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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-30

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宴会場『プロメテウス』の間

「ヤングチーム! 当たりを引いたのは、 藤堂ルリさんです!」

 ヤングチームのダッシュ7を目覚めさせたのは、藤堂ルリだった。


「「「「き、 きゃぁぁ……」」」」

  
 事の顛末に、落胆を隠せないヤング一同。

「まさか、あのド変態に当たるとは……」
「ダダ、ダッシュ7様がぁぁぁ……」

 アダルト同様、スタッフが速やかに撤収作業に入った。
 浴衣を着せられながら、ダッシュ7はルリに詰問し、ルリは口をパクパクさせながらそれに答えた。

「何? では、 お前が拙者の呪いを解いてくれたのか?」
「は、はいぃ……」

 ダッシュ7はルリの説明に驚いていたが、やがて真剣な顔つきになった。

「うむ。 そうとは知らず無礼であった。 かたじけない」
「んごっ!? と、 とんでもないですぅ」

 頭を下げ、礼を言うダッシュ7に、ルリは手をバタバタとさせ、恐縮している。
 ダッシュ7は微笑み、ルリに言った。

「代わりと言っては何だが、 望みはあるか?」
「へ? 望み……ですか?」
「おう。 何でも言ってみるがよい!」

 男体盛りのステージにあぐらをかいたダッシュ7。
 ルリの眼前に浴衣からフンドシがチラリと見えた。

「……枕を、 交わしとうござりまする……グフゥ」ポォォ

 そう言ってルリは、頬を赤く染め、腰をくねらせた。


「「「なな、何だとぉ~!?」」」


 ルリの言葉に反応したのは、レヴィとココナだった。
 他の者はポカーンと呆けた顔になっている。

「どう言う意味? 『枕を交わす』って?」
「枕投げでもするの? 姫様?」

 アンナが誰ともなしに聞くと、ケイは見当違いな事を言ってココナに聞いた。

「ぐぬぬ……ルリ、 貴様ぁぁぁ!」
「ルリ殿! それは御無体な……」

 意味がわかっている二人は動揺していた。
 それを見ていたメルクは、ニヤけながらあっけらかんと答えた。

「つまりじゃな、 コヤツはダッシュ7とチョメチョメをしたい、と言う事じゃな♪」


「「「何ぃぃぃ~!?」」」


 意味を理解した一同は、ルリのあまりにもストレートな要求に驚愕した。
 暫くフリーズしているダッシュ7に、ココナはイヤミったらしくルリに言った。

「フッ、 見事な玉砕っぷりだったな。 しかしお前にしては攻めた方だった。 褒めてやろう」

 一同もさもありなんとばかりに大きく頷いている。
 すると、ダッシュ7がポツリと呟いた。

「ふむ。 そんな事で良いのか?」
「ぶへっ!? イ、 イイのですか?」

 ダッシュ7の意外な返事に耳を疑ったルリ。

「ひとり寝は寂しいと申すのだな? うい奴じゃ♪」


「んっほぉぉぉぉぉ♡♡♡」

 
 ルリはエビぞりになり、両目がハートマークになって気絶した。



              ◆ ◆ ◆ ◆



宴会場『ダイダロス』の間

 高級将校たちの妻たちが企んだ『夫サルベージ計画』は、今の所無事に遂行されていた。
 一つ問題があるとすれば、約一名の『ビースト化』であった。

「ハチの奴、 好き放題しおって……ラチャナ、面倒な事になる前に手を打っときな」
「仕方ないわね……誰かに餌食になってもらうか……」

 ラチャナが悔しそうな顔でそう言った。
 その時、薫が悪戯を思いついた子供の用にニヤつきながらラチャナに言った。

「おい! あの爺さんを何とかすればイイのか? 面白れぇ、 いっちょやってみるか……」
「フン、 アナタに何が出来るって言うの?」

 ラチャナは鼻で笑いながら薫に言った。

「まぁ見てなって。 俺ちょっくら便所!」

 薫はすくっと立ち上がり、会場を出て行った。
 眉間にしわを寄せたラチャナは、静流に聞いた。

「ねぇ静流クン? 薫クンは何を考えてるのかしら?」
「さぁ? 面倒事にならなきゃイイんだけど……」

 静流は腕を組み、首を傾げた。
 そんな静流たちに、達也はドヤ顔で言った。

「アニキに任せておけば大丈夫だって。 きっと上手くやってくれるさ♪」
「達也……薫さんの事を過大評価しない方がイイと思うよ……」

 静流が難色を示していると、入り口から薫が戻って来た。
 しかも知らない女性と腕を組んでいる。
 その恰好は、式神コンパニオンと同じ、青いビニールレザーの超ミニスカート婦警姿だった。
 どことなく薫に似た顔立ちの、グラビアアイドル並みのプロポーションだった。

「よっ! 待たせたな!」
「お待たせぇ♡」

 ラチャナは招かれざる11人目のコンパニオンに驚いた。

「ち、 ちょっとアンタ誰?」
「補充人員の『カオル』でぇ~っす♡」ニコッ

 カオルと名乗ったコンパニオンは、小悪魔スマイルで甘ったるい声だった。



              ◆ ◆ ◆ ◆



保養施設内 バー『ジャムル・フィン』

 夜間特別便を降りたキャリーと部下二人は、保養施設内のバーに入った。

「イイの? ママ。 帰還命令が出てるって言ってたよね?」
「問題無いわ。 命令って言っても司令夫人にはアタシらに効力ないでしょ?」
「そりゃあそうだけど……」

 カミラはキャリーの態度に半ば呆れていた。
 ジョアンヌは神妙な面持ちでキャリーに聞いた。

「報酬、もらったんですよね? ママ?」
「ええ。 しっかりと、 ね」
「でしたら、奥様の指示通りにあの便で帰れば良かったじゃないですか?」

 キャリーは煙草に火を着け、煙を一杯に吸い込み、天井に向かってゆっくりと吐き出した。

「聞いてるんですか? ママ!」

 ジョアンヌは語気を強め、キャリーに詰め寄った。
 すると、キャリーは心底悔しそうに二人に言った。

「だってこんな胸糞悪い展開、 飲まなきゃやってらんないわよ!」

 ジョアンヌたちは事の詳細をキャリーに聞いた。

「今回のミッションに、何か裏がありそうですね?」
「そうよ! ハチの野郎、 アタシにピチピチの男の子、 紹介するって約束したのに……キィ~ッ!!」

 キャリーはお通しに出されたナッツを皿ごと口に持って行き、一気に頬張った。 

「何、 ですって?」
「だから、 十代のDTクンを紹介してくれるって言ったから、 この仕事引き受けたのよ!」
「「えっ……」」

 キャリーのその言葉に、部下二人は絶句した。

「それはマズいよママ……ドン引きレベルじゃん」

 カミラは青ざめた顔でキャリーに言った。
 ちなみにキャリーは、現在178歳である。

「ええいうるさい! アンタたち、 今夜はとことん飲むわよ!」

 キャリーはそう言うと、ジョアンヌに空のロックグラスを突き出し、ウィスキーを催促した。
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