貴族に取り入ったのね。本当に隙間に入るのがお上手な女狐ですこと」
と、マーサに聞こえるぐらいの声でボソボソっと話し、その熟女は去って行った。
おいっ!と私は振り返ったが、マーサに止められた。
「お嬢様。今は宰相様の所へ。お願いします」
マーサは何でもない風に笑って私を促す。
「でも。。。あれはひどいわ」
「いいんですよ。あんなもの放っておけば」
本当に?めちゃくちゃムカついたんだけど。
プリプリしている私は、マーサに手を引かれようやく宰相様の所へたどり着いた。
「アダム様。お呼びとの事。お待たせいたしました。ジェシカ・ロンテーヌでございます」
と、私はほぼ初対面のように挨拶をした。
「いやいや、待ってはおりませんよ。このホールは広いですからね。変な虫に捕まっていましたね~。改めまして、ジェシカ様。アダムと娘のエイダでございます」
「ジェシカ様。お久しゅうございます。この度はデビューおめでとうございます」
キレイなカーテシーを披露するのはエイダ様だ。
「ありがとうございます。エイダ様もデビューおめでとうございます」
「エイダ、ジェシカ様とは学年が一緒なんだ。仲良くしてもらいなさい」
エイダ様は目を見開き、アダム様を見る。
「え~っと。そうなんですのお父様?。。。ジェシカ様、よろしくお願い致します」
何だか気の無い返事だな。いいよ、いいよ。こんなに同級生がいるんだし、気の合わない人もいるよ。お父さんに言われたからって別に仲良くしなくても。
「ほほほほほ。ご縁があればまた」
と、私はアダム様を見て『それで?』と促した。
「あぁ。すまない。こんな娘で」
アダム様は早々に諦めたのか、エイダ様に『もういい』と言うと、エイダ様は向こうの令嬢の輪に入って行った。
「いえ。無理強いは良くないですから。。。それよりも、先程の王女様の件、ありがとうございました。突然の事で驚いてしまいましたわ」
てか、その姫様が見当たらないんだけど。どうなったんだろう?
「いやいや、当然の対処をしたまでです。そこの執事が呼びに来てくれたおかげで、こうしてそなたと話が出来るのだからな。エイダと縁を結びたかったんだが、あれではどの道続きはせんだろう。蛙の子は蛙にならんかったな。ははは」
ニヤリとアダム様は笑う。
自分のこと蛙って。。。娘のこと切るの早すぎない?てか、何?まだ何かあるの?
「ほほほほほ。私なぞに。。。でも光栄ですわ」
は~。何?何?心臓に悪い。
「今日は、誰ともダンスを踊らないのか?」
「ええ。疲れてしまって」
「王子の列には並ばないのか?」
「ええ」
「「。。。」」
「本日はどうされました?何かご用事があったのでは?」
アダム様は歯切れが悪い。何だろう。。。
「いや、何。。。」
???何なのこのオヤジ。もう帰っていい?
「あぁ!こちらに」
と、アダム様が手招きした先には、キラキラ王子がこちらへ向かって来ていた。
うわ~。騙された。会いたくない人リストのトップじゃん。は~。
「ジェシカ嬢。こちらは第一王子の。。。」
アダム様が途中まで紹介すると、王子はおもむろに私の手を取り手の甲へキスをする。
「私は、第一王子のルーベン・フォン・グランドです。よろしく」
営業スマイル!キラン!
ははははは。アダムさんよ~。これは無いんじゃないかな?まだ、あのダンスの列は続いてるよね?
「ご丁寧にありがとうございます。ロンテーヌ公爵家、長女のジェシカと申します。以後お見知り置きを。殿下」
と、目を合わせないように足元を見ながらカーテシーをする。
「実に、かわいらしいお嬢さんだ。アダム、こちらがあのご令嬢かい?」
アダム様は無表情で頷いている。
あのって何?
