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第9章 冬の……アナタ、どなた?
エピソード56-95
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露天風呂 男湯――
紆余曲折の末、静流は露天風呂の絶壁にある『混浴エリア』で女湯にいる混浴希望者を相手にする事となった。
ひと組当たりの所要時間は3分で、10組を相手する。
「じゃあ静流クン、 先に行って待っててくれるかな?」
「うん、 わかった。 はぁーぁ……」
静流は重い腰を上げ、ザブザブと混浴エリアの方に歩いて行った。
その様子を見ていた達也たちは、何度も頷きながら見送った。
「あの静流がねぇ……息子の成長を喜ぶ親の気持ちがわかるぜ……」
「達也、 アイツはそんなに女に無頓着だったのか?」
しみじみと語る達也に、薫は眉間にしわを寄せて聞いた。
「そりゃあ抱き付かれたり裸を見りゃあ鼻血くらいは出してたけど、 結構あっけらかんとしてましたね」
「『あの娘とヤリてぇ~!』みたいのは無かったのか?」
「全く。 皆無ですね」
薫の問いに、達也は『オーマイガー』のポーズをとった。
「『薄い本』には自分と似たキャラを無断で使われて嫌悪感を抱いてましたし、 極めつけは真顔で『これは冒涜だ! 子作りは神聖な行為なんだよ!』なんてぬかしてましたからね……」
「何だそりゃ? アイツは『聖人君子』か?」
「おまけにアイツには『アレ』があるから、 女子には恐怖心とかも抱いていましたね……」
「勝手に発動する【魅了】だな? それはいずれ制御可能になるさ。 多分な」
静流は未だに保護メガネが無いと【魅了】が勝手に発動してしまう残念な体質である。
薫は遠ざかっていく静流を見ながら、お猪口をくいっと煽った。
◆ ◆ ◆ ◆
混浴エリア――
静流は混浴エリアに着いた。個室にはなっているが、トラブル防止の為がっちり赤壁で仕切られている。
赤壁の中央にはアクリルの窓があり、シャッターが閉まっている。
湯船の端に座り、そこを開けるとお互いがクリアに見える構造となっている。
静流は声を張り上げた。
「着きましたよぉ~! 最初の方、 どうぞぉ~!」
すると即座にレスポンスがあった。
「そんなに怒鳴らなくても……もういるよ♡」
「ミオ姉?」
シャッターが開き、トップバッターは澪だった事が判明した。
「私が仕切らせてもらったから、『一番風呂』は私がもらったの♡」
「そ、そうなんだ……」
アクリルの窓から見える澪は、ちゃんとルールを守ってバスタオルを巻きつけていた。
「どぉ? 温泉レポートのお姉さんみたいでしょ?」
「う、 うん……そうだね」
そう生返事した静流は、そわそわして目が泳いでいる。
どちらかと言うとぽっちゃり傾向である澪のふっくらした胸元をチラチラと見ている静流。
挙動不審な静流に、澪は首を傾げて言った。
「ん? らしく無いぞぉ? あ、 もしかして見たいの?」
「そ、 そんなワケ無いでしょ!?」
澪の指摘に、静流は1オクターブ高い声で否定した。
「やせ我慢しちゃってぇ。 素直に見たいって言えばイイのに。 ウフ」
調子に乗った澪は、バスタオルを取る素振りを静流に見せた。
それを見て静流の顔は真っ赤になった。
「これ以上からかうんだったら、時短にするよ!」
「ま、 待って! ゴメン謝るから……」
静流を怒らせてしまった澪は、手を合わせてひたすら謝った。
その後は近況や主に郁に対する愚痴を延々と聞かされた。
「ピィーッ そこまで! でありますよ澪殿?」
「うぇ~!? もう3分経っちゃったのぉ!?」
そうやって顔をのぞかせたのは佳乃だった。
「次は自分でありますっ!」
「佳乃さん?」
佳乃は静流と目が合うなり、急に芝居がかった口調となった。
「ああ静流様……やっと二人きりになれたのであります!」
