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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-47

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宴会場『プロメテウス』の間

 睦美とのやり取りを終え、ニナは直ぐに行動に移った。
 近くでダッシュ7に頭を撫でられ、メロメロになっているルリに、ニナは話しかけた。

「ルリ先輩、この後の事で相談があるんだけど?」
「なぁに相談って? もしかして『4P』でもやるとか? むふぅ」
 
 ニナに相談を持ち掛けられ、顔が緩みっぱなしのルリ。

「ジン様のお味も試してみたいし、私は大歓迎よぉ♡ むほぉ」
「それもアリだけど、 先ずは部屋ですよ部屋! これを何とかしないと……」
「あぁ、『ヤリ部屋』かぁ……うっかりしてた。 テヘ♪」

 ルリはそう言って舌をペロッと出した。
 ニナは宴会の後片付けをしている年配のスタッフに話しかけた。

「ねぇねぇ、ココって『休憩』で部屋とか利用可能?」
「はぁ? 休憩? ウチは連れ込みホテルじゃないんだけどね?」

 年配のスタッフは眉間にしわを寄せ、ニナたちをジロリと見た。
 傍から見れば、二組のカップルに見えるニナたちだった。

「そこを何とか。 流石にみんながいる大部屋でイチャイチャ出来ないよぉ……」

 手を合わせ、年配のスタッフに無茶ぶりするニナ。

「みんなに視姦されながらいたすとか……『ハプバー』っぽくて、そのシチュも悪くない……かも? ムフ、 ムフフフ」

 ルリは卑猥な妄想を膨らませ、恍惚の表情を浮かべた。

「ふぅ。 しょうがないねぇ……」

 すると年配のスタッフは溜息を吐き、ニナたちに言った。

「『デイユース』って日帰りのコースならあるよ。 もっとも空きがあればの話だけどね……」
「それだ! サンキューおばさん! ほら先輩、 フロントに行くよ♪」
「え? あ、 はれぇ~っ!?」

 ニナはルリの手を引き、宴会場を早足で出て行った。
 その後をレプリカたちが付いていく。
 その様子を眺めていた年配のスタッフが、目を細めて呟いた。

「あらまぁ。 お盛んです事……フフフ」

 部屋に戻ろうとしていた薫たちに、真琴が声をかけた。

「ねぇ土屋、 静流は?」
「静流ならアッチの宴会が終わって、 コッチに来る途中で何か誰かに会いに行くって別れてからそのままなんだけどよ……」

 達也の言い草に、真琴と共にいた美千留とカナ子が食って掛かった。 

「何それツッチー、 で、 しず兄は今ドコ?」
「ツッチー先輩? 隠すとイタい目に遭いますよぉ?」
「それがわかんねーんだよ。 さっきお姉様たちが探しに出てったけど……」
「薫兄……それ本当、なの?」
  
 美千留は恐る恐る薫の方を見た。
 まだ数回しか会っていない薫とは、まだ完全に打ち解けていないらしい。

「ああ本当だ。 なぁに、 その内アイツらが連れ戻すだろうよ」

 すると青ざめた顔のヨーコが、横から割り込んで来た。

「静流様が心配です。 さっきから通じないんです……念話」
「え? そうなの? じゃあアタシがかけてみる……」

 真琴が自分の勾玉を握り、祈る様に念じている。

「……ダメ。 繋がらない……」 

 今度は美千留がトライしているが、やはりダメだったようだ。
 隣で美千留の勾玉を指をくわえて羨ましそうに見ているカナ子。

「まさか『着拒』!? 以前されました……私が時差もお構いなしに昼夜構わず念話しまくったせいで……」グスン
「静流、 そう言えばこぼしてたっけ……『ヨーコと忍ちゃんが寝かせてくれない~』って……」