私がハテナになっていたので、王子様が話してくれる。
「いや~。父が。陛下がお気に召したご令嬢がいると言うので、一目お会いしたかったんだ」
と、王子様は爽やかな笑顔でこちらを見る。
チッ。あのオヤジ。。。
耳をダンボにしていた周囲の貴族たちが一斉に私を見てくる。上から下まで何往復するんだよ!ってぐらい見てくる。。。つらい。
「おほほほほほ。誰かとお間違いじゃないでしょうか?宰相様!私、陛下とお話しした事はございませんよね?」
と、アダム様を睨んで見る。
これは一種の賭けだ。私は殿下に対して嘘を言ってしまった。この際『会ってない』で言い通すぞ。アダムさんよ~。不敬にならない様にどうにかしてよ。ほらこの空気、どうすんの。あそこで順番待ちしているお嬢様方が、あんなに遠いのにめっちゃ睨んでくるよ。
王子は手を口に当て、先っきとは違う好奇の目で私を見る。
「あはっ。面白いな。。。そうか、私の思い違いか?なぁ、アダム」
アダム様は目を瞑って、若干青筋を立てている。
「いえ。殿下が間違うはずがございません。私が他のご令嬢と思い違いをしておりました。申し訳ございません」
アダムは王子に一礼すると私を解放してくれた。最後にギロッと睨まれたけど。
「では、人違いの様ですので御前を失礼致します。私の事はお忘れ下さい」
と、とっとと礼をして帰るぞ。
「いやいや。ジェシカ嬢。アダムが間違っていたとしても、これも何かの縁だ。少しお話をしましょう」
いやいやいやいや。王子様!あの令嬢たちの目を見て!あなた待ちなんだよ?
「いえ。殿下のお時間を頂くわけには参りません。まだ、ダンスが残っているみたいですし。。。私なぞ、捨て置き下さい」
礼を崩さないよカーテシーで堪える。早う、あっち行け。
「これはこれは、謙虚なご令嬢だ。では、私とダンスはいかがかな?あの列は弟目当てのご令嬢ばかりですよ。心配いりません」
困った。。。アダム様をチラッて見るが『バーカ』って聞こえそうな顔でニヤけている。
は~。
「恐れ多いことにございます。。。」
「ははは。強情ですね。ま、いいでしょう。まだ、社交シーズンは始まったばかりです。またお会いする事もあるでしょうから、この次はダンスを受けて下さいますか?」
と、王子様に手を取られてしまった。
もう周りは『きゃー』っと、ご婦人方の黄色い声と嫉妬の声が入り混じる。
観念するしかないのか。。。
「はい。またの機会に。ぜひ」
と、小さく返事すると王子はまたダンスの輪に帰って行った。
「「。。。」」
残されたアダム様と私は隣に並び、小さい声でヒソヒソ話をする。
「何がそんなに嫌なのだ?王子だぞ?」
「はぁ?一番関わりたくない方ですよ。おっと、失礼」
「は~。。。お主。欲がないのか?せっかく紹介してやったのに」
「余計なお世話です。あれはお金になりませんよね。領の為にならないものは極力パスです。ご自分の娘さんにどうぞ?」
何だこいつ!と言う顔でこちらを見てくるアダム様。
「次は、権力とか王族とかいらないので、その辺をよろしくお願いします」
アダム様は不思議な生き物を見るみたいに唖然としている。
「では、アダム様。人違いだったようなので失礼致します。ごきげんよう」
私は元気よく挨拶し、ロダンに目配せをしてからその場をさっさと退場した。
なんて日だ。
一方、王子様達はキラキラ笑顔でお相手をしている。すごいな~。ずっとあの笑顔で何人もダンスをするんだよね。体力もそうだけど、精神的にも強いんだろうな~。
「お嬢様。もう着きますよ。よそ見をしないで下さい」
はっ!そうだった。次はアダム様だ。
「あら、失礼」
と、女性とすれ違いざまに肩がぶつかってしまった。
「いえ。こちらこそ。前を見ておりませんでした」
顔を上げると、意地悪そうな熟女がこちらを睨んでいる。
ヤバイのに捕まった?
「あら、誰かと思えば、マーサじゃない」
扇子をこれでもかとパタパタと仰いでいる女性はマーサに話があるようだ。
「お嬢様。申し訳ございません。先にお願いします」
と、マーサは先を歩いていたロダンの方へ促す。
え?でもいいのかな?当たったのは私だけど。。。
「マーサ、失礼じゃなくて?」
にんまり笑顔の熟女は、取り巻きを2人連れてずいっと前に一歩出てきた。やけにマーサに好戦的だな。
「お嬢様。申し訳ございません。少しばかりお時間を頂きます。直ぐ終わりますので。お嬢様、名乗りは必要ございません。お話しせずニッコリしておいてく下さい」
小声でマーサから言われたので、ニッコリして半歩後ろに下がった。
「お久しぶりでございます。奥様。まずは、奥様が名乗るのが順当かと」
マーサは気合を入れて、熟女に負けず劣らずのにんまり顔をした。
「ま~ま~、私からですって?これだから卑しい身分の者は。ね~皆様。だいたい、このメインホールに子爵程度の者がウロチョロするものじゃないわ。いつまでも伯爵夫人気分でいられては、私が笑い者になってしまうわよ。お解かり?」
と、熟女は扇子でマーサをチョコっと突いた。取り巻き達もクスクス笑う。
はぁぁぁ~!なんだあれ?すんごい意地悪だな。これが社交界なの?てか、この人伯爵家って、まさか!マーサの元旦那の家?