「いつも元気ですね……でもなんか落ち着くなぁ……」
静流がそう言うと、佳乃は満面の笑みを浮かべた。
「もしかしてそれは『心を許せる』って事でありますか? かか……感激であります!」
佳乃は背筋をピンと伸ばし、潤んだ瞳で静流を見つめた。
「ミオ姉みたいに『起伏』が激しいと、 目のやり場に困っちゃうんだよね……」
そう言って佳乃を見ている静流の眼差しは、先ほどとは違っていた。
佳乃のコードネーム『スレンダー』は、スラリとした体形から来ているのは言うまでもない。
「それは……どう言う意味、 でありますか?」
緩みっぱなしだった佳乃の顔が、一瞬で真顔になった。
「え? あ、 僕は無駄の無い均整の取れた身体が好みって事ですよぉ。 ハハハ」
危険を察知した静流は、思ってもいないような事を早口で言った。
「成程ぉ! そうでありましたか! 確かに最近の澪殿はゼイ肉が付いてひと回り大きくなったでありますねぇ♪」
佳乃は喜々として静流に言った。
「嬉しいであります! この身体を褒めてくれるのは後輩の女子だけでありましたから……」
「そ、 そうなんだ。 それは良かった。 タハハ」
咄嗟に口から出たでまかせに喜ぶ佳乃に、静流は苦笑いした。
「いつでもご賞味下さいであります! 抱き枕には丁度イイでありますよ?」
「まぁ、 機会があったらお願いしますよ……」
佳乃の言った事を理解していないのか、また生返事をした静流。
それを聞いた佳乃は、小刻みに震え始めた。
「フ……フ……フッ」
「佳乃さん? どうしたの?」
様子がおかしい佳乃に、静流は恐る恐る声をかけた。
「フラグ……フラグが立ったであります! 吉兆であります! 権利発生であります!」
飛び上がって喜んでいる佳乃を、 静流は不思議に思った。
「時間ですよぉー! 速やかに移動願いまーすっ」
「了解でありまーすっ! では静流様、 ご機嫌ようでありますっ!」
時間となり、次の者に注意された佳乃はあっさりと交代した。
「何であんなにハイテンションだったんだろう?」
「静流様も罪な人ですねぇ……知りませんよ?」
次に入って来たのはヨーコだった。
紆余曲折の末、静流は露天風呂の絶壁にある『混浴エリア』で女湯にいる混浴希望者を相手にする事となった。
ひと組当たりの所要時間は3分で、10組を相手する。
「じゃあ静流クン、 先に行って待っててくれるかな?」
「うん、 わかった。 はぁーぁ……」
静流は重い腰を上げ、ザブザブと混浴エリアの方に歩いて行った。
その様子を見ていた達也たちは、何度も頷きながら見送った。
「あの静流がねぇ……息子の成長を喜ぶ親の気持ちがわかるぜ……」
「達也、 アイツはそんなに女に無頓着だったのか?」
しみじみと語る達也に、薫は眉間にしわを寄せて聞いた。
「そりゃあ抱き付かれたり裸を見りゃあ鼻血くらいは出してたけど、 結構あっけらかんとしてましたね」
「『あの娘とヤリてぇ~!』みたいのは無かったのか?」
「全く。 皆無ですね」
薫の問いに、達也は『オーマイガー』のポーズをとった。
「『薄い本』には自分と似たキャラを無断で使われて嫌悪感を抱いてましたし、 極めつけは真顔で『これは冒涜だ! 子作りは神聖な行為なんだよ!』なんてぬかしてましたからね……」
「何だそりゃ? アイツは『聖人君子』か?」
「おまけにアイツには『アレ』があるから、 女子には恐怖心とかも抱いていましたね……」
「勝手に発動する【魅了】だな? それはいずれ制御可能になるさ。 多分な」
静流は未だに保護メガネが無いと【魅了】が勝手に発動してしまう残念な体質である。
薫は遠ざかっていく静流を見ながら、お猪口をくいっと煽った。
◆ ◆ ◆ ◆
混浴エリア――
静流は混浴エリアに着いた。個室にはなっているが、トラブル防止の為がっちり赤壁で仕切られている。
赤壁の中央にはアクリルの窓があり、シャッターが閉まっている。
