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第9章 冬の……アナタ、どなた?
エピソード51-43
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国分尼寺魔導高校 桃魔術研究会 第一部室――
部室に大量の紙が運ばれ、左京と白黒ミサは、シズムを待っていた。
「お疲れー!」
「待ってましたシズムン! イイ所で来てくれた!」
「何かタイヘンな事になってるって?」
「実は……」
白ミサは、明日の頒布品が在庫薄な上に、運営から部数の追加が認められた事をシズムに説明した。
「……と言う事で、頒布品の増刷を手伝って欲しいのです!」
そう言って白ミサが頭を下げると、黒ミサと左京も一緒に頭を下げた。
「ふぅん。それでこの紙の山か。オッケー。とっとと片付けよう!」
「「「ありがとう、シズムン!」」」
シズムからGOサインが出ると、部員たちがサンプルの薄い本を持って来た。
今回出品している八冊の薄い本を、評判順に並べていく。
「500部の内訳はこの順でお願いします」
「了解。じゃあ10分くらい時間ちょうだい?」
そう言ってシズムは、ニッコリと微笑んだ。
「「「はい! お願いします!」」」
部員たちも揃って笑顔でシズムに応えた。
そのまま数十秒が過ぎようとした頃、シズムの顔が苦笑いに変わった。
「……あのさ、ちょっと外して欲しいんだけど?」
「へ? ああ、そうですよね、すいません……」
部員が何かを察し、部室を出て行く。
残ったのは、白黒ミサと左京だった。
「センパイたちも、恥ずかしいからちょっと出てって!」
「「「きゃうぅぅん♡」」」
シズムは口をとんがらせ、三人の背中を出入口の方向に押した。
「怒ってるシズムン、激レアですぅ……マーヴェラス!」
「まるで『鶴の恩返し』みたいだな。そそるわぁ♡」
「そうされると心理的には見たくなるものです。ムフ」
「イイから出てって!」
ニヤついている三人を廊下に追い出すと、シズムは念を押した。
「ぜーったい、見ないでね?」
「見ません見ません」
「さぁ、シズムンの作業の邪魔だ。みんな向こうで休憩しよう」
「「「はーい!」」」
黒ミサは部員たちを引き連れ、同じ階の『オカルト研究部』に顔を出した。
「鍵が開いてる。おーい、邪魔するぞ!」
「お疲れ様でーす」
◆ ◆ ◆ ◆
部室で一人になったシズムは、早速作業に取り掛かった。
「さぁて、始めますか。あーん」パクパク
シズムは薄い本を次々に口に入れた。
すると、シズムの目が光り始めた。
「【スキャン】開始…………完了」
次にシズムは、部員たちがかき集めた紙の山の方を向き、それを口に放り込んでいく。
暫く紙を口に入れる動作が続き、山になっていた紙が次第になくなっていった。
「あむ、あむ、もう少し……クリア!」
シズムは紙を口に入れる動作を止め、数十秒フリーズしたのち、動き出した。
「【コンバート】!」パァァァ
シズムの身体が緑色のオーラに包まれ、やがて体内に吸収された。
「イジェクト! んべぇ――――――――」バサッ、バサッ
シズムの口から、薄い本が次々に生み出されていった。
◆ ◆ ◆ ◆
オカルト研究部 部室――
オカ研の部室に顔を出した白黒ミサたち。
「よぉイタコ! 邪魔するぞ!」
「あら? アナタたち、一日目は終わったの?」
「まだ撤収はしてないが、概ね終わりと言ってイイだろう」
部室にいたのはオカ研の部長、『イタコ』こと板倉こずえだった。
「静流様は、無事ですか?」
「何だ? その物騒な言い方は?」
「静流様なら、ユーザーとの交流イベントに精を出しておられますよ?」
「せせせ、精を出す? とは?」ハァハァ
白ミサの言葉に興奮するイタコ。
ニヤついているイタコに、顔を赤くした黒ミサがツッコミを入れた。
「か、勘違いするな! ご尽力されていると言う事だ! バカモン!」
「冗談です。フン」
イタコにからかわれ、顔を真っ赤にして怒っている黒ミサをほっといて、イタコが白ミサに聞いた。
「白ちゃん、改めて聞きますが、静流様の具合は良好ですのね?」
「はい。私たちが見た時は、特にお変わりありませんでしたが?」
「そうですか……では明日のビジョンだったのでしょうか……」ブツブツ
