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「あら、ルミナじゃない?」
甘く妖艶な声に心臓が跳ね上がった。
声のした方をむくと、やはり、アムルだ。
1番会いたくない人に会ってしまった。
また男の人を連れて来ていた。
黄色い髪にそれなりの美形だがニヤニヤといやらしい笑いを浮かべる、生理的に受け付けないタイプだ。
アムルの腰に回した手も何だかいやらしい手つきだ。
「どうしてここに?ここはあなたの様な低い人間がいていい場所ではないわよ」
わざとらしく大きな声で言い放つ。
「おいおい、声を小さくしてやれよ。この子がアムルがよく言っていた、あのルミナなんだろ?」
「そうよ」
「それなら、ほら、パトロンと一緒に来たんだよ。だからそんな言い方するなって」
「あら、そういう事ね」
「可愛いじゃないか。お菓子につられて付いてくるなんて、純粋だね」
その言葉を聞いた瞬間、ゾワリとした寒気が全身を襲った。
そして怒りと共に体が熱くなった。
「安い女、という訳よ」
アムルが私の事を嘲笑う。
「結構可愛いね。アムルが言う割には、すれてなさそうじゃないか」
私を見て舌舐めずりをする男に嫌悪感しか湧かない。
「ふふっ、そういう演技が上手いのよ」
「こういう子があっちの方は凄かったりするんだよね。俺好みだな」
下卑た笑みを浮かべる男は、気持ち悪い視線で私を見る。
鳥肌が立ち、吐き気を覚えた。
「どうせ年寄りのパトロンなんだろ?ほら、この菓子あげるから俺と遊ぼうよ」
持っていた箱をわざわざ私の胸に押し付けてきた。
気持ち悪さと嫌悪が沸々と湧き、腹が立った。
「ほら、受け取ったら?本当なら私の為に買ってくださつたものだけど、差し上げるわ。沢山限定品が入ってるのよ。そのパトロンよりも美味しいもの食べさせてもらえるわよ」
「いらないわ」
「おいおい我慢しなくてもいいぞ。俺が優しくしてやるからさ。パトロンよりも若い俺の方が絶対楽しいぜ」
「グロッサムと別れてヤケになっているのは分かるけど、若い方の方がいいわよ」
「満足させてやるぜ。年寄りとは長さも大きさも違うからな。声が枯れるかもしれないから飴も買ってやろうか?」
「いらないわ!」
我慢の限界だった。
はっきりと断ると今度はアムルも男も不機嫌になった。
「なあに?お菓子が気に入らないの?」
アムルはわざと聞こえるようにため息をつくと、とても辛そうに言った。
すると周りにいた人が一斉にこちらを見た。 
「おい、なんて事するんだよ」
私が注目されている事に気づくと、男が持っていた菓子箱を落とし、責めるような声を出した。
その瞬間、店内は静まり返った。
アムルは私に向かって、侮蔑を含んだ表情で見下ろしながら口を開いた。
「酷いわ。せっかく欲しいと言うから差し上げたのに、そんなふうに叩いて投げ捨てるようにするなんて」
わざとらしく、泣き真似をしながら訴える。
「自分が欲しいと言ったからあげたのに、その態度はなんだよ」
その言葉に店内の客達がざわめき出す。
狡い。
何も答えない、いや、答えられないように矢継ぎ早に攻撃してきた。
「拾えよ。せっかくの高級菓子が勿体無いだろ。床に落ちて中身が崩れても、食べれるぜ。こんな菓子食べた事ないだろ?ほら、拾えよ」
「ほらぁ、早くしなさいよ。せっかくお店の方が丹精込めて作ったお菓子よ。無駄にしちゃダメ。ルミナ、あなたが落としたのだから拾って当たり前でしょ?」
「なんだよ。自分が落としたのに拾いもしないのか?あんた何様のつもりだよ」
「ルミナ」
あえて声を上げて私の名を呼ぶ所がまた嫌らしい。
「ねぇ、プライドが高いのは知ってるけれど、これは自分のした事よ。拾うべきよ」
店内の空気が悪くなり、視線がこちらに向いているのが否が応でもわかった。
拾いたくない。
でも、既に不利な状況だ。
「拾わなくていい」
諦め、私はゆっくりと腰を曲げた時鋭い声がした。
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