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第9章 冬の……アナタ、どなた?
エピソード57-36
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ヨンリオ・ビュートランド 2階 制御室――
テルミの通信アプリでローラに憑依した女神サチウスと会談している静流たち。
サチウスは静流に【転移】を完全に習得する為に、『神官見習い』として教会で修行する事を薦めた。
〔『女神の寵愛』を受ける事で、基礎魔力の底上げを狙うのよ♪〕
サチウスは他人事のようにさらっと言った。
モモが手を挙げてサチウスに質問した。
〔一応お伺いしますが、 サチウス様から寵愛を受ける事は可能でしょうか?〕
〔私? 無理無理。 やった事ないもん……〕
サチウスは手をパタパタさせて全力で否定した。
〔女神にもイロイロあってね。 物事はそう都合よく出来ていないのよ〕
〔そうでしたか。 残念です……〕
〔どのみち封印されたままじゃ何もできないしね……〕
薫子が何かに気付いたのか手をポンと叩いた。
〔そう言えば静流、 女神の寵愛なら『シズルカ』から受けているわよね?〕
〔え? あぁ、 寵愛って言うのかなぁ……〕
桃髪の二人が話しているのを見たサチウスが、即座に反応した。
〔何よ『シズルカ』って? そんな女神聞いたこと無いわよ?〕
〔ええとですね……〕
静流は『戦乙女神 シズルカ』の誕生までのいきさつを簡潔に説明した。
・静流が美術部のバイトでモデルとなった時に花形が作った架空の女神像が、姉妹校に寄贈する事になった事。
・その後静流が『シズルカ』に扮し、『施術』を行う事によって起こった数々の『奇跡』。
・神学博士の睦美の父が立てた仮説では、静流は疑似的に『創造主』の権能を所有している可能性がある事。
〔驚いたわ……私の直感は正しかったのね〕
サチウスは確かに、静流との第一印象で『運命的な物を感じる』と言っていた。
〔仮に『名もなき神』に名前と容姿を与えたのがキミだとしたら、 知らず知らずのうちに『寵愛』を受けてる可能性はあるわね♪〕
〔本当ですか!?〕
サチウスは静流に向かって親指を立てた。
〔やったじゃん静流! 鼻歌混じりで【転移】が使える様になるかもよ?〕
〔女神のお墨付きをもらった。 間違いない!〕
〔ぶごぉ!?〕
サチウスの言葉に気を良くした姉たちが静流に抱き付いた。
〔でも、 困ったわね……〕
〔何がよ?〕
モモはヨンリオで起こっているテロ騒ぎで、過激派の要求が『行方不明者の解放』だと言う事を説明した。
〔そんな事? だったら簡単に終わらせる方法があるわよ?〕
サチウスは悪戯を思いついた子供の様な顔でそう言った。
〔罪人の名前さえわかれば、『アノ本』でどっかに飛ばしちゃえばイイのよぉ♪〕
〔〔〔〔はぁぁぁぁ~!?〕〕〕〕
女神の口からとんでもない発言が飛び出し、一同は困惑した。
酔いが回ったサチウスは、さらに追い打ちをかけた。
〔女神様が直々に罰を与えてやろうって言ってんのよ! うぃ~っ〕
〔面白そうだけど、 犯人の名前を調べるのがネックね……〕
確かに黒装束のメンバーたちから直接名前を聞き出す事は無理だろう。
何かいい案が無いかと考えていると、静流がある事を思い出し、モモに聞いた。
〔そう言えば伯母さん、 朔也さんって名前を読み取る特殊スキルがあったって言ってたよね?〕
確かに忘年会の時、朔也の心が宿ったレプリカが言っていた。
朔也が言うには対象人物の頭上に名前が浮かんで見えるとの事で、初対面は赤、一度でも会っていると青で表示されるらしい。
〔あの人のは特別よ。 それなら似たような魔法に【アナライザー】があるわね〕
モモがそう言うと、画面の中で自信なさそうに手を挙げる者がいた。
〔あの……私使えますよ【アナライザー】〕
手を挙げたのはエリカだった。
〔キミ、それは本当かね?〕
〔ええ、 一応……〕
千葉に聞かれ、自信なさげに言った。
その様子に、パーコーがエリカをなじった。
〔自信ないアルか? 本当に使えるアルか?〕
〔試してみましょうか?【アナライザー】〕ポゥ
エリカは呪文を唱え、両手でチョキを作り、両目に当て、パーコーを見た。
〔見えました! アナタはラグネス・チャンさん……ですよね?〕
〔ゲッ!? 何でわかったアルか!?〕
名前を言い当てられ、ぎょっとするパーコー。
〔上出来よ。 私以外メンバー同士でも本名は名乗らない事になってるの〕
エリカの魔法を目の当たりで確認し、千葉は納得した。
〔そう珍しくもないぞ。 警察関係者には【アナライザー】を使える者は結構いると聞く〕
沖田は結果に驚く事は無かった。
〔へぇ。 便利な魔法だなぁ? ラグネス・チャンちゃん?〕
〔うわぁん! 名前知られちゃったアルゥ~。 もう、 恥ずかしいアルゥ~〕
バタピーにイジられ、パーコーは顔を赤くした。
