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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード52-6

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インベントリ内 プレイルーム 医務室 10:50時――

 VIP席から医務室に来たジェニーとルリ。

「で? 昨日はお楽しみだったようだけど?」じぃー
「はい。 それはそれは……最高のひと時でした。 ヌフゥ」
「私も無理矢理付いて行けば良かったのかなぁ……くぅぅ」

 ルリが昨日撮った写真の顔をモブ子から本来の自分に画像処理したものを見ながら、ニンマリと微笑んでいる。

「でも、所詮レプリカでしょ? ホンモノには敵わないわよ」
「そう思いますよね? しかーし! レプリカといえど、昨日のはホンモノに限りなく近い『ブースト全開バージョン』でしたから……ニュフフ♡」
「きぃーっ! 悔しい!……私も静流クンやジン様と、イチャコラしたかったぁ!」

 ジェニーはちぎれんばかりにハンカチを噛み、悔しがった。 
 ふと我に返ったジェニーは、大きめの瓶に入った薬をしみじみと見ながら言った。

「それはそうとこの丸薬、凄まじい効能らしいわね?」
「止血・増血・メンタルケア・滋養強壮……何でも御座れです。 実際に飲んだ私が言うんですから、間違いないです!」
「流石『黒孔雀』と呼ばれた方。 仕事は完璧ね」



              ◆ ◆ ◆ ◆



インベントリ内 仮眠室――

 30台近くの睡眠ポッドが並んでいる仮眠室には、昨日の評判を聞きつけたのか大勢のユーザーが列を作っていた。

「お待たせしました! それではあちらのボックスで、 こちらに穿き替えて下さい!」

 部員が指差したのは、電話ボックス程の大きさの部屋が5基並んでいる所だった。
 二日目だからなのか、特に滞る事も無くユーザーたちは部員の指示通り動いた。

「穿き替えた方からオーダーシートを用意して、 カプセルにお入りください!」

 オムツに穿き替えた者たちがカプセルに入って行く。
 それぞれが睡眠カプセルに入ると、部員がオーダーシートを見ながら設定していく。
 やり方は前日に忍からレクチャーを受けていたようで、えらくスムーズに事が運んだ。
 やがて全てのカプセルが埋まり、1回目の稼働となった。

「では皆さん、イイ夢を。お願いします!」パチ 

 部員の指パッチンを合図に、カプセルが稼働を始めた。

 ブゥゥーン

 カプセルの蓋が閉まり、角度がゆっくり鈍角になっていく。
 ユーザーたちは、ものの数秒で眠りに落ちた。



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



「さぁ、始まるぞよ? 宴が……」
「恍惚と忘我に溺れるがイイ」

 部員たちの視線がカプセルに移る。
 程なくカプセルからなまめかしい声が湧き上がる。

「静流、おとなしく俺のモノになれ♡」
「ひぃんひぃん言わせてやる!」
「体は正直だな! 受け入れ態勢は万全だぞ?」

「静流様……ココに、その熱いのをお願い……します」
「はぁん♡ そんなに噛んだら、 歯形がついちゃう……」
「いつでもイイですよ♡ 全てキャッチしますから……」

 大きく分けて、ユーザーが攻めのケースと受けのケースがあるらしい。
 部員は時計を見て、他の部員に言った。

「そろそろ時間ね?」
「うん。そうだね」

 夢がクライマックスに達したようだ。

「お゛っ♡、ん゛お゛お゛♡♡」
「あっひぃぃぃぃん♡♡♡」



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



「ピピピピピ」


 時間となり、電子音が鳴った。

  ブゥゥーン

 睡眠カプセルの蓋が開き、角度がゆっくり鋭角になっていく。

「お疲れ様でした!」

 眠りから覚めた者たちは、心ここに在らずと言った状態で、暫くボーッと天井付近を虚ろなまなざしで見ていた。

「夢にまで見た『朝チュン』……素敵」
「俺の嫁、 キター!」
「拙者の腕枕で甘える静流様……可愛かったでござる……ぐふっ」
「アレが『射精』なの? スゴかったぁ……」
「脳みそが溶けだしてないか? ニューロンは無事か?」
「ジュピターはまだか? 木星には何時に着く? ……ブフゥ」

