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第9章 冬の……アナタ、どなた?
エピソード56-25
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宴会場『プロメテウス』の間
「それではレディ、 ゴーッ!」
熱狂のさなか、『男体盛り』がついに始まった。
「ええと、 これ!」
「まぁ、 妥当よね……」
「アタシも初めはそこだと思うもん」
ケイはダッシュ7の唇にあったマグロの赤身を箸で摘まんだ。
「…………」
「ピクリともしない。 けど美味しいからよしとするか……」
ケイは刺身を味わいながらそう言った。
「反応は無し! 次の方どうぞ!」
「ほーい!」
隣にいたアンナの番となり、時計回りにひとマス移動したあと、手の届く位置を注意深く観察している。
「う~ん……ココかなぁ? それともココかなぁ?」
「アンナ! 『迷い箸』は行儀が悪いですよ? 早く決めて!」
次の次であるヨーコが、イラつきながらアンナを急かす。
「よぉし! ココにしようっと♪」
アンナは右の乳首にあったイクラを箸で摘まんだ。
「あ、 私も狙ってたのに……」
アンナを見て、サラが羨ましそうに言った。
イクラを取った瞬間、ダッシュ7に若干反応があった。
『うっ……』ビクッ
「ね、 ねぇ……今動いたよ? これって『当たり』?」
ダッシュ7は一瞬顔を歪めたが、直ぐに真顔に戻った。
アンナは判定役の睦美を見た。
「う~ん弱い! 残念」
「なぁに? 弱いって?」
アンナはいぶかし気に睦美に聞いた。
「えー、 先ほど言い忘れてしまいましたが、反応には『強』と『弱』があり、『当たり』は『強』を引いたあと、『何か』が起こります!」
「何かって、 なぁに?」
「それは、 その時のお楽しみでーすっ♪」
睦美はアンナの質問に肝心な部分を濁して回答した。
「はーい、次行ってくださいね。 ではアダルトチームを覗いてみましょう」
睦美がアダルトチームを見ると、ジルの番だった。
「皆さんはがっつき過ぎです!」
「そうかしら? 狙って当然でしょ?」
既にネネ、ニニ、ムムの三人がトライしてダメだったのは、ジンの股間に鎮座する伊勢海老だった。
下腹部に胴体があり、デリケートな部分に刺身が並ぶレイアウトであった。
「三人やってダメでしたか。 では他の所に」
ジルは顔を赤らめ、ジンの左胸に盛られたキャビアを狙っている。
「箸で掴みづらいですね……おっとこぼれそうです」
ジルがキャビアを箸で取ろうとしてしくじったその時、異変が起きた。
『あ、 あぁ……♡』
「しゃ、しゃべった! 反応ありです! ジャッジ、 ジャッジをお願いします!」
ジンの口から漏れた苦悶の声を聞き、ジルは興奮して睦美に駆け寄った。
「う~ん弱い、 弱いですねぇ」
「弱いってさ。 次、 アタシ♡」
次の番であるカチュアは、舌なめずりしながら身構えた。
「意外とココも性感帯なのよね。 えいっ♡」
カチュアが摘まんだのは、左わき腹付近にあった真鯛の刺身だった。
『ううっ……』ビクッ
「ほらね。 でも弱かったか……」
そのあと、一巡目は互いに『当たり』は出なかった。
◆ ◆ ◆ ◆
宴会場『ダイダロス』の間
『式神使い』の赤星ラチャナは、司令夫人たちの策略で呼ばれた事がわかった。
「本当は八郎司令が呼んだ『キューティー・デビルズ』の連中がココに来る予定だったの」
「それを司令たちの奥様方が阻止したって事ですか?」
「どうもそうらしいわ」
ラチャナは静流の問いに、アメリカ人が良くやる『オーマイガー』のポーズで答えた。
「『キューティー・デビルズ』ってなんスか?」
「極限状態における軍隊の統率や士気の為に、 主に男性隊員のいろんな欲求を受け持つ特殊部隊、 と言ったらわかる?」
「胡散臭い部隊ッスね……『ヒーラー』ではない事は間違い無さそうだけど……」
達也は『キューティー・デビルズ』に対して、好意は持てなかった。
「奥さんたちはやっぱ、浮気される事を嫌ったんですかね?」
「そうか?『亭主元気で留守がイイ』なんてキャッチコピーあったよな?」
静流が腕を組んでラチャナに聞くと、横から達也が割り込んだ。
「何か『今夜は特別♡』みたいな事を言ってたわね。 どの奥様も肌艶が良かった気がするし……」
ラチャナの呟きに、静流ははっとした。
(まさか……僕がやった『施術』が影響してる、 とか?)