サチウスは満足げに一同に言い放った。
〔役者は揃ったみたいね? とっとと行ってちゃちゃっと終わらせちゃいましょう♪〕
テルミの通信アプリでローラに憑依した女神サチウスと会談している静流たち。
サチウスは静流に【転移】を完全に習得する為に、『神官見習い』として教会で修行する事を薦めた。
〔『女神の寵愛』を受ける事で、基礎魔力の底上げを狙うのよ♪〕
サチウスは他人事のようにさらっと言った。
モモが手を挙げてサチウスに質問した。
〔一応お伺いしますが、 サチウス様から寵愛を受ける事は可能でしょうか?〕
〔私? 無理無理。 やった事ないもん……〕
サチウスは手をパタパタさせて全力で否定した。
〔女神にもイロイロあってね。 物事はそう都合よく出来ていないのよ〕
〔そうでしたか。 残念です……〕
〔どのみち封印されたままじゃ何もできないしね……〕
薫子が何かに気付いたのか手をポンと叩いた。
〔そう言えば静流、 女神の寵愛なら『シズルカ』から受けているわよね?〕
〔え? あぁ、 寵愛って言うのかなぁ……〕
桃髪の二人が話しているのを見たサチウスが、即座に反応した。
〔何よ『シズルカ』って? そんな女神聞いたこと無いわよ?〕
〔ええとですね……〕
静流は『戦乙女神 シズルカ』の誕生までのいきさつを簡潔に説明した。
・静流が美術部のバイトでモデルとなった時に花形が作った架空の女神像が、姉妹校に寄贈する事になった事。
・その後静流が『シズルカ』に扮し、『施術』を行う事によって起こった数々の『奇跡』。
・神学博士の睦美の父が立てた仮説では、静流は疑似的に『創造主』の権能を所有している可能性がある事。
〔驚いたわ……私の直感は正しかったのね〕
サチウスは確かに、静流との第一印象で『運命的な物を感じる』と言っていた。
〔仮に『名もなき神』に名前と容姿を与えたのがキミだとしたら、 知らず知らずのうちに『寵愛』を受けてる可能性はあるわね♪〕
〔本当ですか!?〕
サチウスは静流に向かって親指を立てた。
〔やったじゃん静流! 鼻歌混じりで【転移】が使える様になるかもよ?〕
〔女神のお墨付きをもらった。 間違いない!〕
〔ぶごぉ!?〕
サチウスの言葉に気を良くした姉たちが静流に抱き付いた。
〔でも、 困ったわね……〕
〔何がよ?〕
モモはヨンリオで起こっているテロ騒ぎで、過激派の要求が『行方不明者の解放』だと言う事を説明した。
〔そんな事? だったら簡単に終わらせる方法があるわよ?〕
サチウスは悪戯を思いついた子供の様な顔でそう言った。
〔罪人の名前さえわかれば、『アノ本』でどっかに飛ばしちゃえばイイのよぉ♪〕
〔〔〔〔はぁぁぁぁ~!?〕〕〕〕
女神の口からとんでもない発言が飛び出し、一同は困惑した。
酔いが回ったサチウスは、さらに追い打ちをかけた。
〔女神様が直々に罰を与えてやろうって言ってんのよ! うぃ~っ〕
〔面白そうだけど、 犯人の名前を調べるのがネックね……〕
確かに黒装束のメンバーたちから直接名前を聞き出す事は無理だろう。
何かいい案が無いかと考えていると、静流がある事を思い出し、モモに聞いた。
〔そう言えば伯母さん、 朔也さんって名前を読み取る特殊スキルがあったって言ってたよね?〕
確かに忘年会の時、朔也の心が宿ったレプリカが言っていた。
朔也が言うには対象人物の頭上に名前が浮かんで見えるとの事で、初対面は赤、一度でも会っていると青で表示されるらしい。
〔あの人のは特別よ。 それなら似たような魔法に【アナライザー】があるわね〕
モモがそう言うと、画面の中で自信なさそうに手を挙げる者がいた。
〔あの……私使えますよ【アナライザー】〕
手を挙げたのはエリカだった。
〔キミ、それは本当かね?〕
〔ええ、 一応……〕
千葉に聞かれ、自信なさげに言った。
その様子に、パーコーがエリカをなじった。
〔自信ないアルか? 本当に使えるアルか?〕
〔試してみましょうか?【アナライザー】〕ポゥ
エリカは呪文を唱え、両手でチョキを作り、両目に当て、パーコーを見た。
〔見えました! アナタはラグネス・チャンさん……ですよね?〕
〔ゲッ!? 何でわかったアルか!?〕
名前を言い当てられ、ぎょっとするパーコー。
〔上出来よ。 私以外メンバー同士でも本名は名乗らない事になってるの〕
エリカの魔法を目の当たりで確認し、千葉は納得した。
〔そう珍しくもないぞ。 警察関係者には【アナライザー】を使える者は結構いると聞く〕
沖田は結果に驚く事は無かった。
〔へぇ。 便利な魔法だなぁ? ラグネス・チャンちゃん?〕
〔うわぁん! 名前知られちゃったアルゥ~。 もう、 恥ずかしいアルゥ~〕
バタピーにイジられ、パーコーは顔を赤くした。
サチウスは満足げに一同に言い放った。
〔役者は揃ったみたいね? とっとと行ってちゃちゃっと終わらせちゃいましょう♪〕
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