上 下
30 / 135
1章 ロンテーヌ兄妹

63 ナダル夫妻の事情

しおりを挟む
今日は王都へ出発する。お爺様やロダンが事業で忙しい為、今日もランド任せで移動する。お爺様とロダン、私、ランド、リット、エリが転移で王都へ飛ぶ。

別経由の、アーク、ケイト、マーサ、大荷物は10日前に領を出発したので、恐らく今日辺りには王都屋敷へ到着する予定。

「ランド、いつもごめんね」

「あぁ。謝るな。当然の事だから問題ない。仕事の一部だし、移動以外で能力を使わされた事がないから別に気にならない。それよりまたチュロスを買いに行こう。冬の王都は綺麗だぞ。特に夜が」

ランドは何でもないと言ってくれる。ありがたい。そのチートを運び屋扱いして、すんません。

「あぁ~それ、俺も行きたい。お嬢、3人で行こうぜ!」

「ええ。そうね。夜の王都も見て見たいわ。あれ?でも、王都は雪が降らないの?」

「パラパラと降るだけで積もりはしない。だから昨日、一晩で積もった雪を見た時はびっくりした」

そう言えば、ランドは領の雪を見て興奮していたな。何度も雪の上を踏んで遊んでいたような。何でも初めてはワクワクするよね。

「俺の領も北の山の方は積もるな。ロンテーヌほどではないけど」

へ~。リットの実家、テュリガー領も降るんだ~。

「夜会が終わったら、領に帰って雪合戦をしましょう!ね!」

「それいいな~。でも、多分、夜会が2月始め位まで続くぞ。週一でどこかの屋敷で茶会やパーティーばっかりになる。ご主人様は21領主会議もあるし。お嬢は、王様と約束があったんじゃなかったっけ?それが終われば、すぐに学校だぞ!」

そうだった。え~、じゃぁ、昨日、雪合戦しておくんだった。。。しくった。

「そうなの。。。じゃぁ、このまま王都屋敷に移るのかしら?ロダンに確認しておくわ」


~*~*~*~

「わ~!前より断然かわいくなってる!すご~い」

以前の王都行きの時は、机とベットがあるだけだったシンプルな部屋が、箪笥や絨毯、椅子、化粧台などなど、色々搬入されかわいくアレンジされていた。しかも、ベットには天蓋がかかっている。一気に女子っぽくなったな~。

「エリが前回残った時に色々注文したらしいぜ」

エリ~!グッジョブ!めちゃかわいい。のに、フリフリレースの甘~い感じでもない!正に私好み。

「エリにお礼を言わなくちゃ。落ち着くわこのお部屋。ランドとリットの部屋もあるの?」

「あぁ。護衛を兼ねているからご主人様と同じ階の端っこだ。お嬢の学校が始まれば月代わりでランドと屋敷に在住になる。それよりも、今から街へ行かないか?予定はないんだろう?」

「ええ。でも、今日は止めておくわ。屋敷を探検したいのよ。隠し部屋とか、秘密の部屋とかワクワクしない?」

「そんな古いのかな~この屋敷?てか、今時そんなものあるか?本の読みすぎじゃないのか?」
まだまだ子供だな~とリットに頭をグリグリされる。

「そんなのわからないじゃない。元は先々代の王様の第3夫人のお家よ。絶対あるはず!いや、見つけてみせる!」
メラメラと探検に想いを馳せている私。今ならケイトがいない。チャンスじゃん。

「わかったわかった。じゃぁ、今日の午後、探検するか?どうせケイトが居ない隙に探検とやらをしたいんだろ?」

バレてる。。。でも行ける!

「えっ!付き合ってくれるの?やった~!」
両手を上げてジャンプだぜ!やっほい!

部屋で旅支度の片付けと部屋の整理をしていたエリが、
「ダメですよ。お嬢様。本日のお茶の時間にナダル夫妻が来る事になっています。その際に、ドレスを見る約束をしています。ダメです」

NO~~~!マジか!思わず膝から崩れてしまった。

「お嬢様。立ってください。それに『テーヌ』?と言う物も持って来るらしいですよ。しっかりしてください!5日後は夜会なのですよ!探検なんて、夜会の後にして下さい。いいですね」

はい。。。しょぼん。ケイトがいない今がやりたい放題なのに。。。

「ははっ!じゃぁ、また今度だな」
リットは全然残念そうじゃない!くそ~!

「あと、お嬢様。ナダルはドレスとは別に何か話があるそうですし。何でしょうね~?」

本当に何だろう? 