「お、 温泉の効果ですかね?」
「そうかもね。 私も仕事が終わったら入ろっと♪」
静流は周りのテーブルに視線を変え、感心しながらラチャナに聞いた。
「でも【式神】ってスゴいですよね? みんなバラバラに動いてるし」
「それなりのコツがいるけど、 覚えられれば色んな応用が効くよ。 今みたいにね♪」
ラチャナの視線の先で、式神のコンパニオンが酔った客の執拗なボディタッチをやんわりとかわし、上手く接客していた。
「ラチャナさんって、【陰陽術】を極めた方なんですか?」
「一応ね。 『赤星』の一族は、 古くは『陰陽師』を輩出していた家柄だったらしいよ」
ラチャナの説明に、静流は目をキラキラと輝かせた。
「イイですよね『陰陽師』! 何かロマンがあって。 マンガでしか知りませんけど」
「今は廃れたけどね。 しかも女はどう転んでも『陰陽師』にはなれないしね……」
「確かに女の子が式神を使うファンタジー物はありますけど、 主役級のキャラはいないか……」
「地味だし。 そもそもあまり目立つもんじゃないしね……」
少し寂しげな顔をしたラチャナを見て、静流は心の中で「しまった」と呟いた。
「はっ、 失礼しました……」
「イイのよ。 慣れてるから」
そんなラチャナを見て、エスメラルダが聞いた。
「で? この後はどういう流れなんだい?」
「亭主たちを悶々とさせて、 奥様方が待ってる部屋に行かせる事がこの作戦のキモですね」
「成程ね。 ただ、『役立たず』にならない程度に酔わすのは骨が折れそうだね?」
「そこは万全ですよ閣下。 飲み物にコレ、入れてますから♪」
ラチャナはエスメラルダに錠剤のシートを見せた。
「『バイアングラ』。飲ませて一時間後には効果発動、 効き目は一晩らしいです♪」
「呆れたねぇ……そんなモンまで用意してあるとはね」
エスメラルダは、苦虫を嚙み潰したような顔をした。
「それではレディ、 ゴーッ!」
熱狂のさなか、『男体盛り』がついに始まった。
「ええと、 これ!」
「まぁ、 妥当よね……」
「アタシも初めはそこだと思うもん」
ケイはダッシュ7の唇にあったマグロの赤身を箸で摘まんだ。
「…………」
「ピクリともしない。 けど美味しいからよしとするか……」
ケイは刺身を味わいながらそう言った。
「反応は無し! 次の方どうぞ!」
「ほーい!」
隣にいたアンナの番となり、時計回りにひとマス移動したあと、手の届く位置を注意深く観察している。
「う~ん……ココかなぁ? それともココかなぁ?」
「アンナ! 『迷い箸』は行儀が悪いですよ? 早く決めて!」
次の次であるヨーコが、イラつきながらアンナを急かす。
「よぉし! ココにしようっと♪」
アンナは右の乳首にあったイクラを箸で摘まんだ。
「あ、 私も狙ってたのに……」
アンナを見て、サラが羨ましそうに言った。
イクラを取った瞬間、ダッシュ7に若干反応があった。
『うっ……』ビクッ
「ね、 ねぇ……今動いたよ? これって『当たり』?」
ダッシュ7は一瞬顔を歪めたが、直ぐに真顔に戻った。
アンナは判定役の睦美を見た。
「う~ん弱い! 残念」
「なぁに? 弱いって?」
アンナはいぶかし気に睦美に聞いた。
「えー、 先ほど言い忘れてしまいましたが、反応には『強』と『弱』があり、『当たり』は『強』を引いたあと、『何か』が起こります!」
「何かって、 なぁに?」
「それは、 その時のお楽しみでーすっ♪」
睦美はアンナの質問に肝心な部分を濁して回答した。
「はーい、次行ってくださいね。 ではアダルトチームを覗いてみましょう」
睦美がアダルトチームを見ると、ジルの番だった。
「皆さんはがっつき過ぎです!」
「そうかしら? 狙って当然でしょ?」
既にネネ、ニニ、ムムの三人がトライしてダメだったのは、ジンの股間に鎮座する伊勢海老だった。
下腹部に胴体があり、デリケートな部分に刺身が並ぶレイアウトであった。
「三人やってダメでしたか。 では他の所に」
