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第9章 冬の……アナタ、どなた?
エピソード56-98
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露天風呂 混浴エリア――
最後の相手は美千留とシズム、そしてメルクだった。
先ず入って来たのはテンション高めのメルクとシズムだった。
「どうしたの二人共? 顔、 赤いよ?」
「うぃーっ♪ 入浴中にアルコールを摂取するのは実に合理的だわい!」
「気持ちイイよぉー♪ 静流クンも飲むぅ~?」
二人は薫と同様、露天風呂で一杯やっていたらしい。
後から苦い顔をした美千留が入って来た。
「しず兄も顔赤い。 まさか酔っぱらってる?」
「え? ホント? いやいや飲んでないって」
美千留が指摘した通り、静流の顔は赤かった。
静流は手をブンブンと振って全力で否定した。
「そう言えばカナちゃんはどうしたの? 見かけないけど?」
「カナ子は順番待ってる間に鼻血吹いて医務室行き……」
知らない間にセルフ退場していたカナ子が不憫に思われた。
「おいおい……カナちゃん大丈夫なのか?」
「問題無い。 中坊には刺激が強過ぎたみたい」
「お前も中坊だろうに!」
静流は美千留にツッコんだ。
「じゃあ顔赤いのって、 変な事考えてたんでしょ? メルクの裸とか……」
「そんなんじゃないよ! ちょっとのぼせたんだよ!」
ジト目で睨みつける美千留に、静流はまた全力で否定した。
「静流! やせ我慢せんでワシにむしゃぶり付くが良い!」
「ワタシでもイイよ? 好きな方を選んで♡」
赤ら顔の二人は、静流を誘惑するべく中腰になって胸元を見せて来た。
そんな二人を美千留は押しのけた。
「コイツら……盛るな無機質!」
「妬くな美千留! ワシのパーフェクトボディは、 男どもを欲情させる事に特化したフォルムだからのう♪」
「ワタシだって、 静流クンのリクエストがあれば何でも出来るもーん♪」
「ぐぬぬ……」
不機嫌の権化と化した美千留を、二人は面白がって煽った。
「おいおい! あんまりコイツをからかうと痛い目に遭うぞ?」
「安心せい! ちぃとも痛くないぞ? ワシが気持ち良くしてやる♪」
静流が慌てて二人を止めるが、全然相手にされていない。
「もう遅い! 【急速冷凍】!」
「「あひぃぃぃ……」」パキィィィン
美千留が呪文を唱え、二人の頭を指で突くと、たちまち二人の身体が凍り始めた。
「あーあ……やっちゃった」
あっという間に出来た二体の氷の彫刻を見て、静流は溜息を吐いた。
「サンキュー。 お陰でのぼせ気味だった頭が冴えて来たよ」
「しず兄の為にやったワケじゃない。 はースッキリしたぁ♪」
美千留はそう言うと、小柄な体からは想像し難い力で、冷凍マグロのようになった二人をひょいと担いで混浴エリアを出ようとした。
「あ、 そうだった」
美千留は何かを思い出した。
「何だよ美千留?」
「この後ツッチーにココに来るように言って!」
「達也に? 何で?」
「何でも! 頼んだよしず兄!」
首を傾げる静流に、美千留はそう言い残して出て行った。
「何だろ? ま、 イイか。 はぁ~終わった」
静流の接客は今の組で終わり、静流はメガネを元に戻して混浴エリアを出た。
「おーい達也ぁ、 次、 お前さんを御指名だってよぉー!」
静流の叫びに、達也はピクっと反応した。
「はぁ? なんらって静流ぅ? 俺を指名だとぉ?」
「達也!? 薫さん、 飲ませたね?」
「まぁな。 イイ飲みっぷりだったぜ♪」
「全く、 しょうがないなぁ……」
すっかり出来上がった二人を、静流は疎ましく感じた。
「確かに伝えたからね? ほら、 とっとと行った行った!」
静流はそう言って、達也の背中をポンと押した。
「ぐへっ!? 急に押すなよ!」
「行って来い! バッチリ決めろよ色男!」
静流たちは達也を冷やかしながら見送った。
◆ ◆ ◆ ◆
達也が混浴エリアに着いた。
「俺と混浴したいなんて有難いことを言う女神様は……どこかなぁ?」
達也は鼻の下を伸ばし、ゆっくりとシャッターを上げた。
すると向こうにいるのは、確かに女性だった。
「遅いぞ……ずぅーっと待ってたんだからね……」
「と、 朋子?」
