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1章 ロンテーヌ兄妹

57 お気に入りな私

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屋敷に戻るとそのままお爺様の執務室に直行した。

「して。アーク報告を」

「実は、部屋に入り話が始まると、音声もお嬢様の姿も遮断されました。私は全く情報が収集できませんでした。おそらく室内の誰かの能力かと思われます」
アークは、諜報活動がろくに出来なかったみたい。改めてグレン様の能力ってすごいな。

「ジェシカ、その事について話せるか?」

「いいえ。誓約があります。申し訳ございません。しかし、その他の事はお話できます」

私は、王様達が私の特化の事を危惧していた事や、少しだけ異世界の話をした事を話した。

「ほぉ。それで?次は春か。。。時間は稼げた訳じゃが。。。今の所あまり警戒しなくても良さそうじゃな」
お爺様はホッとしている。

「何か不安要素があったのですか?」

「いや、何。王がジェシカ自身を保護という名の名目で、王宮に住まわせるんじゃないかとな。王には2人の王子がいるんじゃ、縁付かせるんじゃないかと危惧しておった。よかったわい」



息子?危な~。

「そうなんですね。そんな話は1ミリもありませんでしたよ。そうなると、万が一のことを考えて、私は婚約者を定めてしまった方が良いのでしょうか?」
しょんぼりになってしまう。あぁあ、恋愛結婚がしたかったな~。

「そうですね。。。婚約者がいれば少しは安全ですが。。。今は悪手です。新規事業が始まってしまいましたので。貴族達の『欲』が先に出て来てしまい、領にとってではなく、お嬢様にとって良い方かどうかの判断が難しくなっています。意中の男性がいれば話は別なのでしょうが。。。それも難しいでしょう?」
ロダンはリットとランドの事、知ってるもんね。

「ええ。今は。学校での出会いも、純粋なモノにならない可能性があるのね。。。残念だわ。しかし、私も公爵家の娘。お爺様のいいようにして下さい。従います」

「よいよい。そうがっかりするな。どうしてもとなるまで、ギリギリまで婚約者は定めない。それまでは青春を謳歌しろ!大丈夫じゃ」
お爺様はニッコリと笑ってくれた。いいのかな?ありがとうお爺様。

「その他はございませんでしたか?部屋から出てこられた様子が随分おかしかったのですが?」
ロダンは抜け目ないな。。。は~。

「ええ。ちょっと気に入られた?のかしら。。。なぜか王様をエド様と呼ぶようにと言われてしまったわ。。。ごめんなさい」

「「!!!」」
二人は驚愕の表情で固まってしまった。

「私は普通に話せというので、話していたのだけれど。。。でもね、お嬢様風に『ビクビク』と怯えてもみたのよ!でも通じなくて。。。『15の皮を被った曲者の大人』と、アダム様に言われてしまったわ」

「アダム様とな!宰相殿までも名前で呼ぶとは。。。」
お爺様は驚きを通り越して呆れている。ロダンはちょっとプンプンだ。

「あれ程、変な大人に気に入られるなと申しましたのに!」
ロダンにしては大きな声で怒られる。つらい。

「そんな~不可抗力よ。。。王様は、異なる世界の政治や法律が気になるみたいだから、また王宮へ行かなくちゃいけないし。。もう、エド様呼びは諦めましょう?ね?どうせ王様も、夜会や公の場で私になんか話しかけないわよ。表向きは接点は無いのだから。登城して話す時限定よ。きっとそうよ」
ね?と笑ってみせるがロダンには通じない。

「そういう所ですよ、お嬢様。その様な考えをスラスラと。。。もうしょうがないのでしょうかね~。わかりました。王様とは事にしておきましょう」
一旦は納得してくれたかな?よかった~。

「では、新年の夜会もありますし、王様との会談もございます。オーダーメイドで5着ほどドレスを新調してきて下さい。今週中です。来週には領へ帰りましょう。これ以上王都にいると危険なように感じます。いいですね!」

