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第9章 冬の……アナタ、どなた?
エピソード57-32
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ヨンリオ・ビュートランド 2階 制御室――
スタッフが機転を利かせ、『太陽の爪』メンバーが配信を行っているのが施設内だという事がわかった。
「まさか現場で配信しているとは……舐められたものだな」
「てっきり海外のアジトでやっているんだと思っていた。 正に『灯台下暗し』だな」
ココナの呟きに、沖田が溜息混じりに言った。
「そこは『飛んで火にいる夏の虫』だろう? さぁ、 いつ踏み込む?」
郁は指をポキポキと鳴らし、不敵に笑った。
「待て。 爆弾が仕掛けられているかも知れないのだ。 慎重に事を進めんと……」
「そんなもんハッタリだろう? 魔法で制御しているのなら踏み込む瞬間にキャンセラーを起動すればイイ」
郁とココナが言い争っていると、テルミの端末に千葉から通信が入った。
テルミは直ぐにPCのアプリを起動した。
〔ボス、 何か進展があったんですか?〕
〔朗報だ。 学園に保管されていた『裁きの書』と『女神サチウス像』を貸与することに成功した!〕
千葉は学院であった事をテルミらに説明した。
〔それはスゲェ。 ボス、 こちらにも朗報があるんですよ〕
テルミは『爪』のメンバーが施設内に潜伏している事を説明した。
〔よくやった。 次の指示を待て〕
〔え? 踏み込まないで放置ですか?〕
テルミは眉間にしわを寄せて落胆した。
〔当たり前でしょ? こちらで策を練るから、 それまで気付いてないフリをしていなさい〕
〔ちぇー、 りょうかーい〕
テルミはつまらなそうに返事した。
画面の中の千葉は、テルミの後ろにいるココナに視線を移した。
〔ココナ、 くれぐれも勝手な真似はしないでね?〕
〔わかっているが、いつまでも大人しく待ってはいないぞ?〕
ココナは質問で返した。
〔勿論。 早急に方針を決めるわ〕
通信が終わり、一同はココナを見た。
「フフ。 釘を刺されてしまったな……」
ココナはそう言って『オーマイガー』のポーズを取った。
◆ ◆ ◆ ◆
警視庁 多魔中央警察署――
署内の駐車場に、サイレンを鳴らして赤色灯を点灯させたパトカーと特殊な白バイが数台入って来た。
バイクを停めたバタピーが、隣に停まっているハスラー250に気付いた。
「お、 八万の奴帰って来てるな」
バイクを降りたパーコーがしたり顔で言った。
「向こうは空振りだったネ」
「パーコー、 それを言っちゃあお終いよ……」
オカシラはそう言って溜息を吐いた。
「ちょっとアンタ! 無駄口叩いてないで『像』を運んで頂戴!」
パトカーを降りたローラが、バタピーに強めに命令した。
「うへぇ……またアレを運ぶのかよ……」
バタピーは国領のサイドカーを見て、露骨に嫌そうな顔をした。
すると国領は首を傾げてバタピーに言った。
「コイツ、 そんなに重いのか? 全然感じなかったぞ?」
「そんなワケあるか!? 激重だったぞ?」
バタピーがサイドカーに詰め寄り、布にくるまれた『サチウスの像』に手をかけた。
「行くぞ! ふんぬっ! ありっ!?」
バタピーの予想を裏切り、像は軽々と持ち上げられた。
「ほらな? 言った通りだろ?」
「おかしい……あんなに重かったのに……」
いまだに信じられないと言う顔のバタピーに、ローラが声を張り上げた。
「アンタ! ぼぉっと突っ立ってないで、 早く中に運んで頂戴!」
「へいへい。 ほーら高い高ぁーい♪」
「おい! 何すんだ!?」
ローラの言い草にイラついたバタピーが、ふざけて『像』を空中に放り投げた。
国領は慌ててツッコミを入れた。
「ナイスキャーッチ! げっ!? ぐがぁ……」
像をキャッチした瞬間、バタピーの腕が一瞬で床に付きそうになった。
呆れ顔の国領が、バタピーをジト目で見ながら言った。
「いつまでもフザけてないで、 早く行くぞ?」
「ぐぎぎぎぃ……フザけてねぇって……」
バタピーは両手を降ろし、ガニ股でゆっくりと建物に入っていく。
「とっとと【強化】使えよ。 キャンセラー効いてないんだから」
警察署内も当然『魔法キャンセラー』が稼働している。
但し、署員に関しては警察手帳にキャンセラーを無効化する魔法が付与されている。
「と、 とっくに使ってる! コイツ、 学校出た時より重くなってる……ぐぎぎ」
エレベーターの前に着くと、国領は悪戯っ子の様な笑みを浮かべた。
「お前、 階段で行け。 そんなに重いんじゃ即重量オーバーだぜ?」
「ふ、 フザけるな……この状態で8階まで行けって言うのかよ!?」
エレベーターが1階に着き、ドアが開いた。
「論より証拠だ。 乗ってみろよ」
先に乗った国領が、『開く』のボタンを押しながらバタピーに言った。
「言われなくてもやってやるさ! うんせーっと」
バタピーはのそのそと鈍重な足取りでエレベーターに乗った。
シーン……
乗った瞬間にけたたましいブザー音が鳴るかと思ったが、全く鳴らなかった。
「……鳴らないな?」
「ど、 どうゆう事だ!? こ、 こんなに重いんだぞ!?」
バタピーに言わせると、依然激重のままらしい。
すると職員がエレベーターに近づいて来た。
「上だけど、 乗る?」
国領は職員に声を掛けた。
尋常では無いカオスな状況に、職員は苦笑いで言った。