女湯側で待っていたのは、達也や静流のクラスメートで達也とは幼馴染の伊藤朋子だった。
噂では付き合い始めたらしいが、真偽は不明である。
「なぁに? 私以外のコが来るって思ったの?」
「そ、 そんな事……ねぇよ」
ジト目で自分を見る朋子に、達也は口ごもった。
「ほらやっぱり! これだから脳ミソお花畑野郎はもう!」
「ひでぇ言い草だなぁ……」
達也がそうぼやいた後、1分程沈黙が続いた。
沈黙を破ったのは朋子だった。
「明日、 お土産選ぶの手伝って」
「おおイイぜ。 お前に何か買ってやるよ」
達也がそう言うと、朋子の顔がパァーッと明るくなった。
「ホント!? 嬉しい♪」
「あんま高いヤツはダメだかんな? 察しろよ?」
「わかってるって♪」
「ったく……調子イイよなぁ」
コロコロと表情が変わる朋子を、達也は可愛いと思った。
「ねぇ達也……キス、 しよっか?」
「バ、 バカ! 仕切りがあって出来ねぇだろ?」
いきなりそんな事を言う朋子に、達也は慌てた。
「アクリル越しでもイイじゃん♪ ほら、 んーっ……」
朋子はアクリル板に顔を寄せ、唇を押し付けた。
「アクリルに着く瞬間、 目を閉じるんだよ?」
「マジかよ……むぅぅ~」
達也は唇を突き出し、アクリル板にゆっくりと迫り、着くと同時に目を閉じた。
「はい……目を開けてイイよ……」
「お、 おぅ……」
朋子に言われ、目を開ける達也。
「プッ、 キャァーッハッハッハ!」パシャパシャ
達也が目を開けるなり、吹き出してアクリル板にお湯を掛ける朋子。
「な、何すんだお前!」
「だって達也、 ひょっとこみたいな顔してるんだもん! プー」
ツボに入ったのか、爆笑が収まらない朋子。
「馬鹿にしやがって! って、 おい……」
機嫌を悪くした達也だったが、次の瞬間憤怒が驚愕に変わった。
「へへへ。 どぉ? 私のカラダ……」
いつの間にか朋子は、身体に巻き付けていたタオルを取り、生まれたままの状態だった。
「はひぃ~! こりゃケッコウ!」ザッパァーン
一糸まとわぬ姿の朋子を目の当たりにし、 達也は棒立ちのまま後ろに倒れ込んだ。
「ち、 ちょっとぉ……もうバカなんだから!」
そう言いながら、朋子は何故か満足げだった。
「よーし! 掴みはオッケーかな? くちゅん!」
くしゃみをした朋子は、慌ててお湯に浸かった。
最後の相手は美千留とシズム、そしてメルクだった。
先ず入って来たのはテンション高めのメルクとシズムだった。
「どうしたの二人共? 顔、 赤いよ?」
「うぃーっ♪ 入浴中にアルコールを摂取するのは実に合理的だわい!」
「気持ちイイよぉー♪ 静流クンも飲むぅ~?」
二人は薫と同様、露天風呂で一杯やっていたらしい。
後から苦い顔をした美千留が入って来た。
「しず兄も顔赤い。 まさか酔っぱらってる?」
「え? ホント? いやいや飲んでないって」
美千留が指摘した通り、静流の顔は赤かった。
静流は手をブンブンと振って全力で否定した。
「そう言えばカナちゃんはどうしたの? 見かけないけど?」
「カナ子は順番待ってる間に鼻血吹いて医務室行き……」
知らない間にセルフ退場していたカナ子が不憫に思われた。
「おいおい……カナちゃん大丈夫なのか?」
「問題無い。 中坊には刺激が強過ぎたみたい」
「お前も中坊だろうに!」
静流は美千留にツッコんだ。
「じゃあ顔赤いのって、 変な事考えてたんでしょ? メルクの裸とか……」
「そんなんじゃないよ! ちょっとのぼせたんだよ!」
ジト目で睨みつける美千留に、静流はまた全力で否定した。
「静流! やせ我慢せんでワシにむしゃぶり付くが良い!」
「ワタシでもイイよ? 好きな方を選んで♡」
赤ら顔の二人は、静流を誘惑するべく中腰になって胸元を見せて来た。
そんな二人を美千留は押しのけた。
「コイツら……盛るな無機質!」
「妬くな美千留! ワシのパーフェクトボディは、 男どもを欲情させる事に特化したフォルムだからのう♪」
「ワタシだって、 静流クンのリクエストがあれば何でも出来るもーん♪」
「ぐぬぬ……」
不機嫌の権化と化した美千留を、二人は面白がって煽った。
「おいおい! あんまりコイツをからかうと痛い目に遭うぞ?」
「安心せい! ちぃとも痛くないぞ? ワシが気持ち良くしてやる♪」
静流が慌てて二人を止めるが、全然相手にされていない。
