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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-96

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露天風呂 混浴エリア――

 混浴エリアでの接客は澪から佳乃にバトンが移り、次はヨーコだった。
 銀色の長い髪を髪留めでちょんまげのようにまとめていた。
 体形が佳乃同様スレンダー寄りである為、静流にドギマギは感じられなかった。
 佳乃が妙にハイテンションだったのを疑問に思った静流。

「佳乃さん、 何であんなにハイテンションだったんだろう?」
「静流様も罪な人ですねぇ……知りませんよ?」

 ヨーコは呆れ顔でそう言った。

「ヨーコ、 それどういう意味?」
「ご自分の胸に聞いて下さいな。 そんな事はどうでもイイんです!」ズイッ

 静流の質問には答えず、ヨーコはアクリルに手をつき、かじり付く勢いで静流に迫った。

「うわっ! あんまり近づくなよ!」
「大丈夫です! 静流様の貞操は私が守りますからっ!」ハァハァ

 ヨーコの鼻息でアクリルの窓が曇り始め、ヨーコは手で窓の曇りをぬぐった。

「いけない! 曇ってしまいました。 あり?」

 曇りを取ると、いつの間にか男湯側のシャッターが閉じていた。 

「静流様ぁ~っ! お願いしますから悪戯は止めて下さい!」
「じゃあ、 がっつくのを止めてくれる?」

 懇願するヨーコに、静流は鬱陶しそうに言った。

「……わかりました。 大人しくしますから……」
「うむ。 わかればよろしい」ガララ

 気を取り直した静流がシャッターを上げた。

「あぁ良かった……今ので30秒ロスしちゃいましたよ? もう!」

 ヨーコはそう言って頬を膨らませた。

「わかったよ。 オマケで今からスタートね」
「わーい! 大人しく脳内に焼き付けますので、 もっとじっくり全身を見せて下さい……じぃー」

 万歳して喜んだと思えば、静流を凝視しだすヨーコ。

「そんなにまじまじと見ないで欲しいなぁ。 キミだってイヤだろう?」  
「逆です! 見たいですし見てもらいたいです!」
「ヨーコは欲張りだなぁ……」

 こんな感じでこのまま時間まで相手をしていても良さそうな雰囲気であるが。
 静流がふと何かを思いついた。

「じゃあ、 時間までにらめっこでもする?」

 静流はそう言ってニヤリと笑った。 

「イイですよ? やりましょう!」
 
 そんな静流の挑発に、ヨーコはまんまと乗った。

「吹き出したり、 目を反らしたらアウトだからね?」
「望む所ですっ!」

 勝算があるのか、静流は余裕だった。

「じゃあ行くよ? ヨーコさん、 ヨーコさん、 にーらめっこしーましょ、 笑うと負けよ?」

「「あっぷっぷ!」」

 その時、静流は防護メガネのつるにあるボタンを操作した。


 びよぉぉぉーん

 
 すると、防護メガネから目玉が勢いよく飛び出した。


「ぷっ! きゃぁーっはっはっはっ!」


 それを見たヨーコはたまらず、盛大に吹き出してしまった。

「よしっ! 秒殺だ!」

 静流はガッツポーズを取って喜んだ。

「どお? 面白かった?」
「くぅーひっくひっく……何ですそれ!? 道具を使うなんて反則レベルですよぉ?」

 ヨーコは笑いながら文句を言った。

「勝つ為には何でも使う♪ これ、 立体映像なんだ。 いつか余興に使えると思ってたんだよね」

 静流がそう言ってメガネのボタンを押すと、飛び出していた目玉が引っ込んだ。

「もしかして、 私が初めてですか?」
「うん、 そう言えばそうかな?」

 それを聞いたヨーコは、満足げに微笑んだ。

「私が初めて。 フフ。 私が……フフフフ」

 ある言葉を反芻しながら照れ笑いを浮かべ、ヨーコは次の人に順番を譲った。



              ◆ ◆ ◆ ◆



 その後は工藤姉妹が静流に色んなポーズを取らせたり、ココナに冬休みのスケジュールを根掘り葉掘り聞かれたりと、静流はいじられ放題だった。

「し、 静流様っ……お目汚し、失礼いたします……」
「やっほー! 静流クーン!」

 次に入って来たのは、みのりとケイのコンビだった。

「みのりさんと……ケイちゃん!?」 

 佳乃寄りで均整の取れたプロポーションのみのりに比べ、身長に反比例したケイの暴力的なバストに、静流は圧倒された。

「で、 デカい……」

 静流はケイの胸元に釘付けだった。

「確かに破壊力抜群ですけど……静流様も大きい方がお好み、 ですか?」

 その様子を見ていたみのりは、上目遣いで弱々しく静流に聞いた。

「好みっていうか……いわゆるひとつの『個性』?と言いますか……」

 静流は顔を赤らめ、ドギマギしながらみのりに言い訳した。

「ああコレ? スゴいでしょ? お湯に浮くんだよ? 見るぅ?」
「ダ、 ダメよダメダメ!」
「えー!? 何でぇ?」

 ケイはあっけらかんとタオルを取ろうとするが、みのりに止められた。

「めめめ……滅相も御座いません!」

 静流はケイの胸に向かって、深々と頭を下げた。

「ねぇ静流クン、 シズルー大尉やって♡」

 いきなりおねだりを始めるケイに、みのりは慌ててケイを叱った。

「コラ! 何言ってるのケイ!」
「イイよ……その方がある意味助かるかも」
「やったぁ! 言ってみるもんだね♪」

 静流は意外にもそれを了承し、ケイが万歳して喜ぶと、胸元がより強調された。

「ちょっと待ってね……」シュン

 静流は腕のガジェットを操作し、瞬時にシズルーに変身した。

「ウム。 コレでイイか?」


「「きゃぁ~♡♡」」


 さっきまで不機嫌そうだったみのりが、ぱぁっと明るくなった。
 シズルーはストレートの長い髪をターバンのように手ぬぐいでまとめていた。

「大尉、 女のコみたい。 カワイイ~♪」
「湯殿シチュ……たまりませんねぇ……」

 他愛ない会話でしのぎ、静流は何とか窮地を乗り切った。



              ◆ ◆ ◆ ◆



「ようお静! 調子はどうだ?」
「お静ちゃん! 楽しんでるぅ?」

 入って来たのはお蘭とヤス子のコンビだった。
 二人は安全パイなのか、シチュエーションが変わっても対応はいつも通りだった。

「お蘭さんとヤス子師匠! ソッチこそ楽しんでる?」
「めちゃめちゃ楽しんでるぜ♪ アネキとも色々話せたし!」グッ
「アチキも。 ゴリ押しして参加した甲斐あったぜ!」グッ

 静流の問いに、二人は親指を立ててニカッっと笑った。
 
「何かリクエストとか、 ある?」

 静流は前の組から先に聞く事にしたようだ。

「何でもイイのか?」
「ホントか?」
「許容範囲内なら、 だけどね」

 静流がそう言うと、二人は手短に小声で相談し始めた。

「……やっぱそれしかねぇよな? よし、 決まった!」
「で、 何をすればイイ?」

 静流が聞くと、二人の声がシンクロした。

「「メガネ、 取ってくれ!」」
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