イタコは頬に手をやり、何かつぶやきながら考え込んでいる。
「おい! まさか、何か見えたのか?」
「はい。少し心配なものが見えました……」
イタコは【予知夢】で未来の事が『ビジョン』として見えるのである。
「あっ! そうでした!」
イタコは何か思い出したようで、手をポンと叩いた。
「これを静流様に届けて下さいますか? 昼に差し入れたものはもうなくなると思いますので……」
「おお、いつものヤツか? MPポーション?」
そう言った黒ミサに、イタコは指を左右に振った。
「チッチッチ、いつものとはワケが違います。きっと必要になりますから、必ず届けるように!」
「お、おう。わかった」
イタコに箱を渡され、黒ミサは首を傾げながら受け取った。
そうこうしているうちに、10分程度経過している事に気付いた左京。
「皆さん、10分経過しました。シズムンの様子、見に行きませんか?」
「「「賛成!」」」
◆ ◆ ◆ ◆
桃魔術研究会 第一部室――
約束の10分が経過したので、桃魔の部室を覗いてみる事となった。
廊下から黒ミサが叫んだ。
「シズムン、もーいーかい?」
「……もーいーよ♪」
シズムのOKが出たので、勢いよく入って来た白黒ミサたち。
みんなに向き合い、ドヤ顔でシズムが言った。
「シズムン! もう増刷出来たの?」
「どぉ? ざっとこんな感じ♪」
シズムの後ろには、8種類の薄い本が、オーダー通りの内訳で積み上がっていた。
「ひょおー。 完璧じゃないか!」
「完璧ですシズムン。ありがとう!」
手に取って確認する白黒ミサ。
「色原稿の発色、オリジナルよりもイイですよ? ほら」
「……確かに。複製の複製には見えないな……」
ロディの複製技術が群を抜いている事が、改めて証明された。
「じゃ、もうイイかな? 静流クンが心配だから、付いていてあげたいんだけど……」
「え? シズムン、静流様に何かあったのですか?」
「うん。ちょっと魔法の使い過ぎ? みたいな?」
シズムはそう言って首を傾げた。
「おい、まさか、イタコが言っていた事って……」
「ええ。イタコは明日かもって言ってたけど……」
白黒ミサは顔を見合わせ、頷いた。
「私たちも一緒に行きます! 左京、後をお願い」
「御意!」
シズムと白黒ミサは、【ゲート】を使って膜張に向かった。
部室に大量の紙が運ばれ、左京と白黒ミサは、シズムを待っていた。
「お疲れー!」
「待ってましたシズムン! イイ所で来てくれた!」
「何かタイヘンな事になってるって?」
「実は……」
白ミサは、明日の頒布品が在庫薄な上に、運営から部数の追加が認められた事をシズムに説明した。
「……と言う事で、頒布品の増刷を手伝って欲しいのです!」
そう言って白ミサが頭を下げると、黒ミサと左京も一緒に頭を下げた。
「ふぅん。それでこの紙の山か。オッケー。とっとと片付けよう!」
「「「ありがとう、シズムン!」」」
シズムからGOサインが出ると、部員たちがサンプルの薄い本を持って来た。
今回出品している八冊の薄い本を、評判順に並べていく。
「500部の内訳はこの順でお願いします」
「了解。じゃあ10分くらい時間ちょうだい?」
そう言ってシズムは、ニッコリと微笑んだ。
「「「はい! お願いします!」」」
部員たちも揃って笑顔でシズムに応えた。
そのまま数十秒が過ぎようとした頃、シズムの顔が苦笑いに変わった。
「……あのさ、ちょっと外して欲しいんだけど?」
「へ? ああ、そうですよね、すいません……」
部員が何かを察し、部室を出て行く。
残ったのは、白黒ミサと左京だった。
「センパイたちも、恥ずかしいからちょっと出てって!」
「「「きゃうぅぅん♡」」」
シズムは口をとんがらせ、三人の背中を出入口の方向に押した。
「怒ってるシズムン、激レアですぅ……マーヴェラス!」
「まるで『鶴の恩返し』みたいだな。そそるわぁ♡」
「そうされると心理的には見たくなるものです。ムフ」
「イイから出てって!」
ニヤついている三人を廊下に追い出すと、シズムは念を押した。
「ぜーったい、見ないでね?」
「見ません見ません」
「さぁ、シズムンの作業の邪魔だ。みんな向こうで休憩しよう」
「「「はーい!」」」
黒ミサは部員たちを引き連れ、同じ階の『オカルト研究部』に顔を出した。
「鍵が開いてる。おーい、邪魔するぞ!」
