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第9章 冬の……アナタ、どなた?
エピソード56-101
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保養施設内 レストラン『ガーベラ・テトラ』 朝――
昨日昼食を取ったこのレストランで、男どもが朝食ビュッフェを楽しんでいた。
卵料理のコーナーでは、専属シェフがオーダー通りの焼き方で卵料理を提供していた。
「卵はやっぱオムレツだよな? 中がトロトロのやつ♪」
「そうですか? 僕はスクランブルも好きですよ? 超ふわふわの♪」
「朝は目玉焼きだろう? しかも半熟のプルンプルンしたの♪」
男どもはそれぞれ別の焼き方を希望し、シェフは涼しい顔で淡々とこなしている。
「この充実感……たまんねぇなぁ♪」
「おかげで僕もグッスリ。 誰かさんに叩き起こされずに自然と目が覚めましたもんね」
「あのあと真っ先に落ちたの、 アニキでしたもんね?」
「そうか? バナナをちょん切る所ぐらいまでは覚えてるぞ?」
そう言って談笑する男どもは、どの顔も曇りの無い清々しい表情だった。
そんな男どもに声を掛ける者がいた。
「おはよう! 昨夜は眠れたかしら?」
「カチュア先生! おはようございます♪」
透明感がある澄んだ声で朝の挨拶をしたのはカチュアだった。
その横には鳴海やジェニー、ルリたちがいた。
「調子良さそうで何よりです。 朔也さんの件がありましたから……」
静流は思いのほか元気だったカチュアに安堵した。
「お陰様で。 『アレ』でジン様にタップリ慰めてもらったからね♪」
カチュアたちは朔也の件のあと、アマンダが開放した『睡眠カプセル』にて朝を迎えたらしい。
「あのぉ静流様……『アレ』をレンタル出来ませんか? お金ならお支払いいたしますので……」
「え? う~ん……」
鳴海はモジモジしながら静流に懇願した。
その様子を見たカチュアは鳴海に忠告した。
「たまに使うからイイのよ。 毎日じゃ廃人になっちゃうわよ?」
「そ、 そうですよね……すみません、 忘れて下さい……」
カチュアにそう言われ、残念そうに席に戻っていく鳴海。
その姿を見ていた薫がボソッと呟いた。
「あの先生ぐらい達観した人じゃねぇと、 ありゃあ確かに廃人になるな……」
「『夢』を操作するアプリは『麻薬』と紙一重ですもんね……」
静流や薫は母親から『夢魔』の血を受け継いでいる為、『夢』に関する知識は一般人より造詣が深い。
「私は毎日使ってるけど、 廃人にはなってない」
「所詮夢は夢。 現実には遠く及ばないわ……」
突然両側から声が聞こえたかと思うと、静流の両脇にはそれぞれ忍と薫子がイスをピッタリとくっ付けて密着していた。
「ひっ! 忍ちゃんと薫子お姉様……」
男どものテーブルが突然騒がしくなった。
忍が静流の前に皿を置いた。
「静流、 エッグベネディクトを作った。 食べて」
「え? 忍ちゃんが?」
エッグベネディクトとは、マフィンとベーコンをトースターで焼き、その上に湯煎で作った半熟卵を乗せ、卵黄に溶かしバターなど混ぜたものをかけた物である。
目の前に置かれたエッグベネディクトを見て、静流は素直に感心していた。
「そんなもん、ただ挟んだだけでしょう? 誰でも作れるわ!」
「技術じゃない。 作り手の『心』が大事! フン」
忍が凝視している中、静流はエッグベネディクトを口にした。
「どぉ? 美味しい?」
「うん。 美味しいよ」
忍の問いに、静流は素直に答えた。
「よし! 料理は心!」
普段無表情気味の忍の顔がぱぁっと明るくなり、ガッツポーズを取った。
「だーかーらっ! こんなの失敗する方がおかしいでしょ?」
「何とでも言えばイイ。 結果がすべて……」
薫子のツッコミを無視して、黙々と食べている静流を嬉しそうに眺めている忍。
そんな薫子たちを見て、薫がため息混じりに呟いた。
「お前たち、よく飽きねぇなぁ?」
「飽きない!」
「飽きるわけがない!」
即座に反応した二人は、全力で否定して薫を睨んだ。
「はいはいご馳走さん」
薫は一気に興味を無くし、食べる事に専念した。
そのタイミングを狙っていたのか、薫に声を掛けて来た者がいた。
「アニキ……隣、 イイか?」
声を掛けて来たのは、リナだった。
「お前なぁ……ダメって言ったって座るんだろ?」
「へへへ。 ちげぇねぇ♪」
リナはへらへら笑いながら薫の隣に座った。
「失礼、 私もお忘れなく」
「ズラ! てめぇは忘れられてろ!」
当然のように薫の反対側に座る雪乃に、リナがツッコミを入れた。