「奥様。何か勘違いをされていませんか?私はこちらのお嬢様の付き人として出席しております。伯爵夫人など、名乗った覚えがございません。それに、私を追い出したのは奥様ですよね」
ニヤッとマーサも悪い顔をする。
ようやく熟女は隣にいた私を上から下まで見て目を見開いた。
「。。。まさか。ロンテーヌ公爵令嬢!?」
いきなり、熟女と取り巻き達はバッとカーテシーをする。
「大変失礼いたしました。この者が私にぶつかったのに謝りませんでしたので。。。」
え~っと。ぶつかったのは私だよ。どうするんだこの状況?私は話していいかな?
「え~。お顔をお上げになって下さい。ぶつかったのは私です。お怪我はございませんか?私の方こそ失礼致しました。では、急ぎますので。マーサ?」
「はい。お嬢様。では、ごきげんよう」
これ以上用はないと、マーサがその場を離れようとした時、
「はん。どうせまた、その顔で上位貴族に取り入ったのね。本当に隙間に入るのがお上手な女狐ですこと」
と、マーサに聞こえるぐらいの声でボソボソっと話し、その熟女は去って行った。
おいっ!と私は振り返ったが、マーサに止められた。
「お嬢様。今は宰相様の所へ。お願いします」
マーサは何でもない風に笑って私を促す。
「でも。。。あれはひどいわ」
「いいんですよ。あんなもの放っておけば」
本当に?めちゃくちゃムカついたんだけど。
プリプリしている私は、マーサに手を引かれようやく宰相様の所へたどり着いた。
「アダム様。お呼びとの事。お待たせいたしました。ジェシカ・ロンテーヌでございます」
と、私はほぼ初対面のように挨拶をした。
「いやいや、待ってはおりませんよ。このホールは広いですからね。変な虫に捕まっていましたね~。改めまして、ジェシカ様。アダムと娘のエイダでございます」
「ジェシカ様。お久しゅうございます。この度はデビューおめでとうございます」
キレイなカーテシーを披露するのはエイダ様だ。
「ありがとうございます。エイダ様もデビューおめでとうございます」
「エイダ、ジェシカ様とは学年が一緒なんだ。仲良くしてもらいなさい」
エイダ様は目を見開き、アダム様を見る。
「え~っと。そうなんですのお父様?。。。ジェシカ様、よろしくお願い致します」
何だか気の無い返事だな。いいよ、いいよ。こんなに同級生がいるんだし、気の合わない人もいるよ。お父さんに言われたからって別に仲良くしなくても。
「ほほほほほ。ご縁があればまた」
と、私はアダム様を見て『それで?』と促した。
「あぁ。すまない。こんな娘で」
アダム様は早々に諦めたのか、エイダ様に『もういい』と言うと、エイダ様は向こうの令嬢の輪に入って行った。
「いえ。無理強いは良くないですから。。。それよりも、先程の王女様の件、ありがとうございました。突然の事で驚いてしまいましたわ」
てか、その姫様が見当たらないんだけど。どうなったんだろう?
「いやいや、当然の対処をしたまでです。そこの執事が呼びに来てくれたおかげで、こうしてそなたと話が出来るのだからな。エイダと縁を結びたかったんだが、あれではどの道続きはせんだろう。蛙の子は蛙にならんかったな。ははは」
ニヤリとアダム様は笑う。
自分のこと蛙って。。。娘のこと切るの早すぎない?てか、何?まだ何かあるの?
「ほほほほほ。私なぞに。。。でも光栄ですわ」
は~。何?何?心臓に悪い。
「今日は、誰ともダンスを踊らないのか?」
「ええ。疲れてしまって」
「王子の列には並ばないのか?」
「ええ」
「「。。。」」
「本日はどうされました?何かご用事があったのでは?」
アダム様は歯切れが悪い。何だろう。。。
「いや、何。。。」
???何なのこのオヤジ。もう帰っていい?
