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1章 ロンテーヌ兄妹

54 成人のパーティー2

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「皆、一度話を止めてくれ。急遽お客様が増えた。申し訳ない。使用人達は下がるように。宰相様とそのご令嬢。それと、トリスタン領主とそのご子息じゃ。今から半刻ほどで到着される」

!!!

何で?

「先ほど、先触れが来た。宰相家とトリスタン家はお隣だしな、無下にできん。クリス、イーグルこちらへ来てくれ」
と、お客様に対して、これからお爺様は叔父様達と作戦会議だ。

「ケイト、エリ、食器や食事の確認を。マーサ様はクリス様の奥方様達のお相手をお願いします。お嬢様はランドとリットから離れないようにして下さい。カイ様とグレゴリー様もお嬢様の近くにお願いします」
ミランはテキパキと会場を指揮し始めた。

和やかムードが一変、ちょっとざわざわし出したよ。

「成人のお祝いって、ご近所付き合いで来るものなの?」

「な~。どうせ新規事業が気になるんだろう。ジェシーは護衛の後ろに隠れていろ。大丈夫だ。狙いは俺だろ?昼に宰相様にも会ったしな。婚約者云々って言ってたじゃないか」

ふ~ん。これも新規参入した新参者の宿命かな。今、へちまんとサボンは大人気らしいしね。

ふと疑問に思う。
「宰相様は21領主とは関係ないのかしら?それともどこかの領主をされて居るの?」

「あぁ、宰相様は王領の領主を兼任されている」
と、ランドが答えてくれた。

「王領?」

「21領主の中に今現在、王領は2箇所ある。その内の一つを宰相様が、もう一つを第1騎士団長が王に代わって領主代行を務めている。しかし、お二人とも国の重鎮だ。王の側近のトップと国の武力のトップ。王は領主代行をさせるに当たって、権力での弾圧や不正が行えないように、爵位は共に子爵位に定めた。代々続く家ではないんだ。確か、お二人とも実家の爵位は放棄している。しかし、お二方とも、やはり敏腕というか、実力というか、それぞれが栄えている領ではある」

へ~。そうなんだ。権力が偏らないように子爵位。でも、宰相と第1騎士団長だよね。すごいな。

「じゃあ、いつも王様の代替わりの時は王領の領主代行一族を丸ごと変えているのかしら?それも大変よね。色々と」

でも逆に、代々続く癒着や変な柵、膿が一掃されるからいいのはいいのか。。。

「いや、今代の王が今回の政策を実施した。今まで王領は、王弟などの王族が治めていたのだ。あの方達は、宰相様と騎士団長はまさに王の双璧。子爵位なんて貴族でいられる理由でしかない。爵位なんてお飾りとでも思っているんじゃないか?あとは、3人は幼馴染でとても深い忠誠心でお仕えしているのは有名な話だ」
流石、元王族直属の魔法使い。ランドは詳しいな。

ほぇ~。となると、王様はやっぱり頭がキレるのか?しかも側近の忠誠心が強いって。超優秀じゃん。

「それにジェシー、王様は『眼』を持っているからな。真実を見抜くとも言われている。すばらしい特化だ」
お兄様まで!あの王様ってすごいんだ。

「ん?王様の特化って誰でも知っているの?」

「あぁ、ご自身で特化の特徴を開示された。簡単にだが『頭の上にその人の特性が文字で浮かぶ』と」
 
ほほ~。自分の武器をさらけ出す?いやいやいや、あの王様だよ。絶対特化の秘密ってそれだけじゃないよね。まだまだ隠してそう。

「お嬢、俺の後ろへ。来たみたいだ」
リットとランドはさっと私の前に立つ。

サロンの入り口から宰相さんとお嬢様、その後ろからはトリスタン領主親子が入ってくる。

「ロンテーヌ領主、クライス殿。この度は、急な訪問を歓迎して下さりありがとう存じます」
宰相さんはニコニコ顔でお爺様に挨拶をしている。

「先日ぶりですな、私共もお受けいただきありがとうございます。そして、この度はジェシカ嬢の成人、おめでとうございます」
トリスタン領主と息子も礼をした。

お爺様は『いえいえ、隣同士ではございませんか』と、しれっと握手を交わしている。その後、お爺様に手招きされたので、私とお兄様もその場へ向かった。

「おぉ。これはこれは。なんと可愛らしい。初めまして。トリスタン領領主、ケンジントン・トリスタンです。侯爵位を賜っております。以後お見知り置きを」

トリスタン領主は私の方へ向き、息子を紹介し始める。
「この度は、成人おめでとうございます。ジェシカ嬢。これは、息子のハミルトンです。カイデール様の1つ下になります」
よろしくと、ハミルトン様は私の方を向き手の甲にキスをした。

。。。来た。。。こちらの侯爵は私狙いか。。。

「ええ、よろしくお願いいたします」
ほほほほほっと、微笑えむと一歩下がり、私はお兄様に会話は任せる事にした。

トリスタン領主はそのまま話を続けようとしていたが、後ろで待っていた、お爺様との挨拶が終わった宰相さんが声をかける。

「失礼。トリスタン侯爵。私もよろしいかな?」
すっと、その場を明け渡された宰相さんが口上を述べる。

「朝の謁見でお会いしましたね。改めまして、ジェシカ嬢。この度はおめでとうございます。王領領主代行のアダム・キャスリーです。これは、娘のエイダ。ジェシカ嬢とは同い年になりますので連れてまいりました。仲良くしていただければと思います」