 部員が声を張り上げた。

「意識がはっきりして来ましたら、あちらでオムツをはき替えて下さい!」
「ご希望の方、新しいオムツはコチラでーす!」
「こちらで後処理出来まぁーす! おしりふきも完備でぇーっす!」
「使用済みの紙オムツは、こちらにお願いしまーす」

 夢から覚めた者たちが次々にボックスに入り、後処理を済ませている。

「はーい。この後アクターとの交流希望の方は、こちらにお並びくださぁーい!」

 次の希望者は、整列しプレイルームの方に誘導されて行く。
 ここまでの所要時間は、大目に見て6~7分程度であるが、実際には2~3分程しか経っていない。
 プレイルームの時間を通常の3倍まで引き上げた効果だ。 
 リーダー格の部員が声を張り上げた。

「この調子でバンバン入れるよ! みんな、きばりやぁ~!!」

「「「「はいっ!!」」」」



              ◆ ◆ ◆ ◆



インベントリ内 プレイルーム――

 仮眠室を出たユーザーたちが案内された所は、がらんとした広めの空間に、パーテーションで区切った部屋が四つ並んでいる所だった。
 四つの部屋のアクターは、

 ルームA ノーマル静流 
 ルームB シズルー  
 ルームC シズベール 
 ルームD 七本木ジン

 であった。

「では、オーダーシートをお出しください!」
「は、はい……」

 ユーザーのオーダーシートを受け取ると、部員がルームまで案内する。

「では、こちらのルームCでアクターがアナタを待っています。お入りください」
「ふぇ!? き、緊張するなぁ……」

 ユーザーは、恐る恐るドアをノックした。

「どうぞ……」
「しし、失礼します」カチャ

 ユーザーが中に入ると、ベッドで上体を起こしたシズベールは、ユーザーの顔を真っ直ぐ見て、優しく微笑んだ。

「僕の退屈を紛らわせてくれるのは、キミかい?」
「シ、シズベール様!?……ぱっふぅぅん♡」

 シズベールの顔を見た瞬間、オタ女はよろめいた。
 シズベールはヲタ女を優しく受け止め、勉強机の椅子に座らせた。

「いらっしゃい。オーダーを聞こうか?」
「ははは、はい! これでお願いします!」
「フムフム……オーダー! Aセット、 トッピング生動画、 入りまーすっ」

 昨日の教訓か、オーダーの傾向を踏まえ、コースを設定したようだ。
 ちなみにAセットは、『あすなろ抱き・アゴクイ・床ドン・腕枕・神ボイス』だった。

「じゃあ、始めるよ? 肩の力を抜いて、楽にして……」
「ふぁ、ふぁい……」

 シズベールはユーザーの背後に周り、そっと抱きしめた。

「お姉さん、肩こってるね? ダメだぞ? 夜更かしは美容の天敵だからね」
「ばびゅう!? ぐげぇ♡♡♡」

 シズベールはその体制でユーザーの顎をくいっと自分の方に向ける。

「メガネ、取った方がカワイイよ」
「ち、近い ぶふっ!?」

 それからシズベールは、コースをひと通りこなした。

「ねぇ、動画はこんな感じでどうだろう?」

 シズベールが動画のチェックをユーザーに依頼した。

「はっ、はっ、おっふぅ、げぶっ、うぐぅぅ……ふぅ」
「で、どうかな?」
「さささ、最高……です」

 ユーザーが顔を真っ赤にしてそう言うと、シズベールは満面の笑顔で言った。

「それは良かった。 ご利用、ありがとうございました♪」パァァ
「きゃっふぅぅん♡」

 ユーザーはシズベールの疑似ニパを受け、よろめきながら部屋を出て行った。

「ああ、 幸せ過ぎて、 今にも馬車に轢かれて死んでしまいそうです……」

 レプリカに骨抜きにされたユーザーは、ふらつきながら出口へと歩いて行った。
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