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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-24

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宴会場『プロメテウス』の間

 『男体盛り』のルールが説明され、一気にヒートアップする一同。

「ああ!『ロシアンルーレット』みたいなもんか」
「今回の場合、死んだら負けなのでは?」チャ

 ムムがそんな事を言って、ニニが真顔でツッコんだ。  

「成程、つまりこれは『白ひげ一触即発』のようなものですね?」

 ほぼ同時に、素子は有名なパーティーグッズに例えた。

「今回は飛び出した方が勝ちだけどね」
「でも、 あれは発売当初、 飛び出した=救出したって事で、 勝ちの判定だったんですよ?」
「え? そうなの? 知らなかったわぁ……」

 素子はどうでもイイ事を自慢げに語った。

「えー、今から最初に箸を付ける『口開け』役を決めたいと思います。 順番はその方から時計回りで進行します!」

「「「「きゃあ~っ♡♡♡」」」」

 睦美は割り箸で作ったくじを取り出し、ヤングチームに差し出した。

「この中から赤い印が出たら当たりです。 さぁ、 選んで下さい!」

 それぞれが割り箸を掴み、一気に引き抜いた。


「「「「せーの! えいっ!」」」」


 ヤングチームで当たりを引いたのは、トランジスタ・グラマーの谷井ケイだった。

「え? アタシでイイの?」
「イイんです! では次に、 アダルトチーム!」

 戸惑うケイを放置し、睦美は進行を続ける。
 アダルトチームで当たりを引いたのは、木の実ネネだった。

「あら私? この調子で一発で『当たり』引いちゃうかもよ?」
「この人、 ホントにやりそうだからコワイわね……」

 冷めたリアクションのネネに、モモがツッコんだ。
 それぞれの口開け役が決まったので、睦美が配置の確認を行う。

「お箸と醤油皿をお持ち下さい。 はいはい、隙間なく詰めて下さい! アダルトは適当に……」

 ヤングの方がアダルトより人数が多い為、配置に若干手間取ったが、何とか配置が終了した。   

「一切れ摘まんだら、 次に移ると同時にひとマスズレて下さいね!」
「色々面倒。 早くしないと折角のお刺身が渇いちゃう……」

 忍はイラつきながら睦美にぼやいた。

「では始めます! ケイさんとネネ先生、構えて下さい!」
「ふぁ、ふぁい……」
「いつでもイイわよ?」

 二人は思い思いの刺身に狙いを付けた。

「それではレディ、 ゴーッ!」



              ◆ ◆ ◆ ◆



宴会場『ダイダロス』の間

 ダイダロスの間に訪れた謎のコンパニオン軍団。
 それを見た静流と薫が難色を示していると、エスメラルダが呟いた。

「あそこにいるメスども、魔法で作った【幻影】よ……」
「え? アレが?」
「正確には一人を除いて、 だけどね」

 達也以外はこの異変に気付いていた。

「えと……あった。 達也、コレかけてみて?」

 静流は頭をまさぐり、『宝物庫』から達也にメガネを渡した。

「昔使ってたメガネ。【幻影キャンセラー】付いてるから」
「おう……お? おお! お姉さんたちが透けて見えるぞ!」

 静流のメガネをかけた達也が、コンパニオンたちを見て興奮している。

「服ごと透けてるのが残念だけどな。 クックック」

 そんな達也を見て、薫が皮肉を言って笑った。
 エスメラルダはため息混じりに呟いた。

「しかし、 どう言うつもりかね? 酔っぱらったスケベ親父には幻影で十分って事かい? アタシは好かんね」
「ああ。 舐められたもんだな。 カネだってそれなりに払ってるだろうに……」

 そう言って薫は八郎の方を見た。
 八郎はデレデレと鼻の下を伸ばして、酌をしてもらっているコンパニオンの尻を撫でまわしている。

「アレが作りモンなのか? 周りの人、 全然気付いてないじゃん……」

 達也が見回すと、どこのテーブルでもコンパニオンは大歓迎されていた。

「なぁ、 触れるって事は実体があるんだよな? 静流の【レプリカ】みたいなもんか?」
「あんなのを九人も作ったら、 直ぐに魔力が切れちゃうよ……」
「個体にそれほど魔力は感じねぇ。 どんなからくりなんだ?」

 達也の問いに、静流も薫もお手上げだった。
 そんな三人を見て、エスメラルダは呟いた。

「あれは【式神】だ。 『古式魔法』の類で、 魔法を込めた札を使うんだ」
「ああ! 『陰陽師』ですね? マンガで読んだ事あります!」

 静流は目を輝かせ、身を乗り出した。
 その時、薫の目が鋭くなった。

「しっ! 来るぞ……まさかの本体だ」

 静流たちのテーブルに狙いを付けたコンパニオンが、腰を振りながらゆっくりと近づいて来た。

「はぁい♡ なぁに? このテーブルだけお通夜みたぁい♡」

 コンパニオンは薫の隣に座った。

「へぇ。 カッコイイじゃん♡ お兄さんモテるでしょぉ?」
「まぁな。 女に困る事はねぇな」
「ねぇ。 酔いが足りないんじゃなぁい?」

 コンパニオンは薫の水割りを作り始めた。
 静流たちの飲み物を見て、コンパニオンが言った。

「二人は未成年かぁ。 あと三年くらいはお預けね♡」 
「ど、どぉも……」
「なぁにテレちゃて。 カワイイ~♡」

 静流たちをからかっているコンパニオンに、エスメラルダは鋭い視線を送った。

「久しぶりだな、 赤星ラチャナ」
「ん……何故私の名を? ひっ!」

 ラチャナと呼ばれたコンパニオンは、しかめっ面でエスメラルダの顔を暫く見て、そのあと驚愕の表情に変わった。

「ロロ、 ローレンツ、 閣下!?」
「何を驚いている? この面子なら、 アタシがいてもおかしくないだろう?」
「い、 いえ、 その……随分お若く見えたもので……」

 いつの間にか甘ったるい口調が消えていた。

「で? 何でお前さんがいるんだい? しかもこれ、ペテンじゃないのさ?」
「ワケがあるんです! 聞いて下さいますか? 実は……」

 ラチャナは堰を切ったように語りだした。

「――ですから、 ワタシは急に呼び出されたんです。 奥様連中に」  
「フム。 成程ね。 ハチよりも奥様たちの方が一枚上手だった、 ってワケか」
「『アノ部隊』にはキャンセル料を払って夜行便で帰ってもらったらしいです……」
「そうかい。 相変わらず毛嫌いされてるんだな? キャリーの部隊は……」
「仕方ないですよ。 表向きは『アバズレ部隊』ですから……」

 話し込んでいる二人に、薫は咳払いした。

「オッホン……話が見えないんだが?」
「ゴ、 ゴメェ~ン♡ 昔馴染みのお客さんだったからぁ……」

 急に甘ったるい口調に戻ったラチャナに、達也は呆れ顔で言った。

「お姉さん……誤魔化すの下手ッスね?」 
「ザマァ無いね? ラチャナ」
「こりゃ失敬。 まだまだ修行が足りないですね。 タハハ……」

 ラチャナはそう言って、照れくさそうに後頭部を搔いた。
 そのあと、薫たちに質問攻めに会ったラチャナであった。
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