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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード51-32

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インベントリ内 プレイルーム――

 がらんとした広めの空間に、パーテーションで区切った部屋が四つ並んでいる。

「もう少ししたら最初のお客様がお見えです。スタンバイお願いします!」

 部員がそう言って4人のアクターに頭を下げた。
 その後ろに睦美、カナメ、右京が四人を見守っていた。

「さぁて、踏ん張るか」ボム
「報酬、わかってるよね?」ボム

 薫子とブラムが【化装術】を使った。
 続いて静流とブラムが変身した。

「静流様、大丈夫ですか?無理なら分身を増やして……」シュン
「いや、大丈夫。みんながやるのに僕だけやらないのは、何か違うと思うし」シュン

 睦美たちの前に、四人の静流が現れた。
 内訳は衣装合わせの時に決めた、

 ルームA ノーマル静流 ロディ 
 ルームB シズルー   薫子
 ルームC シズベール  静流
 ルームD シズミ    ブラム

 であった。

「ではアクターの皆さん、それぞれの部屋に入って下さい!」
「「「「ほーい」」」」 

 四人のアクターは、それぞれの部屋に入った。

「へぇ。何となくアンドロメダ寮を思い出すなぁ……」

 ルームCに入った静流が見たものは、学生寮の様なセットだった。
 勉強机が2基と本棚があり、二段ベッドが設置してある。
 素肌にワイシャツを羽織っているだけの衣装の静流は、二段ベッドの下段に寝そべった。

「役になりきってご奉仕……か」

 そう呟いた時、ドアをノックする音がした。

「どうぞ……」
「しし、失礼します」カチャ

 最初に入って来たのは、背が低く、長い前髪で目が完全に隠れている気弱そうなヲタ女だった。
 ベッドで上体を起こした静流は、ヲタ女の顔を真っ直ぐ見て、優しく微笑んだ。

「僕の退屈を紛らわせてくれるのは、キミかい?」
「シ、シズベール様!?……ぱっふぅぅん♡」
(よしっ、掴みはオッケーらしいぞ)

 静流の顔を見た瞬間、オタ女はよろめいた。
 静流はヲタ女を優しく受け止め、勉強机の椅子に座らせた。

「いらっしゃい。オーダーを聞こうか?」

 静流は本のイメージを意識しながら、ヲタ女に声をかけた。

「ははは、はい! これでお願いします!」
「フムフム……『なろ抱き・アゴクイ・床ドン・腕枕・神ボイス』、入りまーす!」
   
 静流は某ラーメン屋のトッピングの様に、オーダーシートを読み上げた。

「じゃあ、始めるね? 肩の力を抜いて、楽にして……」
「は、は……い……」

 静流は椅子に座っているヲタ女の後ろに回り、ヲタ女の横後ろに自分の顔が来るように位置を決め、オタ女の肩上に腕を通すと、アゴ下辺りで優しく手を交差させた。

【フランソワ、僕じゃ、ダメなのかい?】ふぅ……

 静流はドラマの撮影時に監督に言われた事を実践してみた。
 セリフに魔力を乗せ、ヲタ女の首筋に吐息をかけた。


「ばば、ばびぃぃぃ……くわらばっ♡♡♡」ガクッ


 意味不明の言語を口に出したあと、ヲタ女は失神してしまった。

「これは大変だ! 救護班! お願いします!」

 部屋はパーテーションで区切っているだけなので、叫べば声が周りに届く。

「どうしたの? あらら、ノビちゃってるわね……」

 出口用のドアからカチュアが入って来た。

「最初の子だったんで、ちょっと気合入れすぎた? みたいです」
「そんな恰好で迫って来たら、免疫の無い子たちは一溜まりもないわね……」

 続いて睦美が入って来た。

「どうした! むぅ、これは……」

 睦美が見た時、ヲタ女は完全にイッていた。
 両目が♡マークになり、鼻血が口元を伝っていた。

「刺激が強すぎたのよ。静流クン、もっと手を抜きなさい」
「そんな事言われても、何がなんだか……」
「あと何人相手するかもわからないのよ? 魔力は使わなくても破壊力はバッチリだから」