「もう遅い! 【急速冷凍】!」
「「あひぃぃぃ……」」パキィィィン
美千留が呪文を唱え、二人の頭を指で突くと、たちまち二人の身体が凍り始めた。
「あーあ……やっちゃった」
あっという間に出来た二体の氷の彫刻を見て、静流は溜息を吐いた。
「サンキュー。 お陰でのぼせ気味だった頭が冴えて来たよ」
「しず兄の為にやったワケじゃない。 はースッキリしたぁ♪」
美千留はそう言うと、小柄な体からは想像し難い力で、冷凍マグロのようになった二人をひょいと担いで混浴エリアを出ようとした。
「あ、 そうだった」
美千留は何かを思い出した。
「何だよ美千留?」
「この後ツッチーにココに来るように言って!」
「達也に? 何で?」
「何でも! 頼んだよしず兄!」
首を傾げる静流に、美千留はそう言い残して出て行った。
「何だろ? ま、 イイか。 はぁ~終わった」
静流の接客は今の組で終わり、静流はメガネを元に戻して混浴エリアを出た。
「おーい達也ぁ、 次、 お前さんを御指名だってよぉー!」
静流の叫びに、達也はピクっと反応した。
「はぁ? なんらって静流ぅ? 俺を指名だとぉ?」
「達也!? 薫さん、 飲ませたね?」
「まぁな。 イイ飲みっぷりだったぜ♪」
「全く、 しょうがないなぁ……」
すっかり出来上がった二人を、静流は疎ましく感じた。
「確かに伝えたからね? ほら、 とっとと行った行った!」
静流はそう言って、達也の背中をポンと押した。
「ぐへっ!? 急に押すなよ!」
「行って来い! バッチリ決めろよ色男!」
静流たちは達也を冷やかしながら見送った。
◆ ◆ ◆ ◆
達也が混浴エリアに着いた。
「俺と混浴したいなんて有難いことを言う女神様は……どこかなぁ?」
達也は鼻の下を伸ばし、ゆっくりとシャッターを上げた。
すると向こうにいるのは、確かに女性だった。
「遅いぞ……ずぅーっと待ってたんだからね……」
「と、 朋子?」
女湯側で待っていたのは、達也や静流のクラスメートで達也とは幼馴染の伊藤朋子だった。
噂では付き合い始めたらしいが、真偽は不明である。
「なぁに? 私以外のコが来るって思ったの?」
「そ、 そんな事……ねぇよ」
ジト目で自分を見る朋子に、達也は口ごもった。
「ほらやっぱり! これだから脳ミソお花畑野郎はもう!」
「ひでぇ言い草だなぁ……」
達也がそうぼやいた後、1分程沈黙が続いた。
沈黙を破ったのは朋子だった。
「明日、 お土産選ぶの手伝って」
「おおイイぜ。 お前に何か買ってやるよ」
達也がそう言うと、朋子の顔がパァーッと明るくなった。
「ホント!? 嬉しい♪」
「あんま高いヤツはダメだかんな? 察しろよ?」
「わかってるって♪」
「ったく……調子イイよなぁ」
コロコロと表情が変わる朋子を、達也は可愛いと思った。
「ねぇ達也……キス、 しよっか?」
「バ、 バカ! 仕切りがあって出来ねぇだろ?」
いきなりそんな事を言う朋子に、達也は慌てた。
「アクリル越しでもイイじゃん♪ ほら、 んーっ……」
朋子はアクリル板に顔を寄せ、唇を押し付けた。
「アクリルに着く瞬間、 目を閉じるんだよ?」
「マジかよ……むぅぅ~」
達也は唇を突き出し、アクリル板にゆっくりと迫り、着くと同時に目を閉じた。
「はい……目を開けてイイよ……」
「お、 おぅ……」
朋子に言われ、目を開ける達也。
「プッ、 キャァーッハッハッハ!」パシャパシャ
達也が目を開けるなり、吹き出してアクリル板にお湯を掛ける朋子。
「な、何すんだお前!」
「だって達也、 ひょっとこみたいな顔してるんだもん! プー」
ツボに入ったのか、爆笑が収まらない朋子。
「馬鹿にしやがって! って、 おい……」
機嫌を悪くした達也だったが、次の瞬間憤怒が驚愕に変わった。
「へへへ。 どぉ? 私のカラダ……」
いつの間にか朋子は、身体に巻き付けていたタオルを取り、生まれたままの状態だった。
「はひぃ~! こりゃケッコウ!」ザッパァーン
一糸まとわぬ姿の朋子を目の当たりにし、 達也は棒立ちのまま後ろに倒れ込んだ。
「ち、 ちょっとぉ……もうバカなんだから!」
そう言いながら、朋子は何故か満足げだった。
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