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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード51-49

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ワタルの塔 二階 応接室

 レヴィたちは、レストラン『ロイヤル・ストレート・スラッシャー』で軽く反省会を行ったあと、駐車場の隅で待機させていたラプロス壱号機で各自撤収し、変装を落としたあとに『塔』に集まった。
 二階の応接室で、反省会の二次会を行っていた。

「少佐、あのまま帰って来て良かったんでしょうか?」
「いたってしょうがないでしょ? リリィから『無事だった』って念話が入ったんだから」

 アマンダは、対面で紅茶を飲んでいるココナに話しかけた。

「大尉、神父は『朝のお勤め』には間に合ったの?」
「問題無い。壱号機だからこそ成せる技、だけどな」

 ドラゴン型MTであるラプロス壱号機は、亜空間飛行【ワープ】を使う事が出来る。
 その為、使い方によってはタイムマシンの様な効果を得る事が可能であるが、未知の要素が多い為、極力使用を控えるようにメルクに言われている。

「そんな事より、じゃーん! 今日の戦利品よっ!」

 アマンダはイベントでゲットしたものを見せてびらかした。
 ノーマルの静流に、あすなろ抱きされているモブ子を始めとする、数枚の生写真だった。

「変装を後で画像処理すれば、完璧なものになるわぁ。ムフ♡」

 アマンダは頬に手をやり、うっとりと写真を眺めている。

「やっぱリアルに近い静流クンを選んで、正解だったかもね」

 仁奈はアマンダの満足げな態度に、大きく頷いた。

「ダッシュ7様も、素敵でしたよ? ほら」パサ

 レヴィが見せた写真は、全ての鎧を外したダッシュ7が、ソファーに足を投げ出してグラスに入ったワインを揺らしている構図だった。
 他には二人のモブ子がとっかえひっかえ写っているツーショット写真だった。

「な……何よ? その生写真は?」 
「私がダッシュ7様の鎧を外したんですよ? 手際がイイって褒められちゃいました。テヘヘ」
「普段の鎧姿もイイのでありますが、オフのダッシュ7様も素敵だったのであります!」フー、フー
「シズミ君も可愛かったし、一粒で二度美味しかったです。 ムフフ」

 アマンダがレヴィたちの生写真を見て悔しがっていた。
 佳乃や萌も、その時の事を思い出してうっとりと写真を眺めていた。

「成程。確かにレアですね? しかし、レア度ならコッチも負けてませんよぉ! コレを見て下さい! ヌフ♡」
「イカしてると言えば、シズルー大尉でしょう? 実際イカされましたし……ムフ♡」
 
 次にルリとみのりが、ドヤ顔で数枚の生写真を見せてきた。

「うひゃぁ、こりゃスゴい。 良くオーダーが通ったね?」
「アンタたち!? 何をしたらこんな構図で写真が撮れるの?」フー、フー

 仁奈は素直に驚き、アマンダは興奮気味だった。
 ルリたちが見せた写真は、シズルーを中心に両側をモブ子たちが寄り添っている、『はべらせポーズ』をとっていた。
 他には、モブ子にメガネを外され、顔を赤くしたシズルーが、モブ子に顎クイされ、耳に舌を這わせる寸前の写真など数枚であった。

「まぁ相手は所詮高校生ですから、交渉のスキルさえあれば、この位の事は造作も無い事です。 ヌフフフ」

 ニヤついた顔のルリが自慢げに語っている横で、ココナは冷静に分析した。

「……確かに、凝りに凝った構図がたまらんな。一応、私たちの成果も見てもらおうか?」パサ
「こ、これは!?」
 
 数枚の写真で、特に目立ったのが七本木ジンに変身した静流と、ジル神父が扮した『モブ男の娘』との絡みであった。
 他にはモブ子に耳掃除をされているシズベールなどがあった。

「ジン様と、神父様のカプ? うわぁ、エモエモじゃないですか!?」フー、フー
「神父はそのあと、『鼻舐め』を強要して強制的に昇天させられてたな……」

 ルリが写真を血走った目で見つめ、興奮している。
 アマンダは予想外に淡泊なココナに聞いた。

「大尉、アナタはそれで満足したの?」
「ふっふっふ。よくぞ聞いた。私はな、恐らく誰よりも勝っている! これを見よ!」

 ココナは立ち上がり、懐から小さなジップ付ビニール袋を出した。

「この桃色の粉は、静流殿の耳クソだ!」
「な、何ですって!?」

 一同は袋を見て驚いたが、アマンダはそれほど驚いてはいなかった。

「……確かに生体サンプルは魅力的だけど、普通に頼めば提供してくれるわよ?」
「何だと?」
「大方察しは付くわ。アナタの意図するもの、それは『聖垢』でしょう?」

 アマンダの問いに、ココナは観念した。

「流石は少佐殿。 そこまでわかっていたのか……完敗だな」

 二人が勝手に始めた会話に、周りの者は取り残されていた。

「何です? 『せいこう』って?」
「普通に考えて、『聖なるアカ』って事でしょうか?」

 アマンダとココナ以外は、『聖垢』の意味がさっぱり分からなかった。
 その件については深く触れる事は無く、アマンダは勝ち誇ったかのようにココナに言った。

「でも残念だったわね? その耳クソ、今に消滅するわよ?」
「な、何だと?」
「私たちを接客したのは、静流クンの『レプリカ』でしょ?」
「し、しまった! そうだった……」

 ココナは驚愕の表情から、憔悴の表情に変わっていった。

「バカね。普通に提供してって頼めばイイのよ。研究に使うからって」
「それでは変態と変わらんではないか!?」
「今の発言、そっくりお返しするわ」
「くっ! レプリカの記憶を読まれると、相当マズい事になってしまう! あぁ! 何て事だ!」
 
 ココナは頭を抱え、もがき苦しんでいる。

「確かに、私たちもそれは困るわね……下手するとバレちゃうかも……」

「「「「うぇぇぇぇl!?」」」」

 アマンダの呟きに、一同は反応した。

「そ、それはマズいです! ヤバいです! エライこっちゃです!」
「どんな顔して接すればイイんです? 恥ずかしい」
「静流様にもしバレたら、あまりの変態ぶりにドン引きされ、軽蔑され、幻滅されてしまうのであります……」

 応接室でレヴィたちがアワアワし出した時、エレベーターが1Fに下りて行った気配がした。

「誰か、1Fにいます、総員、ブツをしまって下さい!」

 エレベーターが2階で停まり、扉が開いた。

 ウィーン

 レヴィたちは応接室の入り口からそろーっと顔を出した。

「よぉ、皆さんお揃いで」

 レヴィたちの視線の先で右手を上げたのは、リナだった。

「リ、リナさん……おどかさないで下さいよぉ……」
「何だよそれ? ははぁん、また何かやらかしたな?」
「いえいえ、何もしてませんよぉー」

 レヴィは天井の方を見ながら否定したが、かえって肯定ともとれる態度だった。

「ま、どーでもイイけどな。この雰囲気だと、静坊たちはまだアッチか?」
「そのようですね。もうすぐ閉館ですから、顔を出されると思いますが……」

 どうやらリナは、静流たちに会う為に塔に来たようだ。

「そうか。行き違いにならなくて良かったぜ」
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