あっという間に『両手に花』状態が二組出来上がった。
「ふぅ。 やっぱこの展開に発展するのか……僕ちゃん寂しい」
それを羨ましそうに眺め、達也は小さい声で呟いた。
「呼んだ? 達也?」
「とと、 朋子?」
達也の隣に座ったのは朋子だった。
「何よ? ハトが豆鉄砲を食らったような顔して?」
朋子は涼しげな顔で達也の横でパンを食べている。
そんな朋子に、達也は恐る恐る聞いた。
「なぁ……俺って昨夜、 露天風呂で何かやらかしたか?」
「え? 何も覚えてないの?」
朋子は思わず手に持っていたパンを落とした。
「混浴エリアでノビた直前、 見えた? 気がしたんだ。 お前の裸。 我ながらバカな夢だろ? 笑っちゃうよな? ハッハッハ」
達也は自虐的に独り言のように言い、照れ笑いした。
すると朋子は、達也に聞こえるかどうか位のボリュームで言った。
「……夢じゃないカモよ?」
「は?」
達也は思わず聞き返してしまった。
「何でもない! はー美味しい♪」
朋子はウインナーを頬張り、はぐらかした。
◆ ◆ ◆ ◆
他のテーブルでは、静流の方を恨めしそうに睨んでいる連中がいた。
「きぃーっ! 先を越されたわっ!」
「諦めなよヨーコ。 お姉様たちが相手じゃ分が悪すぎるよ」
ヤケ食いしているヨーコに、アンナが苦笑いしながら言った。
「結局ウチらって、 終始モブキャラ止まりだった感じだよね?」
ヨーコは昨日から今迄の出来事を振り返り、大きな溜息を吐いた。
「それでイイんじゃない? 学園で過ごすよりはずっと楽しかったわよ?」
「うん。 ジン様にも疑似的にだけど会えたし。 創作意欲が湧いたカモ?」
そんなヨーコに、ナギサとサラが反論した。
「ま、 イイか。 ウチらよりバッドなエンディングを迎えそうな方たちもいるみたいだし……」
アンナはそう言って、隣のテーブルを横目で見た。
「「「あ゙ーーーー……」」」
その奥で、肺から全ての息を絞り出したような声を漏らしている女どもがいた。
「悶々として寝られなかった。 私もカプセル使うんだった……」
「あのあと少佐、 荒れてましたもんねぇ……」
アマンダとリリィは、酔い覚ましのほうれん草スムージーを飲んで苦悶の表情を浮かべている。
「ウインナーに白濁した白身をトローリと。 それをマフィンで挟んで……ムフ、 ムフフフ」
レヴィは食べ物を何かイケナイものに例えて悦に入っていた。
昨日昼食を取ったこのレストランで、男どもが朝食ビュッフェを楽しんでいた。
卵料理のコーナーでは、専属シェフがオーダー通りの焼き方で卵料理を提供していた。
「卵はやっぱオムレツだよな? 中がトロトロのやつ♪」
「そうですか? 僕はスクランブルも好きですよ? 超ふわふわの♪」
「朝は目玉焼きだろう? しかも半熟のプルンプルンしたの♪」
男どもはそれぞれ別の焼き方を希望し、シェフは涼しい顔で淡々とこなしている。
「この充実感……たまんねぇなぁ♪」
「おかげで僕もグッスリ。 誰かさんに叩き起こされずに自然と目が覚めましたもんね」
「あのあと真っ先に落ちたの、 アニキでしたもんね?」
「そうか? バナナをちょん切る所ぐらいまでは覚えてるぞ?」
そう言って談笑する男どもは、どの顔も曇りの無い清々しい表情だった。
そんな男どもに声を掛ける者がいた。
「おはよう! 昨夜は眠れたかしら?」
「カチュア先生! おはようございます♪」
透明感がある澄んだ声で朝の挨拶をしたのはカチュアだった。
その横には鳴海やジェニー、ルリたちがいた。
「調子良さそうで何よりです。 朔也さんの件がありましたから……」
静流は思いのほか元気だったカチュアに安堵した。
「お陰様で。 『アレ』でジン様にタップリ慰めてもらったからね♪」
カチュアたちは朔也の件のあと、アマンダが開放した『睡眠カプセル』にて朝を迎えたらしい。
「あのぉ静流様……『アレ』をレンタル出来ませんか? お金ならお支払いいたしますので……」
「え? う~ん……」
鳴海はモジモジしながら静流に懇願した。
その様子を見たカチュアは鳴海に忠告した。
「たまに使うからイイのよ。 毎日じゃ廃人になっちゃうわよ?」
「そ、 そうですよね……すみません、 忘れて下さい……」
カチュアにそう言われ、残念そうに席に戻っていく鳴海。
その姿を見ていた薫がボソッと呟いた。
「あの先生ぐらい達観した人じゃねぇと、 ありゃあ確かに廃人になるな……」
「『夢』を操作するアプリは『麻薬』と紙一重ですもんね……」
静流や薫は母親から『夢魔』の血を受け継いでいる為、『夢』に関する知識は一般人より造詣が深い。
