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第9章 冬の……アナタ、どなた?
エピソード55-8
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国分尼寺魔導高等学校 2-B教室――
追試までの学習プランが決まった三人。
試しに受けた過去のテストが散々だった三人に対し、静流は余裕の満点だった事に驚愕する三人。
「満点ってお前、どんな勉強を? はっ!」
「そうか……『睡眠学習』か?」
「えっ!? ホントに寝てるだけでアタマよくなったの?」
静流が学年5位だった事や、今のテストで満点を取った理由に、今頃合点がいった三人。
「そういう事。 僕の場合は3ヶ月くらいかかってるみたいだけどね」
「主人の苦痛を取り除く事、 それが従者の務めですから」
豹の姿をしたロディが、ダンディなボイスでそう言った。
「その内みんなもイイ点採れるようになるよ。 でも、 それはそれで苦労するんだぞ?」
「何だよ苦労って?」
眉間にしわを寄せてそう聞いてきた達也に、睦美がフォローを入れた。
「考えてもみろ。 今まで中の下だった静流キュンの成績が、この数カ月で飛躍的にアップしたのだぞ? 先生たちは勿論、生徒たちにも怪しまれるだろう?」
「むむ。 確かにそうだな……」
「あまりイイ点採らないようにわざと間違えたりしたんだけど、 失敗して結局5位とかになっちゃった。 タハハ」
そう言って後頭部を掻く静流を見て、睦美は皮肉っぽく言った。
「フフ。考えてみれば贅沢な悩みだよな」
「お手を煩わせてすいませんね。 フフフ」
ムムちゃん先生とのやりとりを思い出したのか、静流は睦美に頭を下げた。
今後は睦美が静流の回答を調整することになっているが、やり方は不明である。
睦美は三人に向き直り、淡々と告げた。
「お前たち、 時間が惜しいだろうから、 とっとと帰りたまえよ」
「勿論帰りますけど、 静流はどうするんだ?」
「用が済んだんなら僕も帰るよ。 もう昼だし」
そう言った静流に、達也が言った。
「もう昼か。 静流、 牛丼でも食ってくか?」
「牛丼か。 そうだなぁ……」
男たちの話に、女どもが割り込んで来た。
「アタイも、 行こっかな……」
「頭使ったら、 お腹すいたぁ~」
蘭子とイチカがそんなことを言い出した。すると、
「コホン。 お前たちは一刻も早く家に帰りたまえ。 私は今後の事で静流キュンと打ち合わせがあるのでな」
「え? 何ですか打合せって?」
睦美の言った事に心当たりがなかった静流は、首をひねった。
「静流キュン、 太刀川通り沿いに新しく出来た『戦国武将ファミレス』に行ってみないか?」
「ん? 何か聞き覚えがあるフレーズだな。 興味あるかも」
「そうだろう? 行くんなら早い方がイイ。 待つのは嫌いなのでな」
睦美の誘いに興味を持った静流に、達也たちも乗っかろうとした。
「面白そうだなぁ。 俺も行こっかな?」
「ふーん。 行ってみるか」
「戦国武将ってサムライ? ニンジャもいるかなぁ?」
三人がそう言って静流の方を見た時、静流の後ろに立っている睦美の身体から、ドス黒いオーラが出ているように見えた。
そして睦美の顔が、まるで般若のような形相に豹変している事に気付き、恐れおののいた三人。
「で、でもなぁ、早く帰って勉強しないとな……」
「お静、 今度感想を聞かせてくれよ……」
「さ、さぁて勉強勉強……」
そう言って三人が同時にクルッと回れ右して、教室を出ていこうとした。
「そう言うワケだから、 じゃあな静流!」
「追試、 頑張るぜ!」
「シズルン、 追試無事に突破したら連れてってちょ♪」
そう言って三人は、引きつった顔で足早に去って行った。
それを見送った静流は、ぼそっと呟いた。
「なんだ行かないの? じゃあ僕も――」
「イイじゃないか二人で。 それともぉ、 私とサシでは不満かぁい?」
そんな態度の静流に、睦美は口をとんがらせて拗ねた。
そんな睦美の仕草に、静流は微笑んだ。
「フフフ。 そうですね、やっぱ気になるんで行きましょうか?」
「よし! そう来なくちゃ♪」パァァ
行く気になった静流を見て、睦美の顔が一瞬で笑顔になった。
そんなやりとりを廊下で聞いていた三人。
「ふむ。 やっぱあの二人、 何かあったな……」
「何かって、何だよ?」
「ナニってナニの事?」
睦美たちの関係が気になって仕方がない三人であった。
◆ ◆ ◆ ◆
ファミリーレストラン『天下布武』――