『はい』と、しょんぼりした私は部屋へ下がっていった。



「ケイト。今週中に服を仕立てに行くわ。あと、来週は領へ帰るらしいわ」

『かしこまりました』と、ケイトはロダンの所へ向かった。

「お嬢様!またドレスが増えるのですね!私をぜひお供に連れて行ってください!」
エリは大興奮だ。

「そうね。ケイトに言っておくわ」

「お嬢。また服を仕立てるのか?何があるんだ?」
護衛として部屋のドアに立っていたリットが話してくる。

「ああ。色々あって、新年の夜会の他に、王様との謁見用のドレスが数枚必要になったのよ」

そうか。。。と、リットは考えているが、私の視線に気付き誤魔化した。
「あっ!そうだ!今日のお嬢はとても美しいなぁ。薄い黄色がよく似合うよ。お嬢の瞳にぴったりだ。本当は今朝言いたかったんだが、皆が居ただろう?遅くなったが、本当にキレイだ」
と、笑顔で褒めてくれる。

「ありがとう。私もこのお花を気に入ってるの。かわいいわよね」
私も気付かぬふりをしてお礼を言う。

「そうですね!お嬢様は大人っぽい感じより、可愛らしい淡い色がお似合いです。次のドレス作りが楽しみです!」
エリは、あの色は?こんなモチーフもある、などドレス談義になっている。

「そう言えば、お兄様は学校かしら?あのパーティーでのエイダ様の事聞きたかったのに」
私はニヤニヤ顔になってしまう。

「はい。カイ様はご夕食前にご帰宅予定です。何でも、授業が終わってから、現役の騎士の方に稽古をつけていただいているみたいです」

えっ!まだ鍛錬するの?朝も裏庭でリットと運動してたよね。それ以上マッチョになってどうするんだ?

「そうなの?騎士団員でも目指しているのかしら?」

「カイ様は強くなりたいんだろ?筋はいいからな。ご主人様のように団長まで行くかもな」
と、リットはお兄様を褒めている。珍しいな。人を褒めるなんて。

「へ~。リットにも言われるぐらいなんだ。お兄様はすごいな~。私も、早く学校へ行って何か得意なものを見つけたいわ」

何ができるのかな?私は土魔法一択だし。土でできる魔法無双!って思いつかん。

「1種類の家魔法だけで魔法科は難しいかしらね?」

「いや、お嬢なら行けるんじゃないか?魔力量がすごいんだろう?」

そうでした!そうだよ!魔力でカバーすれば何とかなるか!

「そうね!行けるかもしれない!」
希望の光が見えて来たよ~!やっふい!

「でも、お嬢。学校では特化については誰にも言うなよ。どんなに仲良くなった友人にも絶対の秘密だ」

「ええ。わかっているわ。誰にも言わない」

そんな学校の話をしていたら、ケイトが帰って来た。

「お嬢様、急ですが明日、ミシュバールへ行く事になりました。予約も取れましたので。そして、3日後には領へ帰還です。ロダン様は来週とおっしゃいましたが、事情が変わったようです」

そうなの?もう帰るの?ま~、私も早く領へ帰りたいからいいけど。

「何かあったの?聞いてもいい事?」

ケイトは一瞬躊躇チュウチョしたが話してくれた。
「実は、先程、お嬢様宛にハミルトン様からお茶会のお誘いが来たようです。来週の始めです。ですので、帰りを早めました」

あ~。お隣さんのハミルトン様ね。早速か。。。

「そう。わかったわ。私もハミルトン様はお断りしたいもの。では、ケイト明日の用意をお願いね。私は少し書き物をします」
と、みんなを下がらせた。

王都に来るのは次は新年よね。それまでの時間が勿体ないから、ナダルに領民の服の相談をしてみよう。服の簡単な絵を描いて渡そうっと。あとは、王都のチュロスを大量に買って、お菓子も買いたいな。明日は色々忙しくなるぞ!



カキカキと領の服を書いていく。楽しみだな~。どんなふうに出来上がるかな~。

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