ジルは顔を赤らめ、ジンの左胸に盛られたキャビアを狙っている。
「箸で掴みづらいですね……おっとこぼれそうです」
ジルがキャビアを箸で取ろうとしてしくじったその時、異変が起きた。
『あ、 あぁ……♡』
「しゃ、しゃべった! 反応ありです! ジャッジ、 ジャッジをお願いします!」
ジンの口から漏れた苦悶の声を聞き、ジルは興奮して睦美に駆け寄った。
「う~ん弱い、 弱いですねぇ」
「弱いってさ。 次、 アタシ♡」
次の番であるカチュアは、舌なめずりしながら身構えた。
「意外とココも性感帯なのよね。 えいっ♡」
カチュアが摘まんだのは、左わき腹付近にあった真鯛の刺身だった。
『ううっ……』ビクッ
「ほらね。 でも弱かったか……」
そのあと、一巡目は互いに『当たり』は出なかった。
◆ ◆ ◆ ◆
宴会場『ダイダロス』の間
『式神使い』の赤星ラチャナは、司令夫人たちの策略で呼ばれた事がわかった。
「本当は八郎司令が呼んだ『キューティー・デビルズ』の連中がココに来る予定だったの」
「それを司令たちの奥様方が阻止したって事ですか?」
「どうもそうらしいわ」
ラチャナは静流の問いに、アメリカ人が良くやる『オーマイガー』のポーズで答えた。
「『キューティー・デビルズ』ってなんスか?」
「極限状態における軍隊の統率や士気の為に、 主に男性隊員のいろんな欲求を受け持つ特殊部隊、 と言ったらわかる?」
「胡散臭い部隊ッスね……『ヒーラー』ではない事は間違い無さそうだけど……」
達也は『キューティー・デビルズ』に対して、好意は持てなかった。
「奥さんたちはやっぱ、浮気される事を嫌ったんですかね?」
「そうか?『亭主元気で留守がイイ』なんてキャッチコピーあったよな?」
静流が腕を組んでラチャナに聞くと、横から達也が割り込んだ。
「何か『今夜は特別♡』みたいな事を言ってたわね。 どの奥様も肌艶が良かった気がするし……」
ラチャナの呟きに、静流ははっとした。
(まさか……僕がやった『施術』が影響してる、 とか?)
「お、 温泉の効果ですかね?」
「そうかもね。 私も仕事が終わったら入ろっと♪」
静流は周りのテーブルに視線を変え、感心しながらラチャナに聞いた。
「でも【式神】ってスゴいですよね? みんなバラバラに動いてるし」
「それなりのコツがいるけど、 覚えられれば色んな応用が効くよ。 今みたいにね♪」
ラチャナの視線の先で、式神のコンパニオンが酔った客の執拗なボディタッチをやんわりとかわし、上手く接客していた。
「ラチャナさんって、【陰陽術】を極めた方なんですか?」
「一応ね。 『赤星』の一族は、 古くは『陰陽師』を輩出していた家柄だったらしいよ」
ラチャナの説明に、静流は目をキラキラと輝かせた。
「イイですよね『陰陽師』! 何かロマンがあって。 マンガでしか知りませんけど」
「今は廃れたけどね。 しかも女はどう転んでも『陰陽師』にはなれないしね……」
「確かに女の子が式神を使うファンタジー物はありますけど、 主役級のキャラはいないか……」
「地味だし。 そもそもあまり目立つもんじゃないしね……」
少し寂しげな顔をしたラチャナを見て、静流は心の中で「しまった」と呟いた。
「はっ、 失礼しました……」
「イイのよ。 慣れてるから」
そんなラチャナを見て、エスメラルダが聞いた。
「で? この後はどういう流れなんだい?」
「亭主たちを悶々とさせて、 奥様方が待ってる部屋に行かせる事がこの作戦のキモですね」
「成程ね。 ただ、『役立たず』にならない程度に酔わすのは骨が折れそうだね?」
「そこは万全ですよ閣下。 飲み物にコレ、入れてますから♪」
ラチャナはエスメラルダに錠剤のシートを見せた。
「『バイアングラ』。飲ませて一時間後には効果発動、 効き目は一晩らしいです♪」
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