私は、午後のお茶の時間まではエリと部屋の整理をして過ごした。新しい部屋だからね~。


「お嬢様。お久しぶりでございます。ドレスとテーヌをお持ちしました」
ナダル夫妻はニコニコと笑顔でやって来た。

「ええ。久しぶりね。色々と、話が変わったから無理をしていない?少し痩せたように思うけど大丈夫かしら?」

「ははは。問題ありませんよ。ありがとうございます。びっくりはしましたけどね。突然、服飾店を設立するはずが『ロクサーヌ商会』の傘下に入り、『テーヌ』ブランドは店の一商品になりましたからね。でもこのやり方は、今回とても勉強になりました。いきなり、ロダン様に『既製品の服なら、他の商品と一緒に並べればいいと。服飾店を専門に開業するまでもない』と言われた時は、ちょっとパニックになりましたが」

ははは。ごめんね。ナダル。そうだよね、日が経たない内に話が二転三転転がったんだもんね。

「ごめんなさいね。不安になったんじゃない?まだ、ミシュバールのお店も引き継ぎが終わっていないのでしょう?」

「いえいえ、夜会が終われば一段落がつくんです。お客様にもドレスの引き渡しの時に引退する事をお話済みです。それよりも、この商会のお話はお嬢様のお考えだそうですね。実に面白い!さすが女神です」

いやいやいや。ロダンですよ。ちゃっかり私のせいにしてるじゃん。女神信仰が加速しちゃうじゃんね。

「おほほほほ。平民用だからこそ出来た方法よ。たまたまよ。そっ、それより話があるそうね?」

「はい。お嬢様。我々は今後、ロンテーヌ領領主が代表の『ロクサーヌ商会』の一員となる事になりました。幾人かの服飾職人も同様です。ロンテーヌ領の店舗は、今ある領経営の生活雑貨店をそのまま使用するそうですが、この春同時に『ロクサーヌ本店』と『ロクサーヌ王都店』を開店させるそうです」

「そうなのね。春に開店することは知っていたけど、同時開店なのね」

「ええ。それで、当初の服飾店としての運転資金の準備と運営で予定していた、その計画をそのままスライドさせ、今回の王都店でする運びとなり、作業場兼住宅として、3階建の建物を今探しております。1階はお店、2階は事務所と作業場、3階は住居スペースです。立地も、貴族街と平民街の間の平民街寄りですので、当初の服飾店用に用意していた予算が大幅に削減出来ました。その浮いた資金で、今回のような大きな店が実現できそうなのです。そして、我々夫婦はお店を任されますから、その店舗に住む事にしました」

3階建て!すごいな。結構大きくない?

「そう。。。見つかりそう?でも、ナダル。住むって事は引っ越してくるのよね?大丈夫なの?」

「ええ。今の屋敷や店は息子夫婦に引き継ぎました。どうせなので、今回、爵位も譲渡いたしました」

!!!引退したの?まだ40代ぐらいじゃん?

「時期尚早じゃない?」

「いいんです。我々は、爵位を譲り、店も譲り、身を軽くしたかったんですよ。実は、今回王都店を任される事で、いっその事ロンテーヌ領民になろうかと思いまして。ロクサーヌ商会としてもその方が都合が良いようですし。これで、お嬢様の近くに居られますし、今後もお嬢様と何かを作って行けると思うと、ワクワクします。ですので、まずはお嬢様に報告をしたかったんです」

ナダルはニッコニコだよ。あ~、でもそれで今回、いつもの上客と接するような話し方が崩れたのね。しっかし、すごい決断だな。

「お嬢様、私達はロンテーヌ領民になれる事がとてもうれしいのです。子供も自立する事ですし、これからの人生はお嬢様と共に歩んで行きたいと思っております。これで本当の主従関係になれます!」
デリアも進んで領民になるんだね。納得してるならいいんだよ。

元気な夫婦だな~。いいね~。いつまでも仲良くて。理想的だな。

「そう。無理矢理ではないのね。ナダルもデリアも領民になるのなら、一度ロンテーヌ領にも来て見てね。何もない田舎だけれど、自然がいっぱいで穏やかないい土地なのよ」

「それはもちろんです。今後は商会の仕事で領と王都を行き来するでしょうから。私も楽しみです。それでは、ドレスとテーヌを確認して下さい」

それから、夜会のドレスの最終確認と領の服『テーヌ』を試着した。ドレスはジャストサイズでお直しなし。このまま夜会で着用する。さっすが『ミシュバール』!
テーヌの方は、ナダル夫妻だけで作製しているらしい。久しぶりに針とハサミを持ったとナダルが興奮しながら教えてくれた。こちらは少し修正が入っただけで、想像通りに仕上がりそうだ。

「早く『テーヌ』を完成させて、領で着て見たいわね」

ワクワク。早く出来ないかな~。


しおりを挟む
感想 404

あなたにおすすめの小説

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。