「私は毎日使ってるけど、 廃人にはなってない」
「所詮夢は夢。 現実には遠く及ばないわ……」
突然両側から声が聞こえたかと思うと、静流の両脇にはそれぞれ忍と薫子がイスをピッタリとくっ付けて密着していた。
「ひっ! 忍ちゃんと薫子お姉様……」
男どものテーブルが突然騒がしくなった。
忍が静流の前に皿を置いた。
「静流、 エッグベネディクトを作った。 食べて」
「え? 忍ちゃんが?」
エッグベネディクトとは、マフィンとベーコンをトースターで焼き、その上に湯煎で作った半熟卵を乗せ、卵黄に溶かしバターなど混ぜたものをかけた物である。
目の前に置かれたエッグベネディクトを見て、静流は素直に感心していた。
「そんなもん、ただ挟んだだけでしょう? 誰でも作れるわ!」
「技術じゃない。 作り手の『心』が大事! フン」
忍が凝視している中、静流はエッグベネディクトを口にした。
「どぉ? 美味しい?」
「うん。 美味しいよ」
忍の問いに、静流は素直に答えた。
「よし! 料理は心!」
普段無表情気味の忍の顔がぱぁっと明るくなり、ガッツポーズを取った。
「だーかーらっ! こんなの失敗する方がおかしいでしょ?」
「何とでも言えばイイ。 結果がすべて……」
薫子のツッコミを無視して、黙々と食べている静流を嬉しそうに眺めている忍。
そんな薫子たちを見て、薫がため息混じりに呟いた。
「お前たち、よく飽きねぇなぁ?」
「飽きない!」
「飽きるわけがない!」
即座に反応した二人は、全力で否定して薫を睨んだ。
「はいはいご馳走さん」
薫は一気に興味を無くし、食べる事に専念した。
そのタイミングを狙っていたのか、薫に声を掛けて来た者がいた。
「アニキ……隣、 イイか?」
声を掛けて来たのは、リナだった。
「お前なぁ……ダメって言ったって座るんだろ?」
「へへへ。 ちげぇねぇ♪」
リナはへらへら笑いながら薫の隣に座った。
「失礼、 私もお忘れなく」
「ズラ! てめぇは忘れられてろ!」
当然のように薫の反対側に座る雪乃に、リナがツッコミを入れた。
あっという間に『両手に花』状態が二組出来上がった。
「ふぅ。 やっぱこの展開に発展するのか……僕ちゃん寂しい」
それを羨ましそうに眺め、達也は小さい声で呟いた。
「呼んだ? 達也?」
「とと、 朋子?」
達也の隣に座ったのは朋子だった。
「何よ? ハトが豆鉄砲を食らったような顔して?」
朋子は涼しげな顔で達也の横でパンを食べている。
そんな朋子に、達也は恐る恐る聞いた。
「なぁ……俺って昨夜、 露天風呂で何かやらかしたか?」
「え? 何も覚えてないの?」
朋子は思わず手に持っていたパンを落とした。
「混浴エリアでノビた直前、 見えた? 気がしたんだ。 お前の裸。 我ながらバカな夢だろ? 笑っちゃうよな? ハッハッハ」
達也は自虐的に独り言のように言い、照れ笑いした。
すると朋子は、達也に聞こえるかどうか位のボリュームで言った。
「……夢じゃないカモよ?」
「は?」
達也は思わず聞き返してしまった。
「何でもない! はー美味しい♪」
朋子はウインナーを頬張り、はぐらかした。
◆ ◆ ◆ ◆
他のテーブルでは、静流の方を恨めしそうに睨んでいる連中がいた。
「きぃーっ! 先を越されたわっ!」
「諦めなよヨーコ。 お姉様たちが相手じゃ分が悪すぎるよ」
ヤケ食いしているヨーコに、アンナが苦笑いしながら言った。
「結局ウチらって、 終始モブキャラ止まりだった感じだよね?」
ヨーコは昨日から今迄の出来事を振り返り、大きな溜息を吐いた。
「それでイイんじゃない? 学園で過ごすよりはずっと楽しかったわよ?」
「うん。 ジン様にも疑似的にだけど会えたし。 創作意欲が湧いたカモ?」
そんなヨーコに、ナギサとサラが反論した。
「ま、 イイか。 ウチらよりバッドなエンディングを迎えそうな方たちもいるみたいだし……」
アンナはそう言って、隣のテーブルを横目で見た。
「「「あ゙ーーーー……」」」
その奥で、肺から全ての息を絞り出したような声を漏らしている女どもがいた。
「悶々として寝られなかった。 私もカプセル使うんだった……」
「あのあと少佐、 荒れてましたもんねぇ……」
アマンダとリリィは、酔い覚ましのほうれん草スムージーを飲んで苦悶の表情を浮かべている。
「ウインナーに白濁した白身をトローリと。 それをマフィンで挟んで……ムフ、 ムフフフ」
レヴィは食べ物を何かイケナイものに例えて悦に入っていた。
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