 見かねた雪乃が小さい溜息を吐き、ヨーコに言った。

「ああ……今回のは多分、 薫子か忍のせいね……」

「「「えっ!?」」」

「全く……こう言う時に繋がらなかったら、意味ないでしょ?」
「ずびばぜん……」

 雪乃に叱られ、涙目になって小さくなるヨーコ。
 薫は後頭部を掻き、面倒くさそうに一同に言った。

「ココに突っ立っててもしょうがねぇ。 とりあえず一旦部屋にかえろうぜ?」 



              ◆ ◆ ◆ ◆



保養施設内 バー『ジャムル・フィン』

 軍人将棋は結果的に、シズルーが持ちかけて採用したローカルルールによりシズルーが勝利した。
 結果に納得していないキャリーは、賭けの内容を暴露して周囲をドン引きさせ、フジ子と口論に。
 その挙句、エスメラルダの一喝で周囲がしんと静まった。
 エスメラルダは事の真相をシズルーに確かめた。

「シズルーや。 お前はどうなんだい?」
「生憎だが、 今日は誰とも『生殖行為』を行う予定はない。 諦めてくれ」

 シズルーは真顔で身も蓋も無い事を言い放った。
 この発言に、女性陣が呆気にとられた。
 
「な、 何を言ってるの? それじゃあ――」
「勝手な言い草だね。 勝負を受けたって事は、『そうゆう事』になってもイイと覚悟してたんだろう?」

 キャリーの反論に被せ、エスメラルダがシズルーに問うた。

「それは私が『敗北』した時の事だ。 結果は私の『勝利』だった」 

 シズルーは眉一つ動かさず、淡々と質問に応じた。

「キャリー。 確認だがこの子が勝った時の条件は何?」
「そ、 それは……」

 エスメラルダにそう聞かれ、キャリーは言いあぐねていた。
 すると部下たちが立ち上がった。

「閣下! シズルー様の勝利条件、 それは……私たちを好きにして良い事、 です」ポォ

 ジョアンヌはそう言って両手を頬にあて、恥ずかしがっている。


「「「「何じゃそりゃぁ~っ!?」」」」


 これには薫子と忍、フジ子とラチャナが一斉にツッコんだ。

「シズルー!? どっちにしろ女とチョメチョメなんて、 何でそんな勝負受けたの?」

 薫子は激昂してシズルーを問い詰めた。

「断ると面倒な事になりそうだった。 ただそれだけだ」
「あまりにも無防備! 自分を安売りしないの!」

 静流の言い草に、忍も珍しくキレた。
 シズルーは微かに動揺しながら弁明した。

「『好きにする』と言う事は、何もしない事も含まれる。 ゆえに私は何もしない。 これでイイだろう?」


「「そ、 そんなぁ……」」


 ジョアンヌたちはあからさまに残念がっている。
 シズルーは最初からこの展開に持って行くつもりだったのだろう。
 
「シズルー、 それはちょっと自己中過ぎるんじゃないかい?」

 シズルーが声の方を向くと、言ったのはエスメラルダだった。

「何もしない事の、何処に自分が責められる要素があるんだ?」
(早く部屋に帰りたいんだけど……何のつもりですか先生?)

 シズルーは少しイラつきながら、エスメラルダに聞いた。

「この子たちの『覚悟』を、 お前は踏みにじる気か?」
「覚悟? 言っている意味がよくわからんな……」
(うわぁ……面倒な事になって来たぞ……助けてお姉様!) 
 
 シズルーはチラと薫子と忍に目くばせした。

「ち、 ちょっと先生? そんなの勝ったシズルー本人が決める事でしょ?」 
「そうそう。 外野は黙ってて」

 姉たちはあわててフォローを入れる。

「アンタたちこそ黙るんだね!」
「「ヒィッ!」」

 エスメラルダの一喝に、姉たちは直ぐに黙った。
 小さく溜息を吐き、エスメラルダはゆっくりと口を開いた。

「あたしゃあ何も、 そいつらとヤれって言ってるんじゃないよ!」
「では、 私に何をしろ、 と?」

 シズルーが訝しげにそう聞くと、エスメラルダは一変して穏やかな笑みを受かべてシズルーに言った。

「要はこの子たちを満足させてやればイイ。 出来るだろ?」 

 エスメラルダの言い草に、首を傾げるシズルー。

「満足させる? どうやって?」
「皆まで言わせる気か!? そんなもん自分で考えろ!」

 エスメラルダは全力でツッコんだ。
 するとキャリーがニヤつきながらシズルーに言った。

「シズルー? 『据え膳食わぬは何とやら』っていうでしょ? 観念しなさいな♪」
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