「イイです……隣ので上がりますんで」
「あ、 そう。 じゃ」
国領は『閉まる』のボタンを押した。
エレベーターは何事もなく動き始めた。
スタッフが機転を利かせ、『太陽の爪』メンバーが配信を行っているのが施設内だという事がわかった。
「まさか現場で配信しているとは……舐められたものだな」
「てっきり海外のアジトでやっているんだと思っていた。 正に『灯台下暗し』だな」
ココナの呟きに、沖田が溜息混じりに言った。
「そこは『飛んで火にいる夏の虫』だろう? さぁ、 いつ踏み込む?」
郁は指をポキポキと鳴らし、不敵に笑った。
「待て。 爆弾が仕掛けられているかも知れないのだ。 慎重に事を進めんと……」
「そんなもんハッタリだろう? 魔法で制御しているのなら踏み込む瞬間にキャンセラーを起動すればイイ」
郁とココナが言い争っていると、テルミの端末に千葉から通信が入った。
テルミは直ぐにPCのアプリを起動した。
〔ボス、 何か進展があったんですか?〕
〔朗報だ。 学園に保管されていた『裁きの書』と『女神サチウス像』を貸与することに成功した!〕
千葉は学院であった事をテルミらに説明した。
〔それはスゲェ。 ボス、 こちらにも朗報があるんですよ〕
テルミは『爪』のメンバーが施設内に潜伏している事を説明した。
〔よくやった。 次の指示を待て〕
〔え? 踏み込まないで放置ですか?〕
テルミは眉間にしわを寄せて落胆した。
〔当たり前でしょ? こちらで策を練るから、 それまで気付いてないフリをしていなさい〕
〔ちぇー、 りょうかーい〕
テルミはつまらなそうに返事した。
画面の中の千葉は、テルミの後ろにいるココナに視線を移した。
〔ココナ、 くれぐれも勝手な真似はしないでね?〕
〔わかっているが、いつまでも大人しく待ってはいないぞ?〕
ココナは質問で返した。
〔勿論。 早急に方針を決めるわ〕
通信が終わり、一同はココナを見た。
「フフ。 釘を刺されてしまったな……」
ココナはそう言って『オーマイガー』のポーズを取った。
◆ ◆ ◆ ◆
警視庁 多魔中央警察署――
署内の駐車場に、サイレンを鳴らして赤色灯を点灯させたパトカーと特殊な白バイが数台入って来た。
バイクを停めたバタピーが、隣に停まっているハスラー250に気付いた。
「お、 八万の奴帰って来てるな」
バイクを降りたパーコーがしたり顔で言った。
「向こうは空振りだったネ」
「パーコー、 それを言っちゃあお終いよ……」
オカシラはそう言って溜息を吐いた。
「ちょっとアンタ! 無駄口叩いてないで『像』を運んで頂戴!」
パトカーを降りたローラが、バタピーに強めに命令した。
「うへぇ……またアレを運ぶのかよ……」
バタピーは国領のサイドカーを見て、露骨に嫌そうな顔をした。
すると国領は首を傾げてバタピーに言った。
「コイツ、 そんなに重いのか? 全然感じなかったぞ?」
「そんなワケあるか!? 激重だったぞ?」
バタピーがサイドカーに詰め寄り、布にくるまれた『サチウスの像』に手をかけた。
「行くぞ! ふんぬっ! ありっ!?」
バタピーの予想を裏切り、像は軽々と持ち上げられた。
「ほらな? 言った通りだろ?」
「おかしい……あんなに重かったのに……」
いまだに信じられないと言う顔のバタピーに、ローラが声を張り上げた。
「アンタ! ぼぉっと突っ立ってないで、 早く中に運んで頂戴!」
「へいへい。 ほーら高い高ぁーい♪」
「おい! 何すんだ!?」
ローラの言い草にイラついたバタピーが、ふざけて『像』を空中に放り投げた。
国領は慌ててツッコミを入れた。
「ナイスキャーッチ! げっ!? ぐがぁ……」
像をキャッチした瞬間、バタピーの腕が一瞬で床に付きそうになった。
呆れ顔の国領が、バタピーをジト目で見ながら言った。
「いつまでもフザけてないで、 早く行くぞ?」
「ぐぎぎぎぃ……フザけてねぇって……」
バタピーは両手を降ろし、ガニ股でゆっくりと建物に入っていく。
「とっとと【強化】使えよ。 キャンセラー効いてないんだから」
警察署内も当然『魔法キャンセラー』が稼働している。
但し、署員に関しては警察手帳にキャンセラーを無効化する魔法が付与されている。
「と、 とっくに使ってる! コイツ、 学校出た時より重くなってる……ぐぎぎ」
エレベーターの前に着くと、国領は悪戯っ子の様な笑みを浮かべた。
「お前、 階段で行け。 そんなに重いんじゃ即重量オーバーだぜ?」
「ふ、 フザけるな……この状態で8階まで行けって言うのかよ!?」
エレベーターが1階に着き、ドアが開いた。
「論より証拠だ。 乗ってみろよ」
先に乗った国領が、『開く』のボタンを押しながらバタピーに言った。
「言われなくてもやってやるさ! うんせーっと」
バタピーはのそのそと鈍重な足取りでエレベーターに乗った。
シーン……
乗った瞬間にけたたましいブザー音が鳴るかと思ったが、全く鳴らなかった。
「……鳴らないな?」
「ど、 どうゆう事だ!? こ、 こんなに重いんだぞ!?」
バタピーに言わせると、依然激重のままらしい。
すると職員がエレベーターに近づいて来た。
「上だけど、 乗る?」
国領は職員に声を掛けた。
尋常では無いカオスな状況に、職員は苦笑いで言った。
「イイです……隣ので上がりますんで」
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