エイダ様は流れるようなカーテシーをし、お兄様に目を合わせ話し出す。
「初めまして、カイデール様。ジェシカ様。キャスリー子爵家長女のエイダでございます。この度は、成人おめでとうございます。無理を承知でこちらに伺いましたこと誠に申し訳ございませんでした。こうしてご挨拶ができました事、心からうれしく存じます」

エイダ様はウルウル目でお兄様を見つめている。お兄様、ロックオンされたね。

「エイダ様。ありがとうございます。しかし、エイダ様?あなたも成人の儀をされたのなら、今頃はご家族でお祝いなのではございませんか?よろしいのですか?」
と、エイダ様に話しかけてお兄様に助け舟を出したが、エイダ様の目はお兄様から外れない。

おっと。あからさまだなエイダ様。まさかの一目惚れとかないよね?え~?

「ええ」
と、一瞬だけ私と目を合わせ、お兄様に戻す。

「父が宰相をしている関係で、当日儀式には家族が立ち会うことができませんでしょう?ですので、私は前もって成人の儀を個別にいたしました。その日にお祝いのパーティーも終えておりますの」

そうなのね。エイダ様の魔法は何だったのかな?金髪だから風っぽいけど。あ~、知りたいけどまだ初対面だもんね。ガマンガマン。

てか、お兄様はちょっと腰が引けてるよ。そんな目で見つめられた事がないからかな?初モテで困ってる。ぷぷ。

「そうなのね。では、わざわざお越し下さりありがとうございます。こうして屋敷もお隣ですし、ご縁があるかもしれませんわね。春には学校でお会いするでしょうから、その際はよろしくお願いいたします」
と、私はお兄様を残しさっさと一歩も二歩も下がってフェードアウトしようとした。

お兄様はエイダ様にグイグイ押されてるよ。タジタジしながらも話を続けている。がんば!

「ジェシカ嬢」
振り向いた先には、ハミルトンとまたまた宰相さん!

ダブルでお相手か。。。は~。。。

「ジェシカ嬢。お会いして直ぐで困惑されるかもしれませんが。。。先ほどあなたの微笑みは私の心を虜にさせました。心がドキドキと弾むのです。その、その春の訪れのような淡い緑の瞳に私を映してくださいませんか?」

さっぶ!マジか!宰相様も若干引いてるよ!ねぇ?跪かないで!!!なんなのこの寸劇!

「え、ええ。ありがとうございます?あの、ハミルトン様、お立ちになって下さい」
私は手を差し伸べようとしたが、すっとランドがハミルトンの手を取り立たせる。

「あぁ、できるならあなたに手を引いて欲しかったよ。ジェシカ嬢。すまない。困らせるつもりはなかったんだ。しかし、その困惑した顔もなんて可愛らしいんだ。もっと困らせてしまいたくなる」
と、ハミルトン様はうっとりした満面の笑みで一歩近づいて来る。私は、、、一歩下がるよね~。

「ほほほほほ。お戯れを」
と、バレないようにまた一歩下がる。

「トリスタン子息。ジェシカ嬢をお譲りいただけるかな?国王からの伝言を伝えたいのだが?」

ナイス宰相さん!そう言えば相手は引かずにいられないもんね。って、ん?王様からの伝言?

「これは、失礼しました。ジェシカ嬢に夢中で周りが見えていませんでしたね。ははははは。本当はこのまま、あなたを独り占めをしたい所ですが。。。では、ジェシカ嬢、新年の夜会で必ずお会いいたしましょう」
と、ハミルトンは最後に一礼して、また手の甲にキスをして去って行った。

。。。ふ~。きもっ。

さっ、次。

「ありがとうございました。正直助かりましたわ。宰相様。いえ、キャスリー様とお呼びしたほうがよろしいでしょうか?」

さぁ、次は宰相さんだよ!宰相と言えば、前世のお決まりだと『タヌキ親父』だよね。よしっと気合いを入れた私は、ゴリゴリの営業スマイルで一礼する。

「あぁ、アダムで良い。王との謁見での気迫はどこへやったのだ。あんな小僧を相手に」

ん?何かくだけた感じできたな。。。雰囲気がなんとなく王様に似てる。結構、タメ口でもいけたりする?

じゃぁ、私もちょっとだけ素を出すよ。試してみる?
「ほほほほほ。子供があのような言葉を。。。びっくりしてしまいました。また、あの感じが。。。少し気持ち悪くて。あら、失礼」

目を見開きアダム様は笑い出した。
「はははははっ。気持ち悪いか。。。子供とは、あぁ~だったな。それにしても、あのような言い回し、社交界では当たり前に飛び交っておる。早く慣れた方が良いぞ。それよりも、王からの招待状を預かって来た」

!!!本当にあったんだ。方便じゃなかったの?


てか今朝の今って、仕事、早っ!


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