湯船の端に座り、そこを開けるとお互いがクリアに見える構造となっている。
静流は声を張り上げた。
「着きましたよぉ~! 最初の方、 どうぞぉ~!」
すると即座にレスポンスがあった。
「そんなに怒鳴らなくても……もういるよ♡」
「ミオ姉?」
シャッターが開き、トップバッターは澪だった事が判明した。
「私が仕切らせてもらったから、『一番風呂』は私がもらったの♡」
「そ、そうなんだ……」
アクリルの窓から見える澪は、ちゃんとルールを守ってバスタオルを巻きつけていた。
「どぉ? 温泉レポートのお姉さんみたいでしょ?」
「う、 うん……そうだね」
そう生返事した静流は、そわそわして目が泳いでいる。
どちらかと言うとぽっちゃり傾向である澪のふっくらした胸元をチラチラと見ている静流。
挙動不審な静流に、澪は首を傾げて言った。
「ん? らしく無いぞぉ? あ、 もしかして見たいの?」
「そ、 そんなワケ無いでしょ!?」
澪の指摘に、静流は1オクターブ高い声で否定した。
「やせ我慢しちゃってぇ。 素直に見たいって言えばイイのに。 ウフ」
調子に乗った澪は、バスタオルを取る素振りを静流に見せた。
それを見て静流の顔は真っ赤になった。
「これ以上からかうんだったら、時短にするよ!」
「ま、 待って! ゴメン謝るから……」
静流を怒らせてしまった澪は、手を合わせてひたすら謝った。
その後は近況や主に郁に対する愚痴を延々と聞かされた。
「ピィーッ そこまで! でありますよ澪殿?」
「うぇ~!? もう3分経っちゃったのぉ!?」
そうやって顔をのぞかせたのは佳乃だった。
「次は自分でありますっ!」
「佳乃さん?」
佳乃は静流と目が合うなり、急に芝居がかった口調となった。
「ああ静流様……やっと二人きりになれたのであります!」
「いつも元気ですね……でもなんか落ち着くなぁ……」
静流がそう言うと、佳乃は満面の笑みを浮かべた。
「もしかしてそれは『心を許せる』って事でありますか? かか……感激であります!」
佳乃は背筋をピンと伸ばし、潤んだ瞳で静流を見つめた。
「ミオ姉みたいに『起伏』が激しいと、 目のやり場に困っちゃうんだよね……」
そう言って佳乃を見ている静流の眼差しは、先ほどとは違っていた。
佳乃のコードネーム『スレンダー』は、スラリとした体形から来ているのは言うまでもない。
「それは……どう言う意味、 でありますか?」
緩みっぱなしだった佳乃の顔が、一瞬で真顔になった。
「え? あ、 僕は無駄の無い均整の取れた身体が好みって事ですよぉ。 ハハハ」
危険を察知した静流は、思ってもいないような事を早口で言った。
「成程ぉ! そうでありましたか! 確かに最近の澪殿はゼイ肉が付いてひと回り大きくなったでありますねぇ♪」
佳乃は喜々として静流に言った。
「嬉しいであります! この身体を褒めてくれるのは後輩の女子だけでありましたから……」
「そ、 そうなんだ。 それは良かった。 タハハ」
咄嗟に口から出たでまかせに喜ぶ佳乃に、静流は苦笑いした。
「いつでもご賞味下さいであります! 抱き枕には丁度イイでありますよ?」
「まぁ、 機会があったらお願いしますよ……」
佳乃の言った事を理解していないのか、また生返事をした静流。
それを聞いた佳乃は、小刻みに震え始めた。
「フ……フ……フッ」
「佳乃さん? どうしたの?」
様子がおかしい佳乃に、静流は恐る恐る声をかけた。
「フラグ……フラグが立ったであります! 吉兆であります! 権利発生であります!」
飛び上がって喜んでいる佳乃を、 静流は不思議に思った。
「時間ですよぉー! 速やかに移動願いまーすっ」
「了解でありまーすっ! では静流様、 ご機嫌ようでありますっ!」
時間となり、次の者に注意された佳乃はあっさりと交代した。
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