学校からバスで少し移動した所にあるファミレスに、睦美たちは到着した。
「ココだ。『天下布武』、ノブナガか……」
「いかにもな店名ですね……」
街道に面した二階建ての店は、瓦屋根の純和風の作りであった。
「さあ、 中に入ろう」
「ええ」
自動ドアをくぐり、中に入ると受付嬢が顔を出した。
紺色の和服を着た、いかにも女中と言った姿だった。
「いらっしゃいませぇ。 お二人様ですか?」
「ああ。お二人様だ」
受付嬢にそう言われた睦美は、少し上ずった声で対応していた。
「お客様二名様、ご案内お願いしまぁーっす!」
「御意!」シュタッ
女中がそう言うと、今度は軽装備の足軽風の姿の女性店員が、メニューを持って席に案内する。
「こちらでーす。 お決まりになりましたらボタンでお呼び下さぁい!」
「ありがとう」
足軽に案内された席に着く二人。
向かい合わせに座った睦美は、頬をうっすら赤くしてメニューを開いた
「さ、さぁて、 何にしようかな?」
「へぇ。 メニューも凝ってますね」
メニューの内容は、店のコンセプトに沿っていた。
主なメニューは、
・関ケ原セット(ハンバーグ+サラダ+パンかライス+スープか味噌汁+ドリンク)
・桶狭間セット(カットステーキ+サラダ+パンかライス+スープか味噌汁+ドリンク)
・壇ノ浦セット(エビフライ+唐揚げ+サラダ+パンかライス+スープか味噌汁+ドリンク)
と言った具合だった。
少し考えていた睦美は、メニューから目を離し、静流に聞いた。
「静流キュン、 もう何にするか決まったかい?」
「はい。 じゃあ呼びますね。 ポチッとな」
静流はテーブルに設置してある呼び出しボタンを押した。
『ピンポーン♪』「お呼びですか?」シュタッ!
ボタンを押すとすぐに足軽が席に寄って来た。
睦美はメニューを足軽に見せて注文した。
「では、 桶狭間セットとコーヒーを貰おう」
「じゃあ僕は壇ノ浦セットでコーラを」
静流が注文すると、足軽が注文の確認をした。
「……ご注文は以上ですね?」
「はい」
「では、 少々お待ちく下さぁい!」シュン
足軽はそう言うと、奥に向かって走って行った。
「へぇ。 雰囲気もイイですね」
静流は周囲を見渡して感心していた。
睦美はある方向を見ながら静流に聞いた。
「むむ? 静流キュンが興味を持ったのは、やはりアレか?」
「え? ああ。 そうです」
睦美が親指で指した方向には、青い甲冑を身に付け、接客している女性店員がいた。
追試までの学習プランが決まった三人。
試しに受けた過去のテストが散々だった三人に対し、静流は余裕の満点だった事に驚愕する三人。
「満点ってお前、どんな勉強を? はっ!」
「そうか……『睡眠学習』か?」
「えっ!? ホントに寝てるだけでアタマよくなったの?」
静流が学年5位だった事や、今のテストで満点を取った理由に、今頃合点がいった三人。
「そういう事。 僕の場合は3ヶ月くらいかかってるみたいだけどね」
「主人の苦痛を取り除く事、 それが従者の務めですから」
豹の姿をしたロディが、ダンディなボイスでそう言った。
「その内みんなもイイ点採れるようになるよ。 でも、 それはそれで苦労するんだぞ?」
「何だよ苦労って?」
眉間にしわを寄せてそう聞いてきた達也に、睦美がフォローを入れた。
「考えてもみろ。 今まで中の下だった静流キュンの成績が、この数カ月で飛躍的にアップしたのだぞ? 先生たちは勿論、生徒たちにも怪しまれるだろう?」
「むむ。 確かにそうだな……」
「あまりイイ点採らないようにわざと間違えたりしたんだけど、 失敗して結局5位とかになっちゃった。 タハハ」
そう言って後頭部を掻く静流を見て、睦美は皮肉っぽく言った。
「フフ。考えてみれば贅沢な悩みだよな」
「お手を煩わせてすいませんね。 フフフ」
ムムちゃん先生とのやりとりを思い出したのか、静流は睦美に頭を下げた。
今後は睦美が静流の回答を調整することになっているが、やり方は不明である。
睦美は三人に向き直り、淡々と告げた。
「お前たち、 時間が惜しいだろうから、 とっとと帰りたまえよ」
「勿論帰りますけど、 静流はどうするんだ?」
「用が済んだんなら僕も帰るよ。 もう昼だし」
そう言った静流に、達也が言った。
「もう昼か。 静流、 牛丼でも食ってくか?」
「牛丼か。 そうだなぁ……」
男たちの話に、女どもが割り込んで来た。
「アタイも、 行こっかな……」
「頭使ったら、 お腹すいたぁ~」
蘭子とイチカがそんなことを言い出した。すると、
「コホン。 お前たちは一刻も早く家に帰りたまえ。 私は今後の事で静流キュンと打ち合わせがあるのでな」
