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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード57-31

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聖ドドリア魔導女学院 会議室――

 シスターから『裁きの書』を借りる事に成功したマイルド7たち。
 するとローラがサチウスの像にも興味を示した。

「サチウスの像に触らせてもらえないかしら?」

 ローラは自分が持つサイコメトリー能力を駆使してサチウス像を調べる旨を説明すると、シスターは意外にも快く応じた。

「物に触れる事でどのような事がわかるのか、 私も興味がありますね」
「では、 協力して頂けるのですか?」
「詳しく調べたいのあれば、お貸しする事もやぶさかではありません」
「ありがとうシスター、 アナタが話が分かる人で良かった」

 ローラはそう言って何度も頷いた。 
 やけにあっさりと受け入れられたので、千葉は訝し気にシスターに聞いた。

「このような事、 上層部に相談も無しに即決してよろしいので?」
「何を仰います! こうしている間にも子供たちに不安な思いを強いているのでしょう?」
「うう……た、 確かに」

 若干声を荒げるシスターに、千葉はシスターを疑った自分を戒めた。
 エリカは身を引き締めてシスターにお礼を言った。

「シスター、 ご協力感謝します!」
「ミス西園寺、 一刻も早く解決する様に祈っていますよ?」
「はい! 全力を尽くします!」

 エリカはシスターに敬礼した。
 その後、借用に関する手続きを終え、校舎を出た一同は駐車場に向かった。
 力自慢のバタピーが、5、60cm程の風呂敷の様な布にくるまれた物体を抱えている。
 恐らくそれが『サチウス像』であろう。

「おいバタピー、 丁重に頼むぞ?」
「お、 重ぉ……」
 
 同じく布でくるまれた『裁きの書』を持った国領が、心配そうにバタピーの後をついて行く。

「ふいーっ……しかし何でこんなに重いんだ!?」
「知らんがな。 そこに置いて。 そぉっとね」
「わかってるって。 祟りでもあったらシャレになんねぇからな……」

 こうして『裁きの書』と『サチウス像』は、国領のサイドカーに無事に収納された。


「みんな! 本部に戻るわよ!」


「「「「「イエス! マム!」」」」」


 千葉の号令に、マイルド7のメンバーたちは背筋を伸ばし、気を引き締めた。



              ◆ ◆ ◆ ◆



ヨンリオ・ビュートランド 2階 制御室――

 郁によって魔法キャンセラーの修復が終わり、警察からの指示を待つだけとなったココナたち。
 机に両肘を突き、顔の前で手を組んでいるココナに、静流は心配そうに聞いた。 

「ココナさん、 僕に何か出来る事はありますか?」
「気持ちだけ受け取っておく。 静流殿はあくまでもゲスト。 ゲストを危険にさらすような事は出来ないだろう?」
「そうですけど……どう思う? 薫子お姉さま?」
「そうねぇ……いざとなったら私が静流を守るけど。 ね? 忍?」
「当然。 静流は私が守る!」

 そう言って姉たちは静流に拳を見せた。
 そんな静流たちを見て、郁は若干苛立ちながらココナに聞いた。

「おいココナ、 いつまで警察の言いなりになってるんだ?」

 郁にそう言われ、ココナは奥歯を噛みしめた。

「こちらとて手をこまねいているつもりは毛頭ない……」

 ココナがポツリと呟くと、郁が反応した。
 
「何か策があるのか?」
「まぁな……」

 ココナはスタッフに目くばせした。

「逆探知、 出来たか?」
「バッチリです! 場所も特定出来ましたっ!」

 スタッフはドヤ顔で親指を立てた。

「配信の際にウチのサーバーを経由した痕跡があったので、即席のプログラムを使って追跡したんです」
「でかした。 して、 その場所は?」

 ココナの問いに、スタッフは得意げに答えた。

「驚かないで下さいね? 実は……1Fのレストルームなのですっ!」
「何と、 あそこか……」

 ココナはPCの画面をレストルームの防犯カメラに切り替え、 眉間にしわを寄せた。

「むぅ? こ、 これは静止画だっ!」

 何と防犯カメラの前に、空のレストルームの写真を貼り付けていたらしい。
 沖田は呆れ顔で画面を見つめた。

「何て原始的な……姑息な手を使う」



              ◆ ◆ ◆ ◆



ヨンリオ・ビュートランド 1階 レストルーム

 ドアに『仮眠中』の表示がされているレストルーム。
 部屋の中には黒装束をまとい、顔に仮面をつけている者たちがいた。
 部下の一人が伸びをしながら呟いた。

「はぁーあ……待ってるだけでイイなんてよ、 楽な仕事だよな?」
「そりゃあ上手くいけばな……」

 それを聞いたもう一人の部下が反応した。 

「結構ヤバイぜ? ココにいる事がバレるのも時間の問題だろうし」
「そうだな……こんな初歩的なトリックにいつまでも騙されているほどバカじゃないからな……」

 そして部下たちはリーダーを見た。

「わかってるわよ。 いざとなればコイツでドロンすればイイんだからねっ♪」

 リーダーは部下たちに得意げに何かを見せた。

「「ま、 そりゃそうだっ♪」」

 それを見て納得した部下たちは二カッと笑った。
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