「お疲れ様でーす」
◆ ◆ ◆ ◆
部室で一人になったシズムは、早速作業に取り掛かった。
「さぁて、始めますか。あーん」パクパク
シズムは薄い本を次々に口に入れた。
すると、シズムの目が光り始めた。
「【スキャン】開始…………完了」
次にシズムは、部員たちがかき集めた紙の山の方を向き、それを口に放り込んでいく。
暫く紙を口に入れる動作が続き、山になっていた紙が次第になくなっていった。
「あむ、あむ、もう少し……クリア!」
シズムは紙を口に入れる動作を止め、数十秒フリーズしたのち、動き出した。
「【コンバート】!」パァァァ
シズムの身体が緑色のオーラに包まれ、やがて体内に吸収された。
「イジェクト! んべぇ――――――――」バサッ、バサッ
シズムの口から、薄い本が次々に生み出されていった。
◆ ◆ ◆ ◆
オカルト研究部 部室――
オカ研の部室に顔を出した白黒ミサたち。
「よぉイタコ! 邪魔するぞ!」
「あら? アナタたち、一日目は終わったの?」
「まだ撤収はしてないが、概ね終わりと言ってイイだろう」
部室にいたのはオカ研の部長、『イタコ』こと板倉こずえだった。
「静流様は、無事ですか?」
「何だ? その物騒な言い方は?」
「静流様なら、ユーザーとの交流イベントに精を出しておられますよ?」
「せせせ、精を出す? とは?」ハァハァ
白ミサの言葉に興奮するイタコ。
ニヤついているイタコに、顔を赤くした黒ミサがツッコミを入れた。
「か、勘違いするな! ご尽力されていると言う事だ! バカモン!」
「冗談です。フン」
イタコにからかわれ、顔を真っ赤にして怒っている黒ミサをほっといて、イタコが白ミサに聞いた。
「白ちゃん、改めて聞きますが、静流様の具合は良好ですのね?」
「はい。私たちが見た時は、特にお変わりありませんでしたが?」
「そうですか……では明日のビジョンだったのでしょうか……」ブツブツ
イタコは頬に手をやり、何かつぶやきながら考え込んでいる。
「おい! まさか、何か見えたのか?」
「はい。少し心配なものが見えました……」
イタコは【予知夢】で未来の事が『ビジョン』として見えるのである。
「あっ! そうでした!」
イタコは何か思い出したようで、手をポンと叩いた。
「これを静流様に届けて下さいますか? 昼に差し入れたものはもうなくなると思いますので……」
「おお、いつものヤツか? MPポーション?」
そう言った黒ミサに、イタコは指を左右に振った。
「チッチッチ、いつものとはワケが違います。きっと必要になりますから、必ず届けるように!」
「お、おう。わかった」
イタコに箱を渡され、黒ミサは首を傾げながら受け取った。
そうこうしているうちに、10分程度経過している事に気付いた左京。
「皆さん、10分経過しました。シズムンの様子、見に行きませんか?」
「「「賛成!」」」
◆ ◆ ◆ ◆
桃魔術研究会 第一部室――
約束の10分が経過したので、桃魔の部室を覗いてみる事となった。
廊下から黒ミサが叫んだ。
「シズムン、もーいーかい?」
「……もーいーよ♪」
シズムのOKが出たので、勢いよく入って来た白黒ミサたち。
みんなに向き合い、ドヤ顔でシズムが言った。
「シズムン! もう増刷出来たの?」
「どぉ? ざっとこんな感じ♪」
シズムの後ろには、8種類の薄い本が、オーダー通りの内訳で積み上がっていた。
「ひょおー。 完璧じゃないか!」
「完璧ですシズムン。ありがとう!」
手に取って確認する白黒ミサ。
「色原稿の発色、オリジナルよりもイイですよ? ほら」
「……確かに。複製の複製には見えないな……」
ロディの複製技術が群を抜いている事が、改めて証明された。
「じゃ、もうイイかな? 静流クンが心配だから、付いていてあげたいんだけど……」
「え? シズムン、静流様に何かあったのですか?」
「うん。ちょっと魔法の使い過ぎ? みたいな?」
シズムはそう言って首を傾げた。
「おい、まさか、イタコが言っていた事って……」
「ええ。イタコは明日かもって言ってたけど……」
白黒ミサは顔を見合わせ、頷いた。
「私たちも一緒に行きます! 左京、後をお願い」
「御意!」
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