「あぁ!こちらに」
と、アダム様が手招きした先には、キラキラ王子がこちらへ向かって来ていた。
うわ~。騙された。会いたくない人リストのトップじゃん。は~。
「ジェシカ嬢。こちらは第一王子の。。。」
アダム様が途中まで紹介すると、王子はおもむろに私の手を取り手の甲へキスをする。
「私は、第一王子のルーベン・フォン・グランドです。よろしく」
営業スマイル!キラン!
ははははは。アダムさんよ~。これは無いんじゃないかな?まだ、あのダンスの列は続いてるよね?
「ご丁寧にありがとうございます。ロンテーヌ公爵家、長女のジェシカと申します。以後お見知り置きを。殿下」
と、目を合わせないように足元を見ながらカーテシーをする。
「実に、かわいらしいお嬢さんだ。アダム、こちらがあのご令嬢かい?」
アダム様は無表情で頷いている。
あのって何?
私がハテナになっていたので、王子様が話してくれる。
「いや~。父が。陛下がお気に召したご令嬢がいると言うので、一目お会いしたかったんだ」
と、王子様は爽やかな笑顔でこちらを見る。
チッ。あのオヤジ。。。
耳をダンボにしていた周囲の貴族たちが一斉に私を見てくる。上から下まで何往復するんだよ!ってぐらい見てくる。。。つらい。
「おほほほほほ。誰かとお間違いじゃないでしょうか?宰相様!私、陛下とお話しした事はございませんよね?」
と、アダム様を睨んで見る。
これは一種の賭けだ。私は殿下に対して嘘を言ってしまった。この際『会ってない』で言い通すぞ。アダムさんよ~。不敬にならない様にどうにかしてよ。ほらこの空気、どうすんの。あそこで順番待ちしているお嬢様方が、あんなに遠いのにめっちゃ睨んでくるよ。
王子は手を口に当て、先っきとは違う好奇の目で私を見る。
「あはっ。面白いな。。。そうか、私の思い違いか?なぁ、アダム」
アダム様は目を瞑って、若干青筋を立てている。
「いえ。殿下が間違うはずがございません。私が他のご令嬢と思い違いをしておりました。申し訳ございません」
アダムは王子に一礼すると私を解放してくれた。最後にギロッと睨まれたけど。
「では、人違いの様ですので御前を失礼致します。私の事はお忘れ下さい」
と、とっとと礼をして帰るぞ。
「いやいや。ジェシカ嬢。アダムが間違っていたとしても、これも何かの縁だ。少しお話をしましょう」
いやいやいやいや。王子様!あの令嬢たちの目を見て!あなた待ちなんだよ?
「いえ。殿下のお時間を頂くわけには参りません。まだ、ダンスが残っているみたいですし。。。私なぞ、捨て置き下さい」
礼を崩さないよカーテシーで堪える。早う、あっち行け。
「これはこれは、謙虚なご令嬢だ。では、私とダンスはいかがかな?あの列は弟目当てのご令嬢ばかりですよ。心配いりません」
困った。。。アダム様をチラッて見るが『バーカ』って聞こえそうな顔でニヤけている。
は~。
「恐れ多いことにございます。。。」
「ははは。強情ですね。ま、いいでしょう。まだ、社交シーズンは始まったばかりです。またお会いする事もあるでしょうから、この次はダンスを受けて下さいますか?」
と、王子様に手を取られてしまった。
もう周りは『きゃー』っと、ご婦人方の黄色い声と嫉妬の声が入り混じる。
観念するしかないのか。。。
「はい。またの機会に。ぜひ」
と、小さく返事すると王子はまたダンスの輪に帰って行った。
「「。。。」」
残されたアダム様と私は隣に並び、小さい声でヒソヒソ話をする。
「何がそんなに嫌なのだ?王子だぞ?」
「はぁ?一番関わりたくない方ですよ。おっと、失礼」
「は~。。。お主。欲がないのか?せっかく紹介してやったのに」
「余計なお世話です。あれはお金になりませんよね。領の為にならないものは極力パスです。ご自分の娘さんにどうぞ?」
何だこいつ!と言う顔でこちらを見てくるアダム様。
「次は、権力とか王族とかいらないので、その辺をよろしくお願いします」
アダム様は不思議な生き物を見るみたいに唖然としている。
「では、アダム様。人違いだったようなので失礼致します。ごきげんよう」
私は元気よく挨拶し、ロダンに目配せをしてからその場をさっさと退場した。
なんて日だ。
35
お気に入りに追加
6,243
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
転生騎士団長の歩き方
Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】
たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。
【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。
【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?
※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。
レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。
【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。
そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。