「え? 何ですか打合せって?」
睦美の言った事に心当たりがなかった静流は、首をひねった。
「静流キュン、 太刀川通り沿いに新しく出来た『戦国武将ファミレス』に行ってみないか?」
「ん? 何か聞き覚えがあるフレーズだな。 興味あるかも」
「そうだろう? 行くんなら早い方がイイ。 待つのは嫌いなのでな」
睦美の誘いに興味を持った静流に、達也たちも乗っかろうとした。
「面白そうだなぁ。 俺も行こっかな?」
「ふーん。 行ってみるか」
「戦国武将ってサムライ? ニンジャもいるかなぁ?」
三人がそう言って静流の方を見た時、静流の後ろに立っている睦美の身体から、ドス黒いオーラが出ているように見えた。
そして睦美の顔が、まるで般若のような形相に豹変している事に気付き、恐れおののいた三人。
「で、でもなぁ、早く帰って勉強しないとな……」
「お静、 今度感想を聞かせてくれよ……」
「さ、さぁて勉強勉強……」
そう言って三人が同時にクルッと回れ右して、教室を出ていこうとした。
「そう言うワケだから、 じゃあな静流!」
「追試、 頑張るぜ!」
「シズルン、 追試無事に突破したら連れてってちょ♪」
そう言って三人は、引きつった顔で足早に去って行った。
それを見送った静流は、ぼそっと呟いた。
「なんだ行かないの? じゃあ僕も――」
「イイじゃないか二人で。 それともぉ、 私とサシでは不満かぁい?」
そんな態度の静流に、睦美は口をとんがらせて拗ねた。
そんな睦美の仕草に、静流は微笑んだ。
「フフフ。 そうですね、やっぱ気になるんで行きましょうか?」
「よし! そう来なくちゃ♪」パァァ
行く気になった静流を見て、睦美の顔が一瞬で笑顔になった。
そんなやりとりを廊下で聞いていた三人。
「ふむ。 やっぱあの二人、 何かあったな……」
「何かって、何だよ?」
「ナニってナニの事?」
睦美たちの関係が気になって仕方がない三人であった。
◆ ◆ ◆ ◆
ファミリーレストラン『天下布武』――
学校からバスで少し移動した所にあるファミレスに、睦美たちは到着した。
「ココだ。『天下布武』、ノブナガか……」
「いかにもな店名ですね……」
街道に面した二階建ての店は、瓦屋根の純和風の作りであった。
「さあ、 中に入ろう」
「ええ」
自動ドアをくぐり、中に入ると受付嬢が顔を出した。
紺色の和服を着た、いかにも女中と言った姿だった。
「いらっしゃいませぇ。 お二人様ですか?」
「ああ。お二人様だ」
受付嬢にそう言われた睦美は、少し上ずった声で対応していた。
「お客様二名様、ご案内お願いしまぁーっす!」
「御意!」シュタッ
女中がそう言うと、今度は軽装備の足軽風の姿の女性店員が、メニューを持って席に案内する。
「こちらでーす。 お決まりになりましたらボタンでお呼び下さぁい!」
「ありがとう」
足軽に案内された席に着く二人。
向かい合わせに座った睦美は、頬をうっすら赤くしてメニューを開いた
「さ、さぁて、 何にしようかな?」
「へぇ。 メニューも凝ってますね」
メニューの内容は、店のコンセプトに沿っていた。
主なメニューは、
・関ケ原セット(ハンバーグ+サラダ+パンかライス+スープか味噌汁+ドリンク)
・桶狭間セット(カットステーキ+サラダ+パンかライス+スープか味噌汁+ドリンク)
・壇ノ浦セット(エビフライ+唐揚げ+サラダ+パンかライス+スープか味噌汁+ドリンク)
と言った具合だった。
少し考えていた睦美は、メニューから目を離し、静流に聞いた。
「静流キュン、 もう何にするか決まったかい?」
「はい。 じゃあ呼びますね。 ポチッとな」
静流はテーブルに設置してある呼び出しボタンを押した。
『ピンポーン♪』「お呼びですか?」シュタッ!
ボタンを押すとすぐに足軽が席に寄って来た。
睦美はメニューを足軽に見せて注文した。
「では、 桶狭間セットとコーヒーを貰おう」
「じゃあ僕は壇ノ浦セットでコーラを」
静流が注文すると、足軽が注文の確認をした。
「……ご注文は以上ですね?」
「はい」
「では、 少々お待ちく下さぁい!」シュン
足軽はそう言うと、奥に向かって走って行った。
「へぇ。 雰囲気もイイですね」
静流は周囲を見渡して感心していた。
睦美はある方向を見ながら静流に聞いた。
「むむ? 静流キュンが興味を持ったのは、やはりアレか?」
「え? ああ。 そうです」
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