 静流は少し考えて、ある事を思い出した。

「そうか! 睦美先輩、アレを使ったらどうでしょう?」
「アレとは? そうか、『サチウスの腕輪』か!」
「腕輪を付けていた時は、『あすなろ抱き』をしても、ここまでヒドくなりませんでしたよ?」
「よし、直ぐ持って来させる」



              ◆ ◆ ◆ ◆


「う、うぅ……ん」

 失神していたヲタ女は、ゆっくりと目を開けた。
 実際はカチュアにより強制的に覚醒させられたのだった。

「目が、覚めたかい?」
「シ、シズベール、さま?」

 ヲタ女が声の方を向くと、すぐそばにシズベールの顔があった。
 状況を確認すると、自分がシズベールの腕枕で寝ている事に気付いた。
 シャツがはだけ、乳首がチラ、と見えた。
 ヲタ女は飛び起き、目のやり場に困りながらシズベールに聞いた。

「腕……痛くなかったですか?」
「大丈夫だよ。うーんと、後は『神ボイス』だったね? レコーダーの準備しようか?」
「は、はい……」

 ヲタ女はボイレコを操作し、録音を開始した。

【お目覚めかな? 僕の子ネコちゃん?】

「おっふぅ♡」 
「ちょっと照れるな……こんな感じでオッケー?」

 静流は頬を指で掻きながら、ヲタ女に確認した。

「さ、最高……です。毎朝タイマーで聞きます!」

 ヲタ女は憑き物が取れた様に、スキップしながら出口用ドアから出て行った。
 腕輪の効果だろうか、先ほどの様な事にはならなかった。

「ふぅ……満足してくれたみたいでよかった……」

 安堵した静流に、早速次のユーザーがドアをノックした。



              ◆ ◆ ◆ ◆


ルームB シズルーの部屋 

 一人のヲタ女が、緊張の面持ちでドアをノックした。

 コンコン

「大尉殿、入ります!」 
「よし!」

 ヲタ女はさらに緊張しながらシズルーの前に立ち、オーダーシートを出した。

「よろしくお願いします!」 
「うむ。『アゴクイ・人間イス・罵り』で良いか?」
「『罵り』マシマシでお願いします!」ハァハァ

 見るからにMなヲタ女は、自ら四つん這いになり、ウェルカムポーズをしている。

「さあ、お仕置きの時間だ……」

 対してシズルーは、空気イスの要領で腰に座る『真似』をした。

「あの……遠慮なさらずに、乗って下さい。シズルー様の愛の重みを感じとうございます」
「誰が豚の指図など受けるか!身の程を知れ!」
「そ、そのようなつもりは……」

 シズルーが人間イスに座らない理由は、ユーザーに対して過剰なサービスとなる事を考慮しての事だが、じらす為も含んでいた。

「豚の分際で私に注文を付けるだと? 千年早いわ!」
「あぁ、もっと罵って下さいまし……」

 シズルーは立ち上がり、ヲタ女の顎をクイッと右手で持ち上げた。

「よかろう……私なしでは生きられない体にしてる!」
「もっと……イジメて下さい……」
「私が欲しいか? ならば股を開け!」
「お、お願いします!」
「お前の穴という穴を全部私で塞いでやる!」
「あぁ、スゴく……硬いのを、下さい」
「さっさとイクが良い! この不感症がぁー!」

「うっほぉ~ん♡」

 一連のやり取りが終わり、素に戻る二人。

「こんな感じだが、どうであろうか?」
「完璧です!録音もバッチリです!」
「それは良かった。気を付けて帰るのだぞ?」
「はいっ! 大尉殿、ありがとうございました!」

 ヲタ女は、満面の笑顔を浮かべ、出口用ドアから出て行った。
 それを見て薫子は、ボソッと呟いた。

「これはこれでちょっと楽しいかも? 私